【時事解説】購買動機は内的要因が重要 その2

政府が行う経済対策でモノの値段が下がることがあっても、それに安易に乗るのは考え物だということです。モノを買うときのベースはあくまで自分自身における必要性です。必要性が先にあり、その必要性と見比べた時、採算が合うかどうかという判断をして、モノを購入するというのが手順です。モノの値段が安いから必要性を探すというのは正しい考え方ではありません。確かに政府の対策でモノの値段が下がっていれば、モノを購入しやすくなるということはあるでしょう。しかし、それはあくまで必要性があっての話です。必要性の吟味をおろそかにしたまま、モノの値段だけで安易にモノを購入しない方がいいということです。

 スーパーに行って、5%引きや10%引きの値札があるので思わず買ってしまったが、家に帰ってみたら、自分が欲しかったものではなかったという経験がある人もいるかと思います。これは内的要因を軽視して外的要因に振り回された結果です。消費行動は外的要因に左右されないことが大切です。

 本年はコロナ禍もあり、外的要因が大きく変動します。こうしたときこそ、モノを買うときには、外的要因に踊らされることなく、必要性をしっかり吟味することが必要だと思います。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】購買動機は内的要因が重要 その1

コロナ禍による消費低迷で、政府は様々な経済対策を用意します。政府の対策にどのように対応するかは重要なことですが、余りに過敏に反応しすぎるのも疑問です。

 京セラフィロソフィーで有名な稲盛和夫氏も次のように言っています。
 『京セラでは、原材料などの購買について、毎月必要なものは毎月必要な分だけ購入するようにしている。場合によっては、毎月ではなくて、毎日必要な分だけを買うようにしているケースもある。私はこれを「一升買い」と呼び、資材購入の原則としてきた。たとえ、一斗樽でまとめて買えば安くなりますよと言われても、今必要な一升だけを買うようにしてきたのである。
(中略)
使う分だけ当座買いするから、高く買ったように見えるが、社員はあるものを大切に使うようになる。余分にないから、倉庫も要らない。倉庫が要らないから、在庫管理も要らないし、在庫金利もかからない。これらのコストを通算すれば、その方がはるかに経済的である。セラミックのように腐らないものならまだしも、腐るものを扱う場合には、気がついてみたら使えなくなっていたということになりかねない。』(「稲盛和夫の実学」より)

 モノを購入する時の思考パターンを考えてみましょう。まず、自分がそのモノを必要としている状況があり、その必要性をベースに、モノの値段の妥当性を判断して、購入を決断するというのが普通です。必要性は「内的要因」、モノの値段は「外的要因」といってもいいかもしれません。稲盛氏がここで言っているのは、モノを購入するときに大切なのは外的要因ではなく、内的要因だということです。自身の必要性を十分検討することなく、モノの値段を主体にして購入を判断することは、正しい消費行動とはいえません。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》令和2年の年末調整 紙の場合の変更点

◆とても長い名前になってしまった用紙
 年末調整は、給与を受ける人それぞれについて、原則毎月の給与や賞与などの支払いの際に源泉徴収した税額と、その年の給与の総額について納めなければならない年税額とを比べて、その過不足を精算する手続です。各種「控除申告書」を経理担当者等に出すことになりますが、去年は「給与所得者の配偶者控除等申告書」という名前だった用紙が、「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」という、とても長い名前に変わりました。なお、「給与所得者の保険料控除証明書」に変更はありません。

◆基礎控除変更と所得金額調整控除新設
 基礎控除は令和2年から、所得によって減額が行われるようになりました。控除額は、所得金額(給与所得控除後の金額+給与所得以外の所得額)が、
2,400万円以下   48万円
2,400万円超2,450万円以下  32万円
2,450万円超2,500万円以下  16万円
2,500万円超 基礎控除は     0円
に変更となります。
 所得金額調整控除は、給与収入が850万円を超える給与所得者で、
①本人・同一生計配偶者・扶養親族いずれかが特別障害者
②年齢23歳未満の扶養親族が居る
①か②のどちらかの条件を満たしていれば(給与収入金額-850万円)×10%=控除額となります。
 なお、給与所得と年金所得の両方がある方は、確定申告で所得金額調整控除を受けられますが、年末調整は給与収入の税額の調整を行うものなので、この控除申告書では計算をしません。

◆電子申請の方が楽?
 今年の年末調整は、国税庁が無料ソフトを提供している上に、会計ソフト会社等も、使いやすい年末調整・法定調書等の作成ソフトを販売しています。例えば国税庁のソフトでは、従業員入力を分かりやすくするために、最初に簡単な質問の「はい・いいえ」で入力項目の絞り込みを行う等して、とても長い名前の紙の控除申告書の入力が必要な部分のみを表示してくれます。

《コラム》扶養の「壁」を超えた時、目指す収入額と使える制度

◆「扶養内で働く」とは
 共働きの世帯では、夫・妻ともに正社員のフルタイマーで働いているケースもあれば、片方が会社員としてフルタイムの勤務をし、片方がパートやアルバイト等の短時間労働をしながら家事や育児、介護等を担っているケースもあります。
 ところで、会社員やアルバイト・パートの勤務経験がある方ならば、夫や妻の扶養控除を受けてパート等で働く際に「扶養内で働く」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。
 これは、「扶養控除が受けられる範囲の中で働く」という意味で、収入が一定額を超えると税金や社会保険料の負担が発生し家計全体の手取り額が減ることがあるため、その一定額以下の収入となるよう勤務時間や収入を調整して働くことを指しています。

◆税金の「壁」、社会保険の「壁」
 扶養控除には、「税制上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2つがあります。
 税金や保険料が発生する一定収入のラインを年収の「壁」と呼ぶことがあります。
 年収が103万円を超えると、税制上の扶養から外れて、超えた額に対する所得税を自分で納める義務が発生します。
 また、従業員が501人以上の会社で働く人は年収106万円、500人以下の会社では年収130万円以上になると、社会保険上の扶養から外れて、健康保険料や年金保険料を負担する必要が出てきます。
 ただし、社会保険の加入には条件があり、年収で被扶養者から外れても、労働時間が短い等の理由で自分の職場の厚生年金と健康保険に加入できない場合は、国民年金と国民健康保険に加入することになります。

◆「壁」を超えても損しない収入のラインは
 では、配偶者控除の「壁」を超えて勤務をするとしたら、具体的にはどのくらいの収入ならば税金や社会保険料を支払ってでも勤務をしたほうが、家計全体の収入が増加するのでしょうか。
 結果的には130万円の収入を超えて、自分で社会保険料や年金保険料を払い、所得税や住民税の負担もあると考えると、目安として180万円以上働かないと、家計の手取りは減ってしまいそうです。
 ただ、保険料の負担は大きくとも、会社の社会保険と厚生年金に加入できれば将来受け取る年金が増え、病気で休職した際に健康保険の傷病手当金の給付、会社を辞めても雇用保険の失業給付が受け取れるなど大きなメリットもあります。

【時事解説】どこまで進むかブロックチェーン技術の応用 その2

 暗号通貨の中核技術を担うブロックチェーンが近年、様々な分野で応用されるようになりました。ブロックチェーンは台帳のような機能を有しています。しかも、改ざんされにくいのが特徴で、これを利用して物流システムなどに応用されています。

 なぜ、ブロックチェーンは改ざんされにくいのでしょうか。物流システムを例に説明しましょう。ブロックチェーンには情報が詰まったブロックが連なっています。そして、個々のブロックは1つ前のブロックの情報が受け継がれています。中国で生産されたものを日本で生産したことにしようと、ブロックの一部、生産地を書き換えたとしましょう。すると、受け継がれた前のブロックと、書き換えたブロックとの間で、情報の差異が生じるので改ざんが発覚します。

 また、ブロックチェーンのもう一つの特徴は、台帳の管理はマイナーと呼ばれる記帳者らが行っている点にあります。マイナーは世界中、だれでも自由に参加できます。結果、不正を働くには、世界全体、無数に存在するマイナー全員を買収しなければなりません。これでは、不正を働いてもコストが見合わないというわけです。

 ブロックチェーンの台帳の機能を利用して、ある部品メーカーでは、部品の配送や納品状況をリアルタイムで把握するシステムづくりに取り組んでいます。

 アートの世界でも活用が進んでいます。音楽や絵画などの芸術情報に関して、ブロックチェーンを用いて台帳を作成し、オンラインで作品を売買するというものです。新型コロナウイルスの影響で美術館は閉鎖、個展の開催も困難になりました。ブロックチェーン技術の活用は芸術家たちの活動の支えにもなります。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】どこまで進むかブロックチェーン技術の応用 その1

2017年、仮想通貨バブルが起こり、ビットコインをはじめとする仮想通貨の価格が短期間で何倍にも跳ね騰がりました。なかでも、ブロックチェーンは仮想通貨の中核技術として注目を集めました。ところが、2018年に入るとビットコインなどの仮想通貨はのきなみ価格が急落してしまいます。バブルがはじけるとともに、ブロックチェーンは人々の記憶から徐々に消え去りました。

 その後、仮想通貨は暗号通貨と改称されます。そして、最近では再びブロックチェーンに注目が集まるようになりました。ただ、今回は暗号通貨としてではなく、別の分野にブロックチェーン技術を応用し、新たな取り組みを生んでいます。

 もともと、ブロックチェーンの主な機能はデータを記録することにあります。取引に関する履歴を記録すれば、ブロックチェーンは台帳のような役割を果たします。そして、この台帳は流通など、多岐に渡る利用が可能なのです。また、ブロックチェーンの最大の特徴は情報が改ざんされにくい点にあります。

 これらの特徴を活かした応用例を挙げると、食品偽装防止への取り組みが挙げられます。ブロックチェーンの中には文字通りブロックが多数存在し、これらは鎖のように連なっています。ブロック上に原材料の生産から加工、出荷まで、いつ、だれが、どこで行ったかといった情報を記録します。そうすることで、生産地の偽装などが防げます。

 ブロックチェーンは物流システム以外にも、たとえばPCR検査結果の証明書を発行するためのデータ管理、従業員のコミュニケーションの記録、芸術作品の管理など、さまざまな事項に応用できます。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業におけるテレワーク導入 その2

 では、中小企業におけるテレワーク導入においては具体的にどのような取り組みが行われているのでしょうか。そこで『中小企業白書2020年版』において、「感染症BCP」に基づきテレワークなどの感染症対策を速やかに実施した企業として紹介されたサクラファインテックジャパン株式会社(本社:従業員数170名、東京都中央区)の事例ついてみていきましょう。

 同社は、医療用機械器具の製造・販売を行う企業です。同社では2013年の風疹の流行を踏まえ、同年から会社の全額費用負担で風疹・インフルエンザワクチンの社内での集団予防接種を実施しました。
 また、事前対策だけでなく、実際に感染症が流行した場合や従業員が感染した場合にも備える必要があると考え、東京都の感染症対応力向上プロジェクトへの参加を契機に2016年に「感染症に係る業務継続計画」(「感染症BCP」)を策定しました。同計画では、感染症流行時の具体的な対応策として、従業員の衛生管理の徹底や在宅勤務(テレワーク)が有効と記載されています。

 2020年春に新型コロナウイルスの発生を受け、同社では感染症BCPに基づき、すぐに発熱者の出社禁止などの措置を開始するとともに、メール、電話会議システム、チャットアプリを活用したテレワークを推奨しました。各部門内でチームを編成し、チームごとにオフィスと自宅とで勤務場所を分けてシフトを組むことで、感染予防と業務継続の両立を図りました。さらに、働き方改革の一環として導入していた時差勤務制度を拡充し、部門ごとに通勤時間を割り振ることで、感染リスクの低減を図りました。
 このように、感染症対策への備えが、テレワークや時差勤務の拡充へとつながっていったのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業におけるテレワーク導入 その1

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、中小企業においてもテレワーク導入が求められています。
 ここでは『中小企業白書2020年版』において紹介されたテレワーク導入の現状についてみていきましょう。

 総務省「平成30年通信利用動向調査」によると、全体ではテレワークを導入している企業の割合は19.0%となっています。資本金規模別にみると、資本金規模が小さい企業ほど、テレワークを導入している割合が低い傾向となっています。

 テレワークを導入しない理由についてみると、「テレワークに適した仕事がないから」と回答した割合が71.6%と最も高くなっており、次いで「業務の進行が難しいから(22.3%)」、「情報漏えいが心配だから(20.1%)」、「導入するメリットがよく分からないから(20.1%)」の順となっています。

 一方で、テレワークを「導入している」企業が導入の効果を感じているかどうかについてみると、「非常に効果があった」、「ある程度効果があった」と回答した企業の割合の合計は全体の79.2%を占めています。資本金規模別にみると「1,000万円未満」で56.5%、「1,000万円~3,000万円未満」で74.0%と中小企業規模でもテレワーク導入の効果を感じている企業の割合が高いことがわかります。

 テレワークを「導入している」企業の導入目的について最も回答割合が高いのは「定型的業務の効率性(生産性)の向上(56.1%)」となっています。また、「非常時(地震、新型インフルエンザ等)の事業継続に備えて」と回答した割合も15.1%と少ないながら存在することがわかります。

 このように中小企業のリスク対策の観点からもテレワーク導入の重要性が高まっているのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》交際費の損金不算入制度

◆交際費課税の現状
 現在の交際費課税は以下のようになっています。
① 大前提として1人5,000円以下の飲食等については、交際費としなくてもよい。
② 資本金が1億円以下である法人は、交際費の50%を損金に算入するか、800万円までを損金に算入するかのどちらかを認める。
③ 資本金が1億円を超える法人は、交際費の50%を損金に算入することを認める。
④ 資本金が100億円を超える法人は交際費の損金算入は一切認めない。
 何をもって交際費とするかは諸説ありますが国税局は以下のように言っています。
「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為」

◆企業は交際費をどれくらい使っているの
 国税局の最新(平成30年)の統計情報によれば、1億円以下の法人は、1社平均90万円弱です。それに対し1億円超の法人は1社平均1,000万円強です。全額否認される100億円超の法人は1社平均1億500万円です。全体の数字では圧倒的に数の多い1億円以下の法人が多いですが、1社当たりで見るとかなりの開きがあります。
 1億円以下の法人は800万円までの損金算入で十分かと思われますが、1億円超の企業は交際費の損金算入が認められれば、もっと交際費は増えると思われます。

◆コロナで飲食店は大打撃
 ご存知のように、コロナ騒ぎで飲食業界は大きく売上げを落とし大打撃を被っております。特に接待を伴う飲食店の打撃は大きなものがあります。
 景気が良くなるとはお金が実体経済でたくさん循環することです。
 本来交際費の損金不算入制度は、政策的な制度です。景気の動向を見て数年に一度は限度額や制度そのものを変更してきました。Go To Eatも結構ですが、この際交際費の損金不算入制度の見直しをしてもよいのではないかと思われます

《コラム》より拡充されるiDeCoとiDeCo+

iDeCo(イデコ)とiDeCo+(イデコプラス)の制度がより拡充されています。

◆iDeCo(イデコ)とは
 iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)は、確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金の制度で、加入は任意です。iDeCoは加入者が自分で申し込み、掛金を拠出し、自分で運用方法を選んで掛金を運用します。
 iDeCoでは、掛金を払い込むと所得控除の対象となり、運用期間中の運用益は非課税とされ、そして給付を受け取るときには退職金又は公的年金として扱われ、税制上の優遇措置が講じられています。

◆iDeCo+(イデコプラス)とは
 iDeCo+(イデコプラス・中小事業主掛金納付制度)とは、企業年金(企業型確定拠出年金、確定給付企業年金、厚生年金基金)を実施していない中小企業(従業員300人以下に限る)の事業主が、従業員の老後の所得確保に向けた支援を行うことができるよう、iDeCoに加入している従業員が拠出する加入者掛金に追加して、掛金を拠出できる制度です。
 事業主が拠出した掛金は、全額が損金に算入され、こちらも税制上の優遇措置が講じられています。実際に導入するには労使で合意し、イデコの実施主体である国民年金基金連合会に届け出る必要があります。

◆改正点
①iDeCoの改正
 これまでiDeCoでは60歳未満の国民年金被保険者が加入可能でしたが、高齢期の就労が拡大していることを踏まえ、2022年5月からは国民年金被保険者であれば加入可能となりまました。これにより60歳以上のiDeCoについては、国民年金の第2号被保険者又は国民年金の任意加入被保険者であれば加入可能となります。また、これまで海外居住者はiDeCoに加入できませんでしたが、国民年金に任意加入していればiDeCoに加入できるようになります。
②iDeCo+の改正
 2020年10月から、従業員要件が100人以下から300人以下に拡大されました。これにより加入可能者が一気に4割増え、2253万人に増えるそうです。