自動車工業会が車減税に自信

日本自動車工業会は9月下旬に発表した税制改正要望で、自動車の保有者が毎年負担する自動車税を大幅に引き下げるよう政府に求めました。2019年10月に10%となる消費税、米国による輸入自動車への追加関税と、今後の生産・販売は「嵐のような逆風」(自動車メーカー幹部)に見舞われる恐れがあります。19年度の税制改正に向け、自動車業界は例年以上に激しく、財務省や総務省との交渉に臨む姿勢です。

 まず挙げたのは、新たに購入する車を対象にした自動車税の引き下げ。人気の軽自動車税(年1万800円)並みを想定しました。排気量1千cc以下の小型車なら、年2万9500円から1万6400円になる見込みです。

 自動車税は年間1兆5千億円規模の税収をもたらし、地方の貴重な財源となっています。軽レベルまで引き下げれば税収は4千億円ほど減る可能性がありますが、経済産業省が地方税を所管する総務省と内々に減税交渉を進めており、自工会関係者は「実現に向けた地ならしは相当に進んでいる」と自信を見せます。

 政府は6月にまとめた経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で、消費増税への対応を盛り込みました。自動車の販売冷え込み対策として、増税と同時に導入される燃費課税を初年度に限り免除する案が検討されており、自工会は車を購入した初年度の自動車税も併せて対象に加えるよう求めます。

 消費税率のアップで、国内の新車販売は30万台程度を縮小が見込まれます。財務省と総務省は「減税は必要な財源の確保とバーターで」という立場を崩していませんが、自工会は「一時的な減税でも構わないので何とか押し込みたい」と鼻息を荒くしています。

《コラム》固定資産税評価額 家屋の減価と時価評価

◆家屋の評価替えもあるんですよ
 家屋の固定資産税評価額は評価替えされることなく、据え置かれることになっている、と理解している人は多いかと思います。
 でも、家屋も3年毎の基準年度とされる年に全国一斉に評価替えされます。今年は新基準年度の年です。
 評価替えされるのは、時価課税するとの法律の規定があるからです。

◆税額に直結する家屋の評価額
 家屋の固定資産税の課税標準は固定資産税評価額そのものです。その評価額は、各年の1月1日の価格とされ、それは「適正な時価」とされています。
 家屋の「適正な時価」とは何か、これについてあまり議論がありません。土地と異なり公示価格のような公的指標がありません。そのため、家屋評価の「適正な時価」概念は曖昧です。

◆「適正な時価」の求め方
 固定資産税の一つである償却資産税も時価課税とされていますが、これについては、取得価額から減価償却額を控除した金額を以って時価としています。
 土地については、売買実例価格を集約することを原理とする公示価格に基礎を置いています。
 木造家屋については、売買実例価格を基礎にしたのでは、急速に無評価化となる実態があるので、これは採用されていません。
 家屋の時価評価は、1月1日の時点で、その家屋を、その場に新築し直した場合に必要とされる再建築価格を求め、この価格から経年損耗減価の額を差し引くという方式が採られています。

◆経年減価補正率の適正性は
 再建築価格に乗ずる経年減価補正率を見ると、木造の場合、最初の1年経過後の1月1日の時に2割減価し、その後の25年間で6割減価し、その後27年以降は減価させない、としています。もし、1円まで減価償却をするとした場合、最後の償却率を維持したとして、木造の耐用年数は47年、非木造の耐用年数は156年です。
 木造27年、非木造45年以降のところで減価処理は0.2で打ち止めとなります。
 時価課税という法律規定の原理を支える適正時価の評価方式は果たしてこれでよいのか、疑問です。

今月の税務トピックス① 税理士法人右山事務所 所長 宮森俊樹

【特例贈与者の適用要件】

はじめに
 中小企業経営者の高齢化に伴い、今後10年の間に平均引退年齢である70歳を超える経営者が245万人になると推定されています。このうち、半数以上が事業承継の準備を終えていない現況にあります。そこで、平成30年度税制改正では、円滑な世代交代に向けた集中取組み期間(10年間)の時限措置として、事業承継税制の各種要件の緩和を含む事業承継税制の特例制度(以下「本特例」といいます。)が創設されました。
 本稿では、本特例の適用対象者である特例贈与者の適用要件及びその実務上の留意点について解説することとします。

Ⅰ 特例贈与者の定義
 「特例贈与者」とは、特例認定贈与承継会社(以下単に「特例会社」といいます。)の非上場株式等(議決権に制限のないものに限ります。以下同じ)を有していた個人として次の1又は2に定める者(特例会社の非上場株式等について既に本特例の適用に係る贈与をしているものを除きます。)とされます(措法70の7の5①,措令40の8の5①)。
1 贈与の直前において、既に本特例の適用を受けている者がいる場合…贈与時において、特例会社の代表権(制限が加えられた代表権を除きます。以下同じ)を有していないこと。
2 上記1以外の場合…次に掲げる要件の全てを満たすこと。
① 贈与の時前において、特例会社の代表権を有していた個人
② 贈与の直前において、贈与者及び贈与者の親族などで総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、特例経営承継受贈者(以下単に「特例受贈者」といいます。)を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していたこと
③ 贈与時において、特例会社の代表権を有していないこと
④ 特例承継計画に記載された個人であること

(今月の税務トピックス②につづく)

《コラム》固定資産税は気を付けて

◆固定資産税は賦課決定
 所得税や法人税は納税者本人が税額を計算し申告して税金を納めます。
 それに対し、固定資産税は役所が不動産を一方的に評価して納税額を決め、それを納税者が納めます。

◆固定資産税にはプロがいない
 お役所のやることだから間違いはないだろうと思いがちですが、結構間違いは多いのです。その原因は対象不動産に対して圧倒的に評価人員が不足しているということです。東京都の場合、都内に土地は約221万筆、家屋は約160万戸あると言われています。これらを全て実地調査することは不可能と言われています。また、都の職員は都税事務所に就職するのではなく東京都に就職し、職場のローテーションで固定資産税の現場に配属されますが、定年まで固定資産税係ということはなく2~3年で別の部署に配属されますので常に素人集団です。こういった傾向はどの自治体も同じです。

◆まずは納税通知書を見直してください
 固定資産税の納税通知書は読みにくいでしょうが、以下のことを確認してください。
(1)土地の所在・家屋の所在、家屋番号
自分のものか確認してください。
(2)登記地目・家屋の種類・用途、構造
現況と異なっていないか?
(3)地積・家屋面積
実際の面積と相違がないか?
ただし、実測をする場合はかなりの費用が掛かります。
(4)価額
住宅用地の場合、評価額と課税標準額は異なります。当然課税標準額の方が小さいはずです(ちなみに住宅用地の場合、住宅1戸につき200㎡までは1/6です)。

◆おや?と思ったら
 自治体の窓口に出向いて課税資料を請求してください。
 土地なら「土地現況調査票」、家屋なら「再建築評点計算書」「基準年別計算書」(自治体により名称が異なる場合があります)が必ずあるはずです。
 明らかにおかしい場合は、「審査申し出」を行ってください。しかし「審査申し出」は原則として3年に1回の基準年度の限られた期間ですので、窓口で「再調査」の依頼をしてみてください、自治体により対応していただける場合もあります。

(前編)2018年度税制改正:生命保険料などの年末調整手続きを電子化へ!

2018年度税制改正において、生命保険料控除、地震保険料控除及び住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除(いわゆる住宅ローン控除)に係る年末調整手続きを電子化することが盛り込まれております。
 現行、住宅ローン控除や生命保険料控除、地震保険料控除を適用するには、年末のローン残高証明書や保険料控除証明書を銀行や生命保険会社等から郵送で受け取り、これら紙の証明書を勤務先に提出する必要があります。
 その際、給与所得者の保険料控除申告書などの関係書類を作成して一緒に提出する必要があり、会社や社員からは、一連の手続きが非常に煩雑であるとの声がありました。

 年末調整手続きの電子化では、生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書、住宅ローン控除申告書、住宅ローン控除証明書、住宅ローンの年末残高証明書の5つの年末調整関係書類の書面による提出に代えて、電磁的方法による提供(電子提供)をすることができるように電子化します。
 この目的は、インターネット上で簡単に手続きができるようにすることで個人や企業の利便性を高め、事務負担の軽減を図ることです。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年8月10日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》交際費課税の特例延長

◆年額800万円までか、全体の50%か
 法人が支出した交際費は原則として損金不算入ですが、平成26年度税制改正から、資本金1億円以下等の中小法人については支出する交際費等のうち年800万円以下は損金として計上するか、接待飲食費の50%相当額を損金計上するかの選択適用ができるようになりました。
 また、中小法人以外の法人でも、接待飲食費の50%相当額を損金計上できるようになりました。
 当初は平成28年までの特例措置となっていましたが、28年度税制改正で30年3月まで、そして今年の30年度税制改正で32年3月31日までに開始する事業年度まで、と適用期限が延長されました。

◆5,000円以下の接待飲食費の扱いに注意
 昔から実務上は5,000円以下の飲食費は会議打ち合わせでの飲食との区分が曖昧でしたが、平成18年度改正より飲食に関する接待費が5,000円以下であれば税務上交際費に含めず、全額を損金計上できる事が明記されました。
 ただしその法人の役員・従業員・親族に対する接待等のために支出するものは、5,000円以下であっても交際費に該当しますので注意が必要です。
 また、帳簿書類への記載は、
①飲食のあった年月日
②参加した得意先等の方の氏名や関係
③参加した人数
④飲食費の額と店の名前・所在地
等を明記する必要があります。
 よく経理担当者から「この領収書のお店、誰と行ったんですか?」と聞かれる社長も多いかもしれませんね。お付き合いの多い場合は「分からなくなるからすぐに領収書に相手の名前を書いておく」という方もいらっしゃいます。

◆交際費課税は景気のバロメーター?
 昭和29年度の税制改正から導入された交際費課税制度ですが、過去には頻繁に改正が行われていました。世相や景気によって左右されがちな交際費課税ですが、ここ最近の特例措置の延長に鑑みると、政府は景気の回復を最優先にしていることが見て取れます。

申告漏れで移転価格税制を適用

 重機大手の企業が、2016年3月期までの4年間で約100億円の申告漏れを東京国税局に指摘されていたことが分かりました。海外のグループ会社との取引を巡り、「移転価格税制」を適用されたことが理由。グループ間での利益移転を防止する同税制は、国際的にネットワークを持つ大企業を主な対象としたものですが、中小企業の海外進出の落とし穴ともなりかねません。

 指摘を受けた会社は、国内で生産した自動車部品をタイの子会社に販売した取引について、販売価格が不当に安すぎるとの指摘を国税から受けました。取引によって国外に移転した利益は約100億円とされ、追徴税額は過少申告加算税などを含めて約43億円とみられます。

 ある会社が、海外の関連会社に自社商品を通常の取引価格よりも低い価格で販売すると、課税所得はその分減少して法人税負担も少なくなります。一方、海外の関連会社からすれば日本の会社から商品を安く仕入れたことで利益が増え、自国での税負担が増えます。結果、本来なら日本の会社の利益となる部分が海外に移転し、税収も海外に持って行かれてしまうことになります。

 こうした課税所得の海外移転を防ぐため、取引価格が一般企業同士における価格に比べて不当に安い、または高いと判断された時には、そこに課税逃れの意図があったかどうかにかかわらず、一般的な価格に計算し直して、移転された利益部分に追徴課税するというルールが1986年に作られました。これが移転価格税制です。

 導入された80年代にイメージしていたのは、世界中に子会社を持つ大企業だったかもしれませんが、経済のグローバル化が進むなかで多くの中小企業が海外に関連会社を設立する時代となっています。同税制には企業規模に応じて適用を免除する除外規定などは設けられていないため、海外に支社を持つ中小企業は注意が必要です。
<情報提供:エヌピー通信社>

滞納発生額、2年連続減

国税庁が発表した、国税を期限どおりに払えない「滞納」の最新状況では、新たに発生した滞納額は2年連続で減少し、残高もピーク時から3分の1にまで減少するなど比較的落ち着いた推移を示しました。しかし過去のデータを見ると、消費増税が行われた直後には必ず滞納が激増していることから、来年10月の10%への引き上げ後にも再び滞納件数が跳ね上がることが予想されます。

 2017年度に新たに発生した国税の滞納額は6155億円で、前年よりわずかに減少しました。17年度末時点での滞納額の残高は8531億円となり、19年連続の減少です。年度末での残高がピークだった1998年の2兆8149億円から7割減ったことになります。新規発生額は毎年減り続けているわけではないので、国税が督促や差し押さえなどを使って、発生を上回るペースで滞納整理を進めている状況が見てとれます。

 これまでの新規滞納発生額の推移を見ると、ピークだった1992年から増減を挟みながら減少を続けてきたなかで、発生額がぐっと増えた2つの山があることが分かります。一度目は98年で、二度目が2015年です。この2年の共通点は、消費税率が引き上げられた時期に当たるということ。一度目は3%から5%に、二度目は5%から8%に引き上げられ、滞納する事業者が一気に増えたことが、発生額の急増につながりました。

 言うまでもなく、来年10月には8%から10%への消費税率の引き上げが予定されています。取引本体の金額が1千万円だとすれば実に100万円の消費税が課されるわけで、消費者としても事業者としても、これまでにない消費税負担が重くのしかかることになります。当然、過去2度の増税時と同じように消費税の滞納も一気に増えるでしょう。全ての中小企業にとって無関係な話ではありません。
<情報提供:エヌピー通信社>

(前編)国税庁:2017年度査察白書を公表!

国税庁は、2017年度査察白書を公表しました。
 それによりますと、査察で摘発した脱税事件は前年度より30件少ない163件、脱税総額は前年度を16.1%下回る約135億円となりました。
 2017年度(2018年3月までの1年間)に、全国の国税局が査察に着手した件数は174件となり、前年度を4件下回りました。

 また、継続事案を含む163件を処理(検察庁への告発の可否を最終的に判断)し、そのうち69.3%にあたる113件(前年度比19件減)を検察庁に告発しました。
 2017年度は、消費税の輸出免税制度を利用した消費税受還付事案(12件告発)や、自己の所得を秘匿し申告を行わない無申告ほ脱事案(21件告発)に積極的に取り組み、過去5年間で最多の告発を行いました。
 近年、査察における大型事案は減少傾向にあり、2017年度の脱税総額135億900万円は、ピークである1988年度(714億円)の約19%にまで減少しております。
 そして、1件あたり平均の脱税額は8,300万円となり、ここ5年は1億円を下回っております。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年8月10日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

小規模宅地特例の適用要件厳格化

アパートの敷地など他人に貸すための土地は、200平方メートルを上限に、相続税を計算するにあたっての評価額を5割まで下げることができる特例の適用が可能です。資産を現金として持っているよりも相続税の負担を大きく減らせるとあって、相続税対策の定番として広く使われています。

 最新の税制改正には、相続前に〝にわか不動産業者〟となって税負担を減らすケースを特例の対象から外す見直しが盛り込まれました。改正内容は、相続開始前の3年以内に「新たに貸付事業の用に供された宅地」は特例を適用できないというものです。

 新しいルールは、3年以内の間に厳密には新たに事業を始めたわけではなくても、適用されることがあります。例えばアパートの借り手がいなくなったため一時的に自分が住み、次の借り手が見つかった時に不動産を貸すと、その時点で「新たに事業を始めた」とみなされてしまうことになります。それが相続開始前の3年以内であれば特例を適用できません。特例の対象とするには、借り手が退去した後に自分が部屋を使うということはせず、次に住む人をすぐに募集するなど、継続して貸付事業を行っている必要があります。

 建物を建て替える時も同様で、建て替え後にオーナーが一度そこで住んでしまうと、部屋の貸し出しを再開した時点から新たに事業をスタートしたとみなされます。3年以内に相続が発生すると、相続税評価額を5割減らすことはできなくなります。

 税制改正では、貸し出し用の土地だけではなく、居住用の土地で小規模宅地特例を利用する際の条件も厳格化されました。節税策と当局の取り締まりは永遠のいたちごっこと言われますが、相続に関してもまだまだ続きそうです。
<情報提供:エヌピー通信社>