(後編)弔慰金でも一定範囲を超えるものは退職手当等として課税対象!

(前編からのつづき)

 したがいまして、従業員の死亡退職に伴い会社から支払われる弔慰金は原則として、社会通念上という国民感情の観点から課税の対象とはならないことになりますが、なかには課税されないことを利用して、過度な節税として使われることもあり得るので、弔慰金として妥当と判断できる一定の金額は課税しないものの、一定範囲を超える部分は過度な弔慰金と判断して課税対象になり、退職手当金等として相続税の課税対象となりますので、ご注意ください。

 なお、上記の「業務上の死亡」とは、被相続人が亡くなった原因が業務中に起こったことであり、業務と関係性が深い原因がある場合には業務上の死亡と判断されます。
 上記の具体例として、業務遂行中に発生した事故などにより亡くなった場合、出張中に発生した事故などで亡くなった場合、仕事が原因とされる職業病などによって亡くなった場合、通勤途中の災害などによって亡くなった場合も業務上の死亡と判断されますので、あわせてご確認ください。

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年7月2日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

 

《コラム》基礎控除引上げ・給与所得控除引下げに伴う各種所得控除の改正

基礎控除・給与所得控除改正に伴って変更
 平成30年税制改正の基礎控除は原則10万円の引上げ、給与所得控除は原則10万円の引下げに伴って、平成32年分所得税からは周辺の所得控除のルールが少しずつ変わっています。内容を見てみましょう。
●配偶者控除・扶養控除・配偶者特別控除
 現行合計所得金額38万円以下の同一生計配偶者・親族は配偶者控除・扶養控除の対象でしたが、改正後は合計所得が48万円以下(給与収入換算では103万円以下で現行と変わらず)となります。
 現行合計所得38万円超123万円以下の配偶者を有する方は、最大38万円の配偶者特別控除となっていましたが、改正後は合計所得が48万円超133万円以下(給与収入換算では現行と変わらず)となります。
●家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例
 現行家内労働者等について、必要経費が65万円に満たないときは、65万円を必要経費にできましたが、改正後はその額が55万円(基礎控除との控除額合計は103万円で変わらず)となります。
●青色申告特別控除(65万円控除)
 現行正規の簿記に従い記帳する等一定要件を満たす青色申告者に65万円の控除となっていますが、控除額が55万円(基礎控除との控除額合計は103万円で変わらず)となります。

◆青色申告特別控除はさらに追加で控除
 列挙したものに関しては結局「今と変わらない結果になる」のですが、青色申告特別控除は従来の適用要件に加えて「e-Taxによる申告(電子申告)」又は「電子帳簿保存」を行うと、引き続き65万円の控除が受けられるようになります。
 「電子申告」は決算申告書・青色申告決算書等のデータを国税庁に送って申告するシステムです。今時の税理士事務所ならば大抵は対応していますし、国税庁の「確定申告書作成コーナー」でも電子申告可能です。「電子帳簿保存」は「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等の承認申請書」を税務署に提出し承認を受ける必要があります。原則、年の途中の申請は認められませんが、平成32年に限っては年の途中の申請でも承認を受けてから12/31までの間を電子帳簿保存していれば65万円控除を受けられるとの事です。

客減っても税は減らず

観光客が著しく減少したことが固定資産税の評価減の理由として認められるかが問われた裁判で、最高裁はこのほど経営者側の上告を棄却し、減額を認めないとする栃木県那須塩原市の主張を認める決定を下しました。一審では観光客の減少は評価減に値するとの判決が出ましたが、二審では市側が逆転勝訴していました。

 訴えを起こしたのは、那須塩原市の温泉旅館経営者。「観光客の減った旅館には、固定資産税の需要減による評価額の減額特例が適用されるべきだ」と主張し、宇都宮地裁に訴えを起こしたものです。

 地方税法では、需要減を理由とした固定資産税の減額特例が定められていますが、これが建物に認められるのは、交通の不便な離島や、騒音問題のある住宅地など特殊な事情のある地域にこれまで限られてきました。地方の人口減少が進むなかで、客足の離れた観光地に固定資産税の評価減が認められるかが全国的に注目された裁判で、宇都宮地裁は訴えを一部認め、15%の評価額減を市に命じました。

 しかし市が控訴したところ、高裁判決では「価値が減少するとは認められない」として、一転して減額を認めず、最高裁もその判断を支持する決定を出しました。君島寛市長は「主張が全面的に認められた」とコメントし、経営者側は「残念だ」と話しています。
<情報提供:エヌピー通信社>

(後編)印紙税の課税文書の可否は実質的に判断!

(前編からのつづき)

 また、売掛金の請求書に「済」や「了」と表示してあり、その「済」や「了」の表示が売掛金を領収したことの当事者間の了解事項であれば、その文書は売上金の受領書(第17号の1文書)に該当します。
 例えば、ホームページの保守契約を結んだ際に、契約書に「月額3万円」と1ヵ月あたりの保守・メンテナンス料のみを記載した場合には、期間の記載がありませんので、合計金額を計算することができません。
 したがいまして、上記の場合は「継続的取引の基本となる契約書」(第7号文書)に該当し、4,000円の印紙税が必要となります。

 しかし、上記契約書の「月額3万円」に「契約期間1年」と書き加えますと、この文書は実質的に合計の契約金額が確定しますので、「請負に関する契約書」(第2号文書)に該当します。
 そして、記載された金額は36万円(3万円×12ヵ月)となりますので、この場合の印紙税は、同区分の「1万円以上100万円以下」の200円となり、3,800円節税できます。

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年6月15日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

「広告税」で税率が異なる広告は?

税務大学校はホームページ上の「税の歴史クイズ」のコーナーに、神奈川県で昭和初期に課税されていた「広告税」についての問いを追加しました。クイズの内容は、課税対象だった広告のうち、他と異なる税率が適用されていたのはアドバルーンによる広告に加え、①港に設置された広告、②東海道本線の車窓から見ることを目的とした広告、③電飾を使って夜間でも見ることができる広告――のいずれであるか、というものです。

 クイズの答えは②。税務大学校によると、東海道本線は新幹線や高速道路がなかった当時の最重要幹線であり、川崎、横浜、小田原などの主要な都市部を網羅していたことから、沿線の広告は多くの人の目に触れたそうです。広告税の年間収入2106円のうち、東海道本線の車窓から見ることを目的にした高校からの収入が1463円と大半を占めていました。

 広告税は大正時代から戦後にかけて課税されていた地方税で、昭和11年の時点では神奈
川の他、宮城、栃木、静岡でも採用されていました。また、昭和17年4月1日~21年9月1日は国税でも課税。国税としての広告税は、看板のほか、新聞広告や広告入りカレンダーも課税対象としていました。
<情報提供:エヌピー通信社>

(後編)2018年分の所得税から適用される主なもの

(前編からのつづき)

 また、2017年度の改正事項のうち、2018年分の所得税から適用される研究開発税制の見直しでは、試験研究の総額に係る税額控除制度について、税額控除割合を見直した上、試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合における税額控除額の上限の特例、中小企業基盤強化税制について、増減試験研究費の割合が5%を超える場合の特例を措置するとともに、試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合における税額控除額の上限の特例などを措置しております。

 さらに、雇用促進税制については一定の金額にそれぞれ特定新規雇用者数を乗じて計算される額の合計額を地方事業所税額控除限度額とすること、所得拡大促進税制については中小事業者の税額控除限度額の見直しとともに、中小事業者以外の個人の平均給与支給額に係る要件及び税額控除限度額の見直しが行われております。
 なお、配偶者特別控除、雇用促進税制、所得拡大促進税制については、いずれも2018年度も改正が行われておりますので、ご注意ください。

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年6月8日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》中小企業の電子申告義務化?

◆いよいよオンライン化法からの脱皮
 現行租税法体系には電子申告の規定がなく、税の申告手続きに於ける電子申告の根拠法令は、行政手続法の特別法としての行政手続オンライン化法であり、実態としては、それからの委任による、国税オンライン化省令、さらには国税庁長官告示になっています。租税法体系の条文が事実上修正・変更されています。
 本年改正法人税法に突然出てきた大企業の電子申告義務化は、電子申告規定を租税法体系の中に組み込み直す第一手と思われます。大企業限定と、扱いが措置法的でありながら、法人税法本法の規定となっていることからして、いずれ大企業限定を外すこと、そして、法人のみならず個人課税の分野にも拡大することが予定されているからとしか思われません。

◆もともと問題あり、疑問ありだった
 もともと、わずか全12条の行政手続オンライン化法による、制限不明な省令への委任での現行電子申告制度が租税法律主義の法体系と矛盾していないか、法治国家の法体系のあり方として不適切ではないか、ということについて、当初から、そして国税内部からも疑問が呈されていました。
 電子申告開始後、概ね10年が経過するところで、この問題の解決に本格的に取り組み始めたのだと、推測されます。

◆サプライズは大企業止まり
 しかし、書面で申告書を提出しても無申告扱いとなる、というサプライズな電子申告義務化規定が、中小企業を含む全法人に、さらには個人の申告に、適用されるとなると、これが租税法律主義の手続的保障原則および行政手続上の国民主権原理に反していないか、との厳格な吟味を求められることになるのは避けられません。
 今のままでは、訴訟が開始されることになり、法律の規定が憲法違反と判決されるのは不可避だからです。

◆あるべき誘導措置の在り方
 電子申告は、行政内部の省力化の為の絶大な切り札であることは確かなので、国民にその方向での協力を求め、その協力には、税制特例の適用の恩恵を与える、という誘導優遇措置は認められるところです。
 青色申告者に与えられていた従来制度上の特典のあり方が参考になります。ペナルティを課すというのは行き過ぎです。

 

所有者不明土地、民間使用可能に

所有者が分からないまま放置されている土地を公共目的で使いやすくするための特別措置法が、参院本会議で可決、成立しました。都道府県知事が最長10年間の「利用権」を設定し、市町村や民間企業などの事業者に対して「所有者不明土地」の使用を認めるというものです。

 何代にもわたって相続登記されずに登記名義人が転居しているなど、所在がわからない土地の合計面積は九州よりも広いといわれています。高齢化の影響もあり、2040年には北海道の9割にあたる約7200ヘクタールに達する可能性もあるといいます。

 特措法では、所有者不明土地を公共事業用地として利用する場合、反対する権利者がいないことを条件に収用手続きを簡素化できるようになります。希望する事業者は、都道府県知事に対して利用権取得を申請。土地の目的に一定の公共性があると認定されれば、土地利用権を取得できます。

 土地使用が認められた事業者は、あらかじめ賃料相当額を補償金として法務局に供託します。所有者が現れたら、利用権が切れた後に使う前の状態に戻さなければなりません。ほかにも、政府は相続登記の義務化や所有権の放棄を可能にするなどの対策も検討しています。
<情報提供:エヌピー通信社>

《コラム》電子申告と法的根拠

◆電子申告と租税法体系
 電子申告の普及が足踏み状態と言われる打開策として、まず大企業の電子申告義務化が法人税法に記されました。
 ところで、法人税法ほか租税法全般を眺めても、この大企業電子申告義務化条文以外に、電子申告についての規定を見つけることは出来ません。
 現在の電子申告の手続きは、租税法体系の中に根拠を持つのではなく、平成14年に行政手続法の特別法として立法された行政手続オンライン化法に拠っているからです。

◆行政手続オンライン化法と省令・告示
 行政手続オンライン化法は、条文数12条の短い法律で、「行政機関への申請、届出は各省令で電子手続化に出来、それを書面提出とみなし、署名押印等は不要」と定めています。他の法令で書面提出を定めていてもそれにかかわらず、と規定しているので、租税法にとっても特別法の地位にあり、特別法優先の原則が働くことになります。
 この法律を承けた財務省電子化省令は、国税の電子申告のための手続きを定めています。全10条で短いです。
 税理士関与での電子申告では、納税者の電子署名は不要で、税理士の電子署名だけでよい、との規定は、この省令にはなく、この省令を承けた国税庁告示に記されています。

◆電子申告と手続的保障原則
 租税法律主義は憲法原則とされ、その内容の一つとして、租税の賦課・徴収は公権力の行使により国民の権利を侵害するものである以上、適正な手続きで行われなければならないとの、手続的保障原則があると解されています。行政手続きの一般原則においても、適正手続きの要請があります。
 納税者の事情を考慮しない手続規定は、例え法律で定めたとしても、憲法の要請するそもそもの租税法律主義の原理的趣旨の一つである国民主権主義に反している、ことになります。

◆電子申告義務化と手続的保障原則
 書面で申告書を提出しても無申告扱いとなる、という今年創設の電子申告義務化規定は、たとえ、大企業限定であろうが、租税法律主義の手続的保障原則および行政手続きの適正化の原理に反している、と思われます。
 訴訟で決着を付けざるを得ないのでしょうが。

都が五輪期間中の宿泊税免除

 東京都は、東京オリンピック・パラリンピックの開催期間を含む2020年7月1日から9月30日までの3カ月間、都内のホテルや旅館の利用者から徴収する宿泊税を免除する方針を明らかにしました。東京都宿泊税条例改正案を都議会定例会に提出する予定です。

 都の宿泊税は、「国際都市東京の魅力を高めるとともに、観光の振興を図る施策に要する費用に充てる」ことを目的とし、02年10月に全国で初めて導入された法定外目的税。ホテルや旅館の宿泊者を対象に、宿泊料金1人1泊が「1万円以上1万5千円未満」で100円、「1万5千円以上」で200円を徴収しています。18年度の税収は25億円を見込んでいます。

 都は招致段階に国際オリンピック委員会(IOC)に対し、各国の代表選手やコーチなどの大会関係者には宿泊税を課さないと約束しています。しかし対象を限定すると、税を徴収する宿泊施設側の事務負担が増大するため、混乱を引き起こす恐れがあることを考慮し、観戦者やボランティア、観光客を含め、一律で課税を見送ることにしました。都主税局では、3カ月間の課税免除で約5億5千万円の減収になると予想しています。
<情報提供:エヌピー通信社>