医療費控除は領収書の添付が不要に

はじめに
 平成29年度税制改正では、平成30年1月1日以後に平成29年分の所得税の確定申告で医療費控除(セルフメディケーション税制による特例は除きます。)の適用を受ける場合には、原則として医療費の領収書の提出が不要とされ、医療費の明細書を提出することとされます。
 また、社会保険診療分の医療費については、医療保険者から交付を受けた医療費通知(いわゆる健康保険組合等が発行する「医療費のお知らせ」など)を添付すれば、医療費の明細の記載も省略することが可能とされます。
 そこで、本稿では、改正された医療費控除を適用する場合における留意点について解説します。

Ⅰ 添付書類等の見直し
 医療費控除の適用を受ける者は、「医療費控除の明細書」及び医療保険者等の「医療費通知」を確定申告書の提出の際に添付しなければならないこととされます(所法120④)。
 この場合において、税務署長は、その適用を受ける者に対し、確定申告期限等から5年間、その明細書等に係る医療費の領収書(「確定申告書の提出の際に、医療保険者から交付を受けた医療費通知を医療費の明細書として添付した場合におけるその医療費通知に係る医療費の領収書」及び「e-taxを使用して確定申告を行った際に、医療保険者から通知を受けた医療費通知情報でその医療保険者の電子署名及びその電子署名に係る電子証明書が付されたものを医療費の明細書として送信した場合におけるその医療費通知情報に係る医療費の領収書」に該当するものを除きます。)の提示又は提出を求めることができます(所法120⑤)。

Ⅱ 医療費の明細書の意義
 「医療費の明細書」とは、所得税の確定申告書に記載された医療費控除を受ける金額の計算の基礎となる控除適用医療費の額等の記載のある明細書とされます(所法120④一)。
 また、控除適用医療費の額等の記載のある明細書(医療保険者等の医療費通知が確定申告書に添付された場合におけるその書類に記載された控除適用医療費の額等に係るものを除きます。)には、次に掲げる事項を記載することとされます(所規47の2⑧)
①医療を受けた者の氏名
②病院・薬局などの支払先の名称又は氏名
③医療費の区分(診療・治療、介護保険サービス、医薬品の購入、その他の医療に区分されたものにチェックマークを記載)
④支払った医療費の額
⑤④のうち生命保険や社会保険などで補填される金額

Ⅲ 医療費通知の添付
 医療保険者等の医療費通知の交付を受けた者は、①各月に交付を受けた「医療保険者等の医療費通知」に記載された自己が負担した社会保険診療分の医療費の合計額と②「医療保険者等の医療費通知に係る医療費以外(いわゆる自由診療分など)」の医療費について医療費控除適用者自らが作成した控除適用医療費の額等の合計額を医療費控除の明細書に併せて記載することとされます。
 ただし、医療保険者等の医療費通知に記載された医療費の額は、実際に支払った金額と異なる場合がありますので、領収書等で確認し、修正する必要があります。

おわりに
 前述したⅠからⅢの改正は、平成30年1月1日以後に平成29年分以後の所得税に係る確定申告書を提出する場合について適用され、同日前に確定申告書を提出した場合又は同日以後に平成28年分以前の所得税に係る確定申告書を提出する場合については、なお従前の例によることとされます(平成29年改正法附則7①)。
 また、経過措置として、平成29年分から平成31年分までの各年分の所得税に係る確定申告に限り、従来どおり、医療費の領収書の添付又は提示による医療費控除の適用も可能とされています。この場合において、その添付又は提示をした領収書に係る医療費については、税務署長の求めの対象外とされます(平成29年改正法附則7②)。
 なお、この経過措置は、一部の医療費についてのみ選択適用することもできますので、社会保険診療分などの医療費については「医療保険者等の医療費通知書」を添付することにより簡素な手続を利用し、それ以外の自費診療分などの医療費については従来どおり医療費に係る領収書を添付することも可能とされます。

国税庁:e-Taxの利用に関するアンケート調査結果を公表

 国税庁は、2017年2月〜5月にかけて国税電子申告・納税システム(e-Tax)ホームページ及び確定申告書等作成コーナーにおいて実施した「e-Taxの利用に関するアンケート調査」結果(有効回答数4万3,674人)を公表しました。

 それによりますと、利用した手続き(複数回答)は、確定申告時の調査からも「所得税申告」が97.1%と最多、次いで「申請・届出手続き」が7.2%、「納税手続き」が4.8%と続きました。
 e-Taxや確定申告書等作成コーナーを利用するきっかけでは、「国税庁のホームページ」が54.1%と最多、次いで「税務署からの案内文等」が15.6%と続きました。

 また、e-Taxを利用しようと思った理由(複数回答)では、「税務署に行く必要がないから」が85.6%と最多、次いで「税務署の閉庁時間でも申告書等の提出(送信)ができるから」が70.4%、「申告書の作成・送信が容易だから」が61.1%と続きました。

 事前手続きについて「スムーズにできた」との回答割合は、「開始届出書の送信(利用者識別番号の取得)」が69.8%、「事前準備(ルート証明書のインストール、信頼済みサイトの登録)」が68.1%、「電子証明書やICカードリーダライタの取得・設定」が64.5%、「電子証明書の初期登録」が63.2%となりました。

 また、2017年1月から、マイナンバーカードでマイナポータルにログインしますと、e-Taxの利用者識別番号や暗証番号を入力せずに、メッセージボックスの情報確認や、納税証明書、源泉所得税、法定調書などに関する手続きが利用できる「マイナポータルのアカウントによるe-Taxへの認証連携」が始まりましたが、その認知度は15.7%となりました。

 さらに、地方税ポータルシステム(eLTAX)を利用しますと、給与・公的年金等の支払をする事業者が別々に提出する必要があった支払報告書と源泉徴収票を一括作成し、必要な提出先にそれぞれ提出できることの認知度は17.1%となりました。
 今後の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成29年12月8日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

来日外国人興行に際しての報酬払は、源泉税の徴収漏れに注意

◆来日外国人が行う講演に必要なビザと税務
 世界中で大人気のヨガですが、最近もホットヨガやピラティス教室などが流行っています。こうした発祥の地が外国のものは、たとえ同じ内容であっても、本場の人(ヨガの場合はインド人)が講師の講座の方が、有難みも価値も増すように感じられることとなります。それに便乗してか、本場の外国人を招いて、1~2か月の間に日本各地を回るツアーも開催されているようです。
 こうした講座の講演者が、日本で働いて報酬を得るためには、興行のビザを取得し、芸能人として税務上扱われて納税することが必要です。もし、観光ビザでやってきて、報酬の支払いに際しても何の手続きもせずに支払ってしまうと様々な問題が発生しますので、要注意です。

◆講演主催者が注意すべき税務問題
 来日外国人のこうした仕事は興行の労働許可証がなければ働けません(=報酬を得られません)し、対価も非居住者(=日本に住んでいない人)に対する報酬の支払いとして、20.42%の源泉所得税を天引きしなければなりません。また、その源泉税は報酬支払者が支払った日の翌月10日までに国(=税務署)に納付しなければなりません。 
 源泉所得税の徴収・納税義務は支払者側にあり、これを忘れると支払者側に源泉所得税未納とその罰金の大きな負担が科されることになります。また、本来であれば源泉漏れは受け取った人から還付してもらうのですが、帰国してしまった外国人からは、通常取戻しができず、二重負担となってしまいます。十分に注意が必要です。

◆“外国”への支払いは常に源泉税に留意
 外国人・外国会社・外国に居住している人にお金を支払うときには、常に、源泉所得税の問題を考えなくてはなりません。
 他に、卑近な例で言うと、賃貸住宅の家主が外国に居住している人(海外に仕事で駐在している日本人が空き家を賃貸している場合を含む)や外国の法人である場合、家賃の送金に際して源泉税が控除漏れとなっているケースが多いようです。
 なお、“外国”芸能人への報酬や家賃の支払いに際しての源泉税は20.42%が所得税法で決まっている料率です。ただし、租税条約で、「政府間で合意された文化交流のための特別の計画に基づき個人により行われる場合には免除」等の規定もありますので、租税条約の確認も必須の作業となります。

住宅リフォーム減税の工事証明書は1種類で可能へ

すでに住宅リフォーム減税に関する工事証明が1種類の証明書で行えるようになっております。
 これまでは、耐震改修と省エネ改修を行い、所得税と固定資産税の両方の特例措置を受けようとする場合には、住宅耐震改修証明書、増改築等工事証明書、固定資産税減額証明書の3種類の証明書が必要でしたが、2017年4月以降は、増改築等工事証明書(又は住宅耐震改修証明書)の1種類の証明書があれば特例に申請が可能になりました。

 これまでのリフォーム減税に係る工事証明書は、減税を受ける税目や、施行した工事内容によって異なる様式が定められており、複数の減税を申請する場合は手続きが煩雑で、3月までは、耐震改修では住宅耐震改修証明書(所得税)・固定資産税減額証明書、省エネ改修では増改築等工事証明書(所得税)・熱損失防止改修工事証明書(固定資産税)、バリアフリー改修及び同居対応改修は増改築等工事証明書の4種類の指定がありました。
 そこで、住宅リフォーム減税制度の利用促進を図るため、増改築等工事証明書・住宅耐震改修証明書の2種類に統一しました。

 耐震改修に係る特例については、建築士等だけでなく地方公共団体の長も工事証明書の発行が可能なため、その際の工事証明書は、増改築等工事証明書ではなく住宅耐震改修証明書となります。
 2017年度税制改正で創設された「長期優良住宅化リフォーム」も増改築等工事証明書での特例申請となります。

 「長期優良住宅化リフォーム」とは、2017年度税制改正で創設され、既存住宅の長期優良住宅化促進のため、耐震・省エネリフォーム減税の特例を拡充し、同特例の適用対象となる工事に特定の省エネ改修工事と併せて行う一定の「耐久性向上改修工事」を加えるとともに、税額控除率2%の対象となる住宅借入金等の範囲に、特定の省エネ改修工事と併せて行う一定の「耐久性向上改修工事」の費用に相当する住宅借入金等を加えたものです。
 なお、耐震改修や省エネ改修、長期優良住宅化リフォームで、所得税と固定資産税の両方の特例措置を受ける申請をする場合には、それぞれの申請に証明書の写しを用いることはできず、同じ証明書を2通発行する必要がありますので、該当されます方は、あわせてご確認ください。

(注意)
 上記の記載内容は、平成29年12月8日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

従業員が「iDeCo」 加入時に行う事業主の手続

◆改正を契機に加入者増加
 平成29年1月から改正確定拠出年金法の施行により個人型確定拠出年金(通称iDeCo)は基本的に20歳以上60歳未満のすべての方が任意で加入できるようになりました。
 この改正により、平成29年に入ってから加入者が大幅に増加しており平成29年6月時点における加入者数は54万9943人と前年比203.8%となっています。

◆iDeCoの仕組み
 iDeCoは、公的年金に上乗せして給付を受ける私的年金の1つであり、加入者の老後の所得確保の一助となる制度です。
 加入者が自ら定めた掛け金を拠出・運用し、原則60歳以降に掛け金とその運用益の合計額を基に給付額が決定し、受ける仕組みです。
 厚労省では、従業員がiDeCoへの加入を希望した場合に速やかに加入できるよう、事業主への協力を呼び掛けています。

◆事業主が行う事務手続きとは
 企業で働く従業員がiDeCoに加入する際、は事業主が行わなければならない事務手続が発生します。その手続は次の通りです。
(1)事業所登録
 加入者となる従業員(会社員等の2号被保険者)を雇用する事業所は国民年金基金連合会(国基連)に事業所登録を行います。
(2)事業主証明書の記入
 加入を希望する従業員から提出される事業主証明書に必要事項を記入します。
(3)事業主証明(年1回)
 年に1回、国基連加入時に得た情報を基に加入者の確認を行いますが、その際に事業主証明が必要となります。
(4)事業主払込の場合の掛金納付
 加入者が給与天引きで事業主払込を希望した場合は源泉徴収の際に掛け金を控除します。そして事業主から国基連に納付します。
(5)年末調整
 所得控除がある為、加入者が個人払込を選択した場合は年末調整が必要です。本人から小規模企業共済等掛金払込証明書を提出してもらいます。
 このように従業員が個人型確定拠出年金に加入した場合でも会社として行う事務が発生します。申し出があった時は協力をしてあげる事が必要でしょう。

「外れ馬券は経費」という判決

◆「外れ馬券は経費」:自動購入ソフトを使っていないケースでも12/15最高裁確定へ
 「『自動購入ソフトを使わない外れ馬券の経費性を巡る問題、札幌国税局vs北海道在住の男性』の判決期日を最高裁裁判長が12月15日に指定したにもかかわらず、『結論を変更するのに必要な弁論が開かれていないため』、約1億9千万円の追徴課税処分を取り消した2審東京高裁判決が確定する見通しとなった」という報道がありました。
 自動購入ソフトを使ってネットで大量の馬券を購入していた大阪の男性の裁判において、馬券購入は「営利目的の継続的行為」で、払戻金は雑所得にあたるとして平成27年3月最高裁が認定し、外れ馬券分を経費と認める判断を示していた判決に続く話です。

◆争点は「経済的活動の実態があるか否か」
 今回のケースでは、「ソフトを使わずにレースごとに結果を予想して馬券を購入」しており、それが「経済的活動の実態があるか否か」というのが争点でした。1審(東京地裁)では納税者の負けでした。
 しかしながら、2審(東京高裁)では、「男性は多額の利益を恒常的に上げていた」と判断し、最高裁のケースと「購入方法に本質的な違いはない」とし、外れ馬券分を経費と認めて課税処分を取り消し、納税者の勝ちとなっていました。
 「外れ馬券が経費かどうか」は、「継続的・恒常的に利益を上げるために購入を行っていたかどうか=営利を目的として継続的に行われているかどうか」にあるようです。

◆あなたの外れ馬券は、原則、経費ではない!
 たまの息抜きや射幸心のために競馬を楽しむ人の場合は、外れ馬券は経費となりません。万馬券を当てたようなとき(=年間を通して一時所得の特別控除である50万円を超える当たりだった場合)は、そのレースの外れ券だけが経費です。すなわち、他のレースの外れ券を万馬券の当たりから差し引くことはできません。
 競馬の当たりも、儲けとして、確定申告して税金を納めなければなりませんので、忘れないようにしましょう。無申告だと罰金が科される恐れもありますから、くれぐれも忘れずに!

個人が固定資産等の取得に伴い支出する租税公課の取扱い

はじめに
 法人税では、固定資産等を購入した際に支出する登録免許税、不動産取得税及び自動車取得税等の租税公課は、損金算入の選択が企業経理に委ねられています(法基通7-3-3の2)。しかし、所得税では、個人の帳簿への記帳等が不十分であることから、これら租税公課の取扱いが業務用資産と非業務用資産で異なります。
 そこで、本稿は、個人が固定資産等の取得に伴い支出する租税公課の取扱いについて解説します。

Ⅰ 業務用資産の場合
 個人事業者が支出した業務の用に供される資産に係る固定資産税、登録免許税(登録に要する費用を含み、その資産の取得価額に算入されるものを除きます。)、不動産取得税、地価税、特別土地保有税、事業所税、自動車取得税等の租税公課は、その業務に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されます(所基通37-5)。
 なお、「業務の用に供される資産」には、贈与、相続又は遺贈(以下「贈与等」といいます。)により取得した資産を含むものとされます。

Ⅱ 非業務用資産の場合
 個人が支出した業務の用に供される資産以外の資産に係る登録免許税(登録に要する費用を含みます。)、不動産取得税等固定資産の取得に伴い納付することとなる租税公課は、その固定資産の取得費に算入されます(所基通38-9)。

Ⅲ 減価償却資産の場合
 個人が支出した減価償却資産に係る登録免許税(登録に要する費用を含みます。)をその資産の取得価額に算入するか否かについては、次のとおりとされます(所基通49-3)。
 なお、減価償却資産には、贈与等により取得した減価償却資産を含むものとされます。
① 特許権、鉱業権のように登録により権利が発生する資産に係るものは、取得価額に算入されます。
② 船舶、航空機、自動車のように業務の用に供するについて登録を要する資産に係るものは、取得価額に算入しないことができます。
③ 上記①及び②以外の資産に係るものは、取得価額に算入されません。

Ⅳ 贈与等の際に支出した費用
 「贈与等により取得した資産の取得費等(所法60①一)」に規定する贈与等により譲渡所得の基因となる資産を取得した場合において、その贈与等に係る受贈者等がその資産を取得するために通常必要と認められる費用を支出しているときは、その費用のうちその資産に対応する金額については、前述したⅠ及びⅢの規定により各種所得の金額の計算上必要経費に算入された登録免許税、不動産取得税等を除き、その資産の取得費に算入することができます(所基通60-2)。

おわりに
 個人が贈与、相続(限定承認に係るものを除きます。)又は遺贈(包括遺贈のうち限定承認に係るものを除きます。)によって取得した減価償却資産の取得価額については、その減価償却資産を取得した者が引き続き所有していたものとみなして計算することとされますので、減価償却費の計算の基礎となる取得価額及び取得時期は、贈与者又は被相続人の取得価額及び取得時期を引き継ぐこととされます(所法60①一,所令126②)。
 この場合における減価償却の方法の選定に関しては、取得価額を計算する場合の「減価償却資産を取得した者が引き続き所有していたものとみなす」旨の規定は働きませんので留意して下さい(所令120の2①一,所基通49-1)。例えば、250%定率法を適用していた減価償却資産を平成24年4月1日以後に贈与を受けた場合には、贈与者が250%定率法による減価償却の方法を適用していても、受贈者において償却の方法を選定していなかった場合には、定額法(個人の法定償却方法)によることとされます。

平成29年分年末調整の留意点

 年末調整の時期となりました。この年末調整は、毎月の給料や賞与から源泉徴収をした税額と、その年の給与の総額について納めなければならない税額とを比べ、その過不足額を精算する手続です。この手続により、大部分の給与所得者は、改めて確定申告をする必要はなくなります。

◆給与所得控除額の改正
 今年の改正は、給与所得控除額の改正のみで、その内容は、給与収入1,000万円超の場合の給与所得控除額は220万円が上限とされたことです。
 この改正に伴い、年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表も改正されています。

◆平成30年分の扶養控除等(異動)申告書(以下、同申告書)
 ところで、同申告書の提出は、年の最初の給与等の支払いを受ける日の前日までに給与等の支払者に提出することになっていますが、実務においては、前年の年末調整の際に同申告書を受理することも多々あります。
 この同申告書ですが、平成30年分から配偶者控除及び配偶者特別控除の控除額の改正に伴って、同申告書の記載欄に、源泉控除対象配偶者、同一生計配偶者の欄が加わり、平成30年1月以降の給料等の支払いの際には、配偶者が源泉控除対象配偶者、また、同一生計配偶者が障害者に該当する場合には、それぞれ扶養親族の数に一人を加えて源泉徴収することになりました。
 そこで、源泉控除対象配偶者、同一生計配偶者の該当者の要件について留意が必要となります。前者は居住者の合計所得金額が900万円以下で生計を一にする配偶者の合計所得金額が85万円以下の人、後者は居住者の合計所得金額には制限がありませんが、生計を一にする配偶者の合計所得金額が38万円以下の人です。いずれも青色事業専従者等は除かれます。
 なお、これら合計所得金額ですが、同申告書を提出する日の現況により判断することとなります。
 年末調整の際に提出を受ける同申告書の記載欄を今一度確認しておきましょう。

個人型確定拠出年金(個人型DC)の加入範囲拡大

概要

 個人型DCの加入範囲が拡大され、これまでの加入対象者に加えて、企業年金加入者・公務員等共済加入者・私学共済加入者・第3号被保険者(専業主婦等)についても、基本的に個人型DCへ加入することができるようになります。

個人型確定拠出年金とは

個人型確定拠出年金は、加入者本人が拠出した掛金を加入者が自ら運用を行い、その運用の結果に基づいて給付を受ける制度です。個人型確定拠出年金の特徴は下記のとおりです。

・毎月の掛金は加入者が拠出します。

・運用商品の選択は、加入者自らの判断のもとに行います。

・加入者自身の残高と運用状況は、いつでもご確認できます。

・将来の受取額は、運用実績により個人ごとに異なります。

・税制優遇措置があります。

・60歳以降に年金または一時金で受け取れます。

・職業がかわった時に年金資産を持っていくことができます。

適用時期

 平成29年1月1日施行

 

 

被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

概要

 相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等を、平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができます。被相続人居住用家屋とは、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋で、次の3つの要件全てに当てはまるもの(主として被相続人の居住の用に供されていた一の建築物に限ります。)をいいます。

  • 昭和56年5月31日以前に建築されたこと。
  • 区分所有建物登記がされている建物でないこと。
  • 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。

 被相続人居住用家屋の敷地等とは、相続の開始の直前において被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地又はその土地の上に存する権利をいいます。
 なお、相続の開始の直前においてその土地が用途上不可分の関係にある2以上の建築物(母屋と離れなど)のある一団の土地であった場合には、その土地のうち、その土地の面積にその2以上の建築物の床面積の合計のうちに一の建築物である被相続人居住用家屋(母屋)の床面積の占める割合を乗じて計算した面積に係る土地の部分に限ります。

適用要件

(1) 売った人が、相続又は遺贈により被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等を取得したこと。

(2) 次のイ又はロの売却をしたこと。

イ 相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売ること。

(注)被相続人居住用家屋は次の2つの要件に、被相続人居住用家屋の敷地等は次の(イ)の要件に当てはまることが必要です。

(イ) 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。

(ロ) 譲渡の時において一定の耐震基準を満たすものであること。

ロ 相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋の全部の取壊し等をした後に被相続人居住用家屋の敷地等を売ること。

(注)被相続人居住用家屋は次の(イ)の要件に、被相続人居住用家屋の敷地等は次の(ロ)及び(ハ)の要件に当てはまることが必要です。

(イ) 相続の時から取壊し等の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。

(ロ) 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。

(ハ) 取壊し等の時から譲渡の時まで建物又は構築物の敷地の用に供されていたことがないこと。

(3) 相続の開始があった日から3年目の年の12月31日までに売ること。

(4) 売却代金が1億円以下であること。
 この特例の適用を受ける被相続人居住用家屋と一体として利用していた部分を別途分割して売却している場合や他の相続人が売却している場合における1億円以下であるかどうかの判定は、相続の時からこの特例の適用を受けて被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等を売却した日から3年目の年の12月31日までの間に分割して売却した部分や他の相続人が売却した部分も含めた売却代金により行います。
 このため、相続の時から被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等を売却した年までの売却代金の合計額が1億円以下であることから、この特例の適用を受けていた場合で、被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等を売却した日から3年目の年の12月31日までにこの特例の適用を受けた被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等の残りの部分を自分や他の相続人が売却して売却代金の合計額が1億円を超えた場合には、その売却の日から4ヶ月以内に修正申告書の提出と納税が必要となります。

(5) 売った家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。

(6) 同一の被相続人から相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等について、この特例の適用を受けていないこと。

(7) 親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと。
 特別の関係には、このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。

手続

この特例の適用を受けるためには、次に掲げる場合の区分に応じて、それぞれ次に掲げる書類を添えて確定申告をすることが必要です。

(1) 相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売った場合

イ 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)〔土地・建物用〕

ロ 売った資産の登記事項証明書等で次の3つの事項を明らかにするもの

(イ) 売った人が被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等を被相続人から相続又は遺贈により取得したこと。

(ロ) 被相続人居住用家屋が昭和56年5月31日以前に建築されたこと。

(ハ) 被相続人居住用家屋が区分所有建物登記がされている建物でないこと。

ハ 売った資産の所在地を管轄する市区町村長から交付を受けた「被相続人居住用家屋等確認書」

(注)ここでいう「被相続人居住用家屋等確認書」とは、市区町村長の次の2つの事項を確認した旨を記載した書類をいいます。

(イ) 相続の開始の直前において、被相続人が被相続人居住用家屋を居住の用に供しており、かつ、被相続人居住用家屋に被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。

(ロ) 被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等が相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。

ニ 耐震基準適合証明書又は建設住宅性能評価書の写し

ホ 売買契約書の写しなどで売却代金が1億円以下であることを明らかにするもの

(2) 相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋の全部の取壊し等をした後に被相続人居住用家屋の敷地等を売った場合

イ 上記(1)のイ、ロ及びホに掲げる書類

ロ 売った資産の所在地を管轄する市区町村長から交付を受けた「被相続人居住用家屋等確認書」

(注)ここでいう「被相続人居住用家屋等確認書」とは、市区町村長の次の3つの事項を確認した旨を記載した書類をいいます。

(イ) 相続の開始の直前において、被相続人が被相続人居住用家屋を居住の用に供しており、かつ、被相続人居住用家屋に被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。

(ロ) 被相続人居住用家屋が相続の時から取壊し等の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。

(ハ)被相続人居住用家屋の敷地等が次の2つの要件を満たすこと。

A 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。

B 取壊し等の時から譲渡の時まで建物又は構築物の敷地の用に供されていたことがないこと。

 

江戸川区南小岩6-6-8

鈴木税務会計事務所