《コラム》労務関係文書の保存期間

◆企業活動を行う際に作成される文書
 企業で作成される文書は企業にとって重要な情報が多く含まれています。その作成、保存、廃棄に至るまでは適切に管理する事が重要です。特に顧客情報や人事・労務関係の個人情報に関連した文書の管理、保存、廃棄については個人情報保護法の趣旨をもふまえた細心の注意を払う事が必要です。
 労働基準法第109条では労務に関連して作成される書類の保存期限が取り上げられています。労働者名簿、賃金台帳及び雇い入れに関する書類、解雇に関する書類、災害補償や賃金その他の労働関係に関する重要な書類は3年間保存する事が義務づけられています。出勤簿やタイムカード等は労働に関する主要な書類に該当するので3年間保存となります。
 この3年間とは起算日も定められていて労働者名簿であれば労働者の死亡、退職、又は解雇の日、出勤簿やタイムカードは完結した日から起算する事になっています。

◆電子データの取り扱い
 企業活動において社内文書を保管スペースや用紙のコスト削減等で、可能な限り書面でなく電子データで保存する事が多くなってきています。労働者名簿や賃金台帳も書面でなく電子データで保存する事も多くなっていると思います。これらの書類も電子データで保存する事は認められていますし、保存期間も書面と同じとされています。但し、取り扱いは一定の条件があり、労働基準法にかかる行政通達により示されています。それによると故意や過失による消去、書き換え、及び混同ができないようにする事や保存義務のある内容の画像情報を記録した日付、時刻等の情報も同一の電子媒体に記録されこれらを参照できるようにしておく必要があります。

◆電子データ保存上の留意
 電子画像情報は正確に記録し、かつ法定保存期間にわたって保存できるようにしておきます。そして書面の提出が必要な際には必要な事項が明らかになり、取り出せるようになっている事が必要です。
 電子データで保存する場合にはデータの不正な消去、改ざんが行われないようなセキュリティー対策を講じておく事は大事でしょう。

保険の契約者変更時の調書義務化

今年から、生命保険の契約者変更があった時に、変更内容やその時点での解約返戻金相当額を記載した調書の提出が保険会社に義務付けられるようになっています。今般の見直しによって課税当局による契約情報の把握がより徹底されることなる点を把握しておきたいところです。

 従来は調書の提出は「保険金の支払いが生じた時」のみの義務でしたが、今年1月からは名義変更をするだけでも調書の提出が必要となりました。また変更時点での解約返戻金相当額の記載も義務化されています。さらに契約者の死亡によらない契約変更についても、これまでは「払い込んだ保険料の総額」だけを記載すればよかったところを、「変更後の契約者が払い込んだ保険料の総額」も記載するよう義務付けられました。

 税務上、契約者の死亡によって保険が相続人などに引き継がれると、その時点での解約返戻金相当額が相続財産となり申告義務が発生します。また通常の契約者変更では、前の契約者が負担した払込保険料に相当する受取保険金部分が贈与税の対象となります。しかし従来の制度では、契約者変更だけでは法定調書が提出されないため、課税当局が名義変更の事実を十分に把握できていませんでした。そのため、契約引き継ぎによって得た相続財産を申告していなかったり、保険金を受け取る際に前の契約者が支払った保険料まで「自分の払込保険料」として経費に含めたりするケースが起きていました。見直しにより、名義変更時と保険金支払時の2段階での情報把握を徹底することで、納税者への監視を一層強めることになります。
<情報提供:エヌピー通信社>

「民泊」8割超が禁止

マンション管理業協会は2月27日、会員企業が業務を委託しているマンションの約8割で、一般の住宅に旅行者を有料で宿泊させる「民泊」を禁止したとの調査結果を発表しました。
 同協会には、全国の分譲マンションの約9割超の管理を担っている管理会社365社が加盟しています。

 調査では、2月4日時点で管理業務を請け負っているマンション管理組合の9割超にあたる8万7352組合から回答を得たところ、管理規約の改正や総会・理事会での決議で民泊を禁止した管理組合が80.5%に達したことが分かりました。この中で禁止するとした管理組合のうち、管理規約の改正で対応する組合が全体の44.6%で、総会や理事会による決議で禁止とした組合が35.9%でした。一方で、容認したマンションは0.3%にとどまり、対応を決めていないマンションは19.1%でした。

 住宅宿泊事業法(民泊法)が昨年6月15日に施行され、民泊を営みたい人の都道府県などへの届け出が3月15日から始まっています。管理規約や総会・理事会で民泊を禁止すれば届け出はできなくなります。なお、分譲マンションは全国に633万5千戸あると言われています。
<情報提供:エヌピー通信社>

今月の税務トピックス②

(今月の税務トピックス①よりつづく)

Ⅲ 用語の意義(新措法42の12の5③)
1 雇用者給与等支給額
 法人の各事業年度(以下「適用年度」といいます。)の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額(その給与等に充てるため他の者から支給を受ける金額がある場合には、その金額を控除した金額)とされます。
2 比較雇用者給与等支給額
 適用年度開始の日の前日を含む事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額とされます。
3 雇用者給与等支給増加額
 雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額とされます。
4 継続雇用者
 当期及び前期の全期間の各月において給与等の支給がある雇用者で一定のものとされます。
5 賃上げ率
 継続雇用者給与等支給額から継続雇用者比較給与等支給額を控除した金額の継続雇用者比較給与等支給額に対する割合とされます。
6 教育訓練費の額
 国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を習得させ又は向上させるための費用で、その法人が教育訓練等(教育、訓練、研修、講習その他これらに類するものとされます。)を自ら行う場合の外部講師謝金・外部施設等使用料等の費用、他の者に委託する場合の委託費及び他の者が行う教育訓練等に参加する場合の参加費等とされます。
7 中小企業比較教育訓練費の額
 前期の教育訓練費の額とされます。

Ⅳ 適用関係(平成30年改正法附則86)
 前述したⅠ及びⅡの改正は、法人の平成30年4月1日以後に開始する事業年度の所得に対する法人税について適用され、同日前に開始した事業年度の所得に対する法人税については、なお従前の例によります。

おわりに
 平成30年度税制改正では、基準年度(平成24年度)との比較が撤廃され、雇用者給与等支給増加額の計算が前事業年度との比較とされます。
 また、賃上げ率の計算も一人当たりの「平均給与」から継続雇用者の「給与の総額」をベースとしたものとされますので、従来よりその計算が少し楽になるでしょうね。

 

《コラム》70歳以上まで働ける企業割合は2割超

◆「高年齢者の雇用状況」の集計結果
 厚労省は高年齢者を65歳まで雇用する為の高年齢雇用確保措置の実施状況をまとめた平成29年「高年齢者の雇用状況」の集計結果を公表しています。それによると、昨年の6月1日現在、従業員31人以上の企業156,113社のうち雇用確保措置を実施済みの企業は99.7%(155,638社)で、70歳以上まで働ける企業は22.6%(35,276社)でした。
 雇用確保措置とは高年齢者雇用安定法で60歳以上の高年齢者の雇用確保義務が定められたものです。
・65歳まで定年の引き上げ
・希望者全員を対象の継続雇用制度導入
・定年制の廃止
 上記のいずれかの措置を行わなければなりません。

◆雇用確保措置の内訳と実施状況
 前述しましたが雇用確保措置の実施企業は99.7%です。そのうち「継続雇用制度の導入」により雇用確保措置を講じている企業は80.3%、「定年の引き上げ」は17.1%、定年制の廃止は2.6%となっています。継続雇用制度を講じている企業のうち希望者全員を対象としている65歳以上の継続雇用制度導入企業は70.0%、対象者を限定する基準がある継続雇用制度導入企業は30.0%です。継続雇用先が自社のみである企業は94.1%となっています。

◆希望者全員65歳以上まで働ける企業状況
 希望者全員が65歳以上まで働ける企業は75.6%で、大企業では55.4%ですが中小企業では78.0%です。また、66歳以上となると大企業では2.2%、中小企業では6.1%です。
 一方で70歳以上まで働ける企業割合は22.6%で、前年比1.4ポイント上昇です。大企業では15.4%、中小企業では23.4%となっています。特に中小企業では前年比1.3ポイントも上昇しています。
 年金受給年齢が上がる中、雇用確保措置とは言え元気で働く気のある高年齢者が増えれば、企業側も経験、意欲、能力、体力等に応じた配置や処遇を推進していくことが大事でしょう。

《コラム》出張族のクレジットカードからのポイント取得

◆クレジットカード経費精算でポイント蓄積
 業務上の出張では、立替払いで新幹線切符を購入しホテルの宿泊費も払い、ひと月に一度、前月分の経費精算をするというパターンの会社が多いのではないでしょうか。
 個人の経費立替時にクレジットカードで支払えば、カードの引落時期が通常1~2か月後であることから、会社の経費精算でお金が返還されるタイミングと合うため、個人の資金繰りに影響しないので便利です。
 また、クレジットカードの利用で、平均0.5~1%程度のクレジットカードポイント(以下、クレジットポイントと略します)がカード会社から付与されます。ポイントは商品やギフト券、電子マネーや航空マイレージ等に交換することができ、ちょっとした出張の余禄といえます。

◆ポイント付与はカード会社の囲い込み戦略
 最近は、「公共料金の支払いを新規で当社のカードに切り替えると〇〇ポイント贈呈!」といったクレジットカード会社の広告を多く目にします。
 クレジット会社の収益の源は、クレジットカードを代金回収に使っている会社から受け取る手数料です。どこのカード会社のカードで決済するかは、支払う人の選択に委ねられますので、カード会社は魅力的なポイントを提示して利用者の囲い込みを図ります。クレジットポイントは、自社のカードで決済(=収益増進に貢献)してくれたことに対する会社から個人へのお礼です。

◆クレジットポイントにかかる課税問題
 ポイント取得は、カード会社からのプレゼントですので、会社から個人への贈与となります。課税時期はポイントを商品や現金等に交換した時で、一時所得とされます。
 一時所得は、50万円の特別控除があります。さらに総所得金額に合算時には1/2にされます。サラリーマンで給与を1か所からだけもらっている場合(=大半の方がこれに該当するはずです)で、給与所得及び退職所得以外の所得金額が20万円以下である人等、一定の場合には確定申告をしなくてもよいことになっています。
 そのため、クレジットポイントが90万円相当以内(私的利用分も含みます)であれば、他の所得がなければ、確定申告しなくとも構わないということになります。
 これを超えるくらい出張が多くてポイントが貯まってしまった方は、確定申告が必要です。

 

ハズレ馬券の通達、再び改正へ

国税庁は2月15日、「競馬の馬券の払戻金に係る課税について」とする文書を発表し、競馬や競輪の課税関係についての実務上の取り扱いを定めた所得税基本通達を改正する方針を明らかにしました。馬券の払戻金が一時所得にあたるか雑所得にあたるかが争われた裁判の結果を受けた改正で、これまでの取り扱いと異なり、独自の予想ソフトを使用していなくても馬券の払戻金が雑所得になるケースについて規定されます。

 この裁判で被告となった男性は、自動購入ソフトなどは使わず、レースごとに結果を予想して多額の利益を得ていました。競馬の馬券の払戻金による収入は、原則的には偶発的な収入として「一時所得」と見なされ、収入に直接要した金額のみが経費と認められるため、収入に直接結び付いていないハズレ馬券の購入費用は経費にあたりません。しかし継続的、網羅的に馬券が購入されていると認められれば「雑所得」として、ハズレ馬券も経費に当たるとされています。最高裁では男性が得た払戻金を雑所得と認めました。

 ハズレ馬券の経費を巡る税務に転機が訪れたのは、2015年の最高裁判決です。大阪府の男性が自作の競馬予想ソフトを利用して3年間で得た配当金について、「偶発性に左右される一般の馬券購入と異なりソフトを使用して継続的に馬券を購入することによって個別のレースの当たり外れの偶然性を抑えている」として、最高裁は払戻金を雑所得と認定しました。この判決を受けて、これまで一律に一時所得としていた払戻金の取り扱いに関する通達を改正。通常は従来どおり一時所得として扱う原則は維持した上で、「馬券を自動的に購入するソフトウエアを使用して(中略)個々の馬券の的中に着目しない網羅的な購入をして(中略)経済活動の実態を有することが客観的に明らか」である時に限って雑所得と認めると明示しました。しかし今回の裁判で、ソフトを使っていなくても払戻金が雑所得に当たる可能性が示されたことで、国税庁は再度の通達改正を余儀なくされたわけです。
<情報提供:エヌピー通信社>

ROE一辺倒でいいのか その2

 ただ、レバレッジ経営を継続するには前提があります。それは資金調達がいつでも簡単にできるということです。安全性を犠牲にして余裕資金を削っているのですから、資金が必要なときには、金融機関から容易に借入できる環境でなければなりません。現在は、そういう環境にあるといえます。

 しかし、金融環境が変われば、話は変わります。かつてのリーマンショックの時には、資金調達が困難な状況が出現しました。あの天下のGMでさえ資金不足から経営不安に陥ったほどでしたから。

 いくら収益性が高くても、会社がつぶれては元も子もありません。会社あっての収益性です。そうしたときには自己資本比率がクローズアップされます。好況時にはROE向上の足枷として非難された豊富なキャッシュは、景気が悪くなると不時の洪水に備える有効な防波堤としてもてはやされるようになります。時代はいつも一定ではないのです。あるいは時代は変わらなくても、会社自体が経営危機に陥る時があります。そうなると、誰もROEなど見向きもせず、自己資本比率ばかりに焦点が当たるようになります。

 ROEを高めるために分子の利益を増加させることは、いつの時代でも変わらぬ真理です。ただ、自己資本比率が非常に高く、多少の環境変化にはビクともしない会社は別ですが、そこまではいかない会社は安易な分母削減策には慎重であるべきでしょう。

 企業経営において大切なのはバランスです。好況な時にも、苦難の時代が来ることも予想して備えておくことが必要だと思います。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)

ROE一辺倒でいいのか その1

最近、上場企業の財務指標としてROE(自己資本利益率)がとても注目されています。ROEは当期純利益を自己資本で割って算出し、株主から預かった資本の効率性を表現する指標ですから、株主が注目するのは当然です。しかし、ROEだけに執着するのは少し危険なように感じます。というのは、現状の雰囲気からするとROE重視は永遠に続くと思われるかもしれませんが、注目される財務指標は時代によって変わるからです。

 もう一つ注目される財務指標は会社の安定性を判断する自己資本比率です。自己資本比率は自己資本を総資産で割って算出します。ROEと自己資本比率では自己資本の位置づけが正反対になります。自己資本がROEでは分母に、自己資本比率では分子に出てくるからです。したがって、ROEでは自己資本が少ないことがよく、自己資本比率では多いことが望ましいことになります。

 ROEを高くするためには、分子である当期純利益を増やすことが王道ですが、利益を増やすことは簡単ではありません。そこで、ROE向上を第一義に追求すると、分母である自己資本削減策が浮上し、配当金の増額や自己株式の買い取りなどの株主還元が盛んになります。

 余裕資金が豊富にあれば、手持ちのキャッシュで自己株式を買い取り、自己資本を圧縮することができます。余裕資金がなければ、借入金を借り入れて、自己株式を買い取ることも選択肢になります。借入金を増やし、自己資本を減らしROEを引き上げるのです。これがレバレッジ経営です。レバレッジ経営は自己資本を小さくするのですから、自己資本比率は低下します。(つづく)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)

法務省:テロ等準備罪処罰法についてホームページで公表!

すでにテロ等準備罪処罰法が施行されております。
 法務省では、一般の会社が法人税を脱税することを計画し、脱税するための帳簿を作成した場合、その会社が正当な事業を行っている会社ならば、『重大な犯罪等を実行することを目的として集まっていること』との要件を満たさず、テロ等準備罪では処罰されないことを同省ホームページで公表しております。

 テロ等準備罪の処罰の対象となる犯罪行為は277つあり、テロとは関係のなさそうなものも処罰の対象となるといわれております。
 税法関係では、地方税法(軽油等の不正製造、軽油引取税に係る脱税)、所得税法(偽りにより所得税を免れる行為等、所得税の不納付)、法人税法(偽りにより法人税を免れる行為等)、消費税法(偽りにより消費税を免れる行為等)による罪が、法律の別表で規定されております。
 テロ等準備罪が適用される要件は、「組織的な犯罪集団」の関与、重大な犯罪を2人以上で「計画」、計画した犯罪の「実行準備行為」の3つあり、これらの要件の1つでも欠けていれば、テロ等準備罪は成立しないとしております。

「組織的な犯罪集団の関与」では、多数人の継続的な集団、犯罪実行部隊のような組織を有し、重大な犯罪等の実行を目的に集合の全て、「重大な犯罪を2人以上で計画」では、団体の活動として一定の犯罪を実行、具体的かつ現実的合意をすることの全て、また、「計画した犯罪の実行準備行為」では、計画とは別の行為、計画に基づく行為、計画を前進させる行為の全ての要件を満たさなければ、テロ等準備罪の捜査の対象とはならないとしております。

 テロ等準備罪処罰法は、犯罪の主体を組織的犯罪集団に限定することを明文で規定しており、一般の会社や市民団体などの正当な活動を行っている団体は適用対象とはならないとしております。
 また、対象犯罪も限定的に列挙して範囲を明確にしており、上記の所得税法や法人税法、消費税法等における違法行為も、あくまで組織的犯罪集団が関与する犯罪計画や実行準備行為の「資金源」となる場合にのみ処罰対象となるとみられております。
 今後の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年1月12日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。