【時事解説】追い込まれてする減損と余裕の減損 その2

否定的なニュアンスの場合は損益計算書の費用処理が、肯定的なニュアンスの場合は貸借対照表の資産価格の切り下げがクローズアップされているというわけです。その受け取り方の違いは、減損を実施する会社の体力差から生じます。肯定的ニュアンス会社の場合はある事業で減損損失が出ても、他の好調な事業の利益でカバーして、黒字を維持でき、自己資本のマイナスを生じさせないのに対し、否定的なニュアンスの場合の会社は、減損処理により、自己資本を使い果たし、限界まで追い込まれてしまいます。

 キャッシュアウトを伴わない、見積もりと判断に依存する減損のような会計処理には、実施時期と実施金額にある程度の幅が存在することは否めません。それを決めるのは経営者です(会計監査人はその合理性を検証します)。

 追い込まれてする減損処理はさらに会社を弱らせるのに対し、余裕のあるうちの減損処理は将来の展望を開くものと理解されます。否定的ニュアンスで報じられる会社の場合でも、財務体力に余裕のあるもっと早期に減損を行う機会はあったかと思います。しかし、経営陣が経営悪化の表面化を恐れズルズルと引き延ばすと、追い込まれて減損をせざるをえなくなります。資産の費用処理は、許容される範囲で、できるだけ早く余裕のあるうちにしておいたほうが経営に与える打撃は少なくてすみます。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

 

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