そこで、過去の実績としての財務指標よりも、企業の将来性を判断する事業性評価に重点をおくべきだ、といった議論が沸き起こっています。財務指標でいえば、過去の実績ではなく、将来のキャッシュフローを重視すべきだという主張です。将来キャッシュフローは将来損益計算書が描けなければ構築できませんから、銀行員に求められる能力は過去の貸借対照表の分析ではなく、将来の損益計算書の予想であるということができます。

 しかし、こうした融資姿勢の転換は口で言うほど簡単ではありません。なぜなら、融資の根幹に関わる哲学が違うからです。自己資本比率を重視する融資姿勢は確実性を重視し、危険が少ないローリスク・ローリターンを目指すものです。一方、将来キャッシュフローを重視する融資姿勢のポイントは将来の事業性ですから、100発100中というわけにはいきません。多少の失敗には目をつぶり、大化けする企業を見出すハイリスク・ハイリターンの世界に入ることになります。

 野球で言えば、ヒットで出たランナーを送りバントとスクイズで確実に1点を取るスタイルを狙うのか、あるいは、最初から大振りして、場合によっては三振もするかもしれないがあくまでホームランを狙うのかです。つまり、アベレージヒッターかホームランバッターかの違いです。

 銀行は長い間アベレージヒッターであることをよしとし、そういう人間を育ててこようとしてきました。また、銀行に入ろうとする人間もどちらかといえば、アベレージヒッターを目指そうという人間が多いはずです。そんなことを考えるとホームランバッターへの転換は容易ではないと思います。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)