【時事解説】シェアリングサービスでもベースは信頼感 その2

振り返ると、所有物の貸し借りは、昔は普通でした。脱穀機などの生産機械の貸し借りや、コメや醤油などの日用品を融通するということは、一昔前の農村では一般的な光景でした。しかし、豊かになるにつれ排他的なモノの所有が広がり、共同体的貸し借りは衰退し、所有と利用が一致するような経済に移行していきました。その貸し借りがネットの普及とともに洗練された形で復活してきたように思います。

 カネが介在してビジネスとして成立しているという点は違いますが、そうした以前の隣組のような村落共同体の生活と現在の最先端のシェアリングサービスは多数の人がモノを有効活用するという点で似通っています。ただ、決定的な相違点もあります。それは自分のモノを利用する他人をよく知っているかどうかです。

 隣組の住人は全ての人間が顔見知りで、性格もよく分かっています。だから、モノの貸し借りを安心してできます。しかし、ネット利用の貸し借りビジネスを利用する人はまったくの赤の他人で、場合によっては生活習慣の異なる海外の人の場合もあります。タクシーやホテルなどの専門業者なら、まったく知らない人が利用するのは当然のことで、それを前提に施設を作り、料金も定めています。しかし、シェアリングサービスは個人の所有物をよく素性の知らない人に貸すのですから、不安になるのは当然です。その不安をどのようにやわらげるかが、このビジネスの一つの課題になります。人間の感情や性癖などの評価はコンピュータの苦手分野だと思っていたのですが、最近のAI(人工知能)の急速な発展を見ると、そうしたことも克服できるのかもしれません。

 技術が発達し、どのような新しいビジネスが誕生しても、ビジネスの基礎には信頼がなければならないということは、いつの世でも変わらない真理です。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

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