【時事解説】銀行員と決算書 その1

スルガ銀行における書類の改竄による不正融資事件が大きな社会問題になっています。銀行員の書類改竄といえば、少し前には商工中金による決算書の改竄事件が話題になりました。私は決算書の正確性を何よりも重んじるべき銀行員が決算書の改竄に手を染めたことに驚くと同時に、これはこれからの銀行融資に思ったより打撃を与えるのではないかという思いを持ちました。そこで、本稿では商工中金事件を題材に銀行員と決算書の関係を考えます。

 銀行員が企業融資の可否を判断する最も重要な資料は決算書となります。ですから、銀行員にとって決算書は重要であり、決算書の不正は許せないものであるはずです。上場企業の決算書は会計監査人の監査を得て、一応の正確性の外的担保はなされていますが、非上場企業の決算書にはそうした外的担保がないため、銀行員は経営者に適正な決算書の提出を強く求めます。にもかかわらず、その銀行員が決算書の不正に手を染めていたのでは、経営者に適正な決算書を作成してくれとはいえなくなります。

 これまでの銀行における粉飾とは、そのままではとても融資ができないような内容の悪い会社の決算書の数値を良い方向に改竄し、不正に融資を引き出すというものでした。今回は逆に売上高や利益を悪い方向に操作して、公的な資金を引き出しています。通常の粉飾とは逆方向だから、許されるという性質のものではありません。どちらも決算書の数値を自分の都合のいいように恣意的に操作して不正に資金を獲得していることには変わらないのですから。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

(後編)平成から令和への元号変更に伴うシステム修正費用の取り扱い

(前編からのつづき)

 この取扱いは、法人税基本通達7-8-6の2(ソフトウエアに係る資本的支出と修繕費)の考え方に沿ったものとなっており、「修正等が、プログラムの機能上の障害の除去、現状の効用の維持等に該当するときはその修正等に要した費用は修繕費に該当し、新たな機能の追加、機能の向上等に該当するときは資本的支出に該当する」としています。
 これまでに国税当局から特別な見解は出されていませんので、これまでの取扱いから類推することになります。

 したがいまして、修正への切替え準備期間があったことから大きなトラブルは起きなかったようですが、今回の元号変更に伴うシステム修正費用についても、2000年問題対応費用や過去の消費税率引上げの際に要した修正費用などの場合と同様に、現状の機能と価値の維持のための修正などであれば修繕費に該当します。
 しかし、新たな機能の追加や修正により機能の向上等を行った場合は、その部分は資本的支出として処理しますので、該当されます方はご注意ください。

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年8月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)平成から令和への元号変更に伴うシステム修正費用の取り扱い

2019年5月1日より、平成から令和への元号変更に伴うシステム修正費用の取り扱いについて、修繕費なのか資本的支出なのか疑問になります。

 過去に似たような事例として、西暦2000年のコンピュータ問題がありました。
 当時、年号を西暦の下二ケタで管理していた一部のコンピュータにおいて、2000年代を迎えた際に、「00」と入力すると1900年なのか2000年なのか区別できなくなり、コンピュータが誤作動して予想外の重要なトラブルが起きるのではと危惧されました。

 国税庁は、年号管理を二ケタから四ケタへ修正するといった機能上の障害を除去するための費用の取扱いについて、
①修正の内容が、システムの効用を維持するために行うもの
②その修正の実態が、資産に対する修繕と認められるもの
③その修正内容について、それ以外の機能の付加を行うものでないことが明確との条件を全て満たすのであれば、そのシステム修正のための支出費用は修繕費とする取扱いを出したそうです。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年8月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》10月から適用されるマイホームの特例 消費税増税と住宅関連制度

いよいよ本年10月からの消費税率引き上げが迫ってきました。税率引き上げの影響の大きい住宅については、税制上の対策だけではなく、税制以外の対策も取られています。

◆住宅についての税制上の対策措置
(1)住宅ローン控除等の拡充(所得税)
 消費税率10%の適用を受ける住宅の取得等については、令和元年10月1日から令和2年12月31日までの間に居住の用に供した場合、住宅ローン控除の適用期間が10年間から13年間に延長されます。
(2)住宅取得等資金に係る贈与税の非課税枠の拡充(贈与税)
 直系尊属からの贈与により取得した住宅取得等資金で一定の要件を満たすものについては、非課税限度額までの金額について贈与税の課税価格に算入されません。従来の非課税枠は最大1,200万円でしたが、消費税率10%の適用を受ける住宅については、非課税枠が最大3,000万円まで拡充されています。

◆税制以外の対策措置
(1)すまい給付金の拡充
 すまい給付金は、消費税率引き上げによる住宅取得者の負担を緩和するために創設した制度です。消費税率が8%に引き上げられた平成26年4月にスタートした制度で、最大30万円給付されるものでした。本年10月の消費税率10%への引き上げ後は、最大給付額が50万円まで増額されます。
 新築・中古、住宅ローンの利用の有無にかかわらず給付が受けられますが、収入(都道府県民税の所得割額)によって給付額が変わる仕組みとなっています。
(2)次世代住宅ポイント制度の創設
 次世代住宅ポイント制度とは、一定の省エネ性、耐震性、バリアフリー性能等を満たす住宅や家事負担の軽減に資する住宅の新築やリフォームをした人に対し、さまざまな商品と交換できるポイントを発行する制度です。
 住宅の新築(貸家を除く)の場合、1戸あたりに発行されるポイントの上限は35万ポイント、住宅のリフォーム(貸家を含む)の場合、1戸あたりに発行されるポイントの上限は30万ポイントです。

《コラム》同一労働同一賃金に向けた賃金制度

◆賃金制度や評価基準が必要な時代になる
 2020年から大企業、2021年からは中小企業に、働き方改革の一つ、同一労働同一賃金制度が適用予定です。同一労働同一賃金を行うには賃金制度と社員の賃金額を決定するための評価基準を定めなければならないでしょう。

◆どのような賃金制度があるか
 賃金制度は様々ありますが主なものを見ていきましょう。
・年功給:年齢に従って賃金を決めます。社員との信頼関係を強くでき長期人材育成に向きます。しかし、高齢化による人件費増加や貢献度では上昇が変わらずぬるま湯体質になりがちです。
・職能給:社員の能力に従って賃金を決めます。柔軟な人事、人材活用、能力開発に向いています。ただし年功的運用になりやすく、不適切な評価をすると社員の不信感につながります。
・職務給:仕事に対して賃金が決まります。仕事と給与の関係が明確です。不要な業務の削減や職務意識の強い専門家育成に効果的です。一方で仕事に人を配置するため異動が難しく人事は硬直化します。企業への帰属意識も高くなりにくく、担当の仕事以外の設備導入や業務効率化などには非協力的になる傾向です。
・役割給:業績、役割、貢献度に応じた賃金にしやすく、年収感覚もマッチしやすいためチャレンジ意欲の高揚につながります。他方で基準作成の難しさや目標の抑制傾向が見られます。
・歩合給:売上等の成果に応じて賃金が変動します。賃金の算定基準が明確でわかりやすく、成果に応じた賃金のためやる気につながります。しかし売ればいいとお客様軽視になりがちで、不安定な賃金は販売が伸びないと意欲低下を招きます。
・行動給:行動や姿勢によって賃金が変動します。経営理念や方針、戦略と連動させやすく望ましい組織風土を醸成させます。社員の行動の質も高めやすいのですが行動基準の更新をしていく必要や重要な行動の抽出、言語化は難しい傾向です。また行動の基準が決まるため基準に合わせた行動しかしなくなる行動の標準化問題があります。

◆組み合わせて使いましょう
 それぞれの賃金制度には長所短所があります。一つの制度ではカバーできないので数種類を組み合わせるとよいでしょう。

食べ歩きの消費税率は?

東京ディズニーランドでミッキー型のワッフルを買い、歩きながら食べたら消費税はいくらになるか――。こんな場面を想定したQ&A集を国税庁が作っています。8月1日にも拡充し、並んだ事例は224問になりました。10月の消費増税で初めて導入される軽減税率の周知のためで、ホームページ上で公開中です。

 軽減税率は、酒類を除く飲食料品や、定期購読の新聞の税率を現行と同じ8%に据え置く制度。飲食料品はスーパーなどから持ち帰る場合にのみ8%が適用され、店内で飲食すると外食扱いになり税率は10%となります。ただ、持ち帰りと店内飲食の線引きがあいまいで、税率に迷うケースもあるため、国税庁では事業者から寄せられた具体例をもとに、Q&A集で規定を解説しています。

 8月には、遊園地内の売店で飲食料品を購入した人が、園内で食べ歩いたり、点在するベンチで飲食したりするケースを紹介しました。各売店が管理するテーブルや椅子を使わなければ「持ち帰り」となり、軽減税率の対象となることを明記しました。「遊園地の施設自体は『店内』に該当するのか」という事業者の問い合わせに答えた形です。

 同様の考え方で、野球場などでも、売店前の椅子などを利用すれば10%ですが、観客席で飲食する場合は軽減税率が適用されます。一方、遊園地内のレストランで飲食したり、野球場や映画館にある個室で飲食メニューを注文したりすれば10%となるので注意が必要です。

 また、ファストフード店などに多い食事とドリンクのセット商品は「一つの商品」とみなし、一部でも店内で飲食する場合は外食扱いとなって10%を適用します。ただ単品で購入すれば、持ち帰りのハンバーガーは8%、店内で飲むドリンクは10%といった支払いになります。

 低所得者の負担軽減をうたって導入される軽減税率ですが、事業者や消費者の混乱は必至と言えそうです。

<情報提供:エヌピー通信社>

 

国外財産調書の未届けで初摘発

海外の銀行口座に保有する資産を「国外財産調書」で届け出なかったとして、京都市で家具輸入販売会社を営む社長が大阪国税局に告発されたことが分かりました。国外財産調書制度が導入された2014年以来、調書の不提出による摘発は全国で初となります。

 告発された社長は、15年1月~17年12月の間に、タイ在住の知人の口座に売上を入金したり、知人名義で家具業者と業務契約を結んだりして、約2億1500万円の所得を申告していませんでした。さらに売上の一部を入金していた香港の自身名義の口座に約7300万円をプールしていたにもかかわらず、義務付けられている国外財産調書を提出しませんでした。大阪国税局は社長が故意に調書を提出しなかったとして、所得税法違反および国外送金等調書法違反罪で京都地検に告発しました。重加算税などを含む追徴税額は約1億1千万円に上る見通しで、すでに大半を納付したそうです。

 国外財産調書は、富裕層の持つ海外資産の把握と適正な課税を目的として、合計5千万円超の資産を海外に有している人に提出が義務付けられています。国税庁がまとめた17年分の提出状況によると、調書の提出件数は9551件で前年より4.9%増加し、総財産額は3兆6662億円でした。

 制度がスタートしたのは13年ですが、提出数は伸び悩んだことから15年1月に正当な理由のない未提出、虚偽記載に対する罰則規定を導入し、それ以降は微増傾向を続けています。17年のデータでは、国外財産調書を提出していなかったことで加重されたケースは194件あり、51億1095万円の加算税が上乗せされました。同制度では、逆に調書提出後に記載財産について申告漏れがあった時には加算税が軽減される措置もあり、これまでに加算税が軽減されたケースは168件、金額にして45億7467万円ありました。

 国税当局は近年になり、富裕層が海外に持つ資産に対する監視を強めていて、今回の調書未提出による初摘発もその流れをくんだものと言えるでしょう。調書の提出件数は年々増えてはいるものの、未提出者はまだ相当数いるとみられています。

<情報提供:エヌピー通信社>

(後編)非常用食料品等は、長期間保存でも購入時に損金算入が可能!

(前編からのつづき)

 国税当局は、その理由として、
①食料品は、繰り返し使用するものではなく、消耗品としての特性をもつ
②その効果が長期間に及ぶとしても、食料品は、減価償却資産や繰延資産に含まれない
③仮に、その食品が法人税法にいう「消耗品で貯蔵中のもの」であるとしても、災害時用の非常食は、備蓄することをもって事業の用に供したと認められる
④類似物品として、消火器の中身は取替え時の損金として取り扱っていることなど挙げております。

 なお、ヘルメットや毛布等の防災用備品については、食料品と異なり、その性質上、基本的には工具器具備品に該当するため、減価償却資産となりますが、1個の単価が僅少(10万円未満)となるものばかりだと思われますので、少額の減価償却資産に該当し、一時に全額を損金にすることが可能です。
 したがいまして、単価の問題がなければ、ヘルメットや毛布なども備蓄時に事業供用があったものとして、全額その時の損金の額に算入できますので、該当されます方はご確認ください。

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年8月5日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)非常用食料品等は、長期間保存でも購入時に損金算入が可能!

地震や異常気象による集中豪雨や洪水、大型台風などの緊急時に備えて、非常用食料品や防災用品を備蓄している企業も増えているようです。

 非常用食料品の中には、フリーズドライ食品のような長期間保存のきくものもあり、酸素を100%近く除去して缶詰にしたものは、賞味期間(品質保証期間)は25年間ですが、80年間程度は保存がきき、何事もなければ次に買い換えるのは数十年後になるといわれております。
 ある会社では、地震などの災害時における非常用食料品(長期備蓄用)としてフリーズドライ食品1万人分2,400万円を購入し、備蓄しましたが、税務上の取扱いは長期間保存がきくものですと、どうなるのか疑問に思うところです。

 この点、非常用食料品は、備蓄時に事業供用があったものとして、そのときの損金の額(消耗品費)に算入できるとしております。
 また、その品質保証期間が2~3年と短いものは、その期間内に取り替えることになりますが、その取替えに要する費用も、その配備時に損金算入することができます。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年8月5日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》同一労働同一賃金の動向

◆雇用対策法から労働施策総合推進法へ変更 
 4月から働き方改革法が実施され、年次有給休暇や時間外労働時間の上限規制の問題の次にやってくるのが同一労働同一賃金です。正規か非正規かという雇用形態に関わらない均等・均衡待遇を確保し不合理な待遇差の解消を目指そうとするものです。昨年6月、最高裁で同一労働同一賃金を争点とした2つの重要裁判の判決がありました。
1.ハマキョウレックス事件
・正規社員と非正規社員の間の手当の不支給等の差別訴訟
・手当や賞与等それぞれの趣旨目的に基づく不合理性の検証が求められた
2.長澤運輸事件
・定年再雇用者の賃金減額の差別訴訟
・定年後の雇用に一定の年収減は容認。ただし自由に年収を下げられる訳ではない

◆時流は差異縮小の方向へ
 今年になってからも重要な判決が次々と高裁で出され、5年超の勤続者に対する差異が問題とされるケースが目立っています。
 一方「パート・有期法」においても短時間労働者や、有期雇用者から待遇差に対する説明を求められた時には事業主は説明をしなくてはなりません。その待遇の性質・目的を分析し、待遇相違の説明が出来ること、つまり同一労働同一賃金の本命は人事制度整備の必要性であることが示されたと言えるでしょう。

◆これから企業としての対策は
 では対応はどのように進めるのがよいでしょうか?
・現状で不合理性があるか否かの判断 
①業務内容、責任の度合い、人事評価制度、職責上の責任
②人材活用の仕組みの違い、配置転換など
③労組、従業員との交渉
・福利厚生や諸手当等不合理か差異の検証
・基本給、賞与、退職金、扶養手当は最高裁の判断待ち
・賞与については正規に出しているならゼロは認められない可能性あり
・賞与、退職金共に業績連動、評価反映、ポイント制等一律でない支給方法の検討
・5年を超える長期勤続の非正規従業員についての待遇差は要注意
 このようなことを考慮しておけば不合理とはされにくいでしょう。今から準備しておきましょう。