《コラム》増税間近!早めの対応を!キャッシュレス・消費者還元事業制度

本年10月1日に予定されている消費税率引き上げに伴い、経済産業省は「キャッシュレス・消費者還元事業(ポイント還元事業)」を推進しています。この事業を利用したい中小・小規模事業者は、決済事業者を通じて加盟店登録を行う必要があります。いよいよ引き上げも間近に迫ってきましたので、登録がお済みでない方は、ご契約の決済事業者に手続を確認しましょう。

◆ポイント還元事業制度の概要
(1)消費者還元対象期間
 2019年10月から2020年6月までの9か月間となっています。
(2)対象決済手段
 クレジットカード、デビットカード、電子マネー、QRコードなど、電子的に繰り返し利用できる決済手段が対象となります。
(3)補助対象となる中小・小規模事業者
 原則として、中小企業基本法に定義される「中小・小規模事業者」がこの制度の対象です。ただし、例外として、登録申請の時点で、申告済みの直近過去3年分の各年又は各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える中小・小規模事業者等は対象外とされていますので、注意が必要です。

◆ポイント還元事業制度で受けられる補助
 この事業では次のような補助を受けることができます(フランチャイズチェーン等は(1)のみ)。
(1)消費者へのポイント還元
 消費者がキャッシュレス決済手段を用いて本制度の対象として登録された中小・小規模事業者の店舗等で支払いを行った場合、個別店舗については購入金額の5%、フランチャイズチェーン等については2%がその消費者に還元されます。
(2)決済端末等の導入の補助
 中小・小規模事業者がキャッシュレス決済を導入する際、端末導入費用の3分の1を決済事業者が負担した場合には、残りの3分の2を国が補助し、中小企業の負担がゼロになる形で導入支援が行われます。
(3)決済手数料の補助
 中小・小規模事業者が決済事業者に支払う加盟店手数料は、3.25%以下への引き下げを条件とし、更に国がその3分の1を期間中補助することとなっています。

【時事解説】法整備で不正転売を撲滅できるか その2

6月に入場券不正転売禁止法が施行され、コンサートやスポーツのチケットに関して、インターネットでの高額転売が禁止となりました。違反した人には、判決に従い1年以下の懲役や100万円以下の罰金が科されます。

 最近では、人気のチケットがネット上で高額で取引されています。買い占めが横行した一因には、インターネットでチケットの購入ができるようになったことが挙げられます。業者はコンピューターの自動プログラムを使い、チケット販売サイトに大量にアクセスして買い占めます。あるイベントでは、チケットの販売開始直後、アクセスの9割が自動プログラムだったこともあります。

 法整備のほかにも、転売対策は講じられています。東京オリンピックでは、チケットを購入するには、事前に個人情報を登録してIDを取得する仕組みを採用しました。大会の入場時には身分証の提示が求められ、登録情報と照合します。業者から購入したチケットは業者のIDが登録されているので、照合できず無効となります。

 ただ、転売対策の難しさは、転売そのものを禁止にすると、突然行けなくなった場合、他者に譲りにくいという問題が生じます。結果、スケジュールがはっきりしない人はチケットを買いづらくなり、チケットの売上に陰りがでる可能性もあります。

 そこで登場したのがイベントに行けなくなった購入者がチケットを再販できる公式サイト「チケトレ」です。チケットはすべて券面価格で取引されます。また、東京オリンピックについては、2020年春に公式のリセール(再販売)サイトが立ち上がる予定です。不要となったチケットはこのサイトにて定価で売ることができるようになります。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】法整備で不正転売を撲滅できるか その1

6月に入場券不正転売禁止法が施行されました。これはインターネットでのダフ屋行為(売り出された時より高い価格で転売)を禁止したもので、違反した場合は1年以下の懲役や100万円以下の罰金が科されるというものです。

 これまでも、路上など、公共の場でのダフ屋行為は、都道府県の迷惑防止条例で禁じられていましたが、インターネットは公共の場とは解釈されないので、規制がありませんでした。

 2020年には東京オリンピックが開催されることもあり、転売対策は喫緊の課題となっています。というのも、2016年のリオデジャネイロオリンピックでは、チケットの販売率が87%だったにもかかわらず、多くの競技会場で空席が目立ちました。これは、転売を目的とする業者がチケットを大量購入し高額で転売したためです。値が吊り上がったことで、一般の人は手を出しづらくなり、結局、チケットを売りつくすことができませんでした。その結果、売れ残りにより空席が生じました。

 オリンピックだけではありません。今秋、日本ではラグビーのワールドカップが開催されます。人気の対戦、ニュージーランド対南アフリカは、定価では4万円なのに、ある転売サイトにて約11万円で販売されたこともあります。このほかにも、人気のロックグループのコンサートや野球などのスポーツ観戦といった人気のチケットがネット上で高額で取引されています。

 転売は、観戦希望者が適正価格で観戦できないばかりか、空席が目立てば、イベントに対するイメージの悪化にもつながります。転売はイベントに参加する側だけでなく、開催者にとっても頭の痛い問題です。こうした背景から、入場券不正転売禁止法が生まれ、今後、不正な転売の撲滅が期待されます。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】柔軟な働き方の選択肢としての起業 その2

では、起業という選択肢をとる過程で、具体的にどのような柔軟な働き方に向けた取組みが行われているのでしょうか。そこで日本政策金融公庫総合研究所編『2019年版 新規開業白書』の事例として、育児・介護によって営業時間を短縮させた事例として紹介された、おむすび・お茶漬け米手(所在地:山口県)の事例についてみていきましょう。

「おむすび・お茶漬け米手」は、現代表者が祖母から3代にわたり受け継いできた味を復活させようと2012年に創業したおむすび店です。現代表者の祖母と母は、おむすび屋を営んでおり、現代表者も20歳の頃から20年近く店を手伝い、おむすびの握り加減やこめの炊き方を体得しました。しかし母が60歳のときに引退して店は閉店し、当時小学生の子供2人を育てていた現代表者も一旦専業主婦に戻りました。

しかし閉店から2年たってもおむすびを懐かしむ常連客の声が後を絶たなかったこともあり、おむすび屋の開業にこぎつけました。開業後は50年続いた味を復活させたことなどが話題となり、新規の顧客が増え、月曜以外は昼も夜も店を開ける日々が続きました。

しかし親の介護や、孫の世話など仕事と家庭の両立の必要性に迫られたことから、家庭を優先させることとしました。日曜日を終日定休とし、客単価が高い夜の営業も週2日に減らしました。仕込みはベテランの従業員に任せ、親や孫の世話をしてから店に出るようになりました。開業当初より売上は減りましたが、店は代表者にとって常連客やスタッフとの会話によって息抜きできる大切な場になっています。

このように、家庭と仕事を両立させながら仕事をする選択肢として起業という手段が取られることもあるのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】柔軟な働き方の選択肢としての起業 その1

わが国が人口減少社会を迎え、働き方改革を進める中、起業という選択肢をとる人も多様化してきています。

 日本政策金融公庫総合研究所が2018年7月に実施した「2018年度新規開業実態調査(同公庫国民生活事業が2017年4月から同年9月にかけて融資した企業のうち、融資時点で開業後1年以内の企業8,332社を対象)」によると、現在の事業からの収入が、経営者本人の定期的な収入に占める割合は、「100%(ほかの収入はない)」と回答した割合が52.9%と過半数を占めたものの、5年前に実施した2013年度の調査では同割合が80.5%となっており大幅に低下していることがわかります。他方、「100%未満(ほかに収入がある)」と回答した割合は47.1%と5年前の19.5%から上昇しており、その中でも「25%未満」の割合は22.7%と5年前の5.3%から大幅に上昇しています。このように事業以外からも収入を得ながら開業する人の割合が増えていることがわかります。

 また、開業者の1週間当たりの労働時間の平均は51.1時間となっており、5年前の63.2時間から減少しています。内訳をみると「50時間以上」が55.7%と最も高い割合を占めるものの、5年前の73.6%から大幅に低下しています。一方で「40時間未満」と回答した割合は18.8%と、5年前の6.8%から大幅に上昇しています。これらの背景としては、既述のとおり事業以外からも収入を得る開業者が増えていることや、開業者の働き方がワークライフバランスを重視し、長時間労働を是正する方向に変化していることがあると考えられます。

 このように近年では柔軟な働き方の一環として起業という働き方が選択されていることがみてとれるのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》定年延長の関連施策 選択定年制と退職金制度

日本を代表する自動車メーカーの1つH社は65歳定年延長に伴い選択定年制の導入、退職金制度の改定などに取り組んでいます。
 その背景は、65歳まで就労を希望する従業員がいる一方で、60歳で退職を希望する声もあり、60歳以降の就労意識は多様化していることにあります。その概要を紹介しましょう。

[選択定年制の導入]
 定年年齢を延長するに当たり、対象者が定年時期を60~65歳の間で自由に選択できる選択定年制を導入した。
 個々のニーズに合わせて定年時期を自身で決定できる制度。
・自身の健康面や家族の状況などは都度変化することを考慮し、一度決めた定年年齢につき、1年ごとに意向を確認、変更を受け付ける仕組み。具体的には、55歳時点で定年時期の意向を確認し、59歳時点で定年時期を決定。直近1年以内の定年を選択した場合は変更できないが、1年以上先の場合は年に一度、申告した定年時期を変更することができる。

[退職金制度の見直し]
・定年年齢の引き上げにより、退職金カーブの見直し。60歳を頂点としていた積み上げカーブを、65歳を頂点としたラインに引き直した。ただし、60~64歳の間に退職する場合も、選択定年制という意味合いから、65歳時点と同水準となるよう、差額分については一時金(選択定年一時金)で補填。年金化できる額としては差が生じるが、一時金ベースでは60歳~65歳は同水準。
 なお、今回の改定に当たり、確定拠出年金(DC)も導入。掛金は等級ごとに一定額、DC移行分は退職金全体の約1割相当。

[更なる主体性の発揮を促す]
 創業当時から能力・実力主義の考え方をベースとし、職種や学歴によらない一本の処遇体系を運用してきた。今回の改定では、従業員一人ひとりに能力発揮を促すためにも、その考え方をさらに推し進め、主に、等級の統合、給与設定ルールの見直し、自動昇格の廃止を行った。なお、評価制度には大きな見直しは加えていない。

 このように、定年延長は、広く関連人事制度の改定、施策の実施を伴い、それらがバランスよく、整合的に整備されてはじめて機能するもので、社員の意識改革が不可欠な重要な内部環境整備・強化の施策です。

《コラム》遺留分権行使への対応と課税

◆遺留分権の性格の原理的変更
 従来、遺留分減殺請求された場合、相続財産を分けるよりも、金銭を支払って決着、ということが多かったと思われますが、平成30年7月13日公布、本年7月1日施行の改正民法で、遺留分に関する権利の内容に重要な変更がなされ、遺留分減殺請求は、遺留分侵害額請求と改正され、その請求権の行使により生じる権利は金銭債権であるとされ、金銭支払に限定とされました。

◆原理変更の内容
 改正前の遺留分減殺請求権は、原理としては相続財産そのものを取得する権利だったので、物権的請求権と解するのが多数派でした。それが、今次の改正で、金銭的請求権であるとされたわけです。こういう原理の変更が起きたのです。

◆原理からすれば譲渡所得課税
 相続財産が不動産だけだったので、遺留分権の行使に対し、金銭ではなく、相続不動産の一部を遺留分権者の名義にすることにして、遺留分問題を解決した、というケースの場合、改正後は、遺留分債務を相続不動産で代物弁済したとの解釈にもなりそうです。そうすると、ここで、譲渡所得課税が起きるのだ、という主張も出そうです。

◆代償分割での代償債権の場合
 似たような事例としては、相続財産が不動産一つだけだったので、それを取得した相続人が、他の相続人に対して金銭で代償金を支払う、というような場合があります。
 これは、代償分割という相続財産分割の一手法です。物権的請求権を非相続財産である金銭債権に代えるものであるにも拘らず、譲渡所得課税はないものとされていました。代償債権債務は、不動産の相続財産評価レベルに圧縮され、その上で相続税課税がなされるとともに、代償債務は相続不動産取得者の取得費を構成しない、との技巧的処理がなされています。

◆代償分割との相違・類似
 代償分割での不動産取得放棄で代償債権(非相続財産)を得ることは物権の債権への代替ですが、改正後の遺留分権の場合での不動産(相続財産)の取得は、債権の物権への代替です。前者には相続財産外の資金が絡んでいるので、譲渡性を吟味するとしたら、こちらの方が強そうです。
 似たようなケースで、片や課税なし、片や課税との異なる扱いをすることになるのか、当局の対応が注目されています。

 

(後編)国土交通省:次世代住宅ポイント制度の対象建材等の型番を公開!

(前編からのつづき)

 すでにポイント発行申請は始まっており、商品交換申込は本年10月1日から予定されております。
 対象は、2019年10月以降に引渡しを受ける住宅で、注文住宅(持家)・リフォームの場合は2019年4月~2020年3月までに請負契約・着工をすることが必要ですが、税率引上げ後の反動減を抑制する観点から、2018年12月21日~2019年3月に請負契約を締結したものであっても、着工が2019年10月~2020年3月となるものは特例として対象となります。

 分譲住宅の場合は、2018年12月21日~2020年3月までに請負契約・着工し、かつ売買契約を締結したものか、2018年12月20日までに完成済みの新築住宅であって、2018年12月21日~2019年12月20日までに売買契約を締結したもののいずれかが要件となっております。
 なお、発行ポイント数は、住宅の新築(貸家を除く)の場合は1戸当たり上限35万ポイント、住宅のリフォーム(同)の場合は同上限30万ポイントとなっておりますので、該当されます方はご確認ください。

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年7月15日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

 

(前編)国土交通省:次世代住宅ポイント制度の対象建材等の型番を公開!

国土交通省では、次世代住宅ポイント制度の発行対象となる建材・設備の具体的な型番をホームページ上で公開しており、開口部の断熱改修、外壁、屋根・天井又は床の断熱改修、エコ住宅設備、バリアフリー改修設備、家事負担軽減設備に分かれ、開口部の断熱改修の場合は、さらにガラス、内窓、外窓、ドアに分けたうえで各メーカーの製品名・型番等が並んでおります。

 次世代住宅ポイント制度とは、2019年10月の消費税率10%への引上げを踏まえ、住宅取得支援策として、省エネ・耐震・バリアフリー、家事負担軽減に対応した一定性能の住宅の新築やリフォームをした場合に様々な商品等と交換できるポイントを発行します。

 なお、エコ住宅設備(リフォームが対象)では、太陽熱利用システム、高断熱浴槽、高効率給湯機、節水型トイレなどが、バリアフリー改修設備(同)では、ホームエレベーター、衝撃緩和畳が、家事負担軽減設備(新築・リフォームが対象)では、ビルトイン食器洗機、掃除しやすいトイレ、浴室乾燥機、掃除しやすいレンジフードなどが制度の対象となります。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年7月15日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(後編)相続法改正に伴い、配偶者居住権などの評価額を規定

(前編からのつづき)

 「残存耐用年数」とは、居住建物の所得税法に基づいて定められている耐用年数(住宅用)に1.5を乗じて計算した年数から居住建物の築後経過年数を控除した年数をいいます。
 また、相続法改正では舅姑(しゅうとしゅうとめ)など被相続人への無償の療養介護や労務提供を行った場合、相続人でなくても寄与分が認められるよう配慮され、「特別寄与料の請求権」が創設されましたが、この特別寄与料に係る課税も規定されます。

 具体的には、
①特別寄与者が支払いを受けるべき特別寄与料の額が確定した場合には、その特別寄与者が、特別寄与料の額に相当する金額を被相続人から遺贈により取得したものとみなして、相続税を課税
②上記①の事由が生じたため新たに相続税の申告義務が生じた者は、その事由が生じたことを知った日から10月以内に相続税の申告書を提出
③相続人が支払うべき特別寄与料の額は、その相続人に係る相続税の課税価格から控除
④相続税における更正の請求の特則等の対象に上記①の事由を加えることとされます。

 今後の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年7月8日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。