《コラム》仮想通貨に関する税務上の取扱い

仮想通貨を売却又は使用することにより生じる利益は、原則として総合課税の雑所得に区分され所得税の課税対象となります。

◆取引区分ごとの所得の計算方法
(1)仮想通貨の売却
 保有する仮想通貨を売却(日本円に換金)した場合、その売却価額と取得価額との差額が所得金額となります。
(2)仮想通貨での商品の購入
 保有する仮想通貨を商品購入の際の決済に使用した場合、その使用時点での商品価額(消費税込みの金額)と仮想通貨の取得価額との差額が所得金額となります。
(3)仮想通貨と仮想通貨の交換
 保有する仮想通貨を他の仮想通貨を購入する際の決済に使用した場合、その使用時点での他の仮想通貨の時価(購入価額)と保有する仮想通貨の取得価額との差額が所得金額となります。
(4)仮想通貨の分裂
 仮想通貨の分裂に伴い取得した新たな仮想通貨は、分裂時点において取引相場が存在しておらず、その時点では価値を有していないと考えられます。したがって、新たな仮想通貨を取得した時には課税関係は生じず、実際に売却又は使用した時点で所得が生じることとなります。なお、その取得価額は0円となります。
(5)仮想通貨のマイニング
 マイニング(採掘)等により仮想通貨を取得した場合は、収入金額(マイニング等により取得した仮想通貨の取得時点での時価)から必要経費(マイニング等に要した費用)を差し引いた所得金額が、事業所得又は雑所得の対象となります。

◆法人が仮想通貨を保有する場合
 法人が期末において保有する仮想通貨は、会計上、活発な市場が存在する場合は、市場価格に基づく価額をその仮想通貨の貸借対照表価額とし、帳簿価額との差額は当期の損益として処理します。活発な市場が存在しない場合は、取得価額をもって貸借対照表価額とし、期末における処分見込価額が当該取得価額を下回る場合には、処分見込価額を貸借対照表価額とし、取得価額との差額を当期の損失として計上しますが、税務上は当該損益の額について申告調整で自己否認することになります。
 2017年から急拡大した仮想通貨市場は、今後も法整備等の動向に留意が必要です。

極ZERO裁判で国税勝訴

115億円の追徴課税を巡ってサッポロビール社と国税が争う裁判の判決が下され、東京地裁はサッポロの請求を棄却しました。判決の詳細は非公開ながら、税法の「立法趣旨」が司法判断の決め手となったことがうかがえます。

 サッポロは2013年に「世界初の製法」をうたい、ビール系飲料のなかで最も税率の低い第3のビールとして「極ZERO」を販売。翌14年、国税庁から「第3のビールではなく発泡酒に当たる可能性がある」と指摘されました。発泡酒なら酒税は第3のビールの約1.7倍となり、それまで売り上げた分にかかる酒税の差額115億円を納税する義務が生じます。

 未納分の税金は、納めるのが遅れるほど延滞税が多くかかります。同社はこれ以上負担が増えないよう納めるだけ納めておいて、第3のビールだと証明した後に返してもらうという手段をとりました。しかし国税が返還を拒否したため、両者の対決が始まったのです。

 国内大手のビールメーカーが数字上のスペックを見誤ることはなかなか考えにくいことです。となれば、極ZEROは第3のビールの要件を数字では満たしていながら、裁判では認められなかったということも考えられます。

 手掛かりとなるのが、同社の訴えを巡る国税不服審判所の非公開裁決です。この裁決に当たり審判所は、「その他の発泡性酒類」が規定された06年改正酒税法の立法趣旨に触れています。改正法で基本税率よりも低い特例的な税率を設けたのは、税率が急激に変われば生産や消費に多大な影響を与えるためであると説明。その上で「その他の発泡性酒類」の特例税率は、当時販売されていた第3のビールの商品群と「同種の製造方法によるもの」に限定する趣旨があったとしました。そしてこれらを踏まえると、あくまで推測ですが、『世界初の製法』をうたった極ZEROは法が想定する〝製法〟ではないため「その他の発泡性酒類」に該当しないと結論付けたとみられます。

 純粋に原材料の割合などスペック上の理由だけで第3のビールに該当しないのなら、立法趣旨に踏み込む必要はないはずです。地裁判決についてはまた異なる論拠から判決が出されたのかもしれませんが、審判所と同種の判断がされた可能性は否定できません。

<情報提供:エヌピー通信社>

ふるさと納税の返礼品にギフト券

2019年度税制改正大綱で、過度な返礼品への規制案が盛り込まれた「ふるさと納税」の周辺が再び騒がしくなっています。大阪府泉佐野市は返礼品に加えて寄付額の最大20%分をネット通販大手「アマゾン」のギフト券にして提供するキャンペーンを始めたと発表しました。ギフト券は10%分と20%分の2種類で、総額100億円分に達したら終了するとしています。市の特設サイトから3月末までの申し込みが対象です。

 寄付金集めの競争激化を抑えようと、政府は返礼品を「調達費が寄付額の3割以下の地場産品」に限るよう定め、6月以降は違反自治体への寄付は制度から除外する予定です。これに対し、泉佐野市は返礼品の調達額を寄付額の4割程度に設定し、17年度には全国首位の約135億円の寄付を集めていることから反発していました。

 中央政界からも規制緩和を求める動きが出始めました。公明党の山口那津男代表は記者会見で「市町村の狭い地域の産品を強要するのは少し固すぎる。ふるさと創生に資する、納税者の意思にも反しないあり方は柔軟であってもいい」と、「地場産品」の定義を市町村から県内などに広げるよう求めました。呼応する声は自民党内でもあるといいます。統一地方選や参院選をにらみ、市町村や利用者に配慮を示そうという動きとみられます。

 ただ、様々な思惑が交錯する中で、各々の「ふるさと」を応援するという制度本来の趣旨が顧みられることはほとんどありません。

<情報提供:エヌピー通信社>

国外財産調書、東京管内で75%

5千万円超の海外資産を持っている人に対し、財産の種類、数量、価額などを税務署に提出することを義務づけた国外財産調書について、国税庁は創設5年目となる2017年分の提出状況を公表しました。それによると、提出件数は前年比4.9%増の9551件、国外財産の総合計は同11.0%増の3兆6662億円でした。初年度の提出件数は5539件、国外財産の総合計は2兆5142億円だったことから、提出件数、国外財産の総合計ともに右肩上がりで順調に伸びていることがわかります。

 国税庁によると、提出者の地域別では、「東京局」が6154件で全体の64.4%を占めました。次いで「大阪局」1331件(同13.9%)、「名古屋局」699件(同7.3%)となり、この3局で85.6%を占めています。日本の富裕層が大都市圏に集中している結果となりました。

 財産総額についてはより顕著な結果となっています。「東京局」が2兆7485億円で、全体の75.0%を占め、大阪局(4274億円、同11.7%)、名古屋局(1906億円、同5.2%)の3局を合計すると9割強(91.9%)を占めています。

<情報提供:エヌピー通信社>

過酷な差し押さえで提訴

税金の滞納に対する過度な差し押さえは生存権の侵害に当たるとして、宮城県大崎市の女性が、県と市に220万円の損害賠償を求める訴訟を仙台地裁に起こしました。女性は長男との二人暮らしで、世帯収入は女性のパートによる月収8万~11万円と隔月の年金約7700円のみでした。2008年ごろから国民健康保険税や市民税などを納められず、17年5月の時点で約140万円を滞納していたそうです。

 これに対し、同年から徴収業務を担当した宮城県地方税滞納整理機構は、分割納付の申し出に応じませんでした。女性は母から借金をして100万円を納めましたが、同機構は残額も納めるよう求め、同年9月に女性の口座に振り込まれた給与約8万8千円を差し押さえて納付に充てました。その結果、女性の口座残高は0円になりました。

 原告側は、生活保護が必要なほど困窮している世帯の財産を差し押さえることは生存権の侵害だと主張しています。さらに給料の支払い当日に給料を預金として差し押さえるのは「脱法行為」と訴えています。

 国税徴収法では滞納者と家族の最低限の生活を保障するため、給料などを「差押禁止債権」として差し押さえてよい金額の上限を厳格に定めています。しかし同法で差し押さえを禁止する財産はあくまで「給与債権」であり、それ以外の財産については触れていないことから、給与が口座に振り込まれた瞬間に給与債権ではなく「預金債権」に変わったとして、上限なく差し押さえる手法が全国で乱発されています。

<情報提供:エヌピー通信社>

(後編)国税庁:2017事務年度の海外取引調査を公表!

(前編からのつづき)

 1件あたりの申告漏れ所得を取引区分別にみてみますと、「海外投資」が3,320万円、「輸出入」が1,053万円、「役務提供」が1,477万円、「その他」が1,603万円となりました。
 そして、事例では、民泊事業者を調査したケースが挙がっております。

 会社員Cは、例年、給与所得と少額(又は赤字)の不動産所得を申告していましたが、部内資料等から、民泊による収入を得ていることが想定され、調査の結果、Cは複数の自己所有物件や賃貸物件を国外の民泊仲介業者のインターネットサイトにアップして宿泊者を募集し、宿泊料は同仲介業者を通じて得ていましたが、申告していませんでした。

 顧問税理士には、民泊による年間収入金額よりも過少になるような賃貸契約書を偽造し提示することで、民泊に係る申告を免れ、少額(又は赤字)の不動産所得を申告していたことも判明し、その結果、Cには所得税5年分に係る申告漏れ所得金額約2,600万円について、追徴税額(重加算税含む)約700万円が課税されました。

(注意)
 上記の記載内容は、平成31年2月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)国税庁:2017事務年度の海外取引調査を公表!

国税庁は、2017事務年度(2018年6月までの1年間)の海外取引調査を公表しました。
 それによりますと、2017事務年度に海外投資者等を対象に前年度比46.8%増の4,616件の実地調査を実施し、同80.6%増の総額約977億円の申告漏れ所得を把握しました。

 4,616件を取引区分別にみてみますと、「海外投資」(預貯金等の海外での蓄財を含む海外の不動産や証券などに対する投資)が全体の34.4%を占める1,587件となり、「輸出入」(事業での売上や原価に係る取引で、海外の輸出(入)業者との契約による取引)が同12.0%の553件、「役務提供」(工事請負やプログラム設計など海外において行う、労力・技術等の第三者に対するサービスの提供)が同9.1%の420件となりました。
 そのほか、海外で支払いを受ける給与や贈与(親族に対する海外送金等)など海外取引に係るもので、上記の取引に該当しない「その他」が全体の44.5%を占める2,056件となりました。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成31年2月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(後編)国税庁:2017事務年度の相続税の調査事績を公表!

(前編からのつづき)

 申告漏れ相続財産の内訳をみてみますと、「現金・預貯金等」が1,183億円(前事務年度1,070億円)と最多、以下、「有価証券」が527億円(同535億円、構成比15.2%)、「土地」が410億円(同383億円、同11.8%)、「家屋」が62億円(同56億円、同1.8%)、「その他(不動産、有価証券、現金・預貯金等以外)」が1,289億円(同1,189億円、同37.1%)となりました。

 無申告事案は、前事務年度より25.2%多い1,216件の実地調査を行い、そのうち84.3%にあたる1,025件(前事務年度比36.5%増)から987億円(同14.0%増)の申告漏れ課税価格を把握し、88億円(同27.7%増)を追徴課税しました。

 国税庁は、海外資産関連事案についても資料情報や相続人・被相続人の居住形態等から海外資産の相続が想定される事案などを積極的に調査しており、2017事務年度に1,129件(前事務年度比23.1%増)の実地調査を行い、そのうち134件(同14.5%増)から海外資産に係る申告漏れ課税価格70億円(同32.5%増)を把握しました。

(注意)
 上記の記載内容は、平成31年2月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

 

(前編)国税庁:2017事務年度の相続税の調査事績を公表!

 国税庁は、2017事務年度(2018年6月までの1年間)の相続税の調査事績を公表しました。

 それによりますと、2015年中に発生した相続を中心として、申告額が過少なものや申告義務がありながら無申告と思われるものなど1万2,576件(前事務年度比3.8%増)を実地調査し、そのうち83.7%にあたる1万521件(同6.0%増)から3,523億円(同6.9%増)の申告漏れ課税価格を把握して、加算税107億円を含む783億円(同9.3%増)を追徴課税しました。
 実地調査1件あたりでは、申告漏れ課税価格2,801万円(前事務年度比3.0%増)、追徴税額623万円(同5.3%増)となりました。
 また、申告漏れ額が多額だったことや故意に相続財産を隠ぺいしたことなどにより重加算税を賦課した件数は1,504件(同15.7%増)となり、その重加算税賦課対象額は576億円(同6.7%増)、重加算税賦課割合は14.3%(同1.2ポイント増)となりました。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成31年2月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》勤怠時間の把握と勤怠システム

◆勤怠管理をしていますか?
 近年、労働時間の勤務時間を記録していないで未払い残業などを請求されるケースが増えており、一旦未払い残業代を請求されると会社側が不利な事が多く、ほぼ無力で請求された通りの結果になる可能性が高い状況になっています。
 働き方改革の一環で労働安全衛生法の改正もあり、2019年4月からは管理職の労働時間の把握を企業に義務付ける方針です。また、労働基準法の改正で残業時間の上限規制(中小企業2020年4月施行)が強化され、従業員側と労使協定を交わしても年間720時間、1カ月で100時間未満まで、2カ月から6カ月平均で月80時間以内となり、上限規制が守られない時は「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」と厳しい罰則も予定されています。
 まだ、労働時間を把握していない企業では、勤怠管理をして従業員の労働時間を把握することは急務と言えるでしょう。

◆勤怠管理の方法とハードル
 皆さんの企業では勤怠管理方法は紙、Excel、タイムカード等何を使用しているでしょうか。勤怠管理はタイムカードや紙による管理からITを活用した勤怠管理システム導入が進んできています。勤怠管理システムとは、自動的に勤怠が集計され意図していた集計結果が表示されるものです。
1.出勤簿(勤務表)への客観的な時刻の記録が可能
2.労働時間の集計を自動化する
3.労働時間の管理強化と業務の効率化を両立する、というものです。
 導入のメリット、デメリットとしては、
(1)労働時間の客観的把握
(2)労働時間、休暇取得等の管理強化
(3)時間集計、休暇等の業務効率化
上記の(1)と(2)は簡単に実現できますが(3)の業務効率化の実現ができるかどうかがポイントになります。
 業務効率化がなぜ重要なポイントかと言えば、勤怠システムをそのまま使っただけではできない勤怠ルールを定義してシステムに落とし込む必要があるからです。就業や勤務形態等の状況に対応させる設定が必要です。いちいち手修正をしていては効率化が図りにくくなってしまう事があるからです。