(後編)国税庁:2017事務年度の個人に対する所得税調査を公表!

(前編からのつづき)

 また、実地調査に含まれる着眼調査(資料情報や事業実態の解明を通じて行う短期間の調査)は、前年度比9.4%増の2万3千件行われ、そのうち1万7千件から同5.3%減の814億円の申告漏れをみつけて、60億円を追徴し、1件あたり平均申告漏れは351万円となりました。
 さらに、簡易な接触は同4.7%減の55万件行われ、そのうち32万4千件から同10.8%減の3,143億円の申告漏れをみつけて、249億円を追徴し、1件あたりの平均申告漏れは57万円となりました。

 所得税調査の特徴は、高額・悪質と見込まれるものを優先して、深度ある調査(特別調査・一般調査)を重点的・集中的に行う一方で、実地調査までには至らないものは電話や来署依頼による簡易な接触で済ませる模様です。
 なお、業種別1件あたりの申告漏れ所得金額が高額な業種は、キャバクラ(2,897万円)が1位となり、以下、風俗業(1,974万円)、不動産代理仲介(1,774万円)の順に続きました。

(注意)
 上記の記載内容は、平成31年1月11日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)国税庁:2017事務年度の個人に対する所得税調査を公表!

国税庁は、2017事務年度(2018年6月までの1年間)の個人に対する所得税調査を公表しました。
 それによりますと、前事務年度(64万7千件)に比べて3.8%減の62万3千件行われました。
 そして、そのうち約62%にあたる38万4千件(前事務年度40万件)から同1.7%増の9,038億円(同8,884億円)の申告漏れ所得を見つけました。
 その追徴税額は同7.6%増の1,196億円(同1,112億円)となり、1件平均145万円(同137万円)の申告漏れに対し19万円(同17万円)を追徴しました。

 実地調査における特別調査・一般調査(高額・悪質な不正計算が見込まれるものを対象に行う深度ある調査)は、前事務年度に比べて1.5%増の5万件を実施し、そのうち約87%にあたる4万4千件から同12.9%増の総額5,080億円の申告漏れ所得をみつけて、同17.8%増の887億円を追徴しました。
 件数は、全体の8.0%となり、申告漏れ所得金額は全体の56.2%を占め、調査1件あたりの申告漏れは1,021万円となりました。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成31年1月11日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》労働条件通知がメールでも可能に

◆労働条件通知書は書面以外でも可
 企業が労働者に向けて提示する労働条件ですが、労働基準法第15条では書面による通知をするとされていました。しかし2019年4月から、労働条件の通知を書面だけでなく電子メールやFAXで知らせても良いようになります。既に社内ITを実用化しているところも多いと思いますが、新年度からFAXや電子メール等でも通知を可能にするよう、規制を緩和する事になりました。書面として印刷できればよいと判断されたので、企業にとって印刷、郵送のコストを抑え利便性も高まるでしょう。

◆労働基準法の施行規則改正
 働き方改革関連法に基づく省令で労働基準法施行規則第5条第4項に追加されました。
「法第15条第1項後段の厚生労働省令で定める方法は労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする。ただし、当該労働者が同項に規定する事項が明らかとなる次のいずれかの方法によることを希望した場合には、当該方法とすることができる。
(1)ファクシミリを利用してする送信の方法
(2)電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信の送信の方法(当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る。)」

◆本人の希望が前提
 今回の改正は労働者がFAXや電子メール等での通知を希望する事が条件なので本人に通知方法を確認してから行い、FAXやメールでの通知を希望しない時は今まで通り書面での通知となります。
 電子メールで送信する場合の具体的なファイル形式(メール本文か添付ファイルかどちらでもよいか等)や本人が確実に受け取ったかどうかの確認の要否等、まだ詳細は明らかになっていません。新年度に施行されるまでに何らかの基準が示されるかもしれません。

《コラム》働き方改革法と企業の意識

人材採用のエン・ジャパン株式会社は、人事担当者向けの総合サイトで、経営者や人事担当者に向けて「働き方改革法案について」のアンケート調査を行いました(回答648通)。それを基に企業が「働き方改革法案」に対してどこまで認識があるか、どう感じているかの実態が見えてきました。
1、「働き方改革法案」の認知度
 「働き方改革法案を知っているか」という問いには「概要を知っている」74%、「内容を含め知っている」21%と認知度は95%に達しています。
2、経営への支障度合い
 「働き方改革法案」が施行される事で経営に支障が出るかという問いには「大きな障害が出る」9%「やや支障が出る」38%とあり、企業規模が大きくなるにつれて「支障が出る」と回答する割合が増加しています。
3、経営に支障が出そうな法案について
 「経営に支障が出る」と回答した方への「支障が出そうな法案はどれか」という問いに対しては「時間外労働(残業)の上限規制」66%がもっとも多く、次に「年次有給休暇の取得義務」54%、「同一労働同一賃金の義務化」43%と続きます。業種別にみると広告、出版、マスコミ関連の「時間外労働の上限規制」80%、「年次有給休暇取得の義務化」70%、商社の「時間外労働の上限規制」74%が目立っています。

◆働き方改革の時間外労働の上限規制とは
 残業時間は月45時間、年360時間を原則とするが年720時間までは延長が可能であり、繁忙期は単月で100時間未満の残業を例外的に認めるという内容です(2019年4月施行、中小企業は20年から)。年次有給休暇取得義務は年に5日は有給休暇を消化させる義務が生じます(19年4月施行)。
 働き方については、各人が家庭の事情や自身の体調、結婚、出産等を抱えて仕事をしているので国が柔軟に多様化した対応策を示す事が必要と言う意見もあれば、中小企業には厳しいかもしれないがよい制度とする肯定的な意見もある一方で、残業の上限規制や有給の義務化は生産性が下がり、人員を増やせば人件費に跳ね返りコスト削減のため無理をしかねないのではなど、否定的な意見もあります。

確定申告でマイナンカード不要に

 2月18日から始まる2018年分の確定申告シーズンに向け、国税庁はサイト上に特集ページを開設しました。スマートフォン・タブレット用の申告書作成コーナーが新しくなったほか、今年から導入される「ID・パスワード方式」によってマイナンバーカードを取得せずに申告書を自宅から送信できるようになっています。

 一般納税者が申告書を送信する際は、これまで送信者のマイナンバーカードと、それを読み込むICカードリーダライタが必要でしたが、新たな方式では、税務署で職員による対面の本人確認を行っておけば、カードやリーダライタを必要とせず電子申告を行うことが可能となります。

 同方式について国税庁は「マイナンバーカードおよびICカードリーダライタが普及するまでの暫定的な対応」としていますが、国民の間に根強いマイナンバー不要論に拍車がかかるおそれもありそうです。

 なお、会計事務所が顧問先の申告書を代理送信する際にはID・パスワード方式は利用できず、従来どおり日税連が発行する電子証明書が必要となります。

<情報提供:エヌピー通信社>

教育資金贈与特例がマイナスの見直し

30歳未満の子や孫への教育資金の一括贈与を1500万円まで非課税にする「教育資金目的の一括贈与」の特例について、2019年3月末とされていた期限が2年間延長されるとともに、適用対象が狭められます。現在、贈与を受ける側の子や孫は30歳未満であることのみが条件となっていますが、大綱ではこれに収入要件を加えました。

 現在、贈与を受ける側の子や孫は30歳未満であることだけが条件となっていますが、大綱では所得1千万円という収入要件を加えました。自分の収入の中で学ぶことが可能な人は非課税特例の対象外にするということのようです。

 また贈与された資金の使い道も限定されます。特例ではスポーツジムやピアノなど趣味の習い事も適用対象とされているのですが、23歳以上の人については、19年7月以降は趣味の習い事には使えなくなります。ただし厚生労働省が認める職業訓練や資格取得の講座は認められることとなります。さらにこれまでと異なり、贈与者の死亡前3年以内に特例を適用していると、相続税が課税される「持ち戻し」の対象となるよう改められます。

<情報提供:エヌピー通信社>

消費税還付や海外取引に国税ギラリ

消費税調査や海外取引法人への法人税調査で発覚する申告漏れ所得と追徴税額が、ここ数年で急速に増えています。国税庁によると、平成29年度の消費税調査による追徴税額の総額は748億円で、5年前の474億円と比べて57.8%増にもなりました。また、29年度の法人税調査で把握された申告漏れ所得は9996億円で5年前から4億円の微増でしたが、海外取引にかかる申告漏れ所得に限れば5年前の2452億円から3670億円へと49.7%増でした。

 消費税や海外取引にからむ不正としては、インターネットで海外旅行客向けのツアーを販売するA社が、ソフトウェア取得の対価を消費税の課税仕入れとして多額の還付申告をしたケースがあります。実際には取得の事実はなく、無申告法人に虚偽の契約書を作成させ、申告の際の添付資料にしていました。

 また、自動車部品の卸売業を営むB社は租税回避地に100%子会社を設立。子会社は決算書で、グループ会社への売上割合が本来は55%であるにもかかわらず、45%として申告していました。この虚偽申告は、「外国子会社合算税制」の適用を免れるためのものです。外国子会社の売上の過半がグループ会社以外の第三者取引によるものでなければ外国子会社合算税制の対象となりますが、B社の子会社の第三者取引割合は45%(100%グループ会社への売上55%)であるため、B社は子会社の売上も合算して法人税を納めなければなりませんでした。

 広告代理店業を営むE社は、自社所有の社員専用宿舎の空き部屋を民泊として観光客などに貸し出し、代表者が個人名義で代金を受け取っていましたが、申告除外していました。税務署は代表者が使用するパソコン内の民泊仲介サイトのアカウント情報から取引履歴を確認。税務申告の際に民泊収入を含めず、消費税額を圧縮していた事実を把握しました。

<情報提供:エヌピー通信社>

 

(後編)国税庁:2017事務年度の富裕層に対する所得税調査を公表!

(前編からのつづき)

 調査事例をみてみますと、国内外の仮想通貨取引に係る事案があり、調査対象者Aは、仮想通貨の取引による利益について自主的に修正申告書を提出しましたが、部内資料等から修正申告書の内容を大きく上回る利益を得ていることが想定され、調査の結果、Aは多数の仮想通貨取引所に本人及び妻名義の取引口座を開設し、自身で開発した仮想通貨の自動売買プログラムを使用して多額の利益を得ていた事実が把握されました。

 Aは、インターネット情報で、仮想通貨取引の利益は申告する必要があることを知り、本人名義のうち、一部の仮想通貨取引の利益は修正申告しましたが、妻名義などで行った仮想通貨取引による利益は修正申告書に含めていなかったことを認めました。
 その結果、Aに対して、所得税1年分の申告漏れ所得金額約5,000万円について、追徴税額(重加算税を含む)約2,400万円が課されました。
 国税庁では、国外送金等調書、国外財産調書、租税条約に基づく自動情報交換資料などの情報を活用して、海外取引・海外資産関連収入の的確な把握及び積極的な調査に取り組んでいます。

(注意)
 上記の記載内容は、平成31年1月11日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)国税庁:2017事務年度の富裕層に対する所得税調査を公表!

国税庁は、2017事務年度(2018年6月までの1年間)の富裕層に対する所得税調査を公表しました。
 それによりますと、前事務年度比24.6%増の5,219件の富裕層に対する実地調査が実施し、同51.9%増の申告漏れ所得金額670億円を把握しました。

 調査件数の約82%にあたる4,269件(前年対比25.3%増)から何らかの非違をみつけ、加算税を含め177億円(同39.4%増)を追徴し、1件あたりの申告漏れ所得金額は1,283万円(同21.7%増)、追徴税額339万円(同11.5%増)となり、追徴税額は所得税全体の実地調査(特別・一般)1件あたり178万円と比べて約1.9倍にのぼりました。
 国税当局では富裕層の海外投資等にも注目しており、同期間中に海外投資を行っていた862件(前年対比61.7%増)に対して調査を実施し、約83%にあたる713件(同49.2%増)から269億円(同96.4%増)の申告漏れ所得金額を把握、71億円(同73.2%増)追徴し、1件あたりの申告漏れ所得金額は3,119万円(同21.1%増)にのぼりました。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成31年1月11日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(後編)不動産所得の事業的規模とされる判断基準とは?

(前編からのつづき)

 物件を共有している場合は共有物件全体で判断し、貸室と貸家の両方を所有している場合は貸室2室を貸家1棟として、駐車場は5台分を貸室1室にそれぞれ換算して、基準を満たせば事業的規模となります。
 したがいまして、50台(10室相当)以上の駐車場業であれば事業として認められますが、50台以下であっても、管理状況や関与する人員などによって事業として認められるケースがあります。
 あくまでも5棟10室基準は簡便な判定方法であり、実際には実態を総合的に勘案して判断します。

 なお、事業的規模になりますと、各都道府県が課税する個人事業税の対象となり、青色申告特別控除額(65万円の控除)を差し引く前の所得から、290万円を差し引いた残額の5%が課税されます。
 また、事業的規模の不動産オーナーで、各種特典を受けるためには家賃収入や経費などを帳簿に記帳する必要があり、作成した帳簿は原則7年間の保存義務がありますので、該当されます方はご注意ください。

(注意)
 上記の記載内容は、平成31年1月4日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。