(前編)不動産所得の事業的規模とされる判断基準とは?

 アパートやマンションを賃貸して得た不動産所得は、その貸付が事業的規模と認められるか否かによって、所得税の取扱いが異なります。
 事業的規模と認められますと、事業専従者給与の経費算入や65万円の青色申告特別控除が可能なほか、業務用資産の取壊し、除却など損失の全額の経費算入、賃料収入などが回収不能となった場合の貸倒損失がその年分の必要経費になります。

 例えば、家賃が回収不能なことが明らかとなったとき、事業的規模でない場合には、収入として計上した年の所得から、なかったものとして取り扱われますが、事業的規模であれば、その未回収家賃をその年の必要経費として計上して、所得から差し引くことができます。
 事業的規模とされる判断基準ですが、一般的には、貸付資産の規模や賃貸料の収入状況などの要素を総合的に勘案して判断します。
 実務的には、独立家屋の貸付はおおむね5棟以上、貸間・アパートなどは独立した室数がおおむね10室以上という形式的な基準(いわゆる5棟10室基準)が設けられております。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成31年1月4日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》法人が受け取る生命保険金

契約者を法人、被保険者を経営者とする法人契約の生命保険は、退職金等の準備や経営者の万が一に備えるといった保障目的からの加入が考えられますが、支払った保険料の一部もしくは全部を経費として損金計上できることから節税目的で加入される法人も多いと思います。
 支払った保険料の分だけ利益が圧縮され法人税を抑えることができますが、一方で生命保険金を受け取った際に生じる課税関係についても把握しておく必要があります。

◆保険金受取の会計処理
 法人が受け取る生命保険金は、所得の計算上全額益金に計上します。このとき、当該保険に係る支払保険料のうち資産計上している金額があれば損金に振り替えます。
 法人が経営者の遺族へ退職金を支払う場合、適正額と認められる部分は損金に計上することができます。また、弔慰金についても一定の金額までは、損金に算入することができます。
 したがって、計算上では受取保険金の額から退職金及び弔慰金の額を控除した残額に対し法人税がかかると考えることができます。

◆遺族が死亡退職金を受け取った場合
 経営者の死亡によって遺族が死亡退職金を受け取る場合、死亡後3年以内に支給が確定したものは、相続財産とみなされて相続税の課税対象となります。ただし、死亡退職金等については相続税法上、非課税限度額(500万円×法定相続人の数)が設けられているため、実際には死亡退職金等の額から非課税限度額を控除した残額に相続税が課税されることとなります。
 また、経営者の死亡後3年を超えて支給が確定した退職金を遺族が受け取った場合には、一時所得として所得税の課税対象となります。
 
 一般には節税商品と認識されている法人契約の生命保険ですが、後々の課税関係を理解した上で、万が一の時の保障のため、確実な資産運用のためなど目的を明確にして商品選びをすることが重要であるといえます。

《コラム》プロジェクトの成功要因

経営の重要課題を解決するために、しばしばプロジェクトチームが活用されていますが、次の様なトラブルが生じて暗礁に乗り上げてしまうことがあります。
・プロジェクトに取り組むメンバー間に深刻な意見の違いが生じて、進捗できない。
・大きな失敗が生じ、そのリカバリーのため、予算が大幅に超過した。
 このような障害を未然に防止し、プロジェクトを成功に導くには、どのような対処策があるでしょうか。

◆プロジェクト成功の鍵
 プロジェクトを成功させるには、次の様に、人材・課題解決手段・予算に関する成功要因を確保しなければなりません。
(1)リーダーがプロジェクトテーマの目標達成に志と能力・経験をもち、とりわけプロジェクトとチームメンバーのマネジメントに優れていること。
(2)課題解決に要するキーテクノロジーが適切に選択され、プロジェクトのチームメンバーが、キーテクノロジーを駆使する能力に優れていること(通常は異分野・複数のテクノロジーが必要なことから、それぞれを駆使できるメンバー間の協力関係が確保されていること)。
(3)予算が確保されていること。
(4)上記(1)~(3)と同時に、プロジェクトのリーダー・メンバーにより「基本構想」が策定され、プロジェクトが成功した時の姿が具体的に共有されて上位組織の承認を得ていること。
(5)プロジェクト推進・管理の基本方針が定められていること。
(6)推進プロセスのマネジメントが、リーダーのファシリテーションにより適切になされていること(特にプロセスでの課題解決の成功要因獲得や障害排除へ向けたメンバー間の共創)。
 このように、プロジェクト成功の鍵は広く、人材・テクノロジー・基本構想の確立・推進マネジメントに及びます。

◆経営者・管理者の留意点
 プロジェクトの成功要因は、人材確保に帰結します。このような人材確保は、長期人材育成・確保の人事施策によってのみ成功させることが出来ます。トップは日頃から上級管理者の協力を得て、事業分野別の中長期人材確保計画を推進したいものです。

【時事解説】針なし注射器が治療を変える その2

近年、医療の現場では、患者の痛みを減らす医療が重視されるようになり、針のない注射器に注目が集まっています。日本では実用化に至っていませんが、米国などの海外ではすでに認可が下りています。
 針がないのに、どのようにして体内に薬を入れるでしょうか。針のない注射器には、いくつか種類があります。具体的な方法を紹介すると、注射器から高圧が生じ、高速で気泡を発射。気泡がはじける力で皮膚に微細な穴を空けます。その後、薬液が高速噴射されて、穴から薬が体内に注入されます。薬が皮膚内に浸透するので針が不要になります。このときに開ける穴が極めて小さいので、針を使う注射器のような痛みは感じられません。

 一般的に、医療機器に関するビジネスは専門知識が必要になり、参入障壁が高いといわれています。ただ、日本の中には、プラスチック部品のメーカーが、針無し注射器の部品製造を手掛けているケースもあります。
 このメーカーは、もともと漆器の製造からはじまり、自動車部品や通信機器などのプラスチック部品の製造を営んでいました。注射器とは全く関係のないようにみえますが、同社が有する、プラスチック樹脂の先端に精密な穴を開けるという高い製造技術が針無し注射器の部品として応用されることになったのです。

 今後、高齢化がますます進む中、医療に関する市場はビジネスチャンスの宝庫です。参入障壁が高いといわれていますが、実は、自社の技術を活かす場は探せばあるものです。なかでも、針なし注射器のような、痛みを軽減させる分野は大きな成長が期待できるため、狙い目でもあります。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】針なし注射器が治療を変える その1

近年、医療の現場では、患者の視点に立ち、痛みや負担を和らげる検査や治療が重視されるようになりました。従来、医療の現場で用いられる機器は、性能が最も優先順位が高く、たとえば、乳がんや大腸がんなどの検査ならば、がんを見つけることが優先され、患者の苦痛は犠牲になっています。結果、病院では痛みや苦痛を伴うことが多くあります。
 やがて、検査や治療器具の性能が高まるに従い、患者の心情に寄り添い、痛みを減らすことが徐々に重視されるようになりました。

 取り組みの一例を挙げると、医療機器のメーカーであるキヤノンや京都大学は乳がん検査時の痛みを抑える技術の開発を進めています。現在、乳がんの検査は、乳房を2枚の板で挟み、押しつぶした上でⅩ線画像を撮影する方法が主流です。患者からは不評の声が上がっていますが、新技術により、こうした評判も変わりそうです。

 最近、大きな注目を集めているものに、針のない注射器があります。注射といえば予防注射をはじめ、針の痛みからくる恐怖心が脳裏にこびりついている人は多いでしょう。
 現在、針がなく、肌にあてるだけで体内に薬を注入できる注射器の開発が進んでいます。針で注射するより痛みは格段に少なく、薬剤も均等に広がるので医療事故防止につながるといえます。また、使い捨てなので感染症対策にもなります。

 実用化はまだ端緒についたばかりで、米国やドイツ、ドバイ、シンガポールなど、一部の国で認可が下り始めところです。日本もいずれ認可が下りる日が来るのではないでしょうか。痛みの少ない注射が実現したら、患者としては喜ばしい限り。広まる可能性は大いに期待できます。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業における業務プロセスの見直しによる生産性向上②

では、中小企業において、具体的にどのような業務プロセスの見直しによる生産性向上の取組がみられるのでしょうか。そこで「中小企業白書2018年版」において、業務効率化を実現させ生産性を向上させた企業として紹介された株式会社小豆島国際ホテル(本社:香川県土庄町)の事例についてみていきましょう。

 株式会社小豆島国際ホテル(従業員125 名、資本金1億円)は、1963年創業の客室120室のリゾートホテルを運営する事業者です。 小豆島では少子高齢化と人口減少が進む状況において、同社が今後も人材を確保し続けていくためには、生産性向上を進め労働条件を整備していくことが重要だと考えていました。

 そこで同社では、外部の経営コンサルタントを活用し業務の見直しを進めました。総支配人のリーダーシップのもと、業務改善に意欲的な従業員とコンサルタントで構成するチームを編成して客室整備業務等における既存の業務の無駄を洗い出し、不要業務の廃止や見直しを行いました。 例えば、一部客室に急須の設置をやめてマグカップとスティック茶に簡略化を行った結果、急須の漂白時間が短縮され、年間で30 時間程度の業務時間の削減につながりました。このように業務の必要性を精査し、廃止や見直しを進めることによって、年間で1,800時間もの業務時間の削減効果が得られました。 さらに、一連の取組をきっかけに従業員が自発的に改善提案を行う風土が広がったことで、個々の従業員の創意工夫が発揮され顧客対応も改善しました。

 このように業務プロセスの見直しを進めることは、業務の効率化だけでなく付加価値向上や人材確保の効果ももたらすのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業における業務プロセスの見直しによる生産性向上①

中小企業において人手不足が深刻化する中、現有の従業員を生かすべく労働生産性向上に向けて、業務プロセスの見直しによって業務効率化を図ることが求められています。
 以下で、「中小企業白書2018年版」において実施した、「人手不足対応に向けた生産性向上の取組に関する調査」に基づき中小企業における業務プロセスの見直しの現状と課題などについてみていきましょう。

中小企業における業務見直しの実施状況をみると「部門単位で業務の見直しを行っている」が26.7%、「個々の従業員のレベルで日々工夫しながら業務の見直しを行っている」が24.9%と続いており、多くの中小企業が、業務見直しの取組を行っていることがわかります。

 業務見直しの具体的な取組内容について回答割合の高い順にみると、「業務の標準化・マニュアル化」が40.2%、「不要業務・重複業務の見直し・業務の簡素化」が40.0%、「業務の見える化」が30.6%となっています。

 業務見直しに取り組んだきっかけについて回答割合の高い順にみると、「人手不足対応」が46.5%、「業務に非効率・無駄を感じた」が 41.0%、「働き方改革への取組」が31.4%となっています。

 業務見直しを行うに当たっての課題についてみると、「業務に追われ、業務見直しの時間が取れない」が 50.6%と他の項目に比べて高い割合を示しており、次いで「取組を主導できる人材が社内にいない」24.1%、「取組の目的や目標が上手く設定できない」17.5%の順となっています。

 このように、中小企業における業務プロセスの見直しにおいては、業務見直しの時間の確保に加え、推進役となる人材の不足等、業務見直しを行うための環境整備も課題となっているのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

ローン減税の控除期間3年延長

 2019年度の与党税制改正大綱が公表されました。消費増税に備えた経済政策の大きな目玉の一つが住宅ローン減税です。消費税率が引き上げられる2019年10月から20年末までの間に住宅を購入し、住み始めたマイホームについて、所得税や住民税の控除期間が現行の10年から3年間延長されます。

 現在の住宅ローン控除は、マイホームを購入した時に年末の借入残高の1%に相当する額を10年間、所得税などから控除される制度です。最大で1年あたり40万円、10年合計で400万円(長期優良住宅は500万円)が税額控除されます。

 今回の見直しでは、3年間の延長期間は建物価格の2%の金額が3年かけて還付されることとなり、4千万円の建物であれば、3年間の合計で80万円の控除が受けられることになります。ただし、①建物価格の2%を3等分した額と、②借入残高の1%の金額を比較して少ない方の額の減額となります。

 このほか増税に備えた対策としては、一定の条件を満たす購入者に一時金を渡す「すまい給付金」の拡充がすでに決定しています。現在は最大30万円を配っていますが、消費増税後は最大50万円に拡大されます。

<情報提供:エヌピー通信社>

成人年齢引き下げを相続税にも適用

民法改正で成人年齢が20歳から18歳へ引き下げられることに伴い、税法でも現在20歳以上や20歳未満となっている様々な年齢要件が18歳に改められます。新しい年齢要件は2022年4月1日以後に得た財産にかかる相続税、贈与税に適用されることとなります。

 これまで「20歳以上」となっていた要件が「18歳以上」に改められるのは、相続時精算課税制度や直系尊属から贈与を受けた時の贈与税の特別税率、事業承継税制とその特例制度など。またこれまでの「20歳未満」から「18歳未満」へと変更されるのは、相続税の未成年者控除が該当します。

 なお税理士法4条では、税理士となる資格を持たない者に未成年者を挙げており、現行では20歳未満だと税理士になれませんが、成人年齢の引き下げに伴い、18~19歳の人も資格を得られるようになります。

<情報提供:エヌピー通信社>

《コラム》平成31年度税制改正大綱 資産課税編

◆個人事業者版の事業承継税制創設
 平成30年度税制改正では、非上場会社の事業承継税制の大胆な見直しが行われましたが、これに続き31年度改正では、個人事業者の事業承継税制が創設されました。
 総務省の調査では、平成37年には個人事業者の73%(150万人)が70歳以上となると報告され、世代交代を後押しする施策が求められています。そのため、10年間の時限措置として、承継資産(土地・建物・機械等)に係る贈与税・相続税の100%が納税猶予される制度が整備されます。
 なお、この制度は小規模宅地等(特定事業用宅地等)との選択適用になります。

○個人事業者の事業用資産の納税猶予(相続税)
対象者:認定相続人(承継計画の認可)
適用期間:H31.1.1~H40.12.31
要件:①相続又は遺贈により特定事業用資産を取得し、事業を継続していくこと②申告期限までに担保提供・申請書提出
対象資産:特定事業用資産(不動産貸付事業除く)
①土地(地積400㎡まで)、②建物(床面積800㎡まで)、③一定の償却資産
※青色申告書に添付する貸借対照表に計上されているもの
承継後:継続届出書を税務署に提出

◆特定事業用宅地等(小規模宅地)の見直し
 小規模宅地等の減額制度の濫用を防止する観点から、特定事業用宅地等から相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等が除かれることとなります。ただし、その宅地の上で事業供用される償却資産の価額が土地の価額の15%以上であれば、適用対象とされます(H31.4以後の相続より適用)。

◆民法の成人年齢引下げに伴う改正
 平成34年4月以後の相続・贈与より、次の年齢が20歳から18歳に引き下げられます。
・相続税:未成年者控除の対象者の年齢
・贈与税:下記の受贈者の年齢要件
①相続時精算課税制度、②直系尊属から贈与を受けた場合の特例税率、③非上場株式等に係る贈与税の納税猶予

◆一括贈与非課税に受贈者の所得要件が追加
 「教育資金」、「結婚・子育て資金」の一括贈与非課税については、受贈者の所得要件が設けられることとなりました。平成31年4月以後の贈与からは、受贈者の贈与前年の合計所得金額が1,000万円を超える場合には適用できません。また、23歳以上の趣味の習い事代は「教育資金」の範囲外とされました(H31.7以後の贈与より)。