(前編)少額減価償却資産の会計処理と固定資産税の関係に注意!

税法上、使用可能期間が1年未満又は取得価額10万円未満の減価償却資産については、少額減価償却資産として取得・事業供用時に一時に損金算入することが認められております。
 また、取得価額が20万円未満の減価償却資産については、通常の減価償却のほかに、3年で均等償却(1/3の年償却)する一括償却資産の損金算入を選択することができます。

 10万円未満の資産の損金算入と3年均等償却は、すべての事業者が対象となりますが、青色申告書を提出する中小企業者等は、さらに、取得価額30万円未満の減価償却資産を取得した場合に、その取得価額の全額(その事業年度の取得価額の合計額が300万円に達するまでを限度)を損金算入(即時償却)できる少額減価償却資産の特例があります。
 その事業年度の課税所得の程度により、どれを選択するのかが判断材料になりそうですが、それ以外に注意したいのは地方税の固定資産税との関係です。
 なぜなら少額減価償却資産が固定資産税の課税客体(償却資産)となるかどうかは、選択した会計処理によって異なるからです。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年12月10日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》不動産管理会社に支払う不動産管理料の適正額

賃貸物件を所有する個人が不動産管理会社を設立して、不動産の管理をその管理会社に委託し、管理料を支払うことで所得を分散させるという一般的な節税手法があります。
 支払った管理料の分を必要経費とし個人の所得税を抑えることができるというものですが、不動産管理料が不当に高額である場合、適正額を超えた部分についてはその経費性を否認されることとなるため、留意が必要です。

◆管理料の相場と決定方法
 同族経営の不動産管理会社に支払う管理料は、事業運営方式にもよりますが5%~15%が相場です。過去の裁判例を参考にして手数料率を決定するという方法もありますが、表面的な数字ではなく、不動産管理会社が実際に行う管理業務の内容、その業務の周辺相場、同様の業務を他業者に委託した場合にいくらまでなら支払うかが管理料決定の基準となります。

◆同族会社の行為計算否認規定
 不動産管理料がその管理業務の実態と照らし合わせて「不当に高額である」として否認される場合にその根拠となるのが、所得税法第157条「同族会社等の行為又は計算の否認等」の規定です。当該規定は、課税の公平を図る趣旨から、所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合に適用されます。同族会社であるがゆえに第三者取引には通常見受けられないような料金設定がなされた場合、その不相当に高額な部分が必要経費として認められないこととなります。

◆適正額と業務上の留意点
 管理料については、個々の物件の規模、地域性、管理業務の具体的な内容を総合的に勘案し、業務内容に則して決定することが必要です。また、修繕費や共益部分の費用をどちらで負担するのかを事前に決定したり、さらには業務日誌を作成する、メールやFAXといった日々の業務のやり取りを保管するなど業務実態を明確にしておくことも重要です。

 

《コラム》健康保険被扶養者認定事務の変更

◆平成30年10月1日より変更
 日本年金機構が受けつける「健康保険被扶養者異動届」の添付書類の取り扱いが変更となり、日本国内に住む扶養家族の認定の際、申立てのみによる認定は行わず証明書類に基づき身分関係と生計維持関係を確認の上認定する事になりました。
 一定の要件を満たしている場合には証明書類添付を省略できます。

◆届出に必要な添付書類と省略事項
 扶養認定を受ける方が被保険者と同居している時は下記の(1)と(2)、別居している時は(1)(2)(3)の書類が必要です。
(1)続柄の確認……戸籍謄本か抄本あるいは住民票(同居で被保険者世帯主である事、提出日より90日以内に発行されたもの)
省略できる時……被保険者と扶養認定を受ける方双方のマイナンバーが届出に記載されている事と、扶養認定を受ける方の続柄が届書の記載と相違ない事を事業主が確認し備考欄の「続柄確認済み」の□にレを付している、又はその旨記載している。
(2)収入の確認……年間収入が「130万円未満」であることを確認できる課税証明書等(60歳以上の方、障害厚生年金の受給要件に該当する程度の方は180万円未満)
障害・遺族年金、傷病手当金、失業給付等非課税対象の収入がある場合、受取金額の確認ができる通知書控え
省略できる時……扶養認定を受ける方が所得税法上の控除対象配偶者又は扶養親族である事を事業主が確認し、事業主確認欄の「確認」を○で囲む。
又は扶養認定を受ける方が16歳未満の場合は省略できます。
(3)別居の場合……認定には別居の確認が必要になります。仕送りの事実と仕送り額が確認できる振り込みの通帳写しや、現金書留で送金するならばその控え
省略出来る場合……扶養認定を受ける方が16歳未満又は16歳以上の学生
 今まで被扶養者の認定について健康保険組合ほど証明は求められていませんでしたが、年金機構でも添付書類を求められるようになりました。
 届出様式も協会管掌事業所用被扶養者異動届が新しくなりました。

出国税が1月7日スタート

日本を出国する人に一律1千円を負担する新税「国際観光旅客税」が、1月7日にスタートします。恒久的に徴収する国税の新設は、1992年に導入された「地価税」以来27年ぶりのことです。

 課税対象となるのは、日本人か外国人かにかかわらず、飛行機や船で外国に渡航する、2歳以上の全ての人。例外的に、日本への入国後24時間以内に出国する乗り継ぎ(トランジット)客は課税されず、また外交官や公用機で出国する政治家、飛行機や船の乗務員なども対象外となっています。

 当初は2019年4月のスタートを予定していましたが、2月の「春節」のシーズンに訪れる大量の中国人を当て込んで、同年1月に前倒しされました。税収は、旅行に関するインフラの整備、海外への情報発信強化、観光資源の充実などに利用されます。

 なお、同税が導入される1月7日の前日までに発券した航空券については、実際のフライトがそれ以降であっても税を課されません。ただし回数券などで7日以降に出国日が決まるケースや、いったん発券をして7日以降に出国日を変更するケースなどは課税対象となります。

<情報提供:エヌピー通信社>

民法の改正相続法の施行は来年7月

民法の改正相続法の施行日を2019年7月とする政令が公布されました。相続制度の大幅な見直しは1980年以来約40年ぶり。従来の相続制度を大きく変える内容が多数盛り込まれ、特に配偶者の権利を拡大するものとなっています。

 配偶者に関する大きな変更はふたつで、ひとつは結婚して20年以上の夫婦間で生前贈与もしくは遺贈をした自宅を、相続の際の遺産分割の対象から除外する特例の創設です。また、配偶者が所有権を相続しなくても自宅に住み続けられる「配偶者居住権」が導入されます。この「配偶者居住権」に限っては2020年4月施行です。

 改正法では、介護などで貢献した親族の金銭要求制度も導入されます。長男の嫁など法定相続人でない人でも遺産分割の際に一定の金銭を「特別寄与料」として要求できるようになります。また、相続した預貯金のうち、生活費や葬式費用に充てる金銭に限り仮払いを受けられる制度もスタートします。

 なお、相続法改正の施行日を定める政令の交付と同日に「遺言書保管法」の施行日を20年7月10日とする政令も公布されました。この制度は法務局が自筆証書遺言の原本を保管し、相続後に遺族の請求を受けて写しを交付するもの。自宅での保管と異なり、紛失や親族による改ざん・隠匿の心配はなくなります。また保管制度を利用すると、遺言書の加除訂正の状態などの内容を家庭裁判所に確認させる手続き(検認)が不要になります。

<情報提供:エヌピー通信社>

仮想通貨の相続税申告が簡素化

国税庁は11月下旬、相続で仮想通貨を取得した時の申告方法を簡素化することを発表しました。これまで仮想通貨の相続税申告については統一された取り扱いが定められていなかったため、相続人が各交換業者のサイトにログインするなどして残高を調べるしかありませんでした。

 国税庁が定めた新たな方法では、相続で仮想通貨を得た相続人は、各交換業者に仮想通貨の残高証明書の交付を依頼できるようになります。業者は依頼に基づき、相続開始日における残高証明書や取引明細書を発行し、相続人は各業者から交付された証明書を税理士に渡すことで相続税の申告書を作成するというもの。

 また国税庁は同時に、仮想通貨の税務上の取り扱いについてのQ&Aも発表しました。仮想通貨を売却した時や交換した時、仮想通貨で給与を支払った時などの税務処理を解説しています。それによれば、相続で仮想通貨を得た時の評価方法は、市場で取引され、継続的に価格情報が提供されているようなものについては、相続発生時点での市場価格に準じます。

 一方、活発な市場が存在せず客観的な交換価値を示すデータがない仮想通貨については、「仮想通貨の内容や性質、取引実態などを勘案し、個別に評価する」としています。

<情報提供:エヌピー通信社>

(後編)国税庁:2019年1月からQRコード利用のコンビニ納付を開始!

(前編からのつづき)

 確定申告書等作成コーナーからの作成・出力方法とは、確定申告書等作成コーナーにおいて、所得税、消費税、贈与税の申告書を作成する際に、QRコードの作成を選択することで、申告書にあわせて、QRコード(PDFファイル)を印字した書面を出力(作成)します。
 また、国税庁ホームページからの作成・出力とは、国税庁ホームページのコンビニ納付用QRコード作成専用画面において、納付に必要な情報(住所、氏名、納付税目、納付金額等)を入力することで、QRコード(PDFファイル)を印字した書面を出力(作成)します。

 なお、作成したQRコードをスマートフォンやタブレット端末に保存し、スマートフォンやタブレット端末の画面に表示してキオスク端末に読み取らせることもできます。
 現行は、QRコードを利用したコンビニ納付手続きの利用可能なコンビニ自体がまだまだ少ないことから、国税庁では端末を設置する店舗を増やすよう働きかけていくとしております。
 今後の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年12月10日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

 

(前編)国税庁:2019年1月からQRコード利用のコンビニ納付を開始!

国税庁は、2019年1月4日からQRコードを利用したコンビニ納付手続きを開始するとしました。
 これまで、税務署から交付又は送付されたバーコード付の納付書が必要でしたが、2019年1月4日以降は、自宅等において納付に必要な情報(氏名や税額など)をいわゆる「QRコード」(PDFファイル)として作成・出力することにより納付が可能になります。

 利用方法は、
①自宅等で作成・出力した「QRコード」(PDFファイル)をコンビニ店舗に持参
②キオスク端末(「Loppi」や「Famiポート」の端末設置店舗のみ)に読み取らせることによりバーコード納付書が出力
③バーコード納付書によりレジで納付
 最終的にはバーコード納付書を利用しますので、内容はこれまでのコンビニ納付と変わりはなく、納付できる金額もこれまで同様に30万円以下となります。
 なお、QRコードの作成・出力方法には、確定申告書等作成コーナーからの作成・出力する方法と国税庁ホームページからの作成・出力する方法があります。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年12月10日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》損金不算入の延滞金等と損金算入となる延滞金

◆3種類の延滞金
 納付期限に遅れた場合に科せられる罰金ですが、国税・地方税・社会保険料で同じような言葉を漠然と使っていても、その内容に違いがあります。
(1)国税にかかる「延滞税」
 国税については国税通則法第60条で納期限後の納付には「延滞税を納付しなければならない」と定められています。
(注)罰金ではない国税の「利子税」
 法人税の申告納付は事業年度終了の日から2か月以内ですが、所定の場合には期間を延長することもできます。この延長された期間に対応する利息相当分が利子税(国税通則法第64条)と呼ばれます。
(2)地方税の「延滞金」
 地方税法では、第64条(納期限後に納付する法人の道府県民税に係る延滞金)や第65条(法人の道府県民税に係る納期限の延長の場合の延滞金)など、税目ごとに規定があります。地方税では国税での延滞税や利子税ともに延滞金という用語を使います。
(3)社会保険料の延滞金
 社会保険料(健康保険、厚生年金保険、子ども・子育て拠出金)についても、健康保険法第181条(延滞金)等で、督促状の指定する期日以降に納付がされたときは延滞金がかかる旨が規定されています。

◆損金不算入の延滞金
 延滞にかかる罰金を支払った時は、会計上は租税公課等として経費計上します。しかしながら、罰則的意味のため損金には算入されません。法人税法第55条(不正行為等に係る費用等の損金不算入)第3項一号に国税に係る延滞税等、二号に地方税法の規定による延滞金は損金不算入とあります。
 一方、申告期限の延長にかかる分は罰金ではなく利息なので、損金算入です。上記規定ではカッコ書きで除外されています。

◆社会保険料の延滞金は損金算入
 社会保険料の納付遅延に伴う延滞金も罰金でありますが、上記損金不算入の規定で挙げられていないため、損金算入できます。

◆会計帳簿に面倒がらずに明細を書いておく
 延滞金の納付時に上記の区分を会計帳簿に明記しておけば、決算の時に納付書をひっくり返して探す手間は省けます。
 日頃の適切な記帳が大事ということです。

 

《コラム》世界中で動き出したCRS

◆3つの情報交換
 租税条約による情報交換には、1.要請に基づく情報交換、2.自発的情報交換、及び3.自動的情報交換の3つの形態があります。
 「要請に基づく情報交換」は特別な場合です。「自発的情報交換」はついでに得た情報の提供なので偶然的なものです。「自動的情報交換」は法定調書情報の税務当局間の相互送付で、これが期待される基本形です。

◆OECDのCRS
 自動的情報交換については、2017年から、わが国を含む100以上の 国・地域が賛同して、まさに動き出し始めている、OECDのCRS(Common Reporting Standard の略:共通報告基準)があります。
 CRSとは、非居住者の金融口座に関する情報を各国の税務当局間で自動的に交換するための共通化された国際基準のことです。共通化された国際基準を各国で適用することにより、事務負担の軽減や効率的な情報交換を実現しつつ、外国の金融機関の口座を利用した国際的な脱税及び租税回避に対処することを目的としています。

◆日本の国外財産調書の提出状況
 国外財産調書の提出件数は次のように、年々増えていますが、この程度の数字であるわけがない、というのが多くの見方のようです。
 平成25年分…………5.539件
 平成26年分…………8,184件
 平成27年分…………8,893件
 平成28年分…………9,102件

◆CRS初回交換情報
 国税庁は、CRS情報の交換を本年9月までに行うことにしていた、その初回交換の件数等がとりまとめられ公表されました。
 日本国内の非居住者の金融口座情報については、58か国・地域に89,672件提供し、他方、日本の居住者に係る金融口座情報については、64か国・地域から550,705件受領しました。
 予想外に多かったとのニュアンスが滲み出ています。また、公表文は、受領した金融口座情報は、国外送金等調書、国外財産調書、財産債務調書、その他既に保有している様々な情報と併せて分析する、としています。
 なお、CRSには、アメリカは非加盟です。FATCAがあるためです。日本がアメリカから得ている自動的情報交換データは租税条約に依るものです。