今月の税務トピックス② 税理士法人右山事務所 所長 宮森俊樹

(今月の税務トピックス①よりつづく)

3 合計所得金額(所法2①三十ロ等)
 次の①から⑦までに掲げる金額の合計額とされます。
① 純損失又は雑損失の繰越控除、居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除及び特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除を適用しないで計算した総所得金額
② 上場株式等に係る配当所得等について、申告分離課税の適用を受けることとした場合のその配当所得等の金額(上場株式に係る譲渡損失の損益通算の適用がある場合には、その適用後の金額及び上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の適用がある場合には、その適用前の金額)
③ 土地・建物等の譲渡所得の金額(長期譲渡所得の金額(特別控除前)と短期譲渡所得の金額(特別控除前))
④ 一般株式等に係る譲渡所得等の金額又は上場株式等に係る譲渡所得等の金額(上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除又は特定中小会社が発行した株式等に係る譲渡損失の繰越控除の適用がある場合には、その適用前の金額)
⑤ 先物取引に係る雑所得等の金額(先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除の適用がある場合には、その適用前の金額)
⑥ 退職所得金額
⑦ 山林所得金額

Ⅳ 適用関係(平成29年度改正法附則6)
 上記Ⅰ及びⅡの改正は、平成30年分以後の所得税から適用されます。

おわりに
 平成30年分以後の年末調整から配偶者控除又は配偶者特別控除は、居住者から提出された「給与所得者の配偶者控除等申告書」に基づいて行うこととされます。年末調整後、その年の12月31日までの間に配偶者の合計所得金額に異動が生じた場合には、翌年1月の「給与所得者の源泉徴収票」を交付する時までに年末調整の再調整を行うことができます。また、年末調整の再調整によらず従業員が確定申告によって対応することも可能となります。
 特に有価証券を保有している配偶者においては、①上場株式等の配当等で申告不要を選択したもの、②非上場株式等の配当等で年10万円未満のものは配偶者の合計所得金額の算定上カウントしませんので留意して下さい。

今月の税務トピックス① 税理士法人右山事務所 所長 宮森俊樹

配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し

はじめに
 年末近くになると配偶者が就業時間を調整することによって、居住者本人に配偶者控除が適用される103万円以内にパート収入を抑える傾向があり、人手不足のため営業時間の短縮を行う企業も出るなど社会問題となっていました。
 そこで、平成29年度税制改正では、配偶者控除・配偶者特別控除が見直されました。改正された控除額は、最低賃金の全国平均時給1,000円、1日6時間、週5日勤務した場合の年収(144万円)を上回る金額となるように、所得控除額38万円の対象となる配偶者の合計所得金額の上限が85万円(給与所得のみの場合、給与収入150万円)を基準とされています。
 本稿では、改正された配偶者控除・配偶者特別控除の概要及びその実務上の留意点について解説することとします。

Ⅰ 配偶者控除(所法83①)
 居住者が控除対象配偶者又は老人控除対象配偶者を有する場合には、その居住者の所得金額の合計額から38万円(配偶者が老人控除対象配偶者の場合には48万円)を限度として、居住者の合計所得金額に応じた金額が控除できます。
Ⅱ 配偶者特別控除(所法83の2①②)
 居住者が生計を一にする配偶者(「青色事業専従者(所法57①)」として給与の支払を受けるもの及び「白色事業専従者(所法57③)」を除くものとし、合計所得金額が123万円以下であるものに限ります。)で控除対象配偶者に該当しないもの(合計所得金額が1,000万円以下であるその居住者の配偶者に限ります。)を有する場合には、その居住者の所得金額の合計額から38万円を限度として、居住者の合計所得金額と配偶者の合計所得金額に応じた金額が控除できます。
 ただし、配偶者特別控除は、居住者の合計所得金額が1,000万円以下である場合及び生計を一にする配偶者がこの控除の適用を受けていない場合に限り適用できます。
Ⅲ 用語の意義
1 控除対象配偶者(所法2①三十三の二)
 同一生計配偶者のうち、合計所得金額が1,000万円以下である居住者の配偶者とされます。
2 同一生計配偶者(所法2①三十三)
 居住者の配偶者でその居住者と生計を一にするもの(「青色事業専従者(所法57①)」として給与の支払を受けるもの及び「白色事業専従者(所法57③)」を除きます。)のうち、合計所得金額が38万円以下である者とされます。

(今月の税務トピックス②につづく)

(後編)国税庁:税務行政の将来像に関する最近の取組状況を公表!

(前編からのつづき)

 さらに、対面による本人確認に基づき事前に税務署長が通知したID・パスワードによるe-Taxの利用を可能(2019年1月導入予定)にするとも紹介しております。
 法人向けでは、法人の電子申告で、代表者の電子署名のみで提出可能(経理責任者の電子署名は不要)にすることやイメージデータで送信された添付書類の紙原本の保存不要化、法人税申告書別表のデータ形式の柔軟化、法人税の電子申告により財務諸表が提出された場合には、法人事業税の申告での財務諸表の提出を不要にする国・地方を通じた財務諸表の提出先の一元化などが紹介されております。

 一方、「課税・徴収の効率化・高度化」では、調査・徴収事務でのICT・AIなどの活用に向け、各種資料情報の管理システムの再構築が進められております(2020年以降導入予定)。
 具体的には、金地金等の調書・国外送金等調書などの取引情報や、資本(株主)情報などの属性・グループ情報、海外金融口座情報などの諸外国情報をマイナンバーや法人番号をキーに一元的に管理し、データによる資料情報を機動的・多角的に分析するとしております。
 今後の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年11月16日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)国税庁:税務行政の将来像に関する最近の取組状況を公表!

国税庁は、「税務行政の将来像」に関する最近の取組状況を公表しました。
 それによりますと、将来像は情報システムの高度化、外部機関の協力を前提として、現時点で考えられる税務行政の将来のイメージを示したもので、具体的に実現した取組みを紹介するほか、これまでの検討の中で、施策のイメージが具体化したものを紹介しております。

 将来像は、「納税者の利便性の向上(スムーズ・スピーディ)」と「課税・徴収の効率化・高度化(インテリジェント)」を柱として、その実現に向けてAI技術などのICTを活用しながら段階的に取り組むとしております。
 「納税者の利便性の向上」については、個人向け、法人向けの申告手続きのデジタル化の推進や納付手続きのデジタル化の推進などの最近の取組みが紹介されております。
 例えば、個人向けでは利用者の多い一般的な給与所得者の医療費控除又はふるさと納税等による還付申告を対象に、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」にスマートフォン・タブレット専用画面を提供するため、システムを開発(2019年1月導入予定)するとしております。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年11月16日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(後編)国税庁:2019年1月からスマホ申告が可能に!

(前編からのつづき)

 e-Taxで申告する場合の送信方式は、「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」の選択ができるようになります。
 マイナンバーカード方式とは、ICカードリーダライタでマイナンバーのデータを読み取ることで本人確認する方法で、e-TaxのID(利用者識別番号)やパスワード(暗証番号)等の入力が不要になります。

 マイナンバーカードもICカードリーダライタも持っていない場合には、ID・パスワード方式を選択します。
 ID・パスワード方式では、事前に取得したIDとパスワードを入力することでスマホ申告ができます。
 しかし、IDとパスワードは、税務署において、職員と対面による本人確認を行った上で発行するため、運転免許証等の本人確認書類を持参して事前に税務署に出向く必要がありますので、該当されます方はご注意ください。
 なお、この方式はマイナンバーカード及びICカードリーダライタが普及するまでの暫定的な対応であり、将来的に、国税庁ではマイナンバーカード方式に統一していきたい考えのようです。
 今後の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年12月10日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)国税庁:2019年1月からスマホ申告が可能に!

国税庁ホームページより、2019年1月からスマートフォンを利用した所得税の確定申告(以下:スマホ申告)ができるようになります。

 サラリーマンのふるさと納税の利用増加などにより、個人で確定申告する人が増えている現状を踏まえ、スマホ申告は納税手続きの簡素化を図る目的で導入されるサービスです。
 これは年末調整済みの給与所得者であり、医療費控除又はふるさと納税などの寄附金控除だけの一部申告者が対象となりますが、慣れている方には、見やすくて操作に慣れたスマホ専用画面での確定申告書の作成ができるようになります。

 なお、スマホ申告の手順は、パソコンによる申告とほとんど同じのようです。
 国税庁ホームページから「確定申告書作成コーナー」に進み、「作成開始」をタップします。
 そして、収入や適用を受ける控除額、名前、住所、マイナンバーなどを入力し、e-Taxで申告する場合はそのまま送信して申告が完了します。
 書面で申告する場合は、保存したデータを自宅のプリンターやコンビニエンスストアなどで出力して郵送等で提出します。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年12月10日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》大改革の成功要因

企業が創立周年の記念すべき時期や経営危機に陥った時などに、長年の懸案となってきた大きな課題を一気に解決しようと「大改革」に取り組むことがあります。
 このような「大改革」に挑戦しようとしている企業に役立つ「成功要因」について解説します。

◆「大改革の成功要因」とは
 改革を成功させるには、次の4つの成功要因を確保することが不可欠です。
①改革の志を持った「The Man(その人)」の存在
 「The Man」とは、常々経営上の問題意識を持ち、時期が来れば、先頭に立って改革を導こうとする志と能力・ポジションパワーを持つ人物のことで、トップその人であることが最も望ましく、次にトップの信を得た管理者が適切です。
②改革基本構想の確立
 改革が成功したときの「ありありとしたイメージ」と「推進プロセスを貫く活動方針(チームワーク・三現主義・PDCAなど)」を練り抜いて各層で共有します。これは、改革推進の力となると同時に改革反対勢力を抑止する効果があります。
③推進組織の確立
 「The Man(その人)」をリーダーとし、チームメンバー・事務局による改革推進プロジェクトチーム、およびその上位に位置し、大局的に改革を導く、トップ層・上級管理者からなる改革推進委員会を設置。改革プログラムを立案、各部署の改革を支援する。
④巧みな推進マネジメント
 推進プロジェクトチームのリーダーが、チームメンバーの主体的、挑戦的な活躍を引き出し、ラインの改革について成功要因の獲得・障害排除等支援する。
 その状況報告を受けて、推進委員会が適切な改革推進のナビゲーションを行う。それらの巧みさが鍵となります。

◆経営者・管理者の留意点
 大改革であればあるほど、反対勢力の出現は避けられません。
 「The Man」の存在、改革基本構想の確立と共有、推進組織の確立、巧みな推進マネジメントは、重要な改革成功要因になるとともに、反対勢力をコントロールし、改革推進力に変える力となるよう組み立てなければなりません。時には反対勢力をあえて推進組織に取り込むのも一法です。

《コラム》未来投資会議の初会合

◆未来投資会議の開催
 政府は10月に第四次産業革命や雇用、地方の3つのテーマで構成される「未来投資会議」を開催しました。それによるとAI(人工知能)やロボット、ビッグデータといった第四次産業革命がもたらす労働生産性の向上と社会保障改革で、現在65歳までと義務付けられている継続雇用年齢を65歳以上に伸ばす等、意欲ある高齢者に働く場を準備し、病気の予防・健康維持への取り組みを検討するとしています。

◆検討の柱は
①SDGs 
 「持続可能な開発目標」に向けた第四次産業革命。AIやIoT、センサー、ロボット、ビッグデータといった技術革新は私達の生活や経済社会を画期的に変えようとしています。技術革新を現場に積極的に取り入れ労働生産性の向上を図り、国民1人1人の生活を目に見える形で豊かにするとしています。
②全世代型社会保障への改革
 生涯現役社会の実現に向けて意欲ある高齢者に働く場を準備し、併せて新卒一括採用の見直しや中途採用の拡大、労働移動の円滑化といった雇用の改革について検討を開始します。人生100年時代をさらに進化させ、平均寿命と健康寿命との差を限りなく縮める事を目指すとしています。
③地方施策の強化
 地方経済は急速に進む人口減少を背景に需要減少や技術革新の停滞等経済社会構造の変化に直面しています。地域にとって不可欠な基盤的サービスの確保が困難になりつつある中で地方基盤企業の統合や強化、各地方の中枢中核都市の機能強化、一極集中是正等の検討、農林水産業や観光産業の成長を図るとしています。
④社会保障改革
 企業の継続雇用年齢を65歳よりも引き上げる検討をします。個人の実情に応じた多様な就業機会の提供、併せて新卒一括採用の見直しや中途採用の拡大、労働移動の円滑化といった雇用制度改革を検討します。現行の高齢者雇用安定法ではすべての希望者を65歳まで雇用する事が企業に義務付けられていますが、この法律の改正がおこなわれると定年は65歳という事になるかもしれません。

【時事解説】シェアリングサービスでもベースは信頼感 その2

振り返ると、所有物の貸し借りは、昔は普通でした。脱穀機などの生産機械の貸し借りや、コメや醤油などの日用品を融通するということは、一昔前の農村では一般的な光景でした。しかし、豊かになるにつれ排他的なモノの所有が広がり、共同体的貸し借りは衰退し、所有と利用が一致するような経済に移行していきました。その貸し借りがネットの普及とともに洗練された形で復活してきたように思います。

 カネが介在してビジネスとして成立しているという点は違いますが、そうした以前の隣組のような村落共同体の生活と現在の最先端のシェアリングサービスは多数の人がモノを有効活用するという点で似通っています。ただ、決定的な相違点もあります。それは自分のモノを利用する他人をよく知っているかどうかです。

 隣組の住人は全ての人間が顔見知りで、性格もよく分かっています。だから、モノの貸し借りを安心してできます。しかし、ネット利用の貸し借りビジネスを利用する人はまったくの赤の他人で、場合によっては生活習慣の異なる海外の人の場合もあります。タクシーやホテルなどの専門業者なら、まったく知らない人が利用するのは当然のことで、それを前提に施設を作り、料金も定めています。しかし、シェアリングサービスは個人の所有物をよく素性の知らない人に貸すのですから、不安になるのは当然です。その不安をどのようにやわらげるかが、このビジネスの一つの課題になります。人間の感情や性癖などの評価はコンピュータの苦手分野だと思っていたのですが、最近のAI(人工知能)の急速な発展を見ると、そうしたことも克服できるのかもしれません。

 技術が発達し、どのような新しいビジネスが誕生しても、ビジネスの基礎には信頼がなければならないということは、いつの世でも変わらない真理です。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】シェアリングサービスでもベースは信頼感 その1

近年、Uber、AirBnBなどの一般人のすき間を活用するビジネスが注目を集めています。Uberは一口に言えば、タクシーのネット配車ですが、普通のタクシーに加え、一般人が自家用車を空き時間に利用できるようにしているところが特徴です。AirBnBは、ホテルや旅館ではない一般の住宅を宿泊施設として利用するものです。こうした個人の所有物を共有するビジネスをシェアリングサービスと呼びます。日本ではまだまだ規制や法制度の問題があり、それほどでもありませんが、欧米などではかなり普及してきています。

 シェアリングサービスはネットがなければ成り立たないビジネスであり、現代を象徴する最先端の業界といえますが、こうした業界でもビジネスのベースには昔ながらの信頼感が必要なところが面白いところです。

 考えてみれば、発想はとても合理的です。商売をしていない一般人は車も自宅も1日中フルに私用で使っているわけではなく、空いている時があります。所有者は固定資産を遊ばせておくのは無駄ですから、空いている時間帯を使って、少しでもおカネを稼げればという欲望を持っています。一方、専業のタクシーやホテルを使わずとも、少しでも安上がりに移動したい、泊まりたいという人間にとっては、多少サービスが落ちても、一般人の車や自宅が利用できるならそれでいいと考えています。両者のニーズをうまく組み合わせることができれば、ビジネスとして成り立つはずです。

 従来、こうしたサービスがなかったのは、自分の車や自宅を提供して稼ぎたいと思っている人や、安上がりに移動したい、泊まりたいと思っている人は、どちらも薄く広く存在しているために、両者を結び付ける手段がなかったからです。ネットの普及で、広範囲に需要と供給のニーズを結び付けることができるようになったというわけです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)