今月の税務トピックス① 税理士法人右山事務所 所長 宮森俊樹

QRコードを利用したコンビニ納付

はじめに
 国税を納付しようとする者は、納付金額が30万円以下で税務署が作成(郵送)したバーコード付納付書に基づき納付しようとする場合には、国税庁長官が指定する納付受託者(コンビニエンスストア)に納付を委託(以下単に「コンビニ納付」といいます。)することができることとされています(国通法34の3①)。
 ただし、現行の国税のコンビニ納付については、自宅及び税務署以外の会場等で電子申告を行う場合には、改めて税務署からバーコード付納付書を取り寄せてコンビニ納付を行う必要がありました。
 そこで、平成30年度税制改正では、納税者の利便性の向上を図る観点から、コンビニ納付の利用手段が拡充され、二次元コード(いわゆるQRコード)を利用したコンビニ納付が可能となりました。
 本稿では、拡充されたQRコードを利用したコンビニ納付制度の概要及びその実務上の留意点について解説することとします。

Ⅰ 改正の内容(国通規2②二)
 コンビニ納付を利用できる納付書の範囲に、コンビニにより作成された納付書が追加されます。具体的には、コンビニ納付を行おうとする納税者が、自宅等において国税庁ホームページを利用して納付に必要な情報をQRコード化し、コンビニの端末機で読み取り納付書を出力することによって、コンビニ納付ができることとされます。
≪図表:QRコードを利用したコンビニ納付≫

(今月の税務トピックス②につづく)

(後編)2018年度税制改正:国際観光旅客税を創設!

(前編からのつづき)

 国外運送事業者の特別徴収や国際観光旅客等の納付の場合は、原則として出国する空港や港において乗船等するときまでに国に納付する必要があります。
 国際観光旅客税の税収は、初年度60億円、平年度430億円の税収を見込み、その使途について観光立国推進閣僚会議は、ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備、わが国の多様な魅力に関する情報の入手の容易化、地域固有の文化、自然等を活用した観光資源の整備等による地域での体験滞在の満足度の向上の3分野に充当することを基本方針として示しております。

 具体的な施策・事業について、初年度総額60億円を見込む歳入では、最新技術を活用した顔認証ゲートや税関検査場電子化ゲートの整備等によるCIQ(訪日外国人旅客の出入国手続きの総称)体制の整備に20億円、ICT等を活用した多言語対応等に11億円、JNTO(日本政府観光局)サイト等を活用したデジタルマーケティングに13億円などをそれぞれ充てることを明らかにしております。
 今後の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年11月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)2018年度税制改正:国際観光旅客税を創設!

2018年度税制改正において、観光立国実現に向けた観光基盤の拡充・強化を図る観点から、観光促進のための税として2019年1月7日以後の出国から国際観光旅客税を徴収します。

 政府は、2020年訪日外国人旅行客者数4,000万人、2030年6,000万人の目標を掲げ、観光をわが国の基幹産業へと成長させて、観光先進国の実現を図ります。
 国際観光旅客税は、訪日外国人旅行客が出国する際や日本人が旅行や出張で出国する際などに、1人あたり出国1回につき1,000円を徴収します。

 ただし、課税の対象外として、航空機や船舶の乗員のほか、航空機により入国後24時間以内に出国する乗継旅客、2歳未満、悪天候などの理由で寄港した国際船舶等に乗船等していた者やわが国への派遣外交官等の一定の出国などが挙げられております。
 航空機を利用する場合は、チケット料金に上乗せして徴収することから、国内の旅行代理店等の国際運送事業者が国際観光旅客等から特別徴収し、翌々月末日までに国に納付します。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年11月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(後編)消費税の軽減税率制度の実施に伴う価格表示について

(前編からのつづき)

 どのような価格設定を行うかは事業者の任意ですが、例えば、テイクアウト等(軽減税率)及び店内飲食(標準税率)で異なる税込価格を設定する場合における価格表示方法としては、テイクアウト等及び店内飲食の両方の税込価格を表示する方法やテイクアウト等又は店内飲食のどちらか片方のみの税込価格を表示する方法などが考えられます。

 テイクアウト等のみの税込価格を表示する場合には、店内飲食のほうがテイクアウト等よりも税込価格が高いのに、テイクアウト等であることを明瞭に表示せず、税込価格のみを表示している場合には、一般消費者に店内飲食の価格が実際の価格よりも安いとの誤認を与えてしまい、不当景品類及び不当表示防止法の規定により禁止される表示に該当するおそれがあります。

 また、テイクアウト等と店内飲食との間で税込価格が異なる場合は、事業者は、顧客の意思表示により異なる税率が適用され、税込価格が別途計算されることがあり得る旨、店舗内の目立つ場所に掲示するなどの手段により、一般消費者に対して注意喚起を行うことが望ましいとしております。
 今後の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年11月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)消費税の軽減税率制度の実施に伴う価格表示について

2019年10月1日から実施予定の消費税の軽減税率制度の実施に伴う価格表示について、消費者庁・財務省・経済産業省・中小企業庁の4省庁は連名で、一般消費者の適正な商品又は役務の選択を確保することを目的として、同一の飲食料品の販売について適用される消費税率が異なる場面における小売店等の価格表示の具体例等の取りまとめを行い、公表しました。

 それによりますと、消費税の軽減税率制度では軽減税率の適用対象品目を「酒類及び外食を除く飲食料品」としているので、テイクアウト(飲食料品を持帰りのための容器に入れ、又は包装を施して行う飲食料品の譲渡)や出前(単に相手方が指定した場所まで飲食料品を届ける行為)には軽減税率が適用されることとなる一方、店内飲食(飲食設備のある場所において、飲食料品を飲食させる役務の提供)には標準税率が適用されます。
 このため、テイクアウト等及び店内飲食のいずれの方法でも飲食料品を提供する飲食店等の事業を営む外食事業者やイートインスペースのある小売店等の事業者では、同一の飲食料品の販売で適用される消費税率が異なる場面が想定されます。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年11月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》法令適用事前確認手続の活用

◆サービスの多様化と許認可
 許可や認可、免許など、日本には数多くの「許認可」が存在し、その数なんと2万種類とも言われます。建設業を営む場合には、都道府県知事又は国土交通大臣からの「建設業許可」を、お酒の販売を行う場合には、税務署長からの「酒類販売免許」など、新たな事業を始めるにあたり、こうした許認可を必要とすることも少なくありません。
 一方で、サービスの多様化や差別化が進むにつれ、そもそも許認可を必要とするのか否か、企業だけでは判断が難しいケースも増えているのではないでしょうか。そんなときに活用できるのが、「法令適用事前確認手続」です。

◆法令適用事前確認手続とは
 「法令適用事前確認手続」とは、民間企業等が、これから行おうとしている行為について、法令に抵触しないか、規定の適用対象となるかどうか、あらかじめその法令を所管する行政機関に対して照会し、行政機関が見解を述べるとともに、その回答内容を公表するというもので、「日本版ノーアクションレター」とも呼ばれます。
 たとえば、新しいサービスを考えたものの、そのサービスは建設業許可がないと提供できないのか、法令の文言からだけでは判断できなかったとします。この際、建設業法を所管する国土交通省に対し、この法令適用事前確認手続を取ると、照会から原則30日以内に書面等による回答が得られるという仕組みです。

◆ホームページ上で回答の公表も
 この制度では、行政機関がその照会者に対して回答するとともに、各行政機関のホームページ上にも公表されています。回答は個別具体的な事例に対するものですので、たとえ自社で考えているサービス内容と類似した他社の照会内容があったとしても同一視することはできませんが、各行政機関の基本的な見解を知るのに役立つかもしれません。
 今回は国土交通省を例に挙げましたが、法令適用事前確認手続は多くの行政機関で導入されていますので、様々な業種で利用が考えられます。新しいサービスを始めるにあたり、法令に抵触しないかどうか懸念されるときは、この手続きを活用してみてはいかがでしょうか。

《コラム》不足している40代社員とは

◆採用数の少なかった時代の影響が
 昨年、ある大手企業の幹部が「40代前半の社員が少ない」とコメントした事が話題になっていたそうですが、40代前半層とは就職氷河期世代に該当します。採用が極端に少ない時期で2018年の大卒求人倍率が1.78倍なのに対し、氷河期の底であった2000年は0.99倍(リクルートワークス調べ)だったそうです。その影響が今も引き続いているという事です。

◆企業が求める40代とは
 氷河期世代は採用人数が少ないため、出世もし易いと思うかもしれませんが企業の求める40代は例えば20代で経験を積み、リーダー職や係長職を経て30代後半では課長、40代で部長等上級ポストを担える人材で、氷河期世代の40代は採用の対象となりにくいと言われています。

◆賃金面から見る40代
 政府が主要産業に雇用される労働者について賃金を調査する「賃金構造基本統計調査」は、就業形態、職種、性、年齢、学歴、勤続年数、経験年数別に実態を明らかにする事を目的としていて、毎年6月の状況を調査しています。
 それによれば、2018年6月に公表された賃金動向は2010年から12年、2015年から17年の比較では全年齢平均は31.0万円から31.9万円と増加していますが、40歳から44歳及び45歳から49歳の年長者では5年前の水準に比べて減少しています。また、常用労働者数100人以上の部長、課長級の役職比率をみると5年前より昇進が遅くなっているのですが、部長級、課長級の人数は比率が低下している中でもむしろ増加しています。役職者数の増加は45歳以上の課長級が中心であることから、上級ポストが空かないための待ちの期間が多く発生しており、生涯平社員で終わる社員の増加の可能性もあります。

◆労働人口を支える40代社員への対応
 バブル期の入社世代に当たる40代後半から団塊ジュニアに当たる40代半ばにかけては人数も多い層です。企業が求める40代にはなっていない層やポスト待ちの層等がモチベーションを持ち続けて活躍してもらうにはフォローやメンテナンスが課題となるでしょう。

 

黒字企業割合が7年連続で増加

2017年度に税務申告した全国の法人のうち、黒字と申告した法人の割合は34.2%で、前年度(33.2%)より1.0ポイント増となり、7年連続で上昇しました。国税庁が10月中旬に発表した法人税の申告事績で分かったものです。また申告法人289万6千社の所得金額は前年度比11.5%増えて70兆7677億円となり、過去最高を記録しました。

 黒字法人の割合は、08~10年度に3年連続で過去最低を更新し、黒字申告は「4社に1社」でしたが、その後盛り返し、増加の一途をたどっています。現在では「3社に1社」が黒字の状況です。

 また申告所得金額もリーマンショックのあった08年を境に一気に落ち込んだのですが、14年度にリーマンショック前の水準を超え、その後も増加を維持しています。

 源泉所得税について見てみると、29年度の源泉所得税の税額は18兆1517億円で、前年度から6.0%減り、7年ぶりに減少した昨年から再びプラスに転じました。給与所得は3.4%伸びたほか、昨年15.3%落ち込んだ配当所得が8%伸びたことなどが響きました。
<情報提供:エヌピー通信社>

 

低税率の地域はスポーツが強くなる?

ホームタウンの税率が低いほどチームは強くなる――。そんな興味深い内容の論文を、NFL(米アメフトリーグ)の日本公式サイトが紹介しています。同サイトに記事を執筆したジャーナリストの渡辺史敏氏によれば、論文を発表したのはウィーン経済産業大学。1994年から2016年までの23年間のNFL所属チームの成績と所在地の個人所得税の税率を調べたところ、最も税率の高いカリフォルニア州のチームは同税のないフロリダ、テキサス、テネシー、ワシントンのチームより年平均2.75勝少なかったそうです。また16年にプレーオフに進出したチームとできなかったチームの税率を比べたところ、前者より後者のほうが3割税率が高かったとのことです。

 本来であれば全米のなかでも平均所得の高いカリフォルニアはそれだけ高額な年俸を支払って有力選手を集められるはずですが、NFLでは戦力均衡化のために厳しいサラリーキャップ(年俸上限)が定められていて、有名選手らの年俸は横並びとなる傾向にあります。

 一方で米国では州ごとに個人所得税などの税率が大きく異なるため、同じ年俸を受け取っても実際の手取りには差が出てしまいます。多くの手取りを得たい有名選手は、自然と税率の低い地域のチームを選ぶ可能性が高くなるわけです。

 論文ではその実例として、税率7.4%のオハイオ州から5.3%のメリーランド州にホームタウンを移転したレイブンズ(旧ブラウンズ)を挙げ、本拠地の移転によって年平均1勝を上積みし、01年にスーパーボウルを制したことを紹介しています。

 こうしたデータによって、税率とチームの成績に因果関係があると証明されたわけではありませんが、給料の多寡が仕事へのモチベーションに直結するのは自然な話でもあります。
<情報提供:エヌピー通信社>

【時事解説】二重ローンを避けるノンリコースローン その2

リコースローンとノンリコースローンの違いは突き詰めると、融資対象である住宅の値下がりや毀損リスクを誰が負うのかということに帰着します。リコースローンは住宅がどんなに値下がりしても、あるいは無くなってしまっても、(資金を)融資した側は借入者に返済を請求できるのですから、物件の値下がりリスクは借入人が負うことになります。一方、ノンリコースローンは物件の値下がり、毀損リスクは(資金を)融資した金融機関が負うことになります。

 日本では住宅ローンと言えば、リコースローンだと思われていますが、ノンリコースローンによる住宅ローンの商品設計も可能なはずです。貸出側が物件の毀損リスクを負うのですから、金融機関が保険を掛けることになるでしょう。その分ローン金利は旧来のリコースローンの場合に比べて高くなると考えられます。ただ、地震保険を個人で掛けるのに比べれば、金融機関側でまとめて掛けた方が、安くなるというメリットは生じるかもしれません。

 金利が高くても物件の毀損リスクを負わないノンリコースローンにするか、金利は低いが毀損リスクを引き受けるリコースローンにするかを借入人が選択できれば、借入人の満足度は向上するはずです。災害多発国である日本ではノンリコースの住宅ローンには相応のニーズがあると思いますから、少なくとも商品メニューはあっても不思議ではありません。

 金融機関は今、マイナス金利による利ザヤの縮小に加え、貸し出し需要の減少に苦しんでいます。しかし、自らの環境を巡る不平を言う前に、顧客のニーズを本当に捉えられているか自省してみるべきではないでしょうか。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)