今月の税務トピックス① 税理士法人右山事務所 所長 宮森俊樹

(特例経営承継受贈者の適用要件)

はじめに
 中小企業経営者の高齢化に伴い、今後10年の間に平均引退年齢である70歳を超える経営者が245万人になると推定されています。このうち、半数以上が事業承継の準備を終えていない現況にあります。そこで、平成30年度税制改正では、円滑な世代交代に向けた集中取組み期間(10年間)の時限措置として、事業承継税制の各種要件の緩和を含む事業承継税制の特例制度(以下「本特例」といいます。)が創設されました。
 本稿では、本特例の適用対象者である特例経営承継受贈者(以下単に「特例受贈者」といいます。)の適用要件及びその実務上の留意点について解説することとします。

Ⅰ 特例受贈者の定義
 「特例受贈者」とは、特例贈与者から本特例の規定の適用に係る贈与により特例認定贈与承継会社(以下単に「特例会社」といいます。)の非上場株式等の取得をした後継者で、次に掲げる要件の全てを満たす者(その者が2人又は3人以上ある場合には、その特例会社が定めた2人又は3人までに限ります。)とされます(措法70の7の5②六)。
① 贈与の日において20歳以上であること。
② 贈与の時において、特例会社の代表権(制限が加えられた代表権を除きます。)を有していること。
③ 贈与の時において、後継者及び後継者の親族などで総株主等議決権数の50%超の議決権数を保有すること。
④ 次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める要件を満たしていること。
 イ後継者が1人の場合…同族関係者の中で筆頭株主であること。
 ロ後継者が2人又は3人の場合…各後継者が10%以上の議決権を有し、かつ、同族関係者の中で上位2位以内(後継者2人の場合)又は3位以内(後継者3人の場合)であること。
⑤ 贈与の時からその贈与の日の属する年分の贈与税の申告書の提出期限(その提出期限前に後継者が死亡した場合には、その死亡の日)まで取得した株式等を継続して保有していること。
⑥ 贈与直前において3年以上役員(会社法上の役員及び業務を執行する社員を含みます。)であること(措規23の12の2⑧,会社法329①)。
⑦ 特例会社の株式等について、一般措置(措法70の7①,同法70の7の2①)の適用を受けていないこと。
⑧ 特例承継計画に記載された後継者であること(措規23の12の2⑨)。

(今月の税務トピックス②につづく)

(後編)国土交通省:2019年度税制改正要望を公表!

(前編からのつづき)

 被相続人は相続開始直前において老人ホーム等に入居していることも多く、また、取引実態上、売主(相続人)が譲渡前にリフォームや除去するよりも買主が行うことが多いという実態に配慮した要望です。
 また、地域福利増進事業(一定の所有者不明土地について都道府県知事による事業の公益性等の確認を経て、公園や広場等として利用する事業)の用に係る特例措置の創設も要望しており、同事業の用に供する土地・建物に係る固定資産税等を3分の2に軽減する特例措置及び事業者に土地等を譲渡した場合の所有者の譲渡所得から1,500万円を特別控除します。

 そして、外国人旅行者向け消費税免税制度の拡充も求めており、すでに消費税免税店の許可を受けている事業者が、地域のお祭りや商店街のイベント等に出店する場合に、簡素な手続きにより免税販売を認めることによって、地域の特産品等の販売機会を増やし、外国人旅行者への販売機会の増加につなげ、外国人旅行消費額のより一層の拡大と地方を含めた免税店数のさらなる増加を図ります。
 今後の税制改正の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年9月17日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)国土交通省:2019年度税制改正要望を公表!

国土交通省は、2019年度税制改正要望を公表しました。
 それによりますと、空き家の発生を抑制するための特例措置の拡充・延長などを要望しており、空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除について、2019年12月末までの適用期間を4年間延長した上で、被相続人の直前居住要件及び建物リフォーム・除去の時点に関する要件を緩和して、特例適用対象を拡充し、空き家の発生の抑制を図ります。

 同特例は、相続日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日までに、被相続人の居住の用に供していた家屋(1981年5月31日以前に建築され、相続の開始直前において被相続人の居住の用に供されていたもの)を相続した相続人が、その家屋(耐震性のない場合は耐震リフォームをしたものに限り、その敷地を含む)又は取壊し後の土地を譲渡した場合には、その家屋又は土地の譲渡所得から3,000万円を特別控除するものです。

 この特例措置を4年間(2020年1月1日~2023年12月31日)延長した上で、被相続人が老人ホーム等に入居した場合や譲渡後に家屋の除却又は耐震リフォームを行った場合を対象に加えることを要望しました。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年9月17日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(後編)日本税理士会連合会:2019年度税制改正に関する建議書を公表!

(前編からのつづき)

 その際、給与所得控除・公的年金等控除の水準が過大なことや、控除が適用されない事業所得者等とのバランスも踏まえ、所得計算上の控除を縮減した上で、基礎的な人的控除を中心に課税最低限を確保することが適切としました。
 上記③では、償却資産に係る固定資産税制度が事業者の設備投資の阻害要因になっていること、現状では課税客体の捕捉が不十分、固定資産台帳の整理が賦課期日と決算日の年2回必要になるなど事業者に過度な事務負担を強いていること等の問題があるとしております。

 市町村の財政の現状からみると、代替財源がない限り同制度を廃止することは困難なため、当面は制度を維持しつつ上記問題の解決も検討する必要があるとしております。
 賦課期日と申告期限については、賦課期日は現行法のままとしつつも、申告期限につき、現行方式と電子申告に限り法人税の申告期限と一致させる新方式との選択制を早期に実現した上で、償却資産に係る固定資産税を固定資産税とは異なる新たな税目とする、所得税の申告期限と一致させるなどの抜本的改革の検討を求めております。
 今後の税制改正の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年10月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)日本税理士会連合会:2019年度税制改正に関する建議書を公表!

 日本税理士会連合会(以下:日税連)は、2019年度税制改正に関する建議書を公表しました。
 それによりますと、重要建議項目として、
①消費税における単一税率及び請求書等保存方式を維持すること
②所得計算上の控除から基礎的な人的控除へのシフトを進めるとともに、基礎的な人的控除のあり方を見直すこと
③償却資産に係る固定資産税制度を抜本的に見直すことをあげております。

 上記①では、軽減税率(複数税率)制度は、区分経理等により事業者の事務負担が増加することや、逆進性対策として非効率、財政が毀損し社会保障給付の抑制が必要となるなどの理由から、日税連では、単一税率制度の維持を強く主張しております。
 また、2023年10月に導入予定の適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス方式)への移行は、行政手続コスト削減の方向性に逆行することのないような配慮・見直しを求めております。
 上記②では、基礎控除、配偶者控除等の基礎的な人的控除の課税最低限は、健康で文化的な最低限度の生活を維持するために侵害してはならない性質を有するもので、生活保護の水準に合わせていくことが望ましいとしております。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年10月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》輸出免税で消費税不要のはずが なぜ付加されるかという疑問

◆輸出免税で消費税がかからないハズ・・・?
 日本からの海外への物品の輸出については、消費税が課税されない輸出免税となっています。輸出免税とは、物品の販売(=消費税法でいうところの資産の譲渡等)は本来課税されるところ、特別な配慮(=消費地課税主義と国際的慣行)により課税されないこととされているものです。

◆輸出免税なのに消費税が付加される背景①
 輸出元の日本の事業者(個人・法人)が、小規模で消費税免税事業者の場合です。自分が仕入れた物品にかかる消費税額がコストとなってしまうことを回避するために、売上にも消費税を付加してきます。購入する側の外国の事業者(個人・法人)は、日本の消費税が輸出免税との認識がないので請求書の金額のまま支払ってしまう場合です。

◆輸出免税なのに消費税が付加される背景②
 日本の事業者が、消費税申告をして申告書では輸出免税として仕入に係る仕入れ税額控除を取りながら、請求書では消費税額を加算した金額を請求することもあります。外国の事業者が輸出免税との認識がないのでそのまま支払いをしてしまう場合です。
 日本の事業者が、消費税の申告で輸出免税とせずに納税している場合には、[輸出元の日本の自事業者において]更正の請求による還付→[外国事業者へ]返金ということも考えられます。
 しかしながら、日本の事業者が申告書では輸出免税としながら、相手先からは消費税分を収受している場合には厄介です。

◆これは弁護士マターです
 請求書上で物品の税抜本体価格と消費税額が明確に別記してあれば、交渉して消費税額を返金してもらう可能性もあります。請求する側としては、「本件取引は輸出免税取引であり、消費税を別記している支払代金のうち、消費税部分は法律上の原因のない給付となり、民法上、不当利得として返還請求できることになる」と主張します。
 しかしながら、すんなりとはいかないケースもあります。たとえば、売買契約書において、「本体価格」と「消費税等」を合計した総額が「売買代金」とされていて、売買代金としては、総額で合意しているとも解釈される余地がありそうな場合です。
 この点は契約解釈の問題であり、相手方が争ってきた場合は返金請求が難しくなることもあるようです。

 

《コラム》この10年間減っている労働時間

◆月240時間以上労働の過労死ライン
 最近の調査で東京大学社会科学研究所の調べによると、この10年間に月に240時間以上の長時間労働をしている人が減少したことが分かりました。月に240時間以上の長時間労働をしている男性の「典型雇用」(正社員等)では2007年の35.4%から2017年は23.7%まで減少しています。同じく女性の典型雇用でも12.1%から8.2%に減少しています。「非典型雇用」(契約社員等)でも減少傾向が見られます。
 月に240時間以上の長時間労働を見ると1カ月20日勤務したとした場合1日12時間以上の労働になりますが、月間80時間以上の時間外労働は過労死ラインと言われています。脳卒中や心臓病の発症率が高く、労災とされた時は業務との因果関係が認められやすくなり、労働者、企業の双方にリスクがあります。減少してきたとは言えまだ23.7%あるのは高いと言えるのかもしれません。

◆帰宅時間は変わったか
 同じ調査で働く人の「平均帰宅時間」も早まった事が分かりました。この10年間で男性は午後8時2分から同7時48分へ、女性は午後6時48分から同6時1分へそれぞれ減少していて平均的な労働時間も減少しています。

◆働く人の意識の変化
 別の調査でシチズン時計株式会社が行った「ビジネスマンの生活時間35年の推移」によると、帰宅時間で遅いと感じる時間は1980年から2000年迄は「23時」がトップでしたが2010年には「22時」がトップ、2015年には「21時」がトップと、この35年間年々早まる結果となりました。同調査はリーマンショック(2008年)や東日本大震災(2011年)の影響から生活様式が見直され、働き方にも変化が見られるとしています。その後の過労死の社会問題、働き方改革の推進もあり、働く人々の意識の変化がさらに高まってきています。企業もこの世相や意識の変化を認識しておく必要があるでしょう。

 

NISA初年度の非課税期間終了へ

NISAの専用口座で保有する株式のうち、制度がスタートした2014年に購入した株式の非課税期間が年内に終了します。来年以降も株を持ち続けるのであれば、売却益に課税される通常の口座に移管するか、来年分の非課税枠を使ってNISAの適用を継続するか、いずれかの選択が必要です。

 NISAで年間120万円までの投資の利益が非課税になる期間は5年に限られます。そのため、制度が始まった14年に投資した分は今年で非課税期間が終了することになります。
 通常の口座(一般口座・特定口座)への移管では、今年12月の最終営業日の時価を基準にして、その後の利益には20%の所得税が課税されることになります。

 一方、新たなNISA口座への移管後は、5年間の非課税期間が改めてスタートすることになります。非課税の対象となる投資金額は、新たな口座に引き継いだ残高全て。例えば初年度に100万円で購入した株式が500万円まで増えているとすると、非課税となる金額は通常のNISAの年間上限である120万円ではなく、500万円全額です。

 ただし、新たなNISA口座に移管すると、その年のNISAの非課税枠をつぶしてしまうことになります。すなわち年末の時点で120万円以上の株を新口座に引き継ぐと、その年は他にNISAの非課税枠を使えなくなります。

 いずれの選択肢が資産形成に有利であるかは、来年以降の株式の動きによって変わります。保有している株式が他の株式と比べて値上がり率が高いと判断するなら、新しいNISA口座への移管が一般的な選択肢となります。

 日本証券業協会は初年度の非課税期間の終了が間近に迫っていることを受け、利用者に対し、証券会社から順次届く案内に従い、各社の定める期限までに手続きをするように注意を呼び掛けています。

<情報提供:エヌピー通信社>

自動車工業会が車減税に自信

日本自動車工業会は9月下旬に発表した税制改正要望で、自動車の保有者が毎年負担する自動車税を大幅に引き下げるよう政府に求めました。2019年10月に10%となる消費税、米国による輸入自動車への追加関税と、今後の生産・販売は「嵐のような逆風」(自動車メーカー幹部)に見舞われる恐れがあります。19年度の税制改正に向け、自動車業界は例年以上に激しく、財務省や総務省との交渉に臨む姿勢です。

 まず挙げたのは、新たに購入する車を対象にした自動車税の引き下げ。人気の軽自動車税(年1万800円)並みを想定しました。排気量1千cc以下の小型車なら、年2万9500円から1万6400円になる見込みです。

 自動車税は年間1兆5千億円規模の税収をもたらし、地方の貴重な財源となっています。軽レベルまで引き下げれば税収は4千億円ほど減る可能性がありますが、経済産業省が地方税を所管する総務省と内々に減税交渉を進めており、自工会関係者は「実現に向けた地ならしは相当に進んでいる」と自信を見せます。

 政府は6月にまとめた経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で、消費増税への対応を盛り込みました。自動車の販売冷え込み対策として、増税と同時に導入される燃費課税を初年度に限り免除する案が検討されており、自工会は車を購入した初年度の自動車税も併せて対象に加えるよう求めます。

 消費税率のアップで、国内の新車販売は30万台程度を縮小が見込まれます。財務省と総務省は「減税は必要な財源の確保とバーターで」という立場を崩していませんが、自工会は「一時的な減税でも構わないので何とか押し込みたい」と鼻息を荒くしています。

軽減税率対応補助金で不正受給

消費税率10%への引き上げにあたっては食料品などの税率が8%で据え置かれますが、そうした複数税率に対応するレジを導入した企業に支給される補助金を不正に受け取っている事業者がいるとして、中企庁が調査に乗り出しました。

 補助金が支給されるためには、8%税率が適用される飲食料品や新聞を継続的に販売していかなければなりません。しかし中企庁によると、理美容院、エステ、クリーニング店、楽器店などで、実際には軽減税率の対象商品を販売していないにもかかわらず、飲食料品を一時的に仕入れた証拠書類を提出して補助金を申請した事例があったそうです。また、飲食店が軽減税率の適用対象外となる店内での飲食に加え、対象となるテイクアウトを行っていると虚偽の申請をしたケースもありました。
 いずれも現地調査によって不正が発覚しています。同庁は今後も現地調査を行い、不正が発覚した場合には事業者に補助金の返還を求めるとしています。

 補助金で補われる金額は導入に掛かったコストの最大3分の2で、レジ1台当たり20万円が上限となっています。ただし1台だけの導入でかつ3万円未満の機器は4分の3となります。また、新たに商品マスタの設定や機器の設置や運搬に費用がかかる時には、1台あたり20万円を上乗せします。複数の機器を導入した場合は1事業者当たり200万円が上限です。平成28年4月に募集開始となって以来、今年8月時点で7万以上の事業者が補助金を受け取っています。

<情報提供:エヌピー通信社>