【時事解説】事業承継の選択肢としてのM&A その1

中小企業庁「事業承継ガイドライン」では、親族内・従業員承継で後継経営者が見つからない場合などの選択肢として「社外への引継ぎ」をあげており、引継ぎ先を選定するためのマッチングが合意に至ればM&A等の実行を検討する旨が記載されています。こうした背景から、経営資源を次世代に引き継いでいく選択肢の一つとして、中小企業のM&Aへの関心が高まっています。

 2018年版中小企業白書に基づいて中小企業におけるM&Aの実態についてみると、中小企業において実際にM&Aを実施したことのある企業の割合は11.6%と現状はそれほど多くはないものの、直近のM&A実施時期については「2015年以降」と回答した割合が44%を占めており、足もとでM&Aが盛んになっていることがうかがえます。

 買い手企業側のM&Aの実施目的をみると、「売上・市場シェアの拡大」が最も多く、次いで「事業エリアの拡大」となっており、付加価値向上を企図してM&Aを行う企業が多いことがうかがえます。

 一方でM&Aをした相手先(売り手企業側)の経営者年齢についてみると、「60歳代」と「70歳代以上」と合わせた割合が約7割を占めています。また、相手先の経営者年齢別に相手先のM&Aの目的をみると、相手先経営者の年齢が「60歳代」や「70歳代以上」の場合、「事業の承継」を目的とする割合が最も高くなっています。このことから経営者が高齢となり後継者不在の企業においてはM&Aが活用されていることがうかがえます。

 このように中小企業のM&Aでは、売り手企業側が事業承継を目的としている一方で、買い手企業の多くは事業拡大を目指しており、これらを結び付けていくことがカギとなるのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

(後編)生命保険協会:2019年度税制改正に関する要望を公表!

(前編からのつづき)

 また、企業年金保険関係では、公的年金制度を補完する企業年金制度(確定給付企業年金制度、厚生年金基金制度)及び確定拠出年金制度等の積立金に係る特別法人税の撤廃や確定給付企業年金、厚生年金基金における過去勤務債務等に対する事業主掛金等について、早期の年金財政の健全化に資する柔軟な取扱いを可能とすることを要望しております。
 さらに、企業型確定拠出年金制度における退職時の脱退一時金についての支給要件の緩和も要望しております。

 そして、生命保険契約関係では、遺族の生活資金確保のため、相互扶助の原理に基づいて支払われる死亡保険金の相続税非課税限度額について、これまでの限度額である「法定相続人数×500万円」に「配偶者分500万円+未成年の被扶養法定相続人数×500万円」を加算することを要望しております。
 その他では、生命保険業の法人事業税について、現行の課税方式を維持することなどを税制改正要望に盛り込んでおります。
 今後の税制改正の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年9月3日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)生命保険協会:2019年度税制改正に関する要望を公表!

生命保険協会は、2019年度税制改正に関する要望を公表しました。
 それによりますと、重点要望事項として、公的保障を補完する私的保障の役割が重要性を増すなか、少子高齢化の急速な進展やライフスタイルの多様化など、刻々と社会環境が変化しており、持続可能な社会保障制度の確立と国民生活の安定に資するため、国民の自助・自立のための環境を整備する観点から、生命保険料控除制度について、社会保障制度の見直しに応じて、現行制度を拡充することを求めております。

 具体的には、2012年からの契約以降見直された所得税法上及び地方税法上の生命保険・介護医療・個人年金の各保険料控除の最高限度額を、少なくとも所得税を5万円(現行4万円)及び地方税を3.5万円(同2.8万円)とすることのほか、所得税法上の保険料控除の合計適用限度額を少なくとも現行の12万円から15万円に引き上げること(地方税は7万円に据置き)を求めております。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年9月3日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》固定資産税は気を付けて

◆固定資産税は賦課決定
 所得税や法人税は納税者本人が税額を計算し申告して税金を納めます。
 それに対し、固定資産税は役所が不動産を一方的に評価して納税額を決め、それを納税者が納めます。

◆固定資産税にはプロがいない
 お役所のやることだから間違いはないだろうと思いがちですが、結構間違いは多いのです。その原因は対象不動産に対して圧倒的に評価人員が不足しているということです。東京都の場合、都内に土地は約221万筆、家屋は約160万戸あると言われています。これらを全て実地調査することは不可能と言われています。また、都の職員は都税事務所に就職するのではなく東京都に就職し、職場のローテーションで固定資産税の現場に配属されますが、定年まで固定資産税係ということはなく2~3年で別の部署に配属されますので常に素人集団です。こういった傾向はどの自治体も同じです。

◆まずは納税通知書を見直してください
 固定資産税の納税通知書は読みにくいでしょうが、以下のことを確認してください。
(1)土地の所在・家屋の所在、家屋番号
自分のものか確認してください。
(2)登記地目・家屋の種類・用途、構造
現況と異なっていないか?
(3)地積・家屋面積
実際の面積と相違がないか?
ただし、実測をする場合はかなりの費用が掛かります。
(4)価額
住宅用地の場合、評価額と課税標準額は異なります。当然課税標準額の方が小さいはずです(ちなみに住宅用地の場合、住宅1戸につき200㎡までは1/6です)。

◆おや?と思ったら
 自治体の窓口に出向いて課税資料を請求してください。
 土地なら「土地現況調査票」、家屋なら「再建築評点計算書」「基準年別計算書」(自治体により名称が異なる場合があります)が必ずあるはずです。
 明らかにおかしい場合は、「審査申し出」を行ってください。しかし「審査申し出」は原則として3年に1回の基準年度の限られた期間ですので、窓口で「再調査」の依頼をしてみてください、自治体により対応していただける場合もあります。

《コラム》派遣社員の3年ルール適用は10月1日から

◆労働者派遣法の改正
 平成27年の労働者派遣法の改正から平成30年9月30日 で3年が経過します。10月1日からは、派遣社員の処遇向上を目的として派遣社員の受け入れ期間の上限が3年と定められた、いわゆる「3年ルール」が適用されます。
※3年ルール…平成27年9月30日以降に労働者派遣契約を締結・更新した派遣労働者は、同じ事業所で3年を超えて働くことは基本的にできないというものです。

◆雇用安定措置
 同じ事業所の同じ「課」などに継続して3年派遣される見込みとなった場合は、派遣元事業主(派遣会社)は、次の①から④のいずれかの雇用安定措置を講じる必要があります。
①派遣先への直接雇用の依頼
②新たな派遣先の提供
③派遣元での派遣労働者以外としての無期雇用
④その他雇用の安定を図るための措置

◆派遣先が留意すること
 労働者(派遣社員)は派遣元事業主に対し、雇用安定措置の①~④のうち講じて欲しいものを希望することができます。派遣元から派遣先に上記①の依頼があり、直接雇用に結びついた場合には、派遣先において税金や社会保険などの各種手続きが必要となります。
 扶養控除等申告書の提出、マイナンバーの確認、年金手帳の確認や社会保険の加入手続きは速やかに実施することが必要です。

◆消費税の取扱いにも注意
 労働者が引き続き同じ組織(いわゆる「課」など)で同一業務に携わったとしても、派遣と直接雇用の労働者では消費税の取扱いが異なります。派遣の時には人材派遣の対価ということで課税仕入れを行っていたものが、直接雇用では不課税取引の「給与」となります。

小規模事業者の黒字率が上昇

2017年度の決算で黒字となった小規模事業者の割合は約4割で、徐々に増加傾向にあることが分かりました。日本政策金融公庫がまとめたデータで明らかになったものです。一方、赤字企業は7年ぶりに増加した前年から、再び減少に転じました。

 調査の対象となったのは、従業者20人未満の製造業、サービス業、情報通信業、建設業、運輸業と、従業者10人未満の卸売業、小売業、飲食店・宿泊業の小規模事業者。4218法人と2193の個人事業者が有効回答を寄せました。

 それによれば17年度に黒字だった小規模事業者の割合は40.7%で、ここ10年で最高を記録しました。09年度からは8年連続の増加となります。また赤字法人は、前年31.1%で7年ぶりに増加しましたが、17年度は28.6%と再びマイナスに転じたほか、収支ゼロも30.7%と全体の3割を占めました。

 16年度に赤字法人が増加した理由として、日本政策金融公庫は4月の熊本地震や8月に北海道を襲った台風、三菱自動車の燃費不正問題などがマイナスの影響を及ぼしたと分析していました。17年度も多くの自然災害が日本列島を襲いましたが、そうしたなかでもトータルしてプラスの結果を示した格好です。

 17年度に増収かつ増益だった企業は全体の12.9%と、1割強にとどまりました。減収減益の企業は23.6%で前年から3.5ポイント減少しています。増収増益企業の割合は4年ぶりに増加に転じ、逆に減収減益企業は4年ぶりの減少となっています。
<情報提供:エヌピー通信社>

在職老齢年金 撤廃視野に見直し検討

働く人の年金支給額を減らす在職老齢年金制度で、制度がなければ60代の男性でフルタイム就業を選ぶ人が約14万人増えるとの分析結果を内閣府がまとめました。深刻化する人手不足に対応するため、政府は制度の撤廃を視野に入れた見直しを検討しており、今後の議論に影響を与えそうです。

 在職老齢年金制度は、厚生年金保険に加入して働いている高齢者が対象。60~64歳では年金と賃金の合計が月28万円、65歳以上では月46万円を超えると年金支給額が減額されます。賃金が増えるほど減額幅は大きくなり、「フルタイムの就業をためらわせる要因になっている」(政府関係者)との指摘があります。

 内閣府は、中高年者の就業状況などを調査した国のデータに基に、在職老齢年金制度や健康状態、親の介護、企業の継続雇用制度の有無など、どのような要因が就業選択に大きな影響を与えているかを分析。在職老齢年金制度がない場合、60~69歳の男性で、パートを選択する人は6.4万人減り、働かない選択をする人も7.7万人減少。その分、フルタイムを選ぶ人が約14万人増えるとの結果を示しました。

 政府は今年の「骨太の方針」で在職老齢年金制度の見直しを明記。「高齢者の勤労に中立的な公的年金制度を整備する」として制度の廃止や減額幅の縮小などを検討する方針です。厚生労働省の有識者会議で4月から議論を開始しており、2020年の通常国会への法案提出を目指しています。

 ただ、制度を撤廃すれば支給停止している年約1兆円が年金財政の重荷となります。制度改正の効果で高齢者の就労時間が増え年金納付額が増えなければ、支払いだけがかさむ結果に終わりかねません。
<情報提供:エヌピー通信社>

(後編)日本損害保険協会:2019年度税制改正要望を公表!

(前編からのつづき)

 しかし、その後も東日本大震災を始め台風や集中豪雨などへの保険金支払が発生しており、異常危険準備金の大幅な取崩しを余儀なくされている状況に加えて、2018年度で火災保険等の積立率の経過措置(3%)が適用期限を迎えることから見直しを求めたものです。
 具体的には、今後の頻発する巨大自然災害への対応に向けて、経過措置を含んだ現行の積立率5%では十分とは言えないとして、6%へ引き上げることを要望しております。

 さらに残高の上限となる洗替保証率についても、1991年の台風19号、そして2004年の複数の台風、2011から2014年の複数の災害への保険金を考慮しますと、現行の30%(業界全体で約6,000億円のレベル)から40%への引上げを要望しております。
 その他、近年頻発する地震への備えとして地震保険の更なる普及のための保険料控除制度の充実、受取配当等の二重課税の排除などをあわせて要望しております。
 今後の税制改正の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年9月3日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)日本損害保険協会:2019年度税制改正要望を公表!

日本損害保険協会は、2019年度税制改正要望を公表しました。
 それによりますと、火災保険等に係る異常危険準備金制度の充実を重点要望事項の一つに掲げていることや損害保険業に係る法人事業税の現行課税方式の継続などを要望しております。

 損害保険会社では、発生の時期・規模の予測が困難な巨大自然災害の際にも確実に保険金を支払うという社会的使命を担っていることから、平時から保険料の一定割合を異常危険準備金に積み立てることにより保険金支払原資を確保するように努めております。

 2004年に10個の台風が上陸して発生した災害により、多額の保険金支払と異常危険準備金の取崩しが行われていることから、火災保険について、早期・計画的に異常危険準備金の積増しを行う制度の導入や税制面でも火災保険等の積立率を2005年度税制改正により4%(うち2%は経過措置)への引上げ、さらに2013年度税制改正により5%(うち3%は経過措置)への引上げなどの措置が取られております。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年9月3日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(後編)2018年度税制改正:生命保険料などの年末調整手続きを電子化へ!

(前編からのつづき)

 そして、これらの見直しとともに、住宅ローン控除申告書等に添付すべき住宅ローン控除証明書、年末残高証明書については、それらの証明書の発行者から電子メール等により提供を受けたその住宅ローン控除証明書、年末残高証明書に記載すべき事項が記録された電子データを印刷した書面で、真正性を担保するための所要の措置が講じられているものであれば、住宅ローン控除申告書等に添付することができるようになります。

 これらの改正は、2020年10月1日以後に提出する給与所得者の保険料控除申告書や住宅ローン控除申告書について適用します。
 なお、住宅ローン控除証明書と住宅ローンの年末残高証明書の電子データによる提出は、居住年が2019年以後である者に限られます。
 今後、年末調整手続きの電子化は、保険会社や銀行等の控除関係機関から個人、税務署、雇用主という情報の流れが、基本的にネット上で完結する仕組みになるとみられております。
 今後の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年8月10日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。