【時事解説】人工肉が食の革命を起こす可能性 その1

技術の進歩は家電製品、自動車、通信機器など、数多くの分野で新商品を生み出し、莫大な利益をもたらしました。今、次の時代に大きな技術革新が起こるであろうと期待されているものの一つが「食」です。なかでも、人工肉は今後、大きなビジネスに発展するのではないかと注目されています。

 通常、私たちが食する肉は畜産農場で育てられたものですが、人工肉は文字通り、テクノロジーを駆使して人の手により生み出された肉です。牛の筋肉から採取した細胞を人工培養するものや、大豆から抽出したたんぱく質に遺伝子操作を加え生成するもの、さらには3Dプリンターを用いて形成するものなど、すでに何種類かの製造法が開発されています。

 ただ、歴史は浅く、世界で初めて人口培養肉がお目見えしたのが2013年、ロンドンでハンバーガーの試食会が催されました。その後、17年に、米国のマクドナルドがスウェーデンとフィンランドの2国で植物由来のたんぱく質で作られたハンバーガーを発売。現在は、米国内のいくつかのレストランで人工肉のハンバーガーがメニューに加えられるようになりました。いずれも本物そっくり、説明されなければ従来の肉と区別がつかない、と評判になっています。

 日本人は遺伝子操作に対して違和感を覚える人が多く、人工肉への関心は高くありません。が、人工肉の技術開発を行う食料ベンチャーへは、マイクロソフト創業者、ビル・ゲイツ氏をはじめ、シリコンバレーの成功者が投資をはじめています。かつて、ガレージで産声を上げたグーグルやアップルが大企業へと成長したように、次は食料ベンチャーが大きく羽ばたくのではないかといった声もあります。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業における仕事と介護の両立 その2

 では、中小企業における仕事と介護の両立にあたっては具体的にどのような取組みが行われているのでしょうか。そこで2017年版中小企業白書において、介護中の従業員も含め柔軟な働き方を実現し、人材の定着を図る企業として紹介された、株式会社長岡塗装店(本社:島根県松江市、従業員27名)の取組みについてみていきましょう。

 株式会社長岡塗装店は、1938年創業の塗装業者です。人材の流動性が高い建設業界において、かつては同社でも従業員の離職への対応という課題を抱えていました。そこで同社では、従業員に長く活躍してもらうための働きやすい職場づくりに取り組みました。
 まず、30分単位で取得可能な看護休暇制度を整備しました。その際、従業員が制度をお互いに気持ちよく利用できることこそが重要であるとの立場から、制度を作る過程において制度を利用しない者から優先して意見を聞いたり、全員に丁寧な説明を心掛けたり、従業員の意見を受けて育児支援制度と介護支援制度を同時に作ったりと、従業員間の公平性の確保・摩擦の軽減を意識しました。

 事情の異なる従業員一人ひとりと真摯に向き合った結果、現在では育児・介護のための始業・終業時間の繰上げ・繰下げ、保育料や介護サービス利用費用の補助等、多種多様な制度を導入しています。
 また、制度の運用面でも柔軟な対応を図っています。例えば家族の通院がある日だけ就業時間を短縮するなど弾力的な運用を行うことで、従業員の仕事と生活の両立を支援しています。

 このように中小企業における仕事と介護の両立に向けては、両立支援のための人事制度等の設計だけでなく、運用面での事前の準備や、運用面での柔軟な対応が求められるのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業における仕事と介護の両立 その1

総務省「平成29年就業構造基本調査」によると介護をしながら働く者は約346万人おり、うち自営業者を除く雇用者は約300万人を占め、高齢化の進展から今後ますます増加することが見込まれます。

 中小企業において人材確保が困難となる中、従業員の仕事と介護の両立支援を図り人材の定着を図ることが重要となります。
 「中小企業白書2017年版」では、中小企業における仕事と介護の両立の現状と課題について、就業者側の立場と中小企業側の立場の両方から整理しています。

 まず、就業者側が仕事と介護の両立支援のためにどのような取組みを企業に期待しているのかについてみると、家族に要介護者がいる者では、「半日や1時間単位の年次有給休暇」や「突発的な事由による遅刻・早退・欠勤の許可等の労働時間・労働日数の弾力的運用」について相対的に重視する傾向があることが示されています。このことから介護・看護に当たっては、予期せぬ突発的な事象が発生することも想定されるため、フレキシブルな対応を企業に求めていると考えられます。

 次に、中小企業側が認識している従業員の仕事と介護の両立支援に係る課題についてみると、「従業員間の公平性の確保・摩擦の軽減」、「休業者の補填が難しい」、「急な遅刻・早退・欠勤等のリスク」、「仕事の配分・管理が複雑化」の順に回答した割合が高くなっており、介護を事由とした休暇・休業に伴う業務の補填や調整について課題として認識する傾向が強いことが示されています。

 このように中小企業における仕事と介護の両立に向けては、突発的な事由による労働時間の変動や、他の従業員との公平性の担保等の課題に対応することが求められるのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》新卒留学生の入社準備はお早めに

◆留学生のビザ切り替えは12月から
 日本に滞在している外国人留学生は、留学ビザという勉強のためのビザを持って滞在しています。ビザは滞在目的により種類が異なりますので、日本で就職活動をして内定が出た場合、卒業後には就労できる種類のビザ、一般的に「就労ビザ」と呼ばれる就労可能な資格に切り替えなければ、継続して滞在することができません。
 留学ビザのままでは勤務することができませんので、入社時までに就労ビザへの切り替えが完了していなければなりません。そのため、外国人の在留を管理する入国管理局では例年、4月入社予定の外国人留学生について、前年の12月1日から就労ビザへの変更申請を受け付けています。

◆入社直前の申請でも大丈夫?
 年末年始は会社側も何かと忙しいものですが、この就労ビザへの変更は遅くとも2月上旬頃までには済ませておきたいものです。
 というのも、就労ビザへの変更は即日完了するものではなく、業務内容と学歴との関連性や本人の素行等、様々な要件を複合的に審査するため、通常は審査期間に1か月~1か月半を要します。また、申請の内容から追加資料や説明を求められるケースもあり、そういった場合は更に審査期間が長引く可能性もあります。12月以降は就労ビザへの変更申請が集中し、入国管理局も大変混雑します。残念ながら個別の事情を考慮してくれることは珍しく、申請が遅くなると、入社までに切り替えが間に合わないということも十分あり得るのです。

◆もしも入社までに完了しなかったら…
 先述のとおり、留学ビザは勉強を目的とした資格ですので、就労ビザへ切り替わるまでは勤務を開始することができません。留学生の場合、希望すれば資格外活動許可という週28時間までのアルバイトが許可されるため、せめてこの時間以内でも働いてもらいたいと思うかもしれませんが、この資格外活動許可もあくまで在学中に限って許可されているため、卒業後はアルバイトに従事することもできないのです。
 申請は原則、留学生本人が行うものですが、企業側としても余裕を持って準備を進めたいですね。

 

寡夫控除 見直しまで道遠く

今年末に向け話し合いが本格化する2019年度税政改正で議論になりそうなのが、ひとり親世帯の税負担を軽くする「寡婦控除」です。現状、離婚や死別によるひとり親が対象ですが、未婚のひとり親にも適用を広げるかが議論されます。同じひとり親でも、婚姻歴の有無だけで負担に差が出るのは不公平との声があるためです。

 寡婦控除の始まりは1951年。戦争で夫を失った妻を支えるのが当初の目的でした。現状、ひとり親世帯を対象に所得税は年収から最大35万円、住民税は最大30万円を差し引いてから課税しています。ただ、離婚や死別でひとり親になっていることが条件で、未婚のままのひとり親は適用外です。

 しかし、厚生労働省の2016年度調査では、母子家庭で「未婚」が占める割合は8.7%で推計約10万7千世帯に上ります。最多の離婚(8割)に次いで多く、「死別」(8%)をわずかとはいえ上回っています。一方で「未婚」世帯の母親の平均年収は177万円と母子家庭全体の200万円を下回っており、全体でみれば経済的に厳しい状況に置かれています。

 政府・与党は18年度税制改正大綱で、寡婦控除について「19年度改正で(見直しを)検討し、結論を得る」と明記し、議論になるのは確実です。ただし自民党内では「婚姻に基づく結婚の形が壊れないか」、「内縁の夫がいるなど経済的に困窮していない場合も優遇されないか」などとの慎重論も根強くあります。財務省内でも、「昔から税制としては歪んでいると指摘されてきた」としつつ、対象世帯の所得がそもそも少ないことから「税よりも補助金などで対応する方が効果的では」との指摘する声もあります。

 「子どもの貧困」が社会問題として意識される中、政府・与党が出す答えに注目が集まっています。

<情報提供:エヌピー通信社>

基準地価、バブル以来27年ぶり上昇

国土交通省が公表した2018年の基準地価によれば、今年の全国の地価の平均(全用途)は前年度比0.1%上昇し、バブル期の1991年以来27年ぶりに上昇となりました。前年まで8年連続でマイナス幅を縮小し、17年は0.3%の下落にとどめていましたが、とうとうプラスに転じたことになります。
 東京、大阪、名古屋の三大都市圏は住宅地で前年比0.7%、商業地で4.2%、工業地で2.1%と、それぞれ前年に引き続いての上昇となりました。

 全国の地価上昇を押し上げた最大の要因は、三大都市圏よりもむしろ地方中枢都市です。札幌、仙台、広島、福岡の地方中枢4都市は、住宅地で3.9%、商業地に至っては前年比9.2%という三大都市圏をはるかにしのぐ伸びを示しました。

 また中枢都市以外に、人気の観光地を抱える自治体の地価上昇も著しいものでした。全国の地価上昇率ランキングを見ると、スキーリゾートとして外国人に人気の高いニセコを抱える北海道倶知安町が上位3位を独占し、20%台後半から45%とすさまじい上昇率を誇っています。また国内観光客にも人気の高い京都も4地点がランクインし、東京や大阪をしのぐ伸びを見せました。

 一方、中枢都市や観光地以外の地方都市に目を向けると、マイナス幅は縮小しているものの下落が続いています。住宅地では0.9%、商業地でも0.6%の落ち込みを示し、上昇が続く都市圏とは対照的に、地価の二極化傾向をくっきり表す結果となりました。

 基準地価は毎年7月1日時点での全国の地価を表したもの。1月時点での地価を調査する公示地価と補完し合う関係となっています。

<情報提供:エヌピー通信社>

今月の税務トピックス① 税理士法人右山事務所 所長 宮森俊樹

(特例経営承継受贈者の適用要件)

はじめに
 中小企業経営者の高齢化に伴い、今後10年の間に平均引退年齢である70歳を超える経営者が245万人になると推定されています。このうち、半数以上が事業承継の準備を終えていない現況にあります。そこで、平成30年度税制改正では、円滑な世代交代に向けた集中取組み期間(10年間)の時限措置として、事業承継税制の各種要件の緩和を含む事業承継税制の特例制度(以下「本特例」といいます。)が創設されました。
 本稿では、本特例の適用対象者である特例経営承継受贈者(以下単に「特例受贈者」といいます。)の適用要件及びその実務上の留意点について解説することとします。

Ⅰ 特例受贈者の定義
 「特例受贈者」とは、特例贈与者から本特例の規定の適用に係る贈与により特例認定贈与承継会社(以下単に「特例会社」といいます。)の非上場株式等の取得をした後継者で、次に掲げる要件の全てを満たす者(その者が2人又は3人以上ある場合には、その特例会社が定めた2人又は3人までに限ります。)とされます(措法70の7の5②六)。
① 贈与の日において20歳以上であること。
② 贈与の時において、特例会社の代表権(制限が加えられた代表権を除きます。)を有していること。
③ 贈与の時において、後継者及び後継者の親族などで総株主等議決権数の50%超の議決権数を保有すること。
④ 次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める要件を満たしていること。
 イ後継者が1人の場合…同族関係者の中で筆頭株主であること。
 ロ後継者が2人又は3人の場合…各後継者が10%以上の議決権を有し、かつ、同族関係者の中で上位2位以内(後継者2人の場合)又は3位以内(後継者3人の場合)であること。
⑤ 贈与の時からその贈与の日の属する年分の贈与税の申告書の提出期限(その提出期限前に後継者が死亡した場合には、その死亡の日)まで取得した株式等を継続して保有していること。
⑥ 贈与直前において3年以上役員(会社法上の役員及び業務を執行する社員を含みます。)であること(措規23の12の2⑧,会社法329①)。
⑦ 特例会社の株式等について、一般措置(措法70の7①,同法70の7の2①)の適用を受けていないこと。
⑧ 特例承継計画に記載された後継者であること(措規23の12の2⑨)。

(今月の税務トピックス②につづく)

《コラム》この10年間減っている労働時間

◆月240時間以上労働の過労死ライン
 最近の調査で東京大学社会科学研究所の調べによると、この10年間に月に240時間以上の長時間労働をしている人が減少したことが分かりました。月に240時間以上の長時間労働をしている男性の「典型雇用」(正社員等)では2007年の35.4%から2017年は23.7%まで減少しています。同じく女性の典型雇用でも12.1%から8.2%に減少しています。「非典型雇用」(契約社員等)でも減少傾向が見られます。
 月に240時間以上の長時間労働を見ると1カ月20日勤務したとした場合1日12時間以上の労働になりますが、月間80時間以上の時間外労働は過労死ラインと言われています。脳卒中や心臓病の発症率が高く、労災とされた時は業務との因果関係が認められやすくなり、労働者、企業の双方にリスクがあります。減少してきたとは言えまだ23.7%あるのは高いと言えるのかもしれません。

◆帰宅時間は変わったか
 同じ調査で働く人の「平均帰宅時間」も早まった事が分かりました。この10年間で男性は午後8時2分から同7時48分へ、女性は午後6時48分から同6時1分へそれぞれ減少していて平均的な労働時間も減少しています。

◆働く人の意識の変化
 別の調査でシチズン時計株式会社が行った「ビジネスマンの生活時間35年の推移」によると、帰宅時間で遅いと感じる時間は1980年から2000年迄は「23時」がトップでしたが2010年には「22時」がトップ、2015年には「21時」がトップと、この35年間年々早まる結果となりました。同調査はリーマンショック(2008年)や東日本大震災(2011年)の影響から生活様式が見直され、働き方にも変化が見られるとしています。その後の過労死の社会問題、働き方改革の推進もあり、働く人々の意識の変化がさらに高まってきています。企業もこの世相や意識の変化を認識しておく必要があるでしょう。

 

NISA初年度の非課税期間終了へ

NISAの専用口座で保有する株式のうち、制度がスタートした2014年に購入した株式の非課税期間が年内に終了します。来年以降も株を持ち続けるのであれば、売却益に課税される通常の口座に移管するか、来年分の非課税枠を使ってNISAの適用を継続するか、いずれかの選択が必要です。

 NISAで年間120万円までの投資の利益が非課税になる期間は5年に限られます。そのため、制度が始まった14年に投資した分は今年で非課税期間が終了することになります。
 通常の口座(一般口座・特定口座)への移管では、今年12月の最終営業日の時価を基準にして、その後の利益には20%の所得税が課税されることになります。

 一方、新たなNISA口座への移管後は、5年間の非課税期間が改めてスタートすることになります。非課税の対象となる投資金額は、新たな口座に引き継いだ残高全て。例えば初年度に100万円で購入した株式が500万円まで増えているとすると、非課税となる金額は通常のNISAの年間上限である120万円ではなく、500万円全額です。

 ただし、新たなNISA口座に移管すると、その年のNISAの非課税枠をつぶしてしまうことになります。すなわち年末の時点で120万円以上の株を新口座に引き継ぐと、その年は他にNISAの非課税枠を使えなくなります。

 いずれの選択肢が資産形成に有利であるかは、来年以降の株式の動きによって変わります。保有している株式が他の株式と比べて値上がり率が高いと判断するなら、新しいNISA口座への移管が一般的な選択肢となります。

 日本証券業協会は初年度の非課税期間の終了が間近に迫っていることを受け、利用者に対し、証券会社から順次届く案内に従い、各社の定める期限までに手続きをするように注意を呼び掛けています。

<情報提供:エヌピー通信社>

自動車工業会が車減税に自信

日本自動車工業会は9月下旬に発表した税制改正要望で、自動車の保有者が毎年負担する自動車税を大幅に引き下げるよう政府に求めました。2019年10月に10%となる消費税、米国による輸入自動車への追加関税と、今後の生産・販売は「嵐のような逆風」(自動車メーカー幹部)に見舞われる恐れがあります。19年度の税制改正に向け、自動車業界は例年以上に激しく、財務省や総務省との交渉に臨む姿勢です。

 まず挙げたのは、新たに購入する車を対象にした自動車税の引き下げ。人気の軽自動車税(年1万800円)並みを想定しました。排気量1千cc以下の小型車なら、年2万9500円から1万6400円になる見込みです。

 自動車税は年間1兆5千億円規模の税収をもたらし、地方の貴重な財源となっています。軽レベルまで引き下げれば税収は4千億円ほど減る可能性がありますが、経済産業省が地方税を所管する総務省と内々に減税交渉を進めており、自工会関係者は「実現に向けた地ならしは相当に進んでいる」と自信を見せます。

 政府は6月にまとめた経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で、消費増税への対応を盛り込みました。自動車の販売冷え込み対策として、増税と同時に導入される燃費課税を初年度に限り免除する案が検討されており、自工会は車を購入した初年度の自動車税も併せて対象に加えるよう求めます。

 消費税率のアップで、国内の新車販売は30万台程度を縮小が見込まれます。財務省と総務省は「減税は必要な財源の確保とバーターで」という立場を崩していませんが、自工会は「一時的な減税でも構わないので何とか押し込みたい」と鼻息を荒くしています。