重機大手の企業が、2016年3月期までの4年間で約100億円の申告漏れを東京国税局に指摘されていたことが分かりました。海外のグループ会社との取引を巡り、「移転価格税制」を適用されたことが理由。グループ間での利益移転を防止する同税制は、国際的にネットワークを持つ大企業を主な対象としたものですが、中小企業の海外進出の落とし穴ともなりかねません。
指摘を受けた会社は、国内で生産した自動車部品をタイの子会社に販売した取引について、販売価格が不当に安すぎるとの指摘を国税から受けました。取引によって国外に移転した利益は約100億円とされ、追徴税額は過少申告加算税などを含めて約43億円とみられます。
ある会社が、海外の関連会社に自社商品を通常の取引価格よりも低い価格で販売すると、課税所得はその分減少して法人税負担も少なくなります。一方、海外の関連会社からすれば日本の会社から商品を安く仕入れたことで利益が増え、自国での税負担が増えます。結果、本来なら日本の会社の利益となる部分が海外に移転し、税収も海外に持って行かれてしまうことになります。
こうした課税所得の海外移転を防ぐため、取引価格が一般企業同士における価格に比べて不当に安い、または高いと判断された時には、そこに課税逃れの意図があったかどうかにかかわらず、一般的な価格に計算し直して、移転された利益部分に追徴課税するというルールが1986年に作られました。これが移転価格税制です。
導入された80年代にイメージしていたのは、世界中に子会社を持つ大企業だったかもしれませんが、経済のグローバル化が進むなかで多くの中小企業が海外に関連会社を設立する時代となっています。同税制には企業規模に応じて適用を免除する除外規定などは設けられていないため、海外に支社を持つ中小企業は注意が必要です。
<情報提供:エヌピー通信社>
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