【時事解説】事業承継・引継ぎ支援センターについて その1

中小企業庁では、2020年6月の産業競争力強化法の改正に伴い、これまで第三者承継支援を行っていた「事業引継ぎ支援センター」に、親族内承継支援を行っていた 「事業承継ネットワーク」の機能を統合し、事業承継・引継ぎのワンストップ支援を行うべく発展的に改組し、2021年4月以降各都道府県において事業承継・引継ぎ支援センターとして活動を開始しました。

 事業引継ぎ支援センターは、後継者不在に悩む中小企業・小規模事業者に対して、第三者への承継(引継ぎ)を支援するために、2011年度に7か所設置されることでスタートしました。その後、各都道府県に設置され、2016年度には全都道府県に設置されました。事業引継ぎ支援センターでは後継者不在の中小企業・小規模事業者と譲受を希望する事業者とのマッチングを支援するとともに、とくに後継者不在の小規模事業者と創業希望者とのマッチングを支援する後継者人材バンク事業の運営を行ってきました。

 事業承継ネットワークは、地域の支援者同士が個別企業支援で連携できる地域プラットフォームを確立し、事業承継に向けた気付きの機会を提供することを目的として、2017年度より都道府県単位で、商工会・商工会議所、金融機関などを構成機関として構築されました。同ネットワークでは事業承継診断を起点としたプッシュ型の支援に連携して取り組むとともに、地域の専門家と連携して踏み込んだ事業承継支援を行ってきました。

 これらの両機関を事業承継・引継ぎ支援センターとして統合することで、事業承継・引継ぎのワンストップ支援を行うことが可能となり、親族内承継や第三者承継(M&A)などの幅広い相談により柔軟に対応することが期待されるのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】本当に黒字倒産なのか その2

<ケース2>粉飾の黒字倒産
 しかし、話はこれで終わりではありません。黒字倒産と言われるものの第2のケースが考えられます。損益計算書の黒字あるいは貸借対照表の自己資本がまやかしの場合です。

 たとえば、損益計算書の売上高が粉飾であったとしたら、売掛金は架空のものになります。そうなると、売掛金を貸借対照表の額面どおり回収することは不可能ですから、銀行は融資できません。もし、銀行がだまされて融資してしまえば、返済財源が不足し銀行の貸出金は焦げ付いてしまいます。

 あるいは、損益計算書の利益は正しいとしても、土地などの資産に含み損があり実質的に債務超過になっていれば、やはり融資金の返済財源は不足しますから、銀行は融資を渋るでしょう。こうなると、倒産もやむなしといえますから、この場合は“倒産”が正しく、“黒字”が間違いだといえます。

 <ケース2>の粉飾は論外であり、外部からの手助けにより救うことは難しくなりますが、<ケース1>の場合は倒産させてはいけません。そのためには、損益だけを見るのではなく、資金管理(資金繰り)が重要になります。損益と資金管理は経営の両輪です。そのことを経営者は再認識しなければなりません。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】本当に黒字倒産なのか その1

「黒字倒産」という言葉がありますが、常識的に考えると違和感のある言葉です。儲かっている会社は倒産しないはずですから、“黒字”と“倒産”は本来両立する言葉ではないように思うからです。“黒字”か“倒産”のどちらかが間違いなのかもしれません。

<ケース1>本当の黒字倒産
 倒産は損益計算書で計算される利益とは関係ありません。倒産とは約束した債務を支払えない状況ですから、支払期日に支払金額に相当するキャッシュがなければ倒産してしまいます。
 たとえば、以下のような損益計算書と貸借対照表を持つ会社があったとします。
<損益計算書>
売 上 高:200
売上原価:100
当期純利益:100
<貸借対照表>
売掛金:200/買掛金:100
       /純資産:100
       /(当期純利益:100)

 これを見る限り、利益は上がり純資産もあり、何の問題もない会社だと思っても不思議ではありません。問題は売掛金と買掛金の支払期日です。この会社の資産は売掛金だけですから、買掛金を支払うには売掛金が現金化されなければなりません。ところが、買掛金の期日が4月末日なのに売掛金の期日が5月末日だったとしたら、買掛金の支払いができなくなってしまいます。これが黒字倒産です。

 しかし、本当にこのような形で黒字倒産するとすれば、関係者は愚かです。この例でいえば、銀行は4月末に決済資金100を融資しても、5月末には200の売掛金が回収できるのですから、銀行の融資金回収に問題ありません。この場合、“黒字”は正しく“倒産”が間違いです。こうした会社は倒産させてはいけません。こんな道理が分からない銀行と、銀行を説得できない経営者がいるとすれば、大いに糾弾しなければなりません。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》押印不要の書類が増えています

菅内閣は脱ハンコ、DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略を進めています。これに伴い、税務書類についても押印が不要となる書類が増えてきました。

◆税務署窓口における押印の取扱い
 令和2年12月21日に「令和3年度税制改正の大綱」が閣議決定され、この中で、税務関係書類(国税に関する法律に基づき税務署長等に提出される申告書等)の押印の見直しが行われました。提出者等の押印をしなければならないこととされている税務関係書類について、一部の税務関係書類を除き、押印を要しないこととする方針が示されました。そして、この取扱いは原則として令和3年4月1日以後に提出する税務関係書類について適用する予定となっていましたが、一方で「改正の趣旨を踏まえ、押印を要しないこととする税務関係書類については、施行日前においても、運用上、押印がなくとも改めて求めない」ともされていました。
 この閣議決定に基づき、全国の税務署窓口においては、本件見直しの対象となる税務関係書類について押印がなくとも改めて求めないこととしています。 

◆振替納税やダイレクト納付の手続も
 従来、振替納税やダイレクト納付をしようとする場合には、それぞれ「振替依頼書」や「ダイレクト納付利用届出書」に金融機関の届出印を押印する必要がありました。これらの手続も令和3年1月から、個人の方の振替依頼書及びダイレクト納付利用届出書をe-Taxで提出することが可能となりました。
 さらに、振替依頼書等のオンライン提出においては、金融機関の外部サイトにより利用者認証を行うので、電子送信時に電子署名及び電子証明書の添付も不要となります。

◆押印が必要な書類も
 とはいえ、担保提供関係書類・物納手続関係書類の一部や遺産分割協議書、特定個人情報の開示請求、閲覧申請手続など、押印が必要な書類もまだまだありますので注意しましょう。

【時事解説】中小企業にこそ求められるトップの倫理観 その2

このことからわかることは、日産自動車のような日本を代表するグローバル企業においてさえ、トップの暴走を抑止するガバナンス体制の構築は容易ではないということです。では、ひるがえって非上場の中小企業の場合はどうでしょう。

 非上場の中小企業では、トップの在任期間は長期にわたるのが普通ですし、人事権も大企業より恣意的に行使できるでしょう。その上に株式も実質的に支配しているとすれば、非上場企業のトップの存在感は圧倒的です。そうしたトップの倫理感に問題が生じたときに、取締役会等の会社組織で抑止力を働かせることができるでしょうか。

 非上場企業でも社会的公正さが求められることは変わりません。トップの暴走に歯止めを効かすガバナンス体制が社内で構築できれば、それに越したことはありません。しかし、日産自動車の事例を見れば、非上場企業でそれを実現することはかなり難しいことだと思われます。社内で抑止体制が構築できないとすれば、トップ自身が歯止めにならなければなりません。

 そのように考えると、非上場企業のトップの倫理観は大企業以上に重要になってきます。倫理観のない人間をトップに据えることは避けるべきですし、現在トップにある人間はそのことを十分自覚しなければなりません。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業にこそ求められるトップの倫理観 その1

やや旧聞に属しますが、日産自動車のゴーン元会長の逮捕は、大企業にとどまらず中小企業においても会社のガバナンスを考え直すいい機会だと思います。

 近年、主として上場企業においてガバナンス体制の構築が急ピッチで進められてきました。その柱は取締役会の活性化です。従来、ともすれば形式的になりがちであった取締役会を実質的に機能させ、社会的公正さを維持しながら経営効率の向上を図ろうとするものです。その際、取締役会が社内出身者だけで構成されていたのでは、議論が内向きになるだけではなく、人事権を握るトップに反論することは難しいだろうということもあり、社外役員の参加を義務付けました。日産自動車でも当然、複数の社外取締役や社外監査役が存在しています。

 報道によれば、ゴーン前会長の公私混同の事実は社長以下の幹部はつかんでいたようです。会社のガバナンスという見地からいえば、そうした事実があれば取締役会で議論し、前会長の反論を聞いた上で、その解任を取締役会で決め、その後に法律に違反する行為があれば、法的機関に告発するというのが筋です。

 ところが、華々しい事業実績を有し、強力な人事権を持ち、20年近くにわたり君臨するゴーン前会長を前にすると、社内の取締役は言うに及ばず社外取締役も自由に発言できなかったというのです。そこで、会社側は検察と司法取引を行い、ゴーン前会長の逮捕を先にしてもらい、ゴーン氏不在の取締役会で前会長の解任を決めました。これでは、会社のガバナンスが有効に機能したとはいえません。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】小規模事業者に期待される役割・機能 その2

では、小規模事業者においては期待される役割に対して具体的にどのような取組みが行われているのでしょうか。以下で、中小企業庁編『中小企業白書2020年版』の中で、特に小規模事業者においての役割が期待される「生活インフラ関連型」の事例として紹介された、吉野川タクシー有限会社(本社:徳島県徳島市)の取組みについてみていきましょう。

 同社の現社長は祖父が代表を務めていた同社を27歳のときに事業承継したことを契機に、地域の人々の移動を支えることを目的に新たなサービス開発やIT化に取組んでいます。
 同社では妊産婦が安心して病院に通えるよう、妊産婦専用のタクシーサービス「マタニティタクシー」を新たなサービスとして考案しました。同サービスは、安全性能の高い専用車両とヘルパーの資格を持つドライバーを特徴とし、登録制で24時間いつでも通常のタクシーと同じ料金で利用できます。また、複数の子供たちを相乗りさせて塾や習い事の送り迎えを行う「キッズタクシー」を考案しました。これらの妊産婦・子供向けのサービスをきっかけとして、同社のリピーターとなるケースもあり、通常のタクシー利用にもつながっています。

 現場のIT化については、タクシーの自動配車システムを開発しました。同システムの導入により、コールセンターが利用者から電話を受けると、最短距離にいるタクシーを自動で検出し、車内に搭載されたタブレット端末経由で通知することで、効率的・安定的な配車が可能となっています。
 このように人口減少・少子高齢化が深刻な地方において、地域住民のニーズに応えることで生き残りを図ることが可能となるのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》産業雇用安定助成金の創設について

◆「従業員シェア」による雇用維持を
 コロナ禍においてこれまでと同じ人件費を抱えきれなくなった企業が、人手不足の企業に従業員を出向させる動きがあります。航空業界からコールセンター業界へ、あるいは飲食業界から小売業界への出向など話題になっていますが、この「従業員シェア」を支援するための助成金が新設されました。
 支援の対象となるのは、新型コロナウィルス感染症の影響により事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた事業主で、在籍型出向により労働者の雇用を維持する場合となります。
 主な要件としては、
・出向期間終了後は元の企業に戻って働くことを前提としていること
・出向元と出向先が親子関係にないなど、独立性のある関係であること
・出向先で別の人を離職させるなど、玉突き出向を行っていないこと
・出向者は雇用保険被保険者であること
などがあります。

◆受給額と申請手続き
 受給額は、賃金、教育訓練および労務管理に関する調整経費などの一部であり、以下の条件で計算されます。
・出向元が解雇などを行っていない場合:中小企業9/10、中小企業以外3/4
・出向元が解雇などを行っている場合:中小企業4/5、中小企業以外2/3
 12,000円/日を上限(出向元・出向先の合計)とし、出向初期経費も別途10万円/1人が助成されます。対象期間は、令和3年1月1日以降、申請先は都道府県労働局やハローワークです。
 出向の人材マッチングについては、(公財)産業雇用安定センターのほか、各自治体で取り組んでいる場合もあります。詳細は、「産業雇用安定助成金ガイドブック」で確認してみましょう。(→https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000735077.pdf)
 まずは雇用維持の優先度が高いと思われますが、これまでとまったく異なる業界への出向は、従業員への大きな負担となる可能性もあります。教育訓練などのサポートやストレス軽減の施策について、出向先と出向元の連携が期待されます。

【時事解説】成功体験を否定できるか その2

同様なことは新聞の宅配にもいえます。かつて情報へのアクセスが容易ではなかった時代には、宅配網を全国に持っていることが新聞の強みでした。しかし、電子データにより、記事をパソコンやスマホに送ることができるようになれば、紙に印刷し、人力で配る宅配はコストがかさみ、新聞経営の重荷になります。

 強みは永遠に強みではあり続けるわけではありません。環境の変化はかつての強みを一気に弱みにしてしまいます。それはいつの時代にもあることですが、ネットの普及はその変化を加速させているように思います。
 銀行の店舗も新聞の宅配も、かつては強みであっただけに、そこにはかなりの経営資源を割いています。こうした経営資源が環境の変化により弱みに転化した時、スリム化することは容易ではありません。

 強みが弱みに転化することは銀行や新聞業界だけではなく、どこの業界でも起こり得ることです。かつての強みが強みであるうち、新しい強みを開拓しなければなりませんが、銀行や新聞に次代を担う新しい強みが見いだせないところが問題です。
 経営者は、強みがいつまでも同様に輝き続けないということを再認識し、状況の変化に柔軟に対応できるようにしなければなりません。人間だれしも昔の成功体験を否定することは容易ではありませんが、それこそが変化の激しい時代に経営者に求められる資質だと思います。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》コロナで売上の減少した中小事業者に対する一時支援金の支給

◆緊急事態宣言の延長を受けて
 政府はコロナウイルスの影響を受けた事業者支援として、売上高が半減した中小事業者に支給する「一時給付金」の給付額を増額することを決めました。これまで法人は40万円、個人事業主は20万円としていましたが、それぞれ60万円、30万円に引き上げられます。昨年の持続化給付金同様に受付から支給まで時間のかからない範囲で支給していく予定です。

◆対 象
 緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛により影響を受け、売上が減少した中堅・中小事業者が対象となります。

◆要 件
 緊急事態宣言の再発令に伴い、
①緊急事態宣言発令地域の飲食店と直接・間接の取引があること(農業者・漁業者、飲食料品・割り箸・おしぼりなど飲食業に提供される財・サービスの供給者を想定しています)
 または、
②緊急事態宣言発令地域における不要不急の外出・移動の自粛による直接的な影響を受けたこと(旅館、土産物屋、観光施設、タクシー事業者等の人流減少の影響を受けた者を想定しています)により、本年1~3月のいずれかの月の売上高が対前年比(or対前々年比)▲50%以上減少していること

◆支給額
 法人は 60万円以内、個人事業者等 は30万円以内の額を支給します。
※算出方法:前年(or前々年)1月から3月の事業収入-(前年(or前々年)同月比▲50%以上の月の事業収入×3)

※前年の確定申告、対象月の売上台帳の写しとともに、宣誓書において、緊急事態宣言によりどのような影響を受けたかを選択肢から選んで自己申告します。なお、一次取引先の納品書、顧客の居住地を示す宿帳、顧客名簿、入込観光客の統計等の保存が義務付けられます。
※3月上旬に電子申請での受付開始を予定しています。該当しそうな事業者は早めに準備しましょう。