しかし、我が国では会社を株主のものと単純には割り切れません。会社は確かに株主が作った組織ですが、その後の運営は役員や従業員が主体となります。会社が上げた利益は、従業員が力を合わせ皆で稼いだものと考えますから、株主というより従業員のために使うべきではないかという思想も捨て切れません。

 欧米的には、株式会社はある特定の事業を行い、利益をあげることを目的に作ったものですから、その事業が時流に合わなくなれば、新陳代謝があるのはやむを得ないと考えます。従業員もそれに応じて職場を変わるものとして、雇用の流動化に慣れています。とすれば、会社の存続のために自己資本比率を闇雲に高くする必要はなく、余剰資金の株主分配も当然と考えます。

 しかし、日本の従業員にとっては、会社は単なる給与をもらう場所というに止まらず、精神的なよりどころといった側面も併せ持ちます。また、雇用の流動化も進んでおらず、普通の従業員は会社を変えることは相当な苦痛を伴いますから、どんな形であれ、会社にはできるだけ存続してもらいたいと思っています。社会のセーフティネットの一部を会社が担っているという見方もできます。とすれば、会社存続の社会的要請が強くなり、いたずらな株主還元の増加に慎重にならざるを得ません。

 大手上場企業ではグローバルスタンダードで株主還元が重視される傾向にありますが、その考え方が一般的な上場企業にまでに広がっているとはいえません。今後、成熟経済に入り、再投資は益々難しくなりますから、余剰資金の使い方は上場企業にとり大きな課題であり続けると思います。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)