【時事解説】“水をさす”会計から“棹さす”会計に その2

しかし、金融のグローバル化は会計の国際化を推し進め、資産評価の時価主義化の流れを強めます。投資有価証券の時価評価、固定資産の減損会計、たな卸資産の低価法などが相次いで導入されました。その上に、税効果会計も加わります。税効果会計では業績が好調で将来収益が見込めれば、繰延税金資産を計上できますが、業績が悪化し赤字予想になれば、それまで積んだ繰延税金資産を取り崩さなければなりません。繰延税金資産を計上するときには損益計算書の利益ですが、取り崩すときには費用が発生します。

 景気が悪いときには当然本業の業績も悪い。その上に資産価格下落の影響を決算書に計上しなければなりません。逆に好景気のときには本業の業績好調に加えて、税効果会計などによる利益が加算される傾向にあります。景気や資産価格の動向が経営者の意思に関わりなく、ヴィヴィッドに決算書に反映されやすくなります。つまり、時代の流れに“掉さす”会計に変わりつつあるのです。

 これからの会計は時代の流れに大きく翻弄されるものになり、調子のいいときには利益が大きく出て、業績が悪化すると赤字が増幅されやすくなります。こうした会計になると、長期的視野に立った経営ができず、短期的な資産価額の変動に大きく経営が左右される、といった批判も出てきます。しかし、会計のこの流れは不可逆的だと考えざるを得ません。経営者はそうしたことも踏まえて経営することが求められるのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

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