状況が順調なときは問題がありませんが、カネが足りなくなってきたとき、返済に対してどのような態度を取るかは人によって異なります。誠実性の高い人は自分の生活をギリギリまで切り詰めても返済をしようとしますし、反対に誠実性の低い人は自分の生活を優先して返済を後回しにするでしょう。そんな誠実性の判断ができれば、与信判断の妥当性はもっと高くなるのではないかと思っていたのです。しかし、そんな誠実性は数値化できないので、与信判断に加えることは無理というのが常識でした。ところが、最近のAI(人工知能)の発達はそんなこともできるようになっているようです。

 買い物履歴、クレジットカードの使い方やその決済状況などは金銭に関する直接的情報ですから、金銭に対するその人の誠実性を判断する重要な情報になることはいうまでもありません。そうした金銭情報だけではなく、その人がネットでどういう情報を好んで読んでいるのかとか、フェイスブック、ツイッターに対する共感や反感を総合的に分析すれば、返済に関する誠実性をかなり正確に判断できるようになるというのです。

 まだ、実用段階には至っていないようですが、もはや将棋ではプロを凌駕するほどになったAIによるビッグデータ分析の急速な発達を考えれば、早晩可能になるでしょう。借入人の誠実性までも加味した与信判断が行える時代は目前に迫っているようです。

 しかし、ここまで考えたとき思わずドキリとします。確かにカネを貸す立場からは誠実性を判断材料にできるというのは朗報ですが、借りる方からすればゾッとしません。自分の人柄を機械に判断され、「お前は誠実性が低いからカネを貸せない」と言われるのは、何か薄気味悪い気がします。技術の進歩は何もかも数値化を可能としてしまう勢いなのですが、果たしてこれが望ましい社会なのかというと、考え込んでしまいます。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)