(前編)2018年度税制改正:生命保険料などの年末調整手続きを電子化へ!

2018年度税制改正において、生命保険料控除、地震保険料控除及び住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除(いわゆる住宅ローン控除)に係る年末調整手続きを電子化することが盛り込まれております。
 現行、住宅ローン控除や生命保険料控除、地震保険料控除を適用するには、年末のローン残高証明書や保険料控除証明書を銀行や生命保険会社等から郵送で受け取り、これら紙の証明書を勤務先に提出する必要があります。
 その際、給与所得者の保険料控除申告書などの関係書類を作成して一緒に提出する必要があり、会社や社員からは、一連の手続きが非常に煩雑であるとの声がありました。

 年末調整手続きの電子化では、生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書、住宅ローン控除申告書、住宅ローン控除証明書、住宅ローンの年末残高証明書の5つの年末調整関係書類の書面による提出に代えて、電磁的方法による提供(電子提供)をすることができるように電子化します。
 この目的は、インターネット上で簡単に手続きができるようにすることで個人や企業の利便性を高め、事務負担の軽減を図ることです。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年8月10日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》社内研修参加と労働時間

◆労働時間の新たなガイドライン
 平成29年1月に厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」が発表されています。以前からあった基準は廃止され新たなガイドラインが示されました。それには労働時間とされる場合が3つありますが、その中の社員研修に関する労働時間についてみてみます。
 「研修に参加する事が業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習を行っていた場合」は労働時間に該当するとしています。しかし、使用者から何らかの指示があれば自主研修はすべて労働時間だと判断するのではなく個別に考える必要があります。

◆裁判例等から検討される観点
 裁判例では労働時間とみなされるのは次の3つの観点があります。
①時間や場所での制限によって行動に相当の制約がされているか⇒所定の労働のように指揮命令下での労働における行動の拘束下と言えるか
②使用者からの義務付けの態様、程度(明示、黙示の命令か、黙認か)⇒指揮命令のレベルの強弱
③要した時間が社会通念上必要であるか

◆社内研修について
 従業員が会社で実施する研修に参加した場合、労働時間に該当するかどうかはよく問題になります。社内研修が一定の場で所定の時間に開催されていれば前記①の要件を満たします。また、②の使用者の義務付けでは通達において「就業規則上の参加しない事による制裁等不利益扱い無く自由参加」であるかどうかが争われます。研修の参加、受講は業務上の義務であるか否かであり、不参加によるペナルティ等事実上の不利益によって強制される場合も業務に含まれるとしています。

◆自主研修の場合は
 スキルアップのためのWEB学習などは社内等場所の制約、業務上の必要性が高く業務命令的要素が強い事、学習状況を会社が把握している等であれば業務上となる要素は強く、逆に労働時間外に行わせるならば原則事業場内では学習を行わせない、学習自体を義務付けしない、あくまでも一定のスキルアップ程度に留める、本人の自主性に任せ会社は管理、監視はしない等が必要です。

《コラム》交際費課税の特例延長

◆年額800万円までか、全体の50%か
 法人が支出した交際費は原則として損金不算入ですが、平成26年度税制改正から、資本金1億円以下等の中小法人については支出する交際費等のうち年800万円以下は損金として計上するか、接待飲食費の50%相当額を損金計上するかの選択適用ができるようになりました。
 また、中小法人以外の法人でも、接待飲食費の50%相当額を損金計上できるようになりました。
 当初は平成28年までの特例措置となっていましたが、28年度税制改正で30年3月まで、そして今年の30年度税制改正で32年3月31日までに開始する事業年度まで、と適用期限が延長されました。

◆5,000円以下の接待飲食費の扱いに注意
 昔から実務上は5,000円以下の飲食費は会議打ち合わせでの飲食との区分が曖昧でしたが、平成18年度改正より飲食に関する接待費が5,000円以下であれば税務上交際費に含めず、全額を損金計上できる事が明記されました。
 ただしその法人の役員・従業員・親族に対する接待等のために支出するものは、5,000円以下であっても交際費に該当しますので注意が必要です。
 また、帳簿書類への記載は、
①飲食のあった年月日
②参加した得意先等の方の氏名や関係
③参加した人数
④飲食費の額と店の名前・所在地
等を明記する必要があります。
 よく経理担当者から「この領収書のお店、誰と行ったんですか?」と聞かれる社長も多いかもしれませんね。お付き合いの多い場合は「分からなくなるからすぐに領収書に相手の名前を書いておく」という方もいらっしゃいます。

◆交際費課税は景気のバロメーター?
 昭和29年度の税制改正から導入された交際費課税制度ですが、過去には頻繁に改正が行われていました。世相や景気によって左右されがちな交際費課税ですが、ここ最近の特例措置の延長に鑑みると、政府は景気の回復を最優先にしていることが見て取れます。

申告漏れで移転価格税制を適用

 重機大手の企業が、2016年3月期までの4年間で約100億円の申告漏れを東京国税局に指摘されていたことが分かりました。海外のグループ会社との取引を巡り、「移転価格税制」を適用されたことが理由。グループ間での利益移転を防止する同税制は、国際的にネットワークを持つ大企業を主な対象としたものですが、中小企業の海外進出の落とし穴ともなりかねません。

 指摘を受けた会社は、国内で生産した自動車部品をタイの子会社に販売した取引について、販売価格が不当に安すぎるとの指摘を国税から受けました。取引によって国外に移転した利益は約100億円とされ、追徴税額は過少申告加算税などを含めて約43億円とみられます。

 ある会社が、海外の関連会社に自社商品を通常の取引価格よりも低い価格で販売すると、課税所得はその分減少して法人税負担も少なくなります。一方、海外の関連会社からすれば日本の会社から商品を安く仕入れたことで利益が増え、自国での税負担が増えます。結果、本来なら日本の会社の利益となる部分が海外に移転し、税収も海外に持って行かれてしまうことになります。

 こうした課税所得の海外移転を防ぐため、取引価格が一般企業同士における価格に比べて不当に安い、または高いと判断された時には、そこに課税逃れの意図があったかどうかにかかわらず、一般的な価格に計算し直して、移転された利益部分に追徴課税するというルールが1986年に作られました。これが移転価格税制です。

 導入された80年代にイメージしていたのは、世界中に子会社を持つ大企業だったかもしれませんが、経済のグローバル化が進むなかで多くの中小企業が海外に関連会社を設立する時代となっています。同税制には企業規模に応じて適用を免除する除外規定などは設けられていないため、海外に支社を持つ中小企業は注意が必要です。
<情報提供:エヌピー通信社>

滞納発生額、2年連続減

国税庁が発表した、国税を期限どおりに払えない「滞納」の最新状況では、新たに発生した滞納額は2年連続で減少し、残高もピーク時から3分の1にまで減少するなど比較的落ち着いた推移を示しました。しかし過去のデータを見ると、消費増税が行われた直後には必ず滞納が激増していることから、来年10月の10%への引き上げ後にも再び滞納件数が跳ね上がることが予想されます。

 2017年度に新たに発生した国税の滞納額は6155億円で、前年よりわずかに減少しました。17年度末時点での滞納額の残高は8531億円となり、19年連続の減少です。年度末での残高がピークだった1998年の2兆8149億円から7割減ったことになります。新規発生額は毎年減り続けているわけではないので、国税が督促や差し押さえなどを使って、発生を上回るペースで滞納整理を進めている状況が見てとれます。

 これまでの新規滞納発生額の推移を見ると、ピークだった1992年から増減を挟みながら減少を続けてきたなかで、発生額がぐっと増えた2つの山があることが分かります。一度目は98年で、二度目が2015年です。この2年の共通点は、消費税率が引き上げられた時期に当たるということ。一度目は3%から5%に、二度目は5%から8%に引き上げられ、滞納する事業者が一気に増えたことが、発生額の急増につながりました。

 言うまでもなく、来年10月には8%から10%への消費税率の引き上げが予定されています。取引本体の金額が1千万円だとすれば実に100万円の消費税が課されるわけで、消費者としても事業者としても、これまでにない消費税負担が重くのしかかることになります。当然、過去2度の増税時と同じように消費税の滞納も一気に増えるでしょう。全ての中小企業にとって無関係な話ではありません。
<情報提供:エヌピー通信社>

【時事解説】マイナス金利をファイナンス理論に適用すると その2

運用金利がプラスであれば、そこに個別リスクを乗せますから、割引率は必ずプラスになります。マイナス金利政策で国債金利がマイナスになるとしても、マイナス幅には限界がありますし、そこに個別リスクを上乗せしますから、割引率はプラスになると考えてもいいと思います。ただ、本稿では、やや頭の体操的にはなりますが、仮にマイナス金利が極端に振れ、割引率がマイナスになるとどうなるか考えてみましょう。

 たとえば、割引率が-10%だったとしてみます。現在の100円は-10%で運用すると、1年後には90円になってしまいます。つまり、1年後の90円が現在の100円(90÷0.9)と同等になり、90円を超えて回収できるとすれば、今100円投資することが合理的だという結論になってしまいます。

 しかし、100円投資すれば1年後に90円回収できるから投資するというのは明らかに不合理です。なぜなら、そんなことなら投資せず現金で100円持ち続けた方が有利だからです。このように現金保有にマイナス金利を付けられないという前提ではマイナス金利に基づくファイナンス理論は崩壊してしまいます。

 ここから分かることは、マイナス金利政策の最大の弱点は現金にマイナス金利を付けられないことにあります。これはファイナンス理論だけではなく、マイナス金利全体に当てはまる議論です。現金にマイナス金利を付けられない以上、そのひずみは銀行が一身に背負わなければなりません。そう考えると、マイナス金利は長く続けられる政策ではありません。逆に、強力に長く続けるようであれば、銀行は持ちこたえることはできないでしょう。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】マイナス金利をファイナンス理論に適用すると その1

 2018年7月の政策決定会合でややトーンは弱まりましたが、日銀は依然としてマイナス金利政策を維持しています。マイナス金利は経済だけでなく、会計方面にも大きな影響を与えます。というのは、会計やファイナンス理論で重要となる将来キャッシュフローの現在価値の計算に際し使用する割引率は、国債等の運用利回りをベースにするからです。

 投資の意思決定の問題を考えてみましょう。投資の際には、投資金額以上の資金回収が得られるかどうかが重要な判断材料になります。そのため、現在投資しようとするキャッシュと、将来回収できると予想されるキャッシュを比較しなければなりません。しかし、手元に存在する100円と将来手にすると予想される100円は、同じ100円でも同等でありません。1年後の100円は現在の100円に比べて、2つの点で見劣りするからです。一つは運用利息です。現在の100円は預金をしたり、国債を買ったりすれば1年後には利息が付きますから、元利含めて100円を上回ります。もう一つは確実性です。現在は確実ですが、将来は不確定です。ですから、現在時点と比較する将来のキャッシュはある一定の利率で割り引いて計算する必要があります。その利率を割引率といいます。割引率は国債等のリスクフリー(元本毀損リスクがない)レートに個別のリスクを加えたレートになります。

 たとえば、割引率が10%とすると、1年後に手にするとされる100円は90.9円(100円÷1.1)と評価されます。つまり、今100円投資して、1年後に100円回収できると予想できても、投資採算には合わないと判断できます。最低限1年後に110円回収できたとき、今の投資の100円(110円÷1.1)と同じ価値になります。これが割引率がプラスのときの通常の投資判断になります。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【助成金補助金診断ナビ】新着助成金ニュース

【経済産業省】
●平成29年度補正予算 「事業承継補助金(後継者承継支援型)」 3次公募
 事業承継(事業再編、事業統合を除く)を契機として、経営革新や事業転換を行なう中小企業者に対して、その新たな取組に要する経費の一部を支援する目的で補助金を支給します。

●平成29年度補正予算 「事業承継補助金(事業再編・事業統合支援型)」2次公募
 事業再編・事業統合を含む事業承継を契機として、経営革新や事業転換を行なう中小企業者に対して、その新たな取組に要する経費の一部を支援する目的で補助金を支給します。

●平成30年度予算 「地域の特性を活かしたエネルギーの地産地消促進事業費補助金(再生可能エネルギー熱事業者支援事業)」4次公募
 従来の大規模集中電源に依存した硬直的なエネルギー供給システムを脱却するとともに、急速に普及する再生可能エネルギーをはじめとした分散型エネルギーを安定的かつ有効に活用していくため、地域に存在する分散型エネルギーを地域内で効率的に活用する「エネルギーの地産地消」が注目を集めています。エネルギーの地産地消を進める上では、エネルギー設備の導入等に要する初期費用に対し、十分なエネルギーコストの削減を確保できる効率的な設備形成が求められる。こうした効率的な設備形成を行うためには、地域のエネルギー需給の特性に応じて設備導入を進めることが必要で、それを支援するために補助金を支給します。

【他省庁/都道府県】
●平成30年度 三菱UFJ技術育成財団 「研究開発助成金」 第2回
 三菱UFJ技術育成財団は、技術指向型の中小企業の育成を通じて、我が国産業の発展並びに中小企業の経営高度化に貢献することを目的として、新技術・新製品等の研究開発に対して助成金を交付します。また、当財団で過去に助成金交付及び債務保証した実績のある企業で成長が見込める企業に対し、より長期的な視野で支援する目的で、当財団が株式を保有する業務も引き続き行っています。創業以降の成長に対応する形で助成金交付に加えて株主となることにより、従来以上に長期的に支援をします。

●平成30年度 北海道 「中小企業等外国出願支援事業」 2次公募
 北海道内の中小企業者が、海外市場での販路開拓や営業展開、模倣被害への対策に、外国への特許等を出願する際に係る費用の一部を支援する目的で補助金を支給します。

●平成30年度 東京都 「中小企業における危機管理対策促進事業(サイバーセキュリティ対策促進助成金)」
 東京都では、中小企業者等が自社の企業秘密や個人情報等を保護する観点から構築したサイバーセキュリティ対策を実施するための設備等の導入を支援し、もって、東京都内の中小企業の振興に資することを目的として助成金を支給します。その一環として、標的型メール訓練を助成の対象としています。

上記に関する詳しい情報は、ゆりかご倶楽部「助成金補助金 診断ナビ」をご確認ください。
※上記以外の新着助成金情報もご確認いただけます。

(後編)国税庁:2017年度査察白書を公表!

(前編からのつづき)

 告発分の脱税総額は前年度を26億9,100万円下回る100億100万円、1件あたり平均の脱税額は8,900万円(同9,600万円)となりました。
 告発分を税目別にみてみますと、法人税が前年度から18件減の61件で全体の54%、脱税総額は約57億円で56%を占めました。

 所得税は同8件減の19件(脱税総額約20億円)、相続税は同1件増の3件(同約4億円)、源泉所得税は同2件増の3件(同約3億円)、消費税は同4件増の27件(同約18億円)となり、消費税の脱税額のうち約11億円は消費税受還付事案(ほ脱犯との併合事案を含む)です。
 告発件数の多かった業種・取引をみてみますと、建設業が26件(前年度30件)で最多となり、次いで不動産業が10件(同10件)、人材派遣の5件と続きました。
 なお、査察は脱税でも特に大口・悪質なものが強制調査されますが、2017年度の査察は国際事案(15件告発)や太陽光発電関連事案(7件告発)など近年の社会情勢に即した事案に対しても積極的に取り組み、多数の事案を告発しております。

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年8月10日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)国税庁:2017年度査察白書を公表!

国税庁は、2017年度査察白書を公表しました。
 それによりますと、査察で摘発した脱税事件は前年度より30件少ない163件、脱税総額は前年度を16.1%下回る約135億円となりました。
 2017年度(2018年3月までの1年間)に、全国の国税局が査察に着手した件数は174件となり、前年度を4件下回りました。

 また、継続事案を含む163件を処理(検察庁への告発の可否を最終的に判断)し、そのうち69.3%にあたる113件(前年度比19件減)を検察庁に告発しました。
 2017年度は、消費税の輸出免税制度を利用した消費税受還付事案(12件告発)や、自己の所得を秘匿し申告を行わない無申告ほ脱事案(21件告発)に積極的に取り組み、過去5年間で最多の告発を行いました。
 近年、査察における大型事案は減少傾向にあり、2017年度の脱税総額135億900万円は、ピークである1988年度(714億円)の約19%にまで減少しております。
 そして、1件あたり平均の脱税額は8,300万円となり、ここ5年は1億円を下回っております。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年8月10日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。