(前編)国税不服審判所:裁決事例などを公表!

国税不服審判所は、2017年7月から9月分までの裁決事例を、同所ホームページ上に追加公表しております。
 それによりますと、公表された裁決事例は12事例あがっており、そのうち裁決の6事例において、納税者の主張が何らかの形で認められました。

 国税通則法関係では、請求人が行った期限後申告書の提出は、調査の内容・進捗状況、それに関する請求人の認識、期限後申告に至る経緯、期限後申告と調査の内容との関連性の事情を総合考慮して判断した結果、国税通則法第66条第5項に規定する「決定があるべきことを予知してされたものでない」ことに該当するとして、所得税等に係る無申告加算税を全部・一部取り消しております。

 さらに国税通則法関係において、当初から所得を過少に申告する意図を有していたと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例があります。
 同事例では、請求人が当初から所得を過少に申告する意図を有していたことを推認させるものとまではいえず、その他、請求人の上記意図を認めるに足りる証拠はないとして、消費税等に係る重加算税の賦課要件を満たさないと判断しました。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年7月9日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(後編)政府:生産性向上特別措置法により設備投資を支援へ!

(前編からのつづき)

 上記②では、2018年度税制改正において、IoT設備投資(センサー・ロボット等)を行った場合に、特別償却30%又は税額控除3%(賃上げを伴う場合は5%)を選択適用する「情報連携投資等の促進に係る税制」を創設し、こうした取組みに用いる設備等への投資に対する減税措置等の支援を行います。
 また、一定のセキュリティの確認を受けたデータ共有事業者が、国や独立行政法人等に対し、データ提供を要請できる手続きを創設します。

 上記③では、2018年度税制改正において、中小企業が一定の設備を取得した場合の固定資産税を3年間にわたり最大ゼロとする設備投資の支援措置を創設します。
 これは、市町村の導入促進基本計画に適合し、かつ、労働生産性を年平均3%以上向上させ、企業の収益向上に直接つながる一定の機械・装置等であって、生産、販売活動等の用に供されるものの課税標準を、市町村の判断において、最初の3年間ゼロから2分の1に軽減します。
 今後の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年7月17日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)政府:生産性向上特別措置法により設備投資を支援へ!

政府は、昨年取りまとめた「新しい経済政策パッケージ」において、2020年までを「生産性革命・集中投資期間」として、あらゆる政策を総動員するとしており、生産性向上特別措置法により、我が国産業の生産性を短期間に向上させるために必要な支援措置を講じるとしております。

 昨今、IoTやビッグデータ、人工知能などICT分野における急速な技術革新の進展により、産業構造や国際的な競争条件が著しく変化しております。
法律では、
①プロジェクト型「規制のサンドボックス」制度の創設
②データの共有・連携のためのIoT投資の減税等
③中小企業の生産性向上のための設備投資の促進について規定しております。
 上記①のプロジェクト型「規制のサンドボックス」制度の創設は、参加者や期間を限定すること等により、既存の規制にとらわれることなく新しい技術等の実証を行うことができる環境を整備することで、迅速な実証及び規制改革につながるデータの収集を可能とします。
 なお、事前相談・申請を一元的に受け付ける窓口を、内閣官房に開設しております。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年7月17日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》給与所得控除と公的年金控除

◆何故10万円の引き下げか
 平成30年の税制改正で給与所得控除と公的年金控除の額がそれぞれに一律10万円引き下げられました(代わりに基礎控除が10万円引き上げられました)。
 平成26年12月の日本税理士会連合会の税制審議会の答申では、給与所得控除と公的年金控除は多すぎると答申しています。
 理由は所得計算と所得控除の趣旨を明確にすべきということによっています。

◆所得税の計算方法
 所得税を計算する手順は以下となります。
(1)各種所得の金額を計算します
 収入の種類により現在は次の8つに分類して所得金額を計算します。
 利子・配当・給与・不動産・事業・山林・譲渡・雑収入です。内容は多々ありますが計算の原則は(収入金額)-(必要経費)=所得金額です。
(2)所得控除を差し引きます
 社会保険料や医療費等、支払った経費の他、扶養控除・配偶者控除・基礎控除などの最低の生活を保障するための控除があります。
(3)所得金額から所得控除を差し引いて課税所得金額を算出し、これに税率を掛けて税額を算出します。
(4)その後住宅取得控除や配当控除等の政策的な税額控除を引いて納税額が確定します。

◆日本的配慮か?
 給与所得控除と公的年金控除は(1)の所得金額の計算での必要経費に相当するものです。給与所得者は給与という収入を得るために掛かる経費は概ねその企業が負担しているのが現状で、ほとんどないのではないか、更に公的年金の必要経費である掛金は既に社会保険料控除で控除されているのではないか、給与所得控除と公的年金控除には、必要経費以上の生活保障という観点からの配慮があるのではないか、生活保障を云々するのであれば、(2)の所得控除で行うのが筋ではないか、というのが、多すぎるという答申の趣旨です。
 課税の公平という観点からすると、(1)の他の収入の所得計算から控除できる必要経費はほとんど支出したものに限られます。
 現在の社会において労働の対価はほとんど給与所得です。公的年金も給与所得の延長にあります。2つの控除の由来は労働の対価を尊重する日本独特の配慮のようです。

 

《コラム》働き方改革関連法の成立

◆迫られる残業削減・生産性の向上
 政府が今国会の最重要法案としていた働き方改革関連法が6月29日に成立、2019年4月から順次施行されます。無駄な残業を減らし、時間ではなく成果を評価する方向に舵を切ることになります。単純な作業は機械やITに任せ、効率化を進め、不必要な残業は減らし、生産性向上を目指すようになるでしょう。というのも残業に上限時間規制が課せられたからです。業務の見直しや人の増員等の対応に迫られるかもしれません。

◆適用される大きな柱は3つ
(1)働き方に最も大きな影響を与えるのは日本の労働法制で初めて導入される残業時間の上限規制です。労働基準法では労働時間は原則1日8時間・週40時間となっていますが、労使協定を結べば残業時間を無制限に設定できるのが実態でした。現在目安時間である「月45時間、年間360時間」が法制化され2~6か月平均で80時間以内、単月で100時間未満に抑え月45時間を超してよいのは年6回までです。(2020年4月)
(2)脱時間給的働き方は年収1075万円以上の金融のディラーやコンサルタント、アナリスト等を対象に残業代や休日手当の支給対象外とします。(2019年4月)
(3)非正規労働者の処遇を改善する措置では正規と非正規の不合理な待遇差があることを禁じ、「同一労働、同一賃金」の実現を目指します。勤続年数や能力、仕事が同じなら原則、同じ基本給にする等賃金体系の見直しが必要になるかもしれません。(2021年4月)

◆その他の働き方改革関連法(2019年4月)
(1)勤務間インターバルの努力義務…退社から出社までに一定時間の休息を確保
(2)年次有給休暇の取得義務…年に5日は有給休暇を消化させなければならない
(3)労働時間の把握義務…事業所に働く人の労働時間を客観的に把握する必要
(4)フレックスタイム制の拡大…労働時間を1か月から3か月単位で調整可能に
(5)中小企業の割増賃金は残業月60時間超えで割増率を50%以上に(2023年4月)

【助成金補助金診断ナビ】新着助成金ニュース

【経済産業省】
●平成29年度補正予算 「ものづくり・商業・サービス経営力向上支援事業」2次公募
 中小企業・小規模事業者が認定支援機関と連携して、生産性向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援する目的で補助金が支給されます。

●平成30年度予算 「地域の特性を活かしたエネルギーの地産地消促進事業費補助金(再生可能エネルギー熱事業者支援事業)」3次公募
 従来の大規模集中電源に依存した硬直的なエネルギー供給システムを脱却するとともに、急速に普及する再生可能エネルギーをはじめとした分散型エネルギーを安定的かつ有効に活用していくため、地域に存在する分散型エネルギーを地域内で効率的に活用する「エネルギーの地産地消」が注目を集めています。エネルギーの地産地消を進める上では、エネルギー設備の導入等に要する初期費用に対し、十分なエネルギーコストの削減を確保できる効率的な設備形成が求められる。こうした効率的な設備形成を行うためには、地域のエネルギー需給の特性に応じて設備導入を進めることが必要で、それを支援するために補助金を支給します。

【他省庁/都道府県】
●平成30年度予算 国土交通省 「事故防止対策支援推進事業(先進安全自動車ASVの導入に対する支援)」
 国土交通省では、事業用自動車のASV装置を搭載した事業用の車両を購入等する場合、ASV装置購入に係る費用を支援する目的で補助金を支給します。

●平成30年度 北海道 「創業応援基金」
 北海道では、「パワーアップ!札幌」をスローガンとして、挑戦する企業をサポートするため、創業応援基金を創設し、将来の札幌経済を牽引する可能性のある「個性と意欲」に溢れた創業者の方に資金を援助する目的で助成金を支給します。

●平成30年度 岩手県 「建設業新分野進出等支援対策事業」 2次公募
 岩手県では、県内の建設業を営む企業の経営革新を促進し、県内地域経済の振興と雇用の安定を確保するため、建設業者等が新分野進出・新技術開発・新市場開拓を行う場合に要する経費の一部を支援する目的で補助金を支給します。

民法改正で配偶者の取り分が大幅増

 相続制度の見直しを盛り込んだ民法の改正法案が7月の参院本会議で可決、成立しました。従来の相続制度を大きく変える内容が多数盛り込まれ、特に配偶者の権利を大幅に拡大するものとなっています。改正法は2020年7月までに施行される予定です。

 改正法では、結婚して20年以上の夫婦であれば、生前贈与か遺贈された自宅や居住用土地は、遺産分割の対象から外すことができるようになります。現行法では原則として、生前贈与された住居は遺産分割や遺留分減殺請求の対象となっていたものを、完全に配偶者だけの取り分とします。配偶者は自宅を得た上で、残された財産について法定相続分を取得することができることになります。

 また「配偶者居住権」制度が導入されます。現行法では、配偶者が遺産分割で建物を得た時に、建物の評価額が高額だと預貯金といった他の相続財産を十分に取得できない恐れがあります。今の住居に住み続けるための所有権を得ると老後の生活資金に不安が残ってしまい、逆に預貯金を相続すると家を失うことになってしまい、どちらにせよ生活は不安定にならざるを得ません。改正法では、所有権が他者にあっても配偶者が住み続けることができるよう、家の価値を「所有権」と「居住権」に切り離し、配偶者はそのうち居住権のみを得れば家に住み続けられるようにします。さらに亡くなるまで行使できる「長期居住権」とは別に、遺産分割が終わるまでとりあえず住み続けることができる「短期居住権」も創設され、分割協議の結果、長期居住権を得るか家そのものを取得すれば、その後も住み続けることができ、居住権を手放した場合にも、次の家を探すまでは一定期間居住する権利が得られます。
<情報提供:エヌピー通信社>

新旧経営者への「二重徴求」は4割

金融機関から融資を受ける際に経営者の個人保証を外すための基準を示した「経営者保証に関するガイドライン」に関して、金融庁が取りまとめた活用実績によると、2017年度に経営者の保証を求めた融資の割合は全体の83.7%に上っています。また、金融庁の実態調査では、事業承継時に旧経営者との保証契約を解除せず、新経営者とも保証契約を締結する「二重徴求」についても取り上げています。2017年度の二重徴求の件数は2万241件で、調査対象の4割に及んでいます。

 実態調査では金融機関の事業承継の組織的な取り組みを、二重徴求の割合が低い金融機関と高い金融機関とで比較しています。金融庁は「新経営者に対する保証徴求割合は、全般的に概ね高い傾向を示す一方、旧経営者の経営関与が弱い先における旧経営者の保証徴求の割合が高いほど、二重徴求の割合が高い傾向が見られた。そのため、旧経営者における対応が二重徴求において影響が強いといえる」としています。

 二重徴求の割合が高い金融機関について「事業承継時における行内規定の内容が具体的ではなく、ガイドライン本文の内容をそのまま規定に落とし込むなど記載内容が不十分であることや、二重徴求に対する問題意識が行内に浸透しておらず、特段の対応も行っていない」としています。

 一方、二重徴求の割合が低い金融機関について「経営トップ主導のもと、二重徴求の原則禁止や、旧経営者への保証が第三者保証に該当する可能性があることを踏まえて、代表権の有無や株式保有割合等をもとに事業承継時の具体的な保証徴求基準を定めている」と分析しています。
<情報提供:エヌピー通信社>

家族旅行は経費になる?

例年にない暑さを記録している今年は、夏休みを避暑地で過ごそうと考えている人もいるのではないでしょうか。せっかくだからと、出張と家族旅行を兼ねて出掛けることもあるかもしれません。その旅行代金ですが、全額を経費では落とすことは難しいものの、自分の交通費や宿泊費、それに事業に使った現地飲食代などは、経費にして計上したいところです。家族同伴の出張代は全額経費にならないと思い込まず、細かく区分して経理すれば可能なので確認が必要です。

 宿泊するホテルで会議をしたり、販路開拓のために社長だけは別の場所を飛び回ったりと、「仕事のため」と言い切れる必然性があれば税務署にも経費として基本的に認められます。社長の宿泊代のうち、仕事をした分だけ経費に入れることも可能。3日のうち1日仕事をしたら、3分の1は経費にすればいいということになります。

 また家族が会社の役員として業務に従事していて、その旅行が税務上の福利厚生費要件を満たしていれば、経費として認められます。求められるのは、①旅行期間が4泊5日以内であること(海外旅行の場合は滞在日数が4泊5日以内)、②旅行の参加人数が、従業員数全体の(工場や支店ごとに行う場合は、それぞれの職場ごとの人数)の50 %以上であること――の2つの要件を満たすことです。
<情報提供:エヌピー通信社>

金融庁が「過度な貯蓄保険」を調査

 払い込んだ保険料以上の解約返戻金が受け取れるなど、保障よりも貯蓄に重きを置いた生命保険商品について、金融庁が生保各社に対してアンケート調査を行いました。過度に節税を重視した商品設計を問題視しているとみられ、今後規制がかかる可能性も否定できません。

 貯蓄保険と呼ばれる保険商品は、満期を迎えたり途中で解約したりすると、受け取れる保険金や返戻金が払い込んだ保険料を上回ることが特徴となっています。特に法人向けの定期保険は、保険料の支払い時には一定の条件下で保険料を損金算入でき、受取時には退職金の支払いなどとタイミングを合わせることで法人税負担を免れることができる点が強みです。この点が保険の本来の目的である保障をないがしろにしているとして、金融庁は問題意識を抱いているようです。

 また最近では、加入当初は返戻金が低く一定期間を過ぎた瞬間に返戻金が上昇する保険に法人で加入し、低いうちに経営者個人に低価で名義変更し、一定期間経過後に高い返戻金を個人で受け取るという「名義変更プラン」も流行しています。こうした資産形成のみを目的とした〝不自然〟な保険契約の実態を把握し、規制に踏み切るかの判断材料にする狙いが、今回のアンケート調査にはあるとみられます。法人向け定期保険への加入を考えているならば、検討を少し急いだほうがいいのかもしれません。
<情報提供:エヌピー通信社>