民事調停手続の利用

◆民事調停は最も身近な裁判手続
 取引先や顧客との間でトラブルが生じたとき、まずは話し合いで穏便かつ早期に解決することが最良の方法です。もっとも、当事者のみの話し合いでは、話が前進しないこともあるでしょう。当事者間では、つい感情的になったり、客観的な視点を持てずに適切な解決内容を見失ってしまったりすることがあるためです。
 そのようなとき、信頼に足る第三者が入って話し合いを進める制度の一つとして、身近に利用できる「民事調停」という裁判所の手続があります。
 裁判所の手続といっても、訴訟のように当事者が主張や証拠を出し合って裁判所が最終的な判決を下す、というものではありません。裁判官1名と調停委員2名が当事者の間に入り、事案に応じた円滑な解決を目指して話し合いを進める柔軟な手続です。

◆実際の申立方法や審理の内容
 民事調停の申立てを行うには、申立書を作成して簡易裁判所に提出します。申立書の内容も複雑なものではありません。現在、裁判所のホームページに申立書の書式が掲載されていますので、これに記入する形で簡単に申立書が作れます。
 申立費用も訴訟に比べて安価ですし、法廷で公開されるものではありませんので、第三者に知られたくない情報も安心して話すことができます。また、裁判と言えば弁護士を思い浮かべるかもしれませんが、話し合いによる解決制度ですので、弁護士に依頼せず本人のみでの対応が十分可能です。  
 調停委員会の許可を得れば、従業員でも代理人になることができるため、代表取締役本人が出席しなくても良いというのも民事調停のメリットです。

◆調停成立の効果
 話し合いがまとまり、合意に達した場合には、合意内容を記載した調停調書という書面が作成されます。調停調書は確定判決と同様の効果が得られますので、相手方が調停調書に記載された債務を履行しなかった場合には、強制執行が可能となります。
 他方で、民事調停が不成立となった場合にも、大きなデメリットはありません。その場合には、話し合いによる解決は諦め、訴訟をするか否かを検討すればよいのです。

途上国の日本中古車輸入ビジネスと日本の消費税

◆途上国での日本中古車販売ビジネス
 海外から日本の税金に関する問い合わせで比較的多いのが、「日本から中古車を輸入して途上国で売る際の日本の消費税をどうしたら還付できるか?」というテーマです。 

◆輸出に係る消費税は免税が原則
 具体的な数字で流れを説明します。
 中古車マーケット(=自動車オークション)にて20万円でトヨタ車を買います。国内での購入なので、8%の消費税がかかり代金は21.6万円となります。オークション費用やリサイクル費用などの諸経費、さらに日本から輸出の船賃や本国での輸入代金として1台あたり10万円かかったとします。合計原価は30万円+消費税1.6万円です。
 これを本国にて40万円で販売したとします。消費税を負担したままだと利益率は21%、消費税の還付を受けると25%です。
 消費税の還付を受けられるか否かで利益率が大きく変わってきます。
<原則:輸出に消費税はかかりません>
 輸出される物品(中古車)に消費税はかかりません。でも、オークションで購入する際は国内の売買なので、消費税がかかります。ただし、輸出免税なので、消費税の確定申告をすれば消費税は還付されます。

◆立ちはだかる現実の壁!
 海外在住の外国人や外国法人には古物商の許可取得が難しい事もあり、消費税分を免税扱いにして還付してもらうことはかなり難しいのです。その理由は主に2つです。
1.日本に子会社を設立(=国内で自動車の中古市場に参加するには、警察に古物商の許可申請が必要)して消費税の確定申告をすれば還付されるが、その場合、法人税等の申告もしなければならない。子会社の維持費を賄うためには、その分の固定費を回収できるだけの売上利益が必要となる。そこまでの事業規模は見込めない。
2.日本に子会社を持たない場合、中古車を直接調達できないので、知人から購入し、輸出してもらうことになる。本来は、その知人から輸出として購入する際には輸出免税扱いなので消費税はかからない。しかし、知人は、個人事業としている者が多く消費税の申告していないため、代価は消費税込みの金額となってしまっている。
※現実的には、「輸出は免税」が通じない取引の世界となっているのが実態です。ある程度の事業規模が見込めないとなかなか難しいビジネスです。

中小企業の人材確保における3つのミスマッチ

 「中小企業白書2017年版」では、中小企業の人材確保において、①採用手段のミスマッチ、②情報のミスマッチ、③情報伝達・獲得手段のミスマッチが存在することを指摘しています。同白書では人材を事業活動の中枢を担う「中核人材」と労働力を提供する「労働人材」とに区分して考察を行っていますが、ここでは「中核人材」に着目してみていきましょう。

 まず、採用手段のミスマッチとは、中小企業が有効と考える採用手段と、求職者が有効と考える手段との間に存在するミスマッチを指します。中核人材の採用にあたって中小企業は「ハローワーク」や「親族・知人・友人の紹介」を有効と考えていますが、求職者側については年齢層が低いほど「就職ポータルサイト」や「企業のホームページ」を重視しています。

 情報のミスマッチとは、中小企業が求職者に対し重点的に伝えた自社の情報と、求職者が重視した企業情報との間に存在するミスマッチを指します。例えば「沿革・経営理念・社風」「技術力・サービス力・社会的意義」については中小企業側が重視するほどには求職者側は重視しない傾向にあります。

 情報伝達・獲得手段のミスマッチとは、中小企業が求職者に対し情報を伝えた手段と、求職者が知りたい情報を得るために有効だと考える手段との間に存在するミスマッチです。中小企業側が経営者や採用担当者による面談によって情報を伝える一方で、若年層ほど「各種の求人広告」「企業のホームページ」「説明会・セミナー」といった直接的な選考の前段階を重視する傾向にあります。

 このように中小企業が人材確保を円滑に行うには上記の3つのミスマッチを克服することが求められるのです。

 では中小企業が人材確保を円滑に行うためにはどのような取組みが求められるのでしょうか。ここでは「中小企業白書2017年版」でも先進事例として取り上げられているクリーニング業者の株式会社喜久屋(本社東京都足立区)の取組みについてみていきましょう。

 同社の主戦力であるパートタイム従業員の平均勤続年数は10年と長く、高い定着率を誇っています。その背景として、業務の平準化を図る生産体制の工夫、育児や介護といった個々の事情を抱えるパートタイム従業員の働きやすさを実現する企業風土、従業員の能力向上と継続勤務のモチベーションとなる職能等級制度の存在があげられます。

 生産体制の工夫としては、一人の従業員が複数の業務や機械の操作を担当できるよう「多工程・多台持ち」の仕組みを導入しており、従業員同士で互いの業務を補い合い円滑に業務を進めることが可能となっています。また、パートタイム従業員を対象とした職能等級制度の構築によって能力に応じた等級に基づき賃金を支給するほか、店長への登用や正社員転換等の制度も設けており、これらの制度を通じてパートタイム従業員の能力向上と継続勤務へのモチベーションアップを図っています。

 上記のような従業員が安心して長く働き続けやすい職場環境の情報は、インターネットや各種メディアに取り上げられるとともに、同社も積極的に求人情報等で情報発信しています。その結果、最近では募集人数を大きく上回る応募があるなど、採用の状況も良好です。

 このように働きやすい職場環境づくりを推進しつつ、情報発信を的確に行うことなどによって人材確保が可能となるのです。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)

社外取締役はROE、社内取締役は自己資本比率

 上場企業で社外取締役の導入が進んでいます。社外取締役導入の効果については、色々なことが言われていますが、大きくまとめると以下の二つに集約されるかと思います。

 一つはガバナンス体制の強化です。社外取締役は経営トップ(社長等)の暴走に歯止めをかける役割が期待されます。トップの暴走に対する歯止めは社外取締役だけではなく、他の一般の取締役にも求められます。ただ、従業員出身の生え抜きの社内取締役だと、「おかしい」と思っても、自分を引き上げてくれた上司であるトップに直言しにくく、取締役としての監督機能を十分に果たせないことが危惧されるのです。その点、社外取締役は元々外部の人間ですから、トップに意見を言いやすいと考えられます。  また、トップと社内取締役は長年、同じ会社で同じ目標に向かって働いてきたのですから、価値観も同一になりやすく、一般社会とは異なる会社の常識を共有してしまう危険性があります。その点、社外取締役は取締役会に会社とは違う社会の常識を持ち込むことが期待できます。  社外取締役には上記のような経営ガバナンス体制の強化の効果が期待されますが、ただ社外取締役を導入しさえすれば、それで強化されるというものではありません。社外取締役を実質的に選任する経営者が、価値観が同じで自分の言うことに逆らわないようなお友達を選べば、社内取締役とほとんど変わらなくなってしまうからです。その意味で、当然のことですが、どのような人を選ぶかが極めて重要になります。

社外取締役に期待されるもう一つの効果は、カネの使い方を変えることにあります。社内取締役と社外取締役で違いが出てくるのは、投資決定後の剰余金の使い方です。社外取締役は株主の代表ということをより強く意識しますから、配当や自社株買いなどの株主還元を重視するのに対し、従業員出身の社内取締役は会社の存続を第一に考え、社内留保を優先しがちになります。

 社外取締役が何より重視すべき指標は、株主から預かった財産の効率性を示すROE(自己資本利益率)になります。会社で投資に使い切れないカネが残ることは会社の本質に反するのだから、内部留保は株主に還元すべきだと考えます。  一方、従業員出身の社内取締役は、会社は株主のものであるだけではなく、従業員の生活共同体であるという意識を強く持ちます。雇用の流動性の低い日本では、従業員のために会社の存続を第一に考えます。そうすると、彼らの重視する指標は会社の安全性指標である自己資本比率になります。投資に使い切れないカネを不用意に社外に流出するのではなく、まさかのために内部留保すべきだという意見が強くなるのです。  社外取締役の導入で剰余金の使い方に関する意見対立は厳しくなることが予想されます。それは最終的に株主重視か、従業員重視かの会社観の違いに帰着します。どちらがいいかは即断できませんが、グローバル化により日本の会社も否応なく株主重視の経営に向けて動き出しているということなのでしょう。

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)

江戸川区南小岩6-6-8
鈴木税務会計事務所

格差拡大に向かう財務諸表

近年、格差拡大論が盛んです。これは個人間の格差拡大の話ですが、ここでは少し見方を変えて、財務諸表の格差拡大について考えてみましょう。本コラムで言いたいことは、「財務諸表が格差拡大を促している」ということではなく、「財務諸表は格差拡大を先鋭的に表示するように変わってきている」ということです。

 資産価額とは何なのでしょう。そんなことは自明のことだといわれるかもしれません。一般の消費者の感覚からすれば、資産価額とは売買する価格、つまり、その資産を実際購入した価格か売ることができる価格です。企業会計でも以前はこれで十分でした。この考え方によれば、資産価額は資産を所有する企業の外で決められるものであり、企業自体でどうこうすることのできないものでした。  しかし、近年の考え方は違います。資産価額は所有する企業の収益力により変わるとする会計基準が多くなってきています。たとえば、減損会計では、固定資産の価額には将来その資産が生む収益力が反映されると考えます。収益力が落ちれば、固定資産価額を落とすのが減損会計です。  こうなると、資産の評価は客観的なものさしでは測れません。まったく同じアパートを所有していたとしても、所有者の賃借人を集める能力に応じて資産の評価額は変わってきます。これは何もアパートに限るものではなく、工場でも店舗でも同様です。  また、税効果会計でも、収益力の高い会社ほど、繰延税金資産という資産を計上できる可能性が高まります。

新しい会計概念では損益計算書の収益力は単に損益計算書にとどまらず、貸借対照表をも動かします。本業の収益力が高ければ、税効果会計で繰延税金資産という資産を計上し、資産総額を増大させることができます。一方、収益力が低ければ、繰延税金資産を計上できませんし、場合によっては既に積んだ繰延税金資産を取り崩すこともあります。また、減損会計では既存の固定資産まで減額しなければならなくなります。こうした資産の計上や取崩しは貸借対照表の価額を変動させるだけではありません。複式簿記ですから資産の反対勘定として、損益計算書の損益を再び揺り動かします。

 つまり、元々の収益力の高い会社は貸借対照表の資産をより厚くし、それが損益計算書の最終利益を更に高めます。逆に収益力のない会社は貸借対照表の資産を減額しながら、損益計算書の損益を一層悪化させます。  近年の会計基準は、従来の会計基準ではオブラートに包んでいた、強いものの本当の強靭さと弱いものの真の脆弱さを白日のもとにさらします。その意味では弱者に冷たい制度です。日本人のメンタリティーからすれば、旧来の会計基準の方が性に合っているような気がしますが、グローバル化に従う限りこれは不可避な流れです。会計制度も世の中の風潮と同様に格差を一層助長する方向に向かっているといえます。  収益力を持つ会社は益々強く、収益力を持たない会社は益々弱くなります。今の会計制度の下で重要なのは収益力です。収益はすべてを癒します。

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)

江戸川区南小岩6-6-8
鈴木税務会計事務所

加算税制度の見直し

概要

 調査を行う旨、調査対象税目及び調査対象期間の通知以後、かつ、その調査があることにより更正又は決定があるべきことを予知((2)において「更正予知」という。)する前にされた修正申告に基づく過少申告加算税の割合(現行:0%)については5%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は10%)とし、期限後申告又は修正申告に基づく無申告加算税の割合(現行:5%)については10%(納付すべき税額が50万円を超える部分は15%)となります。

(注1)次の修正申告等については、上記(1)の加算税の対象となりません。

1 次のように調査対象を区分する場合において、調査対象とならない部分に係る修正申告

 

イ 調査の事前通知の際に納税者の同意の上、移転価格調査とそれ以外の部分の調査に区分する場合

 

ロ 一部の連結子法人の調査を行わないこととした場合

 

2 他の税目における更正の請求に基づく減額更正に伴い、調査対象税目において必要となる修正申告等

 

3 相続税又は贈与税について、遺産分割が確定するなどして任意に行う修正申告等

 

(注2)源泉所得税の不納付加算税については、見直しの対象となりません。

 期限後申告若しくは修正申告(更正予知によるものに限る。)又は更正若しくは決定等(以下(2)において「期限後申告等」という。)があった場合において、その期限後申告等があった日の前日から起算して5年前の日までの間に、その期限後申告等に係る税目について無申告加算税(更正予知によるものに限る。)又は重加算税を課されたことがあるときは、その期限後申告等に基づき課する無申告加算税の割合(15%、20%)又は重加算税の割合(35%、40%)について、それぞれその割合に10%加算します。

(注)過少申告加算税及び源泉所得税に係る不納付加算税については、見直しの対象となりません。

適用時期

平成29年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について適用します。

建設工事請負契約書の印紙税の軽減措置

軽減措置の概要

軽減措置の対象となる契約書は、請負に関する契約書(建設工事の請負に係る契約に基づき作成されるものに限られます。)のうち、記載金額が100万円を超えるもので、平成26年4月1日から平成30年3月31日までの間に作成されるものになります。なお、これらの契約書に該当するものであれば、建設請負の当初に作成される契約書のほか、工事金額の変更や工事請負内容の追加等の際に作成される変更契約書や補充契約書等についても軽減措置の対象になります。

軽減税率

軽減措置の対象となる契約書に係る印紙税の税率は、課税物件表の規定にかかわらず、次表のとおりとなります。

契約金額 本則税率 軽減税率
100万円を超え 200万円以下のもの 400円 200円
200万円を超え 300万円以下のもの 1千円 500円
300万円を超え 500万円以下のもの 2千円 1千円
500万円を超え1千万円以下のもの 1万円 5千円
1千万円を超え 5千万円以下のもの 2万円 1万円
5千万円を超え 1億円以下のもの 6万円 3万円
1億円を超え 5億円以下のもの 10万円 6万円
5億円を超え 10億円以下のもの 20万円 16万円
10億円を超え 50億円以下のもの 40万円 32万円
50億円を超えるもの 60万円 48万円

軽減措置の対象となる請負に関する契約書の範囲

 軽減措置の対象となる「請負に関する契約書」とは、課税物件表第2号文書に掲げる「請負に関する契約書」のうち、建設業法第2条第1項に規定する建設工事の請負に係る契約に基づき作成されるものをいいます。
 この場合において建設工事とは、土木建築に関する工事の全般をいいますが、建物の設計、建設機械等の保守、船舶の建造又は機械等の制作若しくは修理等については、建設業法第2条第1項に規定する建設工事には該当しません。
 なお、建設工事の請負に係る契約に基づき作成される契約書であれば、その契約書に建設工事以外の請負に係る事項が併記されていても、軽減措置の対象になります。

 

平成26年6月

江戸川区南小岩6-6-8  鈴木税務会計事務所

印紙税の非課税範囲の拡大

改正の概要

「所得税法等の一部を改正する法律」により、印紙税法の一部が改正され、平成 26 年4月1日以降に作成される「金銭又は有価証券の受取書」に係る印紙税の非課税範囲が拡大されました。

現在、「金銭又は有価証券の受取書」については、記載された受取金額が3万円未満のものが非課税とされていますが、平成 26 年4月1日以降に作成されるものについては、受取金額が5万円未満のものについて非課税とされることとなりました。

「金銭又は有価証券の受取書」とは

「金銭又は有価証券の受取書」とは、金銭又は有価証券を受領した者が、その受領事実を証明するために作成し、相手方に交付する証拠証書をいいます。 したがって、「領収証」、「領収書」、「受取書」や「レシート」はもちろんのこと、金銭又は有価証券の受領事実を証明するために請求書や納品書などに「代済」、「相済」、「了」などと記入したもの、さらには、「お買上票」などと称するもので、その作成の目的が金銭又は有価証券の受領事実を証明するために作成するものであるときは、金銭又は有価証券の受取書に該当します。

印紙税の還付について

印紙税の納付の必要がない文書に誤って収入印紙を貼ったような場合には、所轄税務署長に過誤納となった文書の原本を提示し、過誤納の事実の確認を受けることにより印紙税の還付を受けることができます。
「領収証」等を取引の相手方に交付している場合でも、過誤納の事実の確認を受けるには、過誤納となった文書の原本を提示する必要があります。