【時事解説】広がりを見せるGX、革新的技術と企業の取り組み その1

最近、GX、グリーン・トランスフォーメーションという言葉を耳にするようになりました。すでに、DX(デジタルトランスフォーメーション)は日常の中で用いられていますが、GXはDXのデジタルの部分をグリーンに置き換えたもので、環境に関する技術を活用して、社会を変革していこうとするものです。

 2020年、菅首相は就任直後、2050年までに温暖化ガスの排出量を実質ゼロにすると目標を掲げました。そして、12月には「グリーン成長戦略」を発表しています。また、米国ではバイデン政権が誕生し、環境重視に政策を転向しました。まさに、世界的にGX、環境問題解決への波が生じています。

 ただ、日本が目標の温暖化ガス排出ゼロを達成するには、現在、開発済みの技術だけでは不十分で、新たに革新的技術を開発する必要があります。具体的な分野を掲げると、①次世代蓄電池技術、②水素などがあります。

 ①次世代蓄電池技術は、自動車の温暖化ガス排出量を削減するためには欠かせない技術です。現在、電気自動車へのシフトが求められますが、いま普及している電池ではパワーに限界があるため、次世代蓄電池の開発が求められています。次世代蓄電池には種類がいくつかありますが、全固体電池が一つとしてあります。旧来、電池の多くは電解液(液体)が使用されているため、液漏れが難点になっています。その点、全固体電池は文字通り、液体を使用せず全て固体でできています。そのため、従来電池で問題となっている、液漏れを防げる点が高く評価されています。②水素も同様、温暖化ガスを排出しない燃料で、実用化が進んでいます。こうした新技術の開発により新たな市場が生まれます。GXを推進することでビジネスチャンスに繋がります。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業におけるオープンイノベーション その2

では、中小企業におけるオープンイノベーションに関連して、具体的にどのような取組みが行われているのでしょうか。以下で、中小企業庁編『中小企業白書2020年版』において地域活性化ファンドや異分野企業の技術・ネットワークを活用して製品開発や販売を行う事例として紹介された、株式会社Doog(本社:茨城県つくば市)の取組みについてみていきましょう。

 同社は2012年に創業・設立した移動ロボットの企画・設計・製造・販売を行う企業です。現社長は大学院を卒業後、大手電機メーカーにて移動ロボットの研究を担当した経験を経て同社を設立しました。
 現社長は人や物の移動が激しい業界で移動ロボットの技術を活用することで、人手不足を解消することができると考え、2015年9月に協働運搬ロボット「サウザー」を開発しました。「サウザー」は優れたロボット機能と機動力を有する運搬型ロボットで、人や台車に対する自動追従機能や無人での自動ライン走行機能を有しています。「サウザー」は荷台への機器の追加や形状のカスタマイズがしやすいように設計されており、同社では異なる分野との技術連携や販売連携を積極的に図っています。販売面では10社以上の販売パートナーとの連携を通じて、様々な業界への販路拡大に取組んでいます。2017年には「つくば地域活性化ファンド」の投資先に選定され、投資のほかにも、連携先の紹介など様々な支援を受けています。
 海外での導入実績も多く、シンガポールでの納品を契機に現地に子会社を設立し、ASEAN地域、欧州などへの販路拡大を目指しています。

 このように一緒に製品開発や販路拡大に取組むパートナーを見つけていくことで、更なる事業拡大が可能となるのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業におけるオープンイノベーション その1

中小企業においても外部の技術やノウハウを活用し、新製品・新技術・新サービスの開発などを実現するオープンイノベーションの重要性が指摘されています。
 中小企業庁編『中小企業白書2020年版』では、中小企業のオープンイノベーションの取組状況等についてアンケート調査を実施しています。
 同アンケートにおいてオープンイノベーションを、外部技術を自社内に取込み連携をする「アウトサイドイン型」、自社の技術・知識を社外に発信することで連携を促す「インサイドアウト型」、広く連携先を募り共同開発をしていく「多対多の連携型」に区分してその取組み状況をみると、「アウトサイドイン型」に取組む企業の割合は製造業、非製造業でそれぞれ19.0%、16.1%存在する一方で、「インサイドアウト型」は12.0%、8.4%、「多対多の連携型」は4.2%、4.5%にとどまっています。

 次に、オープンイノベーションの取組み効果についてみると、製造業、非製造業ともに、「知識・ノウハウの蓄積に効果があった」という回答割合がそれぞれ43.0%、45.6%と最も高くなっています。「特段の成果は上がっていない」と回答する企業は、製造業、非製造業ともに5%未満にとどまり、何らかの成果を得た企業が多いことがわかります。
 企業がオープンイノベーションを成功させるために重要と考えるポイントについてみると、製造業、非製造業ともに「連携企業との事前の信頼関係」、「明確なゴールの設定と共有」、「自社・連携先の意思決定スピードの早さ」の順に回答割合が高くなっています。

 このように中小企業におけるオープンイノベーション促進に向けては、連携企業との信頼関係構築などが重要となるのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》リモートワークで気を付けたい リモハラとは

◆リモートハラスメントとは
 新型コロナウィルス禍で定着してきたリモートワーク。仕事のやり取りがチャットやメール、Zoom等のビデオ会議になり相手への伝わり方が、対面より厳しくなったり冷たくなったりと感じる傾向があります。
 リモートワークが進むにつれ、「リモートハラスメント」(リモハラ)が社会問題になりつつあります。リモハラとはリモートワーク中に起こるハラスメントを指し、業務中に起きるパワハラとセクハラのいずれかに当てはまる発言等をいいます。
 例えば上司からオンライン会議に映った部屋の中のこと、服装や化粧のこと(程度の問題はあるが)、子供の声のこと等プライベートに関わる質問等、また、常に仕事をしているかの連絡や確認、やたらWeb会議をしたがる等があり、全てが法的なハラスメントに該当するわけではありませんが、リモートワークに付随する上司の過剰な干渉がリモハラと感じさせているようです。

◆リモート業務に上司も悩んでいる
 リモート業務にストレスを感じているのは部下ばかりではなく、アンケートでは5割の管理職がリモート下で部下とのコミュニケーションで悩んでいるそうです。部下との距離感や指示出しのタイミング等、対面では気を使わなくてもよい場面でも悩んでいます。会社から部下とのコミュニケ―ション強化を言われても、ハラスメントと言われるのが怖く指示を出しにくいということがあります。上司にとってはリモートに伴う業務管理の不安やITツールに不慣れな人もいる中でストレスを引き起こしています。若手達からWeb会議から締め出しをされたケースも耳にします。録画機能があるツールの場合、事前に周知して言葉に気を付ける等注意する必要もあります。

◆生産性とハラスメント対策の両立
 リモートワークの急速な導入は便利でもありますがストレスを感じる面も多くあります。そのことがハラスメントにつながる場合があると言えます。同じ行動・対応でも世代間ギャップがあることを認識しておき、上司の許可や報告が必要な事項はリモートワークルールで取り決めましょう。
 ルールは監視強化等厳しくしすぎないこと、プライベートには立ち入りすぎないこと、不満の声には耳を傾ける等、ストレスを減らしコミュニケーションを円滑に進める環境を目指すのがいいでしょう。

《コラム》押印不要の書類が増えています

菅内閣は脱ハンコ、DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略を進めています。これに伴い、税務書類についても押印が不要となる書類が増えてきました。

◆税務署窓口における押印の取扱い
 令和2年12月21日に「令和3年度税制改正の大綱」が閣議決定され、この中で、税務関係書類(国税に関する法律に基づき税務署長等に提出される申告書等)の押印の見直しが行われました。提出者等の押印をしなければならないこととされている税務関係書類について、一部の税務関係書類を除き、押印を要しないこととする方針が示されました。そして、この取扱いは原則として令和3年4月1日以後に提出する税務関係書類について適用する予定となっていましたが、一方で「改正の趣旨を踏まえ、押印を要しないこととする税務関係書類については、施行日前においても、運用上、押印がなくとも改めて求めない」ともされていました。
 この閣議決定に基づき、全国の税務署窓口においては、本件見直しの対象となる税務関係書類について押印がなくとも改めて求めないこととしています。 

◆振替納税やダイレクト納付の手続も
 従来、振替納税やダイレクト納付をしようとする場合には、それぞれ「振替依頼書」や「ダイレクト納付利用届出書」に金融機関の届出印を押印する必要がありました。これらの手続も令和3年1月から、個人の方の振替依頼書及びダイレクト納付利用届出書をe-Taxで提出することが可能となりました。
 さらに、振替依頼書等のオンライン提出においては、金融機関の外部サイトにより利用者認証を行うので、電子送信時に電子署名及び電子証明書の添付も不要となります。

◆押印が必要な書類も
 とはいえ、担保提供関係書類・物納手続関係書類の一部や遺産分割協議書、特定個人情報の開示請求、閲覧申請手続など、押印が必要な書類もまだまだありますので注意しましょう。

《コラム》自転車通勤ルールの策定

コロナ禍の下、自転車通勤が増えています。自転車通勤は手軽に始められますが、通勤中に事故でケガをした場合、通勤災害になるのか、または、相手にケガをさせてしまう場合の損害賠償はどうなるのか? 自転車通勤を認める場合は、様々な状況を考慮して規程などルールを定めておくことが大切です。

◆通勤災害とは
 通勤途上の事故の場合、通勤災害か否かが問われます。通勤災害とは、労働者が通勤により被った負傷、疾病、傷害又は死亡を言います。しかし、どんな場合でも通勤災害になる、というわけではなく、労災法では「通勤」とは「就業に関して」次の3点で定義しています。
(1)住居と就業場所との間の往復
(2)複数の異なる事業場で働く労働者が一つ目の事業所から次の事業所へ移動する場合
(3)(1)、(2)の往復の前後に、厚生労働省で定める要件に該当する場所への立ち寄りは可
(3)は、転任に伴い家族と別居していて、家族の住居から事業所に行く場合や、要介護状態の父母や親族の介護のために自宅でないところからの通勤などです。通勤の途中で、買い物など日常生活に必要な行為、やむを得ない事由による立ち寄りは、その行為の間(逸脱、中断といいます)は除き、通勤となります。ちなみに、通勤途中で会社の荷物を届けるような場合は、通勤災害ではなく業務災害となり別途対応が必要となります。

◆自転車損害賠償責任保険への加入
 自転車でのケガを防ぐために、必ずヘルメットの着用を義務付ける、前照灯やベルなど安全にかかわる装備が正しく装着されていて、整備された自転車であること、安全な乗り方は当然として、駐輪場の確保なども確認が必要です。そして、何より、自転車損害賠償責任保険等に加入していることの確認が重要です。昨今の自転車事故の多発と裁判での高額な賠償金の支払い命令が出ていることで、多くの自治体が条例で自転車保険加入を義務化しています。自動車保険特約加入も含め、書類の提出などで保険加入を確認しましょう。

《コラム》中小企業にも『同一労働同一賃金』が適用(令和3年4月~)

◆中小企業にも『同一労働同一賃金』適用
 令和3年4月より、中小企業にも『同一労働同一賃金』が適用されます。
 大企業には令和2年4月から適用され、中小企業には1年間猶予されていました。
 そもそも、同一労働同一賃金とは何でしょうか? 文字通りに解釈すれば、同じレベルの労働に同じレベルの額の賃金を支払うことと読めます。
 しかし、法的には正規雇用労働者(正社員)と非正規雇用労働者(パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者)との間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。 
 従って、正規雇用労働者(正社員)間の待遇差については、対象外となります。

◆『同一労働同一賃金』に関する法改正
 同一労働同一賃金に関して改正される法律は、「労働契約法」と「パートタイム・有期雇用労働法(以下、パート有期法)」です。
 具体的には、労働契約法20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)が廃止され、パート有期法8条(均衡待遇)と同法9条(均等待遇)に引き継がれることになりました。

◆『同一労働同一賃金』で求められること
 パート有期法では、①職務の内容と②職務の内容・配置の変更の範囲が同じであれば、差別的な取扱いが禁止され、均等待遇が求められます。一方、①と②に差がある場合でも、さらに③その他の事情を考慮して均衡(バランス)のとれた待遇、即ち均衡待遇が求められます。
 なお、派遣労働者については、大企業と同じく令和2年4月から、賃金の決定方法に「派遣先均等・均衡方式(派遣先ベース)」と「労使協定方式(派遣元の労使協定ベース)」のいずれかを採用しなければならないことになっています。
 他には、非正規雇用労働者に正規雇用労働者との待遇差について説明を求められた場合の説明義務が強化されます。また、均衡待遇や待遇差の説明に関する紛争は、都道府県労働局の管轄となり、裁判外紛争解決手続(行政ADR)の対象となります。

【時事解説】中小企業にこそ求められるトップの倫理観 その2

このことからわかることは、日産自動車のような日本を代表するグローバル企業においてさえ、トップの暴走を抑止するガバナンス体制の構築は容易ではないということです。では、ひるがえって非上場の中小企業の場合はどうでしょう。

 非上場の中小企業では、トップの在任期間は長期にわたるのが普通ですし、人事権も大企業より恣意的に行使できるでしょう。その上に株式も実質的に支配しているとすれば、非上場企業のトップの存在感は圧倒的です。そうしたトップの倫理感に問題が生じたときに、取締役会等の会社組織で抑止力を働かせることができるでしょうか。

 非上場企業でも社会的公正さが求められることは変わりません。トップの暴走に歯止めを効かすガバナンス体制が社内で構築できれば、それに越したことはありません。しかし、日産自動車の事例を見れば、非上場企業でそれを実現することはかなり難しいことだと思われます。社内で抑止体制が構築できないとすれば、トップ自身が歯止めにならなければなりません。

 そのように考えると、非上場企業のトップの倫理観は大企業以上に重要になってきます。倫理観のない人間をトップに据えることは避けるべきですし、現在トップにある人間はそのことを十分自覚しなければなりません。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業にこそ求められるトップの倫理観 その1

やや旧聞に属しますが、日産自動車のゴーン元会長の逮捕は、大企業にとどまらず中小企業においても会社のガバナンスを考え直すいい機会だと思います。

 近年、主として上場企業においてガバナンス体制の構築が急ピッチで進められてきました。その柱は取締役会の活性化です。従来、ともすれば形式的になりがちであった取締役会を実質的に機能させ、社会的公正さを維持しながら経営効率の向上を図ろうとするものです。その際、取締役会が社内出身者だけで構成されていたのでは、議論が内向きになるだけではなく、人事権を握るトップに反論することは難しいだろうということもあり、社外役員の参加を義務付けました。日産自動車でも当然、複数の社外取締役や社外監査役が存在しています。

 報道によれば、ゴーン前会長の公私混同の事実は社長以下の幹部はつかんでいたようです。会社のガバナンスという見地からいえば、そうした事実があれば取締役会で議論し、前会長の反論を聞いた上で、その解任を取締役会で決め、その後に法律に違反する行為があれば、法的機関に告発するというのが筋です。

 ところが、華々しい事業実績を有し、強力な人事権を持ち、20年近くにわたり君臨するゴーン前会長を前にすると、社内の取締役は言うに及ばず社外取締役も自由に発言できなかったというのです。そこで、会社側は検察と司法取引を行い、ゴーン前会長の逮捕を先にしてもらい、ゴーン氏不在の取締役会で前会長の解任を決めました。これでは、会社のガバナンスが有効に機能したとはいえません。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》老齢厚生年金・老齢基礎年金の繰上げ・繰下げ

◆老齢厚生・基礎年金の繰上げ・繰下げとは
 老齢厚生年金・老齢基礎(国民)年金の繰上げと繰下げの制度をご存じでしょうか?
 老齢厚生年金と老齢基礎年金の受給開始年齢は、共に原則65歳となっていますが、65歳になる前に受給開始する場合を繰上げ、66歳以降に受給開始する場合を繰下げといいます。なお、65歳の1年間は繰下げできません。

◆繰上げ・繰下げのメリット・デメリット
 老齢厚生年金・基礎年金を繰上げすると、月0.5%の割合で受給額が減額されます。例えば、繰上げの上限である60歳到達時から受給する場合、原則の65歳から受給開始と比べて30%減額され、70%の受給額となります。繰上げすると、老齢厚生年金と老齢基礎年金は同時に繰上げとなり、一方のみを繰上げすることはできません。また、いったん繰上げを選択すると、生涯変更できません。
 逆に繰下げの場合、月0.7%の割合で受給額が増額されます。70歳まで5年繰り下げた場合42%の増額となり、65歳からの受給開始に比べて4割以上も受給額が増えます。
 しかし、繰下げも注意が必要です。例えば、老齢厚生年金の繰下げ期間中、加給年金は支給されません。老齢基礎年金の繰下げ期間中、振替加算は支給されません。さらに、65歳以上で在職老齢年金の対象となる場合、支給停止された部分は繰下げによる増額の対象になりません。
 なお、老齢厚生年金と老齢基礎年金は別々に繰下げを選択でき、老齢厚生年金または老齢基礎年金のみの繰下げが可能です。

◆今後の繰上げ・繰下げに関する制度改正
 年金制度改正法(令和2年法律40号)により、令和4年4月以降、受給開始年齢の選択肢が拡大され、受給開始年齢の上限が70歳から75歳に引き上げられます。75歳まで繰り下げた場合、最大で年額84%の増額となります。一方、繰り上げる場合の減額率は月0.4%に変更されますので、60歳到達から受給する場合、従来の最大30%減額が24%減額へ減額幅が縮小します。

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