《コラム》JTBの減資-合法的租税回避

◆資本金1億円は中小企業扱いで税負担軽減
 新型コロナ感染の影響で、旅行業界・飲食業界を筆頭に、かつてないほど業績が悪化しています。こうした中で、財務基盤の健全化を図るとともに、税負担の軽減を受けるねらいもある「資本金を1億円以下にする減資」が増えています。JTBは23億4百万円から、スカイマークは90億円から、カッパ・クリエイトも98億円から、それぞれ1億円に減資しています。
 「中小企業扱い」による税負担軽減の狙いは、主に、(1)法人税の欠損金の繰越控除の活用、(2)地方税である法人事業税の外形標準課税の対象から外れること、などがあります。(1)は、大企業であれば黒字=所得と欠損金の相殺は所得の50%までに制限されていますが、中小企業は全額控除できます。(2)は、中小企業になることで、大企業であれば赤字でも課税される外形標準課税(事業所の床面積や従業員数、資本金等及び付加価値など外観から客観的に判断できる基準を課税ベースとして税額が算定される課税方式)が対象外となります。
(注)上記2つの規定は「資本金の額」が基準となります。一方、均等割(=前年の所得金額の多少にかかわらず、地方自治体の行政サービスを維持するために要する費用を広い範囲の人に負担してもらうための税)は、「資本金等の額=資本金+資本剰余金」が課税標準となるため、資本金を資本剰余金に振り替えて減資をする場合(=カッパ・クリエイトのケース)では、均等割は従前と変わりません。

◆租税回避ですが合法です
 租税回避は、税金を逃れるという悪いイメージがありますが、合法であれば何ら問題はありません。意図はどこにあれ、通常の手続で減資をして、「資本金1億円超」という課税要件の充足を避けることができています。

◆租税回避への対抗は税制改正だけ
 誰が見ても“最初から贈与税回避の意図がアリアリだろう”と思われた「武富士専務贈与税事件」は、最高裁で合法の判決となりました。結局、国は税制改正をし、こうした抜け道に蓋をすることで対処するしかできませんでした。
 従業員がグループ全体で2万7千人(JTB 2020年3月末)もいてどこが中小企業だという世論が大きくなると、税制改正で、こうした減資による減税にも蓋がされるかもしれません。

《コラム》36協定届が更に様式変更されます(令和3年4月~)

◆昨年の36協定届の様式変更
 昨年4月に、働き方改革に対応して、時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定届)の様式が変更されたばかりですが、今年も4月以降、様式が変更されます。
 昨年の変更では、「時間外及び休日労働を合算した時間数は、1か月について100時間未満でなければならず、かつ2か月から6か月までを平均して80時間を超過しないこと」というチェック項目が追加されました。労働基準監督署は、チェックボックスへのチェックがない届出は原則受理せず、再度の提出を求めているようです。

◆今年の様式変更で何が変わるの?
 今年の36協定届の様式変更で変わるのは、以下の2点です。
 ①36協定届への押印・署名の廃止
 ②36協定当事者に関するチェック項目の追加
 ①は、デジタルガバメントの推進が新型コロナにより加速され、行政への届出には原則ハンコを不要とする押印原則の見直しによるものです。
 しかし、36協定届が36協定書を兼ねて提出される場合、従来通り記名押印または署名が必要です。押印・署名が省略できるのは、36協定を別の書面で締結して、その内容を36協定届に転記して提出する場合に限られますので、注意が必要です。
 ②は、36協定の労働者側の当事者である労働者代表が法定通りに適切に選任された者であることの確認のため、チェック項目が2つ追加されました。
 チェック項目は、「協定当事者である労働組合が事業場の全ての労働者の過半数で組織する労働組合又は全ての労働者の過半数を代表する者であること」及び「労働者代表が管理監督者ではなく、選出の際に投票や挙手等の方法で選出され、使用者の意向に基づいて選出された者でないこと」です。

◆届出は電子申請も可能です
 36協定届の提出は電子申請が可能です。労働基準監督署へ出向いたり郵送したりする手間やコストの削減の他、新型コロナの感染防止の観点からも電子申請をオススメします。

《コラム》リモートワークにおける社内コミュニケーション

◆管理職が意識すべき「傾聴」のポイント
 思いもよらぬコロナ禍の影響により、仕事でもプライベートでも、オンラインによるコミュニケーションが増加しています。多くの企業のリモートワークは、十分な準備ができないままに始まり、「リモハラ」という言葉も生まれました。
 ですが、組織内のコミュニケーションの問題はいまに始まったことではありません。企業において分業と協業を成立させるためには必須であり、これまでも組織活性化の視点で重要なテーマとされてきました。
 活性化のために効果的な方法としては、組織の中核である管理者のスキル開発があげられます。たとえば、評価のフィードバックの方法については、研修のテーマとしてよくみられますね。「積極的な聞き役」としてのスキルも大切です。ただ「聞く」のではなく、「傾聴」といわれる行為です。
 管理職にとっての傾聴のポイントは、部下から報告や相談を受けた際、話の内容を否定的にとらえず、相手がそのように考える理由や背景について関心を持って聴くことです。これは時間もかかりますし、集中力や努力も必要としますが、部下との信頼関係を構築するために非常に有効です。

◆言語による発信の大切さ
 一方で、言葉によらない「非言語コミュニケーション」も、対人関係においては大きな役割をもちます。たとえば、相手との距離感、アイコンタクト、身ぶり手ぶり、といったものですが、これがオンラインでは活用が難しい状況です。
 そのため、やはり言葉でのコミュニケーションを充実させる必要があります。部下から仕事の連絡をもらったとき、あるいは作成した書類が提出されたとき、内容を確認してから返信しようとして数日たってしまった、というようなことはないでしょうか。出社していれば、忙しい様子も相手にわかってもらえるかもしれません。しかしリモートワークでは、自分から発信しなければ、相手に伝わりません。内容を確認する時間がなければ、まずは忘れないうちに、受け取ったことに対して反応を返しましょう。これによって、部下はつながっている安心感を得ることができ、次のコミュニケーションへとつながっていきます。

【時事解説】脱炭素化で増大する「電費」の重要度 その2

バイデン米政権が誕生し脱炭素が強化されるようになりました。世界的に電気自動車の普及促進が取り組まれています。その中、消費者にとって、電費(1kWhで走る距離、ガソリン車でいう燃費のようなもの)向上は、今後、様々な面でメリットをもたらすことが予想されます。

 一つは、電費向上が企業にとって商機になることです。たとえば、電費を向上させるには、より性能の高いモーターが必要です。モーターメーカーは売上向上のチャンスとなります。また、車内に搭載された、エアコンの消費電力を抑えるには、高断熱材が商機になります。このように、電費向上は様々な部品メーカーの商機になります。

 社会全体にとっても電費向上はさまざまなメリットをもたらします。電気自動車は二酸化炭素を排出しませんが、自動車を動かすための電力には、火力発電のように二酸化炭素を排出するものもあります。従って、電費をよくすることは、電力の消費量を減らし、結果、脱炭素に貢献します。

 また、将来的には電費向上は企業の収益に貢献する可能性もあります。菅政権が脱炭素の政策を掲げる中、現在、カーボンプライシングが検討されています。これは、名前の通り二酸化炭素に価格をつけ、排出量の多い企業には税や罰金という形でお金を負担してもらうというものです。具体的な方法は検討中ですが、ヨーロッパなどで採用されている排出権取引方式が日本でも用いられると、二酸化炭素排出が少ない企業は、排出の多い企業に二酸化炭素の枠を売ることができるようになります。つまり、電費向上をして、二酸化炭素の排出量を減らせば、その成果を収益に結び付けることができます。こうなると、電費向上は企業がお金を稼ぐための手段の一つにもなります。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】脱炭素化で増大する「電費」の重要度 その1

 

バイデン米政権が誕生し、脱炭素化(GX:グリーン・トランスフォーメーション)に関する政策が強化されるようになりました。中でも、電気自動車は二酸化炭素を排出しないため、バイデン政権は普及に力を入れています。一例を挙げると、全米に50万カ所の充電設備を設置する計画を政権発足後に掲げました。米国企業もこうした流れを受け、ゼネラル・モーターズは2035年までにガソリン車の製造販売をやめて、電気自動車などに切り替える方針を明らかにしています。

 併せて、日本でもGXが加速しています。GXの流れの中、最近は「電費」という言葉を耳にする機会が増えました。電費とは、ガソリン車でいう燃費のようなものです。ガソリン車の場合、1リットルの燃料で走ることのできるキロ数を「燃費」として表示しますが、電気自動車の電費では、1kWhで走れる距離数を示します。
 従来から、燃費が良い車はガソリン代を低く抑えられるので、消費者の購入意欲を促します。同様に、電費の良い車は電気代を抑えることができるので、魅力的な商品となります。

 現在、電気自動車を買うときは価格やバッテリー容量(容量が大きければ一回の充電で長く走れる)が比較のポイントとして大きな割合を占めています。今後は、買った後にかかる費用も比較のポイントとして加わることが予想されます。結果、電費の良し悪しは重要な基準となるでしょう。

 消費者が電費を強く意識するようになると、自動車メーカーは、高性能の電池を搭載するだけでなく、今後はさらに、車体の形を工夫し、軽い素材を用いるなど、電費を意識して設計するようになることが予想されます。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

 

【時事解説】小規模事業者に期待される役割・機能 その1

 

『中小企業白書2020年版』では、中小企業・小規模事業者に期待される役割・機能を「グローバル展開をする企業(グローバル型)」、「サプライチェーンでの中核ポジションを確保する企業(サプライチェーン型)」、「地域資源の活用等により立地地域外でも活動する企業(地域資源型)」、「地域の生活・コミュニティを下支えする企業(生活インフラ関連型)」の四つの類型に分類し考察を行っています。

 同白書において上記4つの類型に基づいて小規模事業者に対して実施したアンケート調査の分析結果についてみると、「生活インフラ関連型」と回答した企業が62.5%と最も多く、以下「地域資源型」が23.6%、「サプライチェーン型」が6.3%、「グローバル型」が3.5%の順となっています。中規模企業も含めた中小企業全体と比較すると、小規模事業者では、「生活インフラ関連型」、「地域資源型」の回答割合が高くなっており、地域や住民生活との密接性を重視する企業の割合が高いことがわかります。

 業種別に見ると、「生活インフラ関連型」を目指す企業の割合が高いのは「医療・福祉」、「生活関連サービス業」、「電気・ガス・熱供給・水道業」、「金融業、保険業」などとなっています。「地域資源型」を目指す企業の割合が高いのは「農業、林業、漁業」、「宿泊業」、「製造業」などとなっています。

 4つの類型別に今後5年間の事業方針についてみると、小規模事業者の中で割合の高い「生活インフラ関連型」では「現状維持」と回答する企業の割合が58.5%となっており、「成長・拡大」と回答する割合29.5%を大きく上回っています。

 このように小規模事業者に期待される役割は多様なものとなっているのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

 

《コラム》産業雇用安定助成金の創設について

◆「従業員シェア」による雇用維持を
 コロナ禍においてこれまでと同じ人件費を抱えきれなくなった企業が、人手不足の企業に従業員を出向させる動きがあります。航空業界からコールセンター業界へ、あるいは飲食業界から小売業界への出向など話題になっていますが、この「従業員シェア」を支援するための助成金が新設されました。
 支援の対象となるのは、新型コロナウィルス感染症の影響により事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた事業主で、在籍型出向により労働者の雇用を維持する場合となります。
 主な要件としては、
・出向期間終了後は元の企業に戻って働くことを前提としていること
・出向元と出向先が親子関係にないなど、独立性のある関係であること
・出向先で別の人を離職させるなど、玉突き出向を行っていないこと
・出向者は雇用保険被保険者であること
などがあります。

◆受給額と申請手続き
 受給額は、賃金、教育訓練および労務管理に関する調整経費などの一部であり、以下の条件で計算されます。
・出向元が解雇などを行っていない場合:中小企業9/10、中小企業以外3/4
・出向元が解雇などを行っている場合:中小企業4/5、中小企業以外2/3
 12,000円/日を上限(出向元・出向先の合計)とし、出向初期経費も別途10万円/1人が助成されます。対象期間は、令和3年1月1日以降、申請先は都道府県労働局やハローワークです。
 出向の人材マッチングについては、(公財)産業雇用安定センターのほか、各自治体で取り組んでいる場合もあります。詳細は、「産業雇用安定助成金ガイドブック」で確認してみましょう。(→https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000735077.pdf)
 まずは雇用維持の優先度が高いと思われますが、これまでとまったく異なる業界への出向は、従業員への大きな負担となる可能性もあります。教育訓練などのサポートやストレス軽減の施策について、出向先と出向元の連携が期待されます。

《コラム》マイナンバーカードが健康保険証として利用可能に:令和3年3月~

◆マイナンバーカードが健康保険証に?
 令和3年3月から、医療機関・薬局においてマイナンバーカードの健康保険証利用が開始されます。
 既に、マイナンバーカードの健康保険証利用申込みが、令和2年8月から始まっていることをご存じでしょうか?

◆健康保険証として利用するためには
 マイナンバーカードを健康保険証として利用するためには、事前に利用の申込みが必要です。具体的には、マイナンバーカードを準備した上で、下記①~③のいずれかの手続が必要となります。
①スマートフォンでの申込み
 マイナンバーカード読み取り可能な機種で「マイナポータルAP」をインストールして「健康保険証利用申込」から申し込みます。
②パソコンでの申込み
 パソコンとマイナンバーカード読み込みカードリーダーを用意して、「マイナポータル」トップページの「健康保険証利用の申込」から申し込みます。
③マイナポータル端末での申込み
 自治体に設置されたマイナポータル端末から「マイナポータル」サイトにアクセスして申し込みます。

◆マイナンバーカードで何が変わる?
 医療機関・薬局の受付に設置された顔認証付きカードリーダーで、本人確認と保険資格の確認が行われます。
 高額医療費制度を利用する場合、「限度額適用認定証」の申請が不要となり、窓口での限度額を超える医療費の一時払いも不要となります。また、転職や結婚による新しい健康保険証の発行前でも受診可能になります。
 さらに、確定申告の医療費控除もe-Taxとの連携で簡便になります。

◆令和5年3月までには全ての医療機関で
 マイナンバーカードを健康保険証として使うには、医療機関・薬局での顔認証付きカードリーダーの設置が前提ですが、令和5年3月までには概ね全ての医療機関・薬局で利用できるようになる見通しです。
 健康保険証は将来的には廃止が検討されていますが、当面発行されます。

《コラム》新事業転換への応援施策~事業再構築補助金の勧め~

◆ポストコロナ時代の社会への対応支援
 新分野展開や業態転換、事業・業種転換等の取組、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等を目指す、以下の要件をすべて満たす企業・団体等の新たな挑戦を支援します。

◆要 件
①申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少している中小企業等。
②事業計画を認定経営革新等支援機関や金融機関と策定し、一体となって事業再構築に取り組む中小企業等。
③補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加の達成。

◆補助金額(中小企業の場合)
〇 通常枠 補助額 100万円~6,000万円 補助率 2/3
〇 卒業枠※ 補助額 6,000万円超~1億円 補助率 2/3
※卒業枠については、400社限定。事業計画期間内に、①組織再編、②新規設備投資、③グローバル展開のいずれかにより、資本金又は従業員を増やし、中小企業から中堅企業へ成長する事業者向けの特別枠。
※中小企業の範囲については、中小企業基本法と同様。

◆どんな取組が対象となるのか
 航空機部品製造がロボット関連部品・医療機器部品製造の事業を新規に立ち上げ、あるいは伝統工芸品製造がECサイトでの販売に転換。喫茶店経営が飲食スペースを縮小し、新たにコーヒー豆や焼き菓子のテイクアウト販売を実施。衣料販売業が衣料品のネット販売やサブスクリプション形式のサービスに転換…などが考えられます。

※公募開始は3月となる見込みです。
※jGrants(電子申請システム)での申請受付を予定しています。GビズIDプライムの発行に2~3週間要する場合がありますので、補助金の申請をお考えの方は事前のID取得をお勧めします。

《コラム》新入社員研修のオンライン化

◆2021年入社の新人研修の実施方法は?
 2020年は多くの企業がコロナの影響を受けましたが、事業だけではなく人材育成についても影響が出ています。ある民間調査によると、新入社員を迎えた企業の8割方は、オンライン対応が間に合わず集合研修を実施したようです。一方で、オンラインやe-ラーニングで実施した企業も増加はしていて、部分的にでもオンラインで実施した企業も少なくありません。
 そして2021年4月入社者の研修については、集合型が根強く残るものの、オンラインとリアルを組み合わせて実施する企業も多いようです。
 オンラインのメリットは、コロナ対応だけではありません。会場設営の手間やコストが減少し、複数拠点に対して研修の同時開催が可能なことなどもあげられます。また、今年度、多くの大学ではオンラインで講義が行われています。コロナ後についても、部分的にはオンラインが残ると言われており、今後はこの環境で育ってきたリモートネイティブが社会に出てくることになります。彼らにとっては、集合型の研修のほうが違和感のあるものになっていく可能性があり、企業側の対応力が問われます。

◆研修オンライン化のためのポイント
 研修のオンライン化を進めるにあたっては、オンラインに適している部分と適さない部分を明確にし、オンライン化する箇所については、ZOOMなどの機能を使うか、e-ラーニングや動画配信などを使うか、ツールの選択を行いましょう。
 たとえば、意識の醸成や人間関係の構築には集合型が向くと考えられます。座学の講義についてはオンラインがよさそうですが、チャット機能や投票機能を使うことで、より双方向なコミュニケーションが可能となります。
 また、オンラインの場合は、集合型の場合よりも、伝える内容をより明確にする必要があるとも言われています。これまでは身振り手振りも含めた空気感で伝えられたことも、言語化が求められます。集合型研修をオンラインに移すというだけではなく、そもそもの研修の目的、意義を再確認しながら、オンラインに適した研修の再構築をすることが、よりよい育成につながるでしょう。