【時事解説】中小企業における人材育成 その1

中小企業が人手不足に対処していくためには、労働投入量を節約するという工夫に加え、人材育成・能力開発を通じて個々の従業員が生み出す付加価値を向上させていくことが求められます。

 「中小企業白書2018年版」において、企業がOJT(日常の業務に就きながら行われる教育訓練)とOFF-JT(業務命令に基づき、通常の仕事を一時的に離れて行う教育訓練)のいずれを重視しているかを、厚生労働省「平成28年度能力開発基本調査」のデータを用いて企業規模別に整理した結果をみると、企業規模を問わず「OJTを重視する」、「OJTを重視するに近い」の回答が大半を占めており、企業側がOJTを重視していることが示唆されています。一方で、「OFF-JTを重視するに近い」、「OFF-JT を重視する」と回答した割合の合計は企業規模を問わず20%を超えており、OFF-JT を重視する企業が一定数存在することがみてとれます。企業側が実施したOFF-JTの内容についてみると「新規採用者など初任層を対象とする研修」が、企業規模を問わず最も高い回答割合となっており、かつ規模が大きくなるほどその割合が高くなっています。

 次に、人材育成・能力開発を行うにあたっての課題を企業規模別に整理した結果をみると、企業規模を問わず「指導を行う人材が不足している」といった教える側の人材不足に関する回答割合が最も高くなっており、かつ規模が大きくなるほどその割合が高くなっています。一方で規模が小さくなるほど、「鍛えがいのある人材が集まらない」といった、教えられる側の人材不足の課題を抱えている企業の割合が高くなっています。このように中小企業における人材育成といっても企業規模によってその課題に違いがみられるのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》夜勤明けの年次有給休暇

◆2019年4月から有給休暇の改正があります
 年次有給休暇について皆さんの会社ではどのように管理しているでしょうか。2019年4月より年次有給休暇の5日以上取得の義務化があり、有休の取扱いについてさらに注目度が上がっていくでしょう。
 年休の取扱いは各個人ごとの管理が必要で複雑化しやすい傾向があります。今後の有休管理については有休管理簿を備え付けることが義務化される等、大きく変化してきています。
 そんな中、今回は深夜勤務後の有給休暇について見ていきます。

◆夜勤明けは年次有給休暇にしていいの?
 夜勤明けがある場合、夜勤明けの日を休みにすることが多くあります。例えば17時から翌2時という夜勤明けの取扱いですが、昼から連続して厳しい深夜勤務を会社が命じるとすれば、夜勤明けを休んでもらうのは働いている人への安全配慮の観点からも望ましい措置といえるでしょう。賃金カットをせずに特別の有給休暇とするのがベストですが、翌日休んだ分を欠勤として扱う分には問題ありません。
 ここで話題になるのは翌日を年次有給休暇として処理できるかという点ですが、原則、有休とすることはできません。労働基準法上の年次有給休暇は1日単位が原則です。この「1日」というのは原則として午前0時から午後12時までの暦日とされているので、今回のように翌日の2時になってしまったときは1日として扱うことができません。仮に働いている人が夜勤明けを年休扱いにしてほしいと希望してきても原則できません。また、年休は労働者の希望する時季に与えなければなりませんので、会社が指定して年休取得させてしまうこともできません。

◆激変する環境に対応していくためには
 有休の取得率を代表とする会社の労働環境が原因で離職する人は全体の2割に上るといわれています。法律に則った範囲であれば罰せられることはありませんが、人手不足時代の今、人材の採用や定着にかかわる原因の一つとなっています。昨今の企業を取り巻く激変する環境に対応していくためにも、有休のとり方を今一度見直してみるいい機会です。

公示地価、地方都市の伸び加速

国土交通省が3月に発表した今年1月1日時点の公示地価によると、全国の地価は前年から1.2%上昇し、4年連続の上昇となりました。住宅地ではリーマン・ショック以来の上昇に転じた前年からプラス幅を拡大し、地方圏では全用途でバブル期以来27年ぶりのプラスに転じるなど、近年続く上昇傾向を全国的に維持しました。ただし都市部以外の地方では下落幅の縮小は見られるものの全用途でマイナスが続き、交通に便利で都市部に近いエリアでの地価が上がる一方、下落が続く地点も依然多い状況です。

 4年連続の上昇を主導したのは、都市部の商業地の地価上昇です。商業地は前年の1.9%上昇からさらに伸びて全国平均で2.8%上昇。三大都市圏では東京圏で前年比4.7%、大阪圏で6.4%、名古屋圏4.7%と軒並み伸びましたが、さらに札幌、仙台、広島、福岡など地方中枢都市では、前年の7.9%をさらに上回る9.4%の著しい上昇を示しました。海外からの観光客が増加していることを背景に店舗やホテルなどの需要が高まったことに加え、国土交通省によれば金融緩和を背景とした法人投資家などによる不動産取得が地価高騰に拍車をかけているそうです。

 住宅地ではリーマン・ショック以来の下落が17年に止まり、18年に0.3%のプラスに転じましたが、今年はさらに上昇幅を広げ0.6%増となりました。全国的にも上昇や下落幅の縮小がみられましたが、地域間には大きな差が出ています。三大都市圏が1.0%上昇、地方中枢都市が4.4%と前年以上に上昇する一方で、それ以外の地方圏は0.2%の下落となりました。高齢化と人口減少が進むなかで、より生活に便利でインフラの整備されている都市部に人が集まる状況がうかがえます。

<情報提供:エヌピー通信社>

働き方改革への対応怠りなく

 働き方改革関連法は今年4月1日から2023年にかけて順次施行されることになっていて、今年4月からは労働基準法改正による年次有給休暇の年5日の付与義務などが注目されていますが、ここでは労働安全衛生法の改正による労働時間の把握義務に焦点を絞って解説します。ここ数年、退職した元従業員による未払い賃金の支払請求などが多発していますが、今回の法改正はそうした動きをさらに加速させるおそれがあるためです。

 未払い賃金を求める最近の裁判では、ことごとく労働者側に軍配が上がっています。それはひとえに、会社側の労働時間の把握がぬるいからにほかなりません。裁判所は、たとえタイムカードがあったとしても労働者が手帳に書いた時刻を尊重する風潮にあります。

 こうした状況のなかで労働時間の把握義務が現在の施行規則から法律に格上げされれば、たとえ正しいタイムカード記録であっても会社は負ける可能性を否定できません。現に、偽装したタイムカードを使って裁判を起こした元従業員の主張が認められるようなことも起きています。

 自社の従業員や退職した元社員を疑いたくはありませんが、今後は労働時間の把握について、労使双方でサインをするなど徹底した管理が必要になってきます。法改正は4月1日にすでに行われています。

 安倍政権は「一億総活躍社会の実現に向けた最大のチャレンジ」と銘打ち、働き方改革関連法を昨年6月に成立させました。首相は「長時間労働を是正する」として、残業時間の上限規制や時間外労働に対する賃金支払い義務に期待を込め、また「非正規という言葉を一掃する」として、派遣社員や有期労働者の縮減に向けて動いていく構えを示しています。

《コラム》特定技能ビザと雇用企業の報告義務

◆特定技能ビザが4月1日からスタート
 介護や外食業、宿泊業、建設業など、これまで外国人材の受入れが原則的に難しかった14分野について、新たに受入れを認める「特定技能ビザ」の新設を含む改正入管法(出入国管理及び難民認定法)が4月1日からスタートします。
 慌ただしく国会で成立し、確定した要件がなかなか提示されない状況が続いていましたが、3月に入り法務省から申請用紙のサンプルや資料が公開され、いよいよ受入れに向けた動きが本格化してきました。

◆雇用企業に課される届出義務
 特定技能ビザで外国人材を受け入れるにあたり、これまでの一般的な就労ビザでの受入れと違い、雇用する企業(受入れ機関)に対し多くの届出義務を課していることは注目したいところです。
 現在ある就労ビザのうち、最も一般的な「技術・人文知識・国際業務ビザ」は、システムエンジニアや通訳翻訳者など、理系知識や文系知識、語学力を生かした業務に就く方向けのビザです。これまで、このビザをもつ外国人材を受け入れた場合や雇用契約が終了した場合、入国管理局(法改正により出入国在留管理庁へ変更)へ届出義務を負うのは外国人材個人であり、雇用企業が行う届出は努力義務とされていました。
 ところが、新設される特定技能ビザでは、外国人材受入れや雇用終了、さらに業務の内容や報酬額など雇用契約内容を変更する場合についても、雇用企業に届出の義務が課されることになります。

◆定期的な報告義務も
 このほか、雇用企業は四半期ごとに、特定技能外国人の受入れ数や氏名・生年月日等の身分事項、活動日数や活動場所など、受入れ状況に関する報告を義務付けられ、また、特定技能外国人と同じ業務に従事している日本人従業員に関する報酬支払状況についても届出を行うことが義務付けられます。報酬の支払状況については賃金台帳の写しや預金口座等への振込み等、支払い実績の確認できる証票資料を併せて提出する必要があるなど、適切な内容(例:報酬額が日本人と同等以上)の雇用契約が確実に履行されるための対策が数多く設けられています。報告義務を怠ると出入国在留管理庁から指導、改善命令等を受けるだけでなく、外国人材を受け入れられなくなる可能性もありますので、特定技能ビザによる外国人材の受入れには十分な態勢を整えて臨みたいところです。

《コラム》空き家の特別控除とDIY賃貸借

◆空き家の譲渡所得3,000万円特別控除
 近年増加傾向にある空き家。治安や景観の悪化、災害時の倒壊の恐れなどが社会問題となっています。
 この空き家について、税制によって問題を緩和しようというのが「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」です。当初は平成31年12月31日までに売却して、一定の要件に当てはまる場合、となっていましたが、平成31年税制改正によって、期間の延長(4年間)と要件の拡充が行われました。

◆要件と新要素
 空き家特別控除を受けるためには、以下の要件に当てはまるものでなければなりません。
・対象となる家屋又は家屋の敷地
(1)昭和56年5月31日以前に建築されたもの
(2)区分所有建物登記がされている建物でないもの
(3)相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいないもの
・特例を受けるための要件
(1)売った人が相続等で家屋や敷地を取得している
(2)その物件を売るか、家屋の取壊しをした後に売ること
(3)相続から取壊し・譲渡までの間に事業等に使用していないこと
(4)相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却、等です。
 拡充された内容としては被相続人が要介護認定等を受けて、老人ホーム等に入所した時から相続の開始直前まで、その家が他に使われていなかった場合でも、この特別控除の要件適合となります。

◆賃貸でも新しい形式に注目
 また、近年は原状回復を貸主が行わず、借主が自由にリフォームする形のDIY型賃貸借と呼ばれる賃貸住宅が注目されています。貸主は比較的古い物件でも改修費用を負担せず貸せる、借主は自分好みの住宅にすることが可能というメリットがあります。
 空き家特例の要件に適合した住宅でも、ニーズがあれば賃貸にしたい、だけど初期費用は掛けられないという場合、DIY型賃貸借を検討してみてはいかがでしょうか。

 

税金滞納でペット差し押さえ

税金を滞納した人の財産を差し押さえる際に、血統書付きのペットを押収してインターネットで売るという事案がドイツで起きました。日本の税法でも生活に最低限必要な財産など差し押さえることができない禁止財産を定めていますが、そのなかにペットは含まれておらず、同様のケースが生まれる可能性もゼロではありません。

 ドイツの北西部にあるアーヘン市で、ある納税者が市税を滞納した結果、昨年11月に財産を差し押さえられることとなりました。職員らが目を付けたのが、一家が家族同然にかわいがっていた愛犬でした。
 1歳になる愛犬・エッダは血統書付きの黒パグ。同じ種類の犬をペットショップなどで買うと、19~25万円ほどが相場だったそうです。一家はエッダを連れて行かないよう求めましたが、職員は押収し、インターネットオークションに出品。相場の半値の約10万円で購入者が付き、実際に引き渡されました。

 この事案が明るみになり、動物愛護家などからは批判の声も上がりましたが、同市の広報担当者は「差し押さえと売却は合法である」とコメントしています。一方で同市は、「職員の行動は例外的なものである」として詳しい経緯などを調査しているとも発表しました。動物保護の観点からも職員の今回の差し押さえが「問題あり」とされる可能性は十分にありそうです。

 同様のことは日本でもいえます。国税徴収法の75~78条では「差押禁止財産」を定めていて、生活に欠くことのできない衣服などの必需品、食料や燃料、業務に欠かせない最低限の設備、一定以上の給与や年金などが列挙されています。そのほか実印、位牌、日記、学習用具なども禁止財産に当たります。そのなかにペットは含まれておらず、法律上ではペットを差し押さえることは違法ではありません。そのため愛するペットが差し押さえによって転売される可能性はゼロとは言えません。

<情報提供:エヌピー通信社>

 

【時事解説】損益計算書の下からの賃上げ その1

 個人消費がなかなか盛り上がりません。個人消費はGDP(国民総生産)の大よそ6割を占めますから、個人消費が活性化しなければ、GDPも増えません。そこで、政府は個人消費を増やすべく様々な対策を打っています。

 その中で注目を浴びるのが賃上げです。政府は賃上げが望ましい理由を次のように説明します。賃上げで個人所得が増えれば、個人消費が活性化し、企業の売上が増加し、その結果、利益が増える経済の好循環に入るのだから、賃上げは最終的に企業のためになる。また、財源面からも、企業の内部留保は空前に積み上がっており、内部留保から賃上げができるはずだ。さらに、法人税率を引き下げ、今後も賃上げをした企業の税率引き下げも検討しているから、財源はあるはずだ、と。

 まず、財源論から考えてみましょう。内部留保からの賃上げ論には首を傾げざるをえません。なぜなら、内部留保は損益計算書の結果である当期純利益の集積であり、内部留保から直接、賃金(給与)を支払うことはできないからです。賃金は損益計算書の費用項目で、内部留保は貸借対照表の純資産項目です。その両者は損益計算書の当期純利益を媒介としなければつながりません。つまり、賃金を払い、損益計算書の最終利益である当期純利益を赤字にすることにより初めて内部留保が減少します。いくら内部留保が豊富でも、このルートからの賃金支払いに経営者が躊躇するのは当然です。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》依然健在 還付金詐欺にご用心!

◆ATMを操作しても還付金はもらえません!
 所得税の確定申告で還付となった場合、通常1か月~1か月半程度(電子申告の場合は3週間程度)で還付金は申告した口座に入金されますが、電話で何やら難しいことを言い立て、還付金の送金に問題があるとしてお年寄りにATMの操作をさせ、預金をだまし取る還付金詐欺があります。警察・銀行等の努力の甲斐もあって、平成29年に比べれば30年は認知件数・被害額ともに下がってはいるものの、還付金詐欺の被害額は年間22.5億円となったそうです。
 詐欺グループは税理士の名を騙ったり、国税庁の名前を出してきたり、銀行職員として電話を掛けてきたりと、多種多様な手口で皆さんのお金を狙っています。少しでも怪しいと感じたら、すぐに警察に相談しましょう。

◆振り込め詐欺は雑損控除の対象ではない
 「災害又は盗難若しくは横領によって」資産について損害を受けた場合等には、一定の金額の所得控除を受けることができます。これを雑損控除といいますが、国税庁ではご丁寧に「詐欺や恐喝の場合には、雑損控除は受けられません」と記載しています。
 過去には振り込め詐欺について、国税不服審判所で争ったケースもありましたが、やはり雑損控除の対象にならないと結論付けられています。

◆振り込め詐欺被害の救済策
 平成19年、国は新たに「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」を制定し、振り込め詐欺等で利用された金融機関の口座に残っている犯罪被害金の分配を、被害を受けた人に向けて行うようになりました。
 犯罪利用口座は「預金保険機構」からインターネットで公告されるので、ここに自分が詐欺によって振り込んでしまった口座がある場合、申請をすることによって口座に残っている金額・申請人数に応じて分配が行われるようになります。
 当然詐欺グループは入金された金をすぐに引き出そうとしますから、騙されたと分かったら、すぐに口座凍結の申請を行うべきです。口座に金額が残っていなければ、申請を行っても分配は行われません。
 振り込め詐欺等の特殊詐欺は微減しているとはいえ平成30年で16,000件超、被害額は350億円を超えます。税金関係でも救済策があってよいのではないでしょうか。

【時事解説】Vチューバーという新たな職業の可能性 その2

最近、動画の世界では、ユーチューバーのさらに先をいく、バーチャル・ユーチューバー「Vチューバー」が注目を集めています。Vチューバーに関するビジネスチャンスにはどのようなものがあるのでしょうか。

 Vチューバーの収入源はどのようなものでしょうか。人気が高まり動画の再生回数が増えれば、広告収入(ユーザーが広告をクリックすることで得られる収入)のほか、企業とのタイアップ、オリジナルグッズ等の販売収入と多岐に渡ります。ほか、有名になればTV出演といった、タレント活動のギャランティの収益が期待できます。

 最近、ユーチューバーの知名度が上がったため、ヒカキンなどがTVにタレントとして出演することも増えています。今後は、人気のVチューバーがタレントとして活躍する日が来るかもしれません。しかも、Vチューバーは仮想のキャラクターなので、どんなに働いても疲れないのも魅力です。

 こうした中、Vチューバーに関連するビジネスの萌芽が生まれています。一つは、Vチューバーの支援を主事業とする企業の誕生です。Vチューバーと企業とのコラボレーションのマッチング、キャラクター商品の企画や販売、プロモーションなど、Vチューバーの収益を最大化するための事業を営む企業が現れています。

 このほかには、動画制作者がVチューバーを簡単に作成できるように、作成アプリを提供するサービスや、人気Vチューバーが登場するアニメの制作を行うサービスもあります。

 Vチューバーになりたい人は今後、増えることが予想されます。Vチューバーについては、関連するサービスの提供にビジネスの商機が多くありそうです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)