《コラム》派遣社員の3年ルール適用は10月1日から

◆労働者派遣法の改正
 平成27年の労働者派遣法の改正から平成30年9月30日 で3年が経過します。10月1日からは、派遣社員の処遇向上を目的として派遣社員の受け入れ期間の上限が3年と定められた、いわゆる「3年ルール」が適用されます。
※3年ルール…平成27年9月30日以降に労働者派遣契約を締結・更新した派遣労働者は、同じ事業所で3年を超えて働くことは基本的にできないというものです。

◆雇用安定措置
 同じ事業所の同じ「課」などに継続して3年派遣される見込みとなった場合は、派遣元事業主(派遣会社)は、次の①から④のいずれかの雇用安定措置を講じる必要があります。
①派遣先への直接雇用の依頼
②新たな派遣先の提供
③派遣元での派遣労働者以外としての無期雇用
④その他雇用の安定を図るための措置

◆派遣先が留意すること
 労働者(派遣社員)は派遣元事業主に対し、雇用安定措置の①~④のうち講じて欲しいものを希望することができます。派遣元から派遣先に上記①の依頼があり、直接雇用に結びついた場合には、派遣先において税金や社会保険などの各種手続きが必要となります。
 扶養控除等申告書の提出、マイナンバーの確認、年金手帳の確認や社会保険の加入手続きは速やかに実施することが必要です。

◆消費税の取扱いにも注意
 労働者が引き続き同じ組織(いわゆる「課」など)で同一業務に携わったとしても、派遣と直接雇用の労働者では消費税の取扱いが異なります。派遣の時には人材派遣の対価ということで課税仕入れを行っていたものが、直接雇用では不課税取引の「給与」となります。

小規模事業者の黒字率が上昇

2017年度の決算で黒字となった小規模事業者の割合は約4割で、徐々に増加傾向にあることが分かりました。日本政策金融公庫がまとめたデータで明らかになったものです。一方、赤字企業は7年ぶりに増加した前年から、再び減少に転じました。

 調査の対象となったのは、従業者20人未満の製造業、サービス業、情報通信業、建設業、運輸業と、従業者10人未満の卸売業、小売業、飲食店・宿泊業の小規模事業者。4218法人と2193の個人事業者が有効回答を寄せました。

 それによれば17年度に黒字だった小規模事業者の割合は40.7%で、ここ10年で最高を記録しました。09年度からは8年連続の増加となります。また赤字法人は、前年31.1%で7年ぶりに増加しましたが、17年度は28.6%と再びマイナスに転じたほか、収支ゼロも30.7%と全体の3割を占めました。

 16年度に赤字法人が増加した理由として、日本政策金融公庫は4月の熊本地震や8月に北海道を襲った台風、三菱自動車の燃費不正問題などがマイナスの影響を及ぼしたと分析していました。17年度も多くの自然災害が日本列島を襲いましたが、そうしたなかでもトータルしてプラスの結果を示した格好です。

 17年度に増収かつ増益だった企業は全体の12.9%と、1割強にとどまりました。減収減益の企業は23.6%で前年から3.5ポイント減少しています。増収増益企業の割合は4年ぶりに増加に転じ、逆に減収減益企業は4年ぶりの減少となっています。
<情報提供:エヌピー通信社>

在職老齢年金 撤廃視野に見直し検討

働く人の年金支給額を減らす在職老齢年金制度で、制度がなければ60代の男性でフルタイム就業を選ぶ人が約14万人増えるとの分析結果を内閣府がまとめました。深刻化する人手不足に対応するため、政府は制度の撤廃を視野に入れた見直しを検討しており、今後の議論に影響を与えそうです。

 在職老齢年金制度は、厚生年金保険に加入して働いている高齢者が対象。60~64歳では年金と賃金の合計が月28万円、65歳以上では月46万円を超えると年金支給額が減額されます。賃金が増えるほど減額幅は大きくなり、「フルタイムの就業をためらわせる要因になっている」(政府関係者)との指摘があります。

 内閣府は、中高年者の就業状況などを調査した国のデータに基に、在職老齢年金制度や健康状態、親の介護、企業の継続雇用制度の有無など、どのような要因が就業選択に大きな影響を与えているかを分析。在職老齢年金制度がない場合、60~69歳の男性で、パートを選択する人は6.4万人減り、働かない選択をする人も7.7万人減少。その分、フルタイムを選ぶ人が約14万人増えるとの結果を示しました。

 政府は今年の「骨太の方針」で在職老齢年金制度の見直しを明記。「高齢者の勤労に中立的な公的年金制度を整備する」として制度の廃止や減額幅の縮小などを検討する方針です。厚生労働省の有識者会議で4月から議論を開始しており、2020年の通常国会への法案提出を目指しています。

 ただ、制度を撤廃すれば支給停止している年約1兆円が年金財政の重荷となります。制度改正の効果で高齢者の就労時間が増え年金納付額が増えなければ、支払いだけがかさむ結果に終わりかねません。
<情報提供:エヌピー通信社>

(後編)2018年度税制改正:生命保険料などの年末調整手続きを電子化へ!

(前編からのつづき)

 そして、これらの見直しとともに、住宅ローン控除申告書等に添付すべき住宅ローン控除証明書、年末残高証明書については、それらの証明書の発行者から電子メール等により提供を受けたその住宅ローン控除証明書、年末残高証明書に記載すべき事項が記録された電子データを印刷した書面で、真正性を担保するための所要の措置が講じられているものであれば、住宅ローン控除申告書等に添付することができるようになります。

 これらの改正は、2020年10月1日以後に提出する給与所得者の保険料控除申告書や住宅ローン控除申告書について適用します。
 なお、住宅ローン控除証明書と住宅ローンの年末残高証明書の電子データによる提出は、居住年が2019年以後である者に限られます。
 今後、年末調整手続きの電子化は、保険会社や銀行等の控除関係機関から個人、税務署、雇用主という情報の流れが、基本的にネット上で完結する仕組みになるとみられております。
 今後の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年8月10日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)2018年度税制改正:生命保険料などの年末調整手続きを電子化へ!

2018年度税制改正において、生命保険料控除、地震保険料控除及び住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除(いわゆる住宅ローン控除)に係る年末調整手続きを電子化することが盛り込まれております。
 現行、住宅ローン控除や生命保険料控除、地震保険料控除を適用するには、年末のローン残高証明書や保険料控除証明書を銀行や生命保険会社等から郵送で受け取り、これら紙の証明書を勤務先に提出する必要があります。
 その際、給与所得者の保険料控除申告書などの関係書類を作成して一緒に提出する必要があり、会社や社員からは、一連の手続きが非常に煩雑であるとの声がありました。

 年末調整手続きの電子化では、生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書、住宅ローン控除申告書、住宅ローン控除証明書、住宅ローンの年末残高証明書の5つの年末調整関係書類の書面による提出に代えて、電磁的方法による提供(電子提供)をすることができるように電子化します。
 この目的は、インターネット上で簡単に手続きができるようにすることで個人や企業の利便性を高め、事務負担の軽減を図ることです。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年8月10日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》社内研修参加と労働時間

◆労働時間の新たなガイドライン
 平成29年1月に厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」が発表されています。以前からあった基準は廃止され新たなガイドラインが示されました。それには労働時間とされる場合が3つありますが、その中の社員研修に関する労働時間についてみてみます。
 「研修に参加する事が業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習を行っていた場合」は労働時間に該当するとしています。しかし、使用者から何らかの指示があれば自主研修はすべて労働時間だと判断するのではなく個別に考える必要があります。

◆裁判例等から検討される観点
 裁判例では労働時間とみなされるのは次の3つの観点があります。
①時間や場所での制限によって行動に相当の制約がされているか⇒所定の労働のように指揮命令下での労働における行動の拘束下と言えるか
②使用者からの義務付けの態様、程度(明示、黙示の命令か、黙認か)⇒指揮命令のレベルの強弱
③要した時間が社会通念上必要であるか

◆社内研修について
 従業員が会社で実施する研修に参加した場合、労働時間に該当するかどうかはよく問題になります。社内研修が一定の場で所定の時間に開催されていれば前記①の要件を満たします。また、②の使用者の義務付けでは通達において「就業規則上の参加しない事による制裁等不利益扱い無く自由参加」であるかどうかが争われます。研修の参加、受講は業務上の義務であるか否かであり、不参加によるペナルティ等事実上の不利益によって強制される場合も業務に含まれるとしています。

◆自主研修の場合は
 スキルアップのためのWEB学習などは社内等場所の制約、業務上の必要性が高く業務命令的要素が強い事、学習状況を会社が把握している等であれば業務上となる要素は強く、逆に労働時間外に行わせるならば原則事業場内では学習を行わせない、学習自体を義務付けしない、あくまでも一定のスキルアップ程度に留める、本人の自主性に任せ会社は管理、監視はしない等が必要です。

《コラム》交際費課税の特例延長

◆年額800万円までか、全体の50%か
 法人が支出した交際費は原則として損金不算入ですが、平成26年度税制改正から、資本金1億円以下等の中小法人については支出する交際費等のうち年800万円以下は損金として計上するか、接待飲食費の50%相当額を損金計上するかの選択適用ができるようになりました。
 また、中小法人以外の法人でも、接待飲食費の50%相当額を損金計上できるようになりました。
 当初は平成28年までの特例措置となっていましたが、28年度税制改正で30年3月まで、そして今年の30年度税制改正で32年3月31日までに開始する事業年度まで、と適用期限が延長されました。

◆5,000円以下の接待飲食費の扱いに注意
 昔から実務上は5,000円以下の飲食費は会議打ち合わせでの飲食との区分が曖昧でしたが、平成18年度改正より飲食に関する接待費が5,000円以下であれば税務上交際費に含めず、全額を損金計上できる事が明記されました。
 ただしその法人の役員・従業員・親族に対する接待等のために支出するものは、5,000円以下であっても交際費に該当しますので注意が必要です。
 また、帳簿書類への記載は、
①飲食のあった年月日
②参加した得意先等の方の氏名や関係
③参加した人数
④飲食費の額と店の名前・所在地
等を明記する必要があります。
 よく経理担当者から「この領収書のお店、誰と行ったんですか?」と聞かれる社長も多いかもしれませんね。お付き合いの多い場合は「分からなくなるからすぐに領収書に相手の名前を書いておく」という方もいらっしゃいます。

◆交際費課税は景気のバロメーター?
 昭和29年度の税制改正から導入された交際費課税制度ですが、過去には頻繁に改正が行われていました。世相や景気によって左右されがちな交際費課税ですが、ここ最近の特例措置の延長に鑑みると、政府は景気の回復を最優先にしていることが見て取れます。

滞納発生額、2年連続減

国税庁が発表した、国税を期限どおりに払えない「滞納」の最新状況では、新たに発生した滞納額は2年連続で減少し、残高もピーク時から3分の1にまで減少するなど比較的落ち着いた推移を示しました。しかし過去のデータを見ると、消費増税が行われた直後には必ず滞納が激増していることから、来年10月の10%への引き上げ後にも再び滞納件数が跳ね上がることが予想されます。

 2017年度に新たに発生した国税の滞納額は6155億円で、前年よりわずかに減少しました。17年度末時点での滞納額の残高は8531億円となり、19年連続の減少です。年度末での残高がピークだった1998年の2兆8149億円から7割減ったことになります。新規発生額は毎年減り続けているわけではないので、国税が督促や差し押さえなどを使って、発生を上回るペースで滞納整理を進めている状況が見てとれます。

 これまでの新規滞納発生額の推移を見ると、ピークだった1992年から増減を挟みながら減少を続けてきたなかで、発生額がぐっと増えた2つの山があることが分かります。一度目は98年で、二度目が2015年です。この2年の共通点は、消費税率が引き上げられた時期に当たるということ。一度目は3%から5%に、二度目は5%から8%に引き上げられ、滞納する事業者が一気に増えたことが、発生額の急増につながりました。

 言うまでもなく、来年10月には8%から10%への消費税率の引き上げが予定されています。取引本体の金額が1千万円だとすれば実に100万円の消費税が課されるわけで、消費者としても事業者としても、これまでにない消費税負担が重くのしかかることになります。当然、過去2度の増税時と同じように消費税の滞納も一気に増えるでしょう。全ての中小企業にとって無関係な話ではありません。
<情報提供:エヌピー通信社>

【時事解説】マイナス金利をファイナンス理論に適用すると その2

運用金利がプラスであれば、そこに個別リスクを乗せますから、割引率は必ずプラスになります。マイナス金利政策で国債金利がマイナスになるとしても、マイナス幅には限界がありますし、そこに個別リスクを上乗せしますから、割引率はプラスになると考えてもいいと思います。ただ、本稿では、やや頭の体操的にはなりますが、仮にマイナス金利が極端に振れ、割引率がマイナスになるとどうなるか考えてみましょう。

 たとえば、割引率が-10%だったとしてみます。現在の100円は-10%で運用すると、1年後には90円になってしまいます。つまり、1年後の90円が現在の100円(90÷0.9)と同等になり、90円を超えて回収できるとすれば、今100円投資することが合理的だという結論になってしまいます。

 しかし、100円投資すれば1年後に90円回収できるから投資するというのは明らかに不合理です。なぜなら、そんなことなら投資せず現金で100円持ち続けた方が有利だからです。このように現金保有にマイナス金利を付けられないという前提ではマイナス金利に基づくファイナンス理論は崩壊してしまいます。

 ここから分かることは、マイナス金利政策の最大の弱点は現金にマイナス金利を付けられないことにあります。これはファイナンス理論だけではなく、マイナス金利全体に当てはまる議論です。現金にマイナス金利を付けられない以上、そのひずみは銀行が一身に背負わなければなりません。そう考えると、マイナス金利は長く続けられる政策ではありません。逆に、強力に長く続けるようであれば、銀行は持ちこたえることはできないでしょう。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】マイナス金利をファイナンス理論に適用すると その1

 2018年7月の政策決定会合でややトーンは弱まりましたが、日銀は依然としてマイナス金利政策を維持しています。マイナス金利は経済だけでなく、会計方面にも大きな影響を与えます。というのは、会計やファイナンス理論で重要となる将来キャッシュフローの現在価値の計算に際し使用する割引率は、国債等の運用利回りをベースにするからです。

 投資の意思決定の問題を考えてみましょう。投資の際には、投資金額以上の資金回収が得られるかどうかが重要な判断材料になります。そのため、現在投資しようとするキャッシュと、将来回収できると予想されるキャッシュを比較しなければなりません。しかし、手元に存在する100円と将来手にすると予想される100円は、同じ100円でも同等でありません。1年後の100円は現在の100円に比べて、2つの点で見劣りするからです。一つは運用利息です。現在の100円は預金をしたり、国債を買ったりすれば1年後には利息が付きますから、元利含めて100円を上回ります。もう一つは確実性です。現在は確実ですが、将来は不確定です。ですから、現在時点と比較する将来のキャッシュはある一定の利率で割り引いて計算する必要があります。その利率を割引率といいます。割引率は国債等のリスクフリー(元本毀損リスクがない)レートに個別のリスクを加えたレートになります。

 たとえば、割引率が10%とすると、1年後に手にするとされる100円は90.9円(100円÷1.1)と評価されます。つまり、今100円投資して、1年後に100円回収できると予想できても、投資採算には合わないと判断できます。最低限1年後に110円回収できたとき、今の投資の100円(110円÷1.1)と同じ価値になります。これが割引率がプラスのときの通常の投資判断になります。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)