《コラム》「例のカードを持ちましょう」 e-Tax利用の簡便化

◆個人納税者の方のe-Taxシステム改修
 国税庁は、マイナンバーカード搭載の電子証明書やマイナポータルの連携機能の活用をめざし、日々システム改修を進めているそうです。平成30年7月11日には「e-Tax利用の簡便化の概要について」というお知らせを出しています。

◆簡便化には2つの方法があるが……
 リリースでは「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」が紹介されています。
 「マイナンバーカード方式」は、マイナンバーカードとカードリーダーを利用して申告等のデータの送信を行う作業ですが、従来は税務署にe-Taxの開始届出書を提出し、e-TaxのID・パスワードを受領する必要がありました。平成31年1月以降は、マイナンバーカード方式の場合、届出書の提出やID・パスワードの受領は必要なくなります。これによりe-Taxの利用開始が簡便化されます。
 「ID・パスワード方式」は税務署で職員による本人確認後に発行されるID・パスワードを用いてe-Taxを行えるようになるものです。ただし、この方式は国税庁Webサイトの「確定申告書等作成コーナー」でのみ利用できるそうです。

◆ID・パスワード方式の落とし穴?
 平成31年1月以降、e-Taxホームページから確認できるメッセージボックスに保管されている受信通知(e-Taxでの申告履歴・正常に申告書が受理された通知・申告についてのエラーメッセージなどが税務署から届きます)の閲覧には、原則としてマイナンバーカード等の電子証明書の認証が必要となるそうです。つまり、ID・パスワード方式では結果表示等が確認できない模様です。国税庁は「ID・パスワード方式はあくまでマイナンバーカードが普及するまでの暫定的な対応」としています。電子申告も普及させたいが、平成29年3月時点で全国8.4%というマイナンバーカードの普及率も上げたい、という本音が透けているように思えます。
 なお、平成31年からはスマートフォン等でも確定申告書等作成コーナーが利用できる改良も施される予定です。

今月の税務トピックス② 

(今月の税務トピックス①よりつづく)

Ⅳ 都道府県知事の確認(円滑化規17④)
 都道府県知事は、上記Ⅱの申請を受けた場合において、その確認をしたときは「施行規則第17条4項の規定による確認書(様式第22)」を申請者である中小企業者に対して交付します。また、その確認をしない旨の決定をしたときは「施行規則第17条4項の規定による確認をしない旨の通知書(様式第23)」により申請者である中小企業者に対して通知します。
Ⅴ 特例承継計画の認定(円滑化法12①,円滑化規7⑥)
 特例承継計画の認定を受けようとする特例認定贈与承継会社は、その認定に係る贈与の日の属する年の翌年の1月15日までに、「第一種特例贈与認定中小企業者に係る認定申請書(様式第7の3)」による申請書に、その申請書の写し1通及び上記Ⅳに掲げる確認書(様式第22)等の一定の書類を添付して、都道府県知事に提出することとされます。

おわりに
 特例承継計画に特例後継者として氏名を記載された者でなければ、事業承継税制の特例の認定を受けることはできません。また、特例承継計画を提出した場合であっても、特例後継者に株式の承継を行わなくても罰則規定はありませんので、実務上は期日までに特例承継計画の提出をしておくべきでしょう。
 なお、特例承継計画の確認を受けた後に、計画の内容に変更があった場合は、変更申請書(様式第24)を都道府県に提出し確認を受けることができます。この変更申請書には、変更事項を反映した計画を記載し、再度認定経営革新等支援機関による指導及び助言を受けることが必要とされます(円滑化規17①一,同規18①⑤)。
 ただし、既に特例認定贈与承継会社の株式の贈与を受けた特例後継者については、変更対象者とされませんので留意して下さい。

《コラム》外国人就労 新たな在留資格の方向

◆経済財政運営と改革の基本方針
 政府は人手不足対策として、外国人材の受け入れを拡大する為、新たな在留資格を創設する方針の原案をまとめました。現在単純労働の分野で外国人の就業を原則禁止していますが、医師や弁護士等高度な専門性を持っている人材は積極的に受け入れ家族の帯同も認めています。今回の原案による新たな在留資格の対象は、人手の確保が難しい業種の存続、発展の為に外国人材が必要と認められる業種(農業、介護、建設、宿泊、造船)の5分野を想定しています。

◆最長で10年の就労が可能に
 日本では約128万人の外国人が働いています。内訳は①永住者や日本人と結婚した人②留学生のアルバイト③技能実習生④専門性の高い技術者、研究者等です。
 今回は技能実習生の在留期間を3年から5年に延長、さらに10年の就労も可能にする事を想定しています。技能実習生は現在25万8千人で5年前の5倍に膨らんでいます。政府は秋の臨時国会に出入国管理法改正案を提出し来年4月からの導入を目指しています。
 技能実習生は1993年に始まった制度で本来途上国への技術指導が目的でした。日本での就労期間が延びるほど、身に付けた技術を母国で活かす機会が遠のきます。本来の実習生の趣旨は考慮されてはいるでしょうが今後の法の動きが注目されます。

◆今後の方向性
 今回の方針では新資格を得た人が日本語や専門分野の試験に合格すれば、在留期間の上限を撤廃し、家族の帯同を認める案も上がっているという事です。一方で今回の案が技能実習制度を骨抜きにし、事実上の移民政策に繋がるのではという懸念の声も聞こえるそうです。
 法務省では「在留管理インテリジェンス・センター」(仮称)を設けて雇用・婚姻等の情報を一元化し、不法就労を防ぐとしています。外国人労働者の離職、転職等を雇用保険を所轄する厚労省との情報共有、婚姻、離婚等の情報は自治体との連携を進めるとの事です。
 また、外国人留学生の勤務先や勤務時間の管理を強化し、1週当たり28時間の勤務時間を超えると在留資格を取り消す方針だという事です。

《コラム》義援金と支援金

◆災害への寄附を募る動き
 今年は地震・大雨と災害が続いています。被害に遭われた方に心よりお見舞い申し上げます。災害が発生した際、盛んに各団体が寄附を募りますが、その中には「義援金」と「支援金」があるのをご存じでしょうか?

◆義援金は被災者に渡される
 義援金は、「義援金分配委員会」がとりまとめて、配分対象被災地の自治体へ送金されます。そこから被災された方々へ直接募金を渡すものとなります。
 義援金の特徴としては「自治体への寄附として扱われる」事です。個人が寄附をした場合は「ふるさと納税」の扱いとなりますので、寄附者の所得・控除によって定められている上限金額までの寄附であれば、自己負担を2,000円で済ます事ができます。いわば自分が将来納める税金を、被災地域の救済のための目的税として納める事ができるのです。
 ただし、計算は「ふるさと納税」と同じ扱いになるため、別途ふるさと納税をしている場合は、合算した金額で上限金額を考える必要があります。

◆支援金は支援団体への活動資金に
 支援金は被災者の生活復旧や、避難生活の援助等、各団体が標榜している活動に使われる募金となります。組織が活動するにはどうしてもお金が必要ですし、被災者を助ける細やかな活動という面では、各団体への支援金募金は大きな力を発揮します。しかし支援金は「団体の活動費」になりますから、寄附した人は、適切に寄附金を使用しているかをチェックする必要があるかもしれません。
 個人から公益法人や認定NPO法人への支援金の寄附は、寄附金税額控除が適用されるケースがあり、通常の寄附金控除と税額控除の選択適用ができます。また、寄附先がお住まいの都道府県・市区町村の認定を受けている団体の場合は、住民税の税額控除が受けられます。
 義援金と支援金、どちらも被災者のために、という寄附の意義は変わりません。正しい知識と税の控除の仕組みを知って、効率的に支援を行えると良いですね。

【時事解説】内部留保があるから、投資を増やせるのか その2

「企業経営者は余裕資金(内部留保)が多ければ、工場などの設備投資を増やすでしょうか?」
このように聞かれると、答えにくいかもしれませんので、少し質問の仕方を変えましょう。
 「設備投資を行う一番の要因は余裕資金が大きいことでしょうか?」この答は簡単です。明確に否です。

 カネがあるから設備投資をするというのは合理的な経営判断ではありません。設備投資を行うのは、将来の売上が増えたり、経費が削減され、利益が拡大することが見込まれるからです。現在、手元に余裕の資金があるかどうかは、設備投資を決定する主要因ではありませんし、また、あってはいけません。将来の利益拡大効果が見込まれるにもかかわらず、現在手元に資金がないのであれば、借入を起こして、資金を手当てすればいいだけの話です。資金手当ての問題は投資においては二次的な問題に過ぎません。

 投資は今カネがあるから行うのではなく、将来収益が上がると予想できるから行うのです。つまり、投資のポイントは入口ではなく、出口です。そうした意味で、内部留保(余裕資金)があるから、投資をしろというのは入口の問題に過ぎず、的外れな要請と言わざるを得ません。政府がなすべきことは、企業の意思決定に直接介入することではなく、規制緩和や市場拡大など経営者に投資を拡大したいと思わせる経済環境の整備、すなわち魅力ある出口の創出だと思います。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】内部留保があるから、投資を増やせるのか その1

日本の企業は内部留保をためすぎ、資金を積極的に投資や賃金の増加に振り向けないから、日本経済は低成長にとどまるのだと批判されています。また、経済の好循環を持続させるためには、企業の積極的投資増や賃金増加が不可欠だとして、政府側から経済団体に異例の働きかけが行われています。しかし、内部留保が多いから、投資を増やせるだろうという議論の展開には違和感を覚えます。

 まず、会計面の整理をしておきましょう。新聞等を見ると、「内部留保」という言葉は「余裕資金」と混同して使われている場合が多いようですが、会計的にはその両者は明確に区別されます。内部留保とは事業活動によって生じた利益の蓄積であり、会計的には利益剰余金として自己資本を構成します。内部留保は貸借対照表の貸方に出てくる項目です。これに対し、余裕資金は資産の一つとして現金預金(または有価証券)として表示されますから、借方項目になります。したがって、内部留保と余裕資金は直接的につながるものではなく、会計的にはまったく別個に存在します。

貸借対照表の貸方は、資金の調達源泉を示し、内部留保が多ければ、自己資本が多く、財務的に安定していると評価できます。しかし、だからといって、必ずしも余裕資金が多いということにはなりません。内部留保による利益蓄積を固定資産や在庫につぎ込んでいれば、手持ちの現金が薄いということもあり得るのです。

 このように会計的には内部留保の大きさは余裕資金の大きさを保証するものではありません。ただ、内部留保が厚い会社は余裕資金を多額に抱えていることが多いのも事実ですので、以下では、内部留保≒余裕資金として話を進めます。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

(前編)国税不服審判所:裁決事例などを公表!

国税不服審判所は、2017年7月から9月分までの裁決事例を、同所ホームページ上に追加公表しております。
 それによりますと、公表された裁決事例は12事例あがっており、そのうち裁決の6事例において、納税者の主張が何らかの形で認められました。

 国税通則法関係では、請求人が行った期限後申告書の提出は、調査の内容・進捗状況、それに関する請求人の認識、期限後申告に至る経緯、期限後申告と調査の内容との関連性の事情を総合考慮して判断した結果、国税通則法第66条第5項に規定する「決定があるべきことを予知してされたものでない」ことに該当するとして、所得税等に係る無申告加算税を全部・一部取り消しております。

 さらに国税通則法関係において、当初から所得を過少に申告する意図を有していたと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例があります。
 同事例では、請求人が当初から所得を過少に申告する意図を有していたことを推認させるものとまではいえず、その他、請求人の上記意図を認めるに足りる証拠はないとして、消費税等に係る重加算税の賦課要件を満たさないと判断しました。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年7月9日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(後編)政府:生産性向上特別措置法により設備投資を支援へ!

(前編からのつづき)

 上記②では、2018年度税制改正において、IoT設備投資(センサー・ロボット等)を行った場合に、特別償却30%又は税額控除3%(賃上げを伴う場合は5%)を選択適用する「情報連携投資等の促進に係る税制」を創設し、こうした取組みに用いる設備等への投資に対する減税措置等の支援を行います。
 また、一定のセキュリティの確認を受けたデータ共有事業者が、国や独立行政法人等に対し、データ提供を要請できる手続きを創設します。

 上記③では、2018年度税制改正において、中小企業が一定の設備を取得した場合の固定資産税を3年間にわたり最大ゼロとする設備投資の支援措置を創設します。
 これは、市町村の導入促進基本計画に適合し、かつ、労働生産性を年平均3%以上向上させ、企業の収益向上に直接つながる一定の機械・装置等であって、生産、販売活動等の用に供されるものの課税標準を、市町村の判断において、最初の3年間ゼロから2分の1に軽減します。
 今後の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年7月17日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)政府:生産性向上特別措置法により設備投資を支援へ!

政府は、昨年取りまとめた「新しい経済政策パッケージ」において、2020年までを「生産性革命・集中投資期間」として、あらゆる政策を総動員するとしており、生産性向上特別措置法により、我が国産業の生産性を短期間に向上させるために必要な支援措置を講じるとしております。

 昨今、IoTやビッグデータ、人工知能などICT分野における急速な技術革新の進展により、産業構造や国際的な競争条件が著しく変化しております。
法律では、
①プロジェクト型「規制のサンドボックス」制度の創設
②データの共有・連携のためのIoT投資の減税等
③中小企業の生産性向上のための設備投資の促進について規定しております。
 上記①のプロジェクト型「規制のサンドボックス」制度の創設は、参加者や期間を限定すること等により、既存の規制にとらわれることなく新しい技術等の実証を行うことができる環境を整備することで、迅速な実証及び規制改革につながるデータの収集を可能とします。
 なお、事前相談・申請を一元的に受け付ける窓口を、内閣官房に開設しております。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年7月17日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》働き方改革関連法の成立

◆迫られる残業削減・生産性の向上
 政府が今国会の最重要法案としていた働き方改革関連法が6月29日に成立、2019年4月から順次施行されます。無駄な残業を減らし、時間ではなく成果を評価する方向に舵を切ることになります。単純な作業は機械やITに任せ、効率化を進め、不必要な残業は減らし、生産性向上を目指すようになるでしょう。というのも残業に上限時間規制が課せられたからです。業務の見直しや人の増員等の対応に迫られるかもしれません。

◆適用される大きな柱は3つ
(1)働き方に最も大きな影響を与えるのは日本の労働法制で初めて導入される残業時間の上限規制です。労働基準法では労働時間は原則1日8時間・週40時間となっていますが、労使協定を結べば残業時間を無制限に設定できるのが実態でした。現在目安時間である「月45時間、年間360時間」が法制化され2~6か月平均で80時間以内、単月で100時間未満に抑え月45時間を超してよいのは年6回までです。(2020年4月)
(2)脱時間給的働き方は年収1075万円以上の金融のディラーやコンサルタント、アナリスト等を対象に残業代や休日手当の支給対象外とします。(2019年4月)
(3)非正規労働者の処遇を改善する措置では正規と非正規の不合理な待遇差があることを禁じ、「同一労働、同一賃金」の実現を目指します。勤続年数や能力、仕事が同じなら原則、同じ基本給にする等賃金体系の見直しが必要になるかもしれません。(2021年4月)

◆その他の働き方改革関連法(2019年4月)
(1)勤務間インターバルの努力義務…退社から出社までに一定時間の休息を確保
(2)年次有給休暇の取得義務…年に5日は有給休暇を消化させなければならない
(3)労働時間の把握義務…事業所に働く人の労働時間を客観的に把握する必要
(4)フレックスタイム制の拡大…労働時間を1か月から3か月単位で調整可能に
(5)中小企業の割増賃金は残業月60時間超えで割増率を50%以上に(2023年4月)