《コラム》交際費の損金不算入制度

◆交際費課税の現状
 現在の交際費課税は以下のようになっています。
① 大前提として1人5,000円以下の飲食等については、交際費としなくてもよい。
② 資本金が1億円以下である法人は、交際費の50%を損金に算入するか、800万円までを損金に算入するかのどちらかを認める。
③ 資本金が1億円を超える法人は、交際費の50%を損金に算入することを認める。
④ 資本金が100億円を超える法人は交際費の損金算入は一切認めない。
 何をもって交際費とするかは諸説ありますが国税局は以下のように言っています。
「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為」

◆企業は交際費をどれくらい使っているの
 国税局の最新(平成30年)の統計情報によれば、1億円以下の法人は、1社平均90万円弱です。それに対し1億円超の法人は1社平均1,000万円強です。全額否認される100億円超の法人は1社平均1億500万円です。全体の数字では圧倒的に数の多い1億円以下の法人が多いですが、1社当たりで見るとかなりの開きがあります。
 1億円以下の法人は800万円までの損金算入で十分かと思われますが、1億円超の企業は交際費の損金算入が認められれば、もっと交際費は増えると思われます。

◆コロナで飲食店は大打撃
 ご存知のように、コロナ騒ぎで飲食業界は大きく売上げを落とし大打撃を被っております。特に接待を伴う飲食店の打撃は大きなものがあります。
 景気が良くなるとはお金が実体経済でたくさん循環することです。
 本来交際費の損金不算入制度は、政策的な制度です。景気の動向を見て数年に一度は限度額や制度そのものを変更してきました。Go To Eatも結構ですが、この際交際費の損金不算入制度の見直しをしてもよいのではないかと思われます

《コラム》より拡充されるiDeCoとiDeCo+

iDeCo(イデコ)とiDeCo+(イデコプラス)の制度がより拡充されています。

◆iDeCo(イデコ)とは
 iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)は、確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金の制度で、加入は任意です。iDeCoは加入者が自分で申し込み、掛金を拠出し、自分で運用方法を選んで掛金を運用します。
 iDeCoでは、掛金を払い込むと所得控除の対象となり、運用期間中の運用益は非課税とされ、そして給付を受け取るときには退職金又は公的年金として扱われ、税制上の優遇措置が講じられています。

◆iDeCo+(イデコプラス)とは
 iDeCo+(イデコプラス・中小事業主掛金納付制度)とは、企業年金(企業型確定拠出年金、確定給付企業年金、厚生年金基金)を実施していない中小企業(従業員300人以下に限る)の事業主が、従業員の老後の所得確保に向けた支援を行うことができるよう、iDeCoに加入している従業員が拠出する加入者掛金に追加して、掛金を拠出できる制度です。
 事業主が拠出した掛金は、全額が損金に算入され、こちらも税制上の優遇措置が講じられています。実際に導入するには労使で合意し、イデコの実施主体である国民年金基金連合会に届け出る必要があります。

◆改正点
①iDeCoの改正
 これまでiDeCoでは60歳未満の国民年金被保険者が加入可能でしたが、高齢期の就労が拡大していることを踏まえ、2022年5月からは国民年金被保険者であれば加入可能となりまました。これにより60歳以上のiDeCoについては、国民年金の第2号被保険者又は国民年金の任意加入被保険者であれば加入可能となります。また、これまで海外居住者はiDeCoに加入できませんでしたが、国民年金に任意加入していればiDeCoに加入できるようになります。
②iDeCo+の改正
 2020年10月から、従業員要件が100人以下から300人以下に拡大されました。これにより加入可能者が一気に4割増え、2253万人に増えるそうです。

《コラム》 解明待ちの「土地の上に存する権利」

◆小規模宅地特例と配偶者敷地利用権
 相続税に於ける小規模宅地特例は、「土地又は土地の上に存する権利」について適用されるとしているので、配偶者居住権に基づく敷地利用権が「土地の上に存する権利」に該当しなかったら、小規模居住用宅地特例の対象にはなりません。

◆昨年、令和元年度政令改正
 昨年は、租税特別措置法では配偶者居住権について特別な改正をしていません。それにも拘わらず、配偶者居住権に基づく敷地利用権は小規模居住用宅地に当然に該当すると考えられたらしく、その計算規定が政令に、新規挿入されています。
 法改正なしでの政令規定新設の理由が財務省「税制改正の解説」で確認できます。すなわち、配偶者居住権は、借家権類似の建物についての権利であるが、配偶者居住権に付随するその目的となっている建物の敷地を利用する権利(敷地利用権)については、当然に「土地の上に存する権利」に該当すると理解されるから、ということのようでした。

◆今年の、令和2年度税制改正の解説
 ところが、同じ、財務省「税制改正の解説」の今年度版(9月11日公開)には、対価を伴う配偶者居住権の消滅には譲渡と同じ効果がある、所得としては総合課税の譲渡所得と考えられる、配偶者敷地利用権は「土地の上に存する権利」には該当しない、と書かれています。
 配偶者敷地利用権は、土地に関係する権利ではあるが、鉱業権・温泉利用権・借家権の仲間であり、「土地の上に存する権利」と言われる借地権の仲間ではない、ということです。
 昨年と今年で明らかに相違しており、この相違に問題が無い、との解説は今のところ出ていません。

◆土地の上に存する権利と相続税・所得税
 昨年の「税制改正の解説」での配偶者敷地利用権は相続税の改正の項目に関するものでした。今年の「税制改正の解説」での配偶者敷地利用権は所得税の改正の項目に関するものでした。
 相続税では、配偶者敷地利用権は土地の上に存する権利に該当するとされ、所得税では扱いが異なり、土地の上に存する権利には該当しない、とされたことについて、誰しもが疑問としているところなので、解明が待たれるところです。

《コラム》のれんの償却期間 -買収した事業の価値はいつまで続く?-

事業の多角化をねらい、事業買収をしたとき、時価純資産価額を超えて対象事業を評価することで生じた「のれん」の価値は、いつまで継続するのでしょうか?

◆のれんの価値
 のれんには譲渡した側の経営者が長年築いてきた信用、取引先との契約関係、社員のスキル・経験など、様々な価値が内包されていますが、消費者のニーズの変化や市場の変化に応じて減価し、自社の事業に吸収されていきます。
 のれんの償却は、会計・税務上、次のように扱われています。

◆会計上の償却期間
 日本の会計基準では、のれんは、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたり毎期、規則的に償却します。これは、取得事業から生じる収益と償却費用とを対応させることができること、のれんの減価を合理的に予測することが困難であること等の考え方によります。また、のれんの未償却残高は、減損処理の対象となり、投資額の回収を見込めないときは、減損処理が求められます。
 IFRS(国際財務報告基準)では、のれんは償却せず、取得原価のまま評価されますが、毎期、減損テストを行い、減損が認識された場合は、減損処理を行います。

◆税法上の償却期間
 法人税法では、のれん(資産調整勘定)は、60か月(5年)の月割り均等償却です。償却期間が会社の見積りで任意に設定されることを回避し、所得に与える影響を中立にさせています。
 なお、償却に当たり、損金経理要件は課されておらず、会計基準が求める減損処理も法人税法では認められていません。

◆のれんの価値を育てる
 事業を承継した経営者は、買収した事業を自社の事業と融合させて、のれんの価値を高め、投資額を上回る利益の獲得を目指します。その意味からすれば、取得したのれんは、投資の回収を見込む期間内で早めに償却を行い、自社の新たなのれんとして育てていくべきものではないでしょうか。
 買収した事業ののれんは、イソップ物語に出てくる金の卵を産むガチョウのような存在かもしれません。ただし、あせってガチョウの腹をさかないように。

(後編)2019年度査察白書:査察の告発事案は100%有罪!

(前編からのつづき)

 ちなみに、刑罰は10年以下の懲役に、罰金は1,000万円(脱税額が1,000万円を超える場合は、脱税相当額)以下となっております。
 いわゆるマルサといわれる査察は、大口・悪質な脱税をしている疑いのある者に対し、犯罪捜査に準じた方法で行われる特別な調査をいいます。
 そして、調査にあたる国税査察官には、裁判官の発する許可状を受けて事務所などの捜査や帳簿などの証拠物件を差し押さえたりする強制捜査を行う権限が与えられます。

 この査察調査は、単に免れた税金や重加算税などを納めさせるだけでなく、検察への告発を通じて刑罰を科すことを目的としております。
 1980年に初めて実刑判決が出されて以降は、毎年実刑判決が言い渡されております。
 すでに着手した査察事案について、同年度中に告発の可否を最終的に判断(処理)した件数は165件で、このうち検察庁に告発した件数は70.3%(告発率)にあたる116件あったことからも、査察の対象になると、約7割程度が実刑判決を含む刑事罰の対象となりました。

(注意)
 上記の記載内容は、令和2年9月7日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)2019年度査察白書:査察の告発事案は100%有罪!

2019年度査察白書によりますと、2019年度中に一審判決が言い渡された124件の100%に有罪判決が出され、うち5人に対し執行猶予がつかない実刑判決が言い渡されました。
 実刑判決で最も重いものは、査察事件単独に係るものが懲役10ヵ月、他の犯罪と併合されたものが懲役9年でした。

 事例では、A社はプロセッサ開発・製造・販売等を行うもの会社ですが、架空の外注費を計上するなどの方法により所得を隠し、多額の法人税及び消費税を免れておりました。
 同社の元代表者Bは、詐欺罪との併合事件として、法人税法、消費税法及び地方税法違反の罪で、懲役5年の実刑判決を受けております。
 一審判決があった124件の1件当たり平均の犯則税額は4,700万円、懲役月数は15.5ヵ月、罰金額は1,200万円となりました。
 査察の対象選定は、脱税額1億円が目安といわれ、また、脱税額や悪質度合いの大きさが実刑判決につながります。
 査察で告発されますと、社会的信用を失うだけでなく、巨額な罰金刑や実刑判決の可能性も十分にあります。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和2年9月7日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》進む働き方改革 制度導入のポイントは

◆多様な働き方ができる時代に
 時間や場所にとらわれない柔軟な働き方ができるテレワークや、総勤務時間を変えずにラッシュアワーを避けて通勤をする時差出勤、社員が自由に出勤・退勤時間を決められるフレックスタイム制の導入など、新しい働き方が広がってきました。
 これらは、近年政府が推し進めてきた働き方改革の一環として、労働生産性の向上や長時間労働の是正を目標に、大手企業を中心に浸透してきていましたが、昨今の新型コロナウイルスの影響により、より多くの企業でこれまでの働き方を大幅に見直す事態となり、急速に導入が進んでいます。

◆利点も多いが、気になる部分も
 例えば、会社に出社せずに自宅や外勤先、サテライトオフィス等からインターネットを通じて、会社のサーバーにあるファイルにアクセスしたり、仕事の電話に対応したりできるテレワーク。
 営業で外回りの後、事務仕事をしに会社に戻る必要がなくなったり、育児や介護を担う労働者が在宅勤務をすることで通勤時間を有効に活用できたりするなど時間にゆとりを持たせた勤務を実現できます。
 その一方で、社員同士のコミュニケーション不足や、仕事と仕事以外のメリハリをつけにくい、長時間労働になりやすい、勤務時間管理や在席確認が難しい、情報漏洩のリスクが上がる等の、気になる部分もあります。
 時差出勤やフレックスタイム制においても、勤務開始や終了時刻を調整することで、私生活との両立がしやすくなるという利点があるのですが、一方で取引先や他部署との連携業務において時間の設定が難しいことや、急な会議や電話に応対できない等、社員が異なる時間に勤務することによるデメリットもあります。

◆企業側が注意すること
 大切なことは、制度に関する就業規則を整備し、適用する社員の範囲を明確に定め、勤務時間管理をしっかり行うことです。
 勤怠システムを活用するのも良いでしょう。過重労働や反対にルーズな勤務状況とならないよう、社員本人の時間管理意識も大切です。ワークライフバランスを意識した、働きやすい環境作りをしたいですね。

《コラム》レジ袋の有料化と医療費控除

◆令和2年7月1日からレジ袋の有料化義務
 2020年7月1日から、すべての小売業でレジ袋の有料化が義務化されました。医療機関を受診後に交付される、処方箋で薬を購入する際に、調剤薬局が薬を入れる袋も、対象となっています。

◆レジ袋は医療費控除の対象となるのか?
 調剤薬局では、薬代とレジ袋代が別々に会計されていますが、レジ袋代も医療費控除の対象となるのでしょうか?
(1)別々に会計されるということは、調剤薬とは別という認識であるから対象外
(2)調剤薬を入手するためのものであるから医療費控除の対象
(3)ケースバイケースで、対象となるものと対象外となるものに分かれる
(4)その他、のいずれでしょうか?

◆医療費控除とは
 処方箋による調剤薬の購入は、「治療又は療養に必要な医薬品の購入の対価」として所得税法で医療費控除の対象とされています。薬そのものは対象ですが、薬購入時のレジ袋も控除対象と言えるのでしょうか?
 医療費控除対象の区分基準として、医療を受けるに際して直接必要で医療機関等に支払うものは医療費とされています。また、タクシー代などの医療を受けるのに直接必要なもので第三者に支払う対価も、医療費に含めることができます。
 一方で、自己の都合による差額ベッド代や親族などに支払う付添料、さらに入院時の病院食以外の外食や出前は、自己都合による費用として対象外とされています。
 以上のことからすると、「医療品としての調剤薬の購入に際して調剤薬局に支払うレジ袋代」は、調剤薬を入手するために第三者である調剤薬局に直接支払う費用として医療費に含めてよいのではないかと考えられます。一方で、買い物袋(いわゆるエコバッグなど)を持参しないのは自己都合だから対象外とすべきという意見もあるかもしれません。しかしながら、買い物に際して、購入者側にまで買い物袋の持参義務が課されてはいない現状では、そこまで否定するには無理があるでしょう。
 よって、直接調剤薬のみを入れてもらうレジ袋は医療費控除対象、調剤薬以外の買い物もしていればどちらが主かで決める、調剤薬を入れるためのエコバッグの購入費用は対象外というように分かれるのではないかと考えられます。

 

【時事解説】コロナ禍で普及の兆し、スマートグラスとは その1

世の中には、ヒットが期待されたものの、普及に至らずくすぶっている商品が多くあります。ただ、このまま消えると思われていたものの中には、新型コロナウイルスの感染防止の影響で普及の兆しが見えたものもあります。その一つがスマートグラスと呼ばれるメガネ型端末です。これは、メガネの形をしたウェアラブル(身につける)ハイテク機器で、メガネと同様、頭部(眼の部分)に取り付けて使用します。

 一見、メガネに見えますが、身につけると、PCやスマホの画面と同じようにメガネのグラス部分に画像などが映し出されます。利用者は音声で操作し、ネットの閲覧のほか、アプリの起動やオンラインでの会議などができます。メガネ型なので、両手を自由に使いながら、離れた人と話ができる点が特徴です。

 スマートグラスが注目されるきっかけはコロナ禍にあります。昨今、感染拡大防止のため、テレワークが推奨されています。が、工場での作業はテレワークが難しいとされています。ところが、スマートグラスのオンライン会議の機能を利用すると、作業者は両手が自由に使えるので作業をしながら熟練工と会話ができます。熟練工は映像や手書き画像を作業者と共有しながら、音声通話機能を使って作業を支援できます。離れた場所で作業者の仕事を見ながら指示を出すこともできます。作業する当事者は現場で仕事をしなければなりませんが、熟練工など、指示を出す人はスマートグラスを利用することで、難しいとされていたテレワークが可能になります。自動車や製菓など、多くのメーカーがテレワークを導入したこともあり、スマートグラスの需要が高まる兆しが出ています。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

 

《コラム》私道の調査-相続した土地の売却-

Tさんは一人暮らししていた被相続人(母)の土地・建物を相続しました。建物は木造で築50年、公道から奥まったところに建築されており、公道から玄関まで通路としている私道を、近隣の地権者と一緒に利用していましたが、不動産会社に土地の売却を相談したところ、思いがけず現状のままでは売却できないことがわかりました。

◆接道義務を満たさないと建築不可
 建物の敷地は、原則として、建築基準法上の道路に2m以上接道しなければ、新築や増築できず、そのままでは売却できる土地になりません。
 Tさんの敷地は私道部分が路地状敷地で、出口側で公道と2m接していませんでした。

 敷地が接道義務を満たしているかは、まず法務局で公図、地積測量図を見て、土地の形状、隣地や道路との境界を確認します。
 次に、敷地が接する道路について、市区町村の役所で指定道路図を閲覧し、建物を建築できる敷地に該当するか、該当させるための条件を担当者に照会します。
 私道が位置指定道路や、セットバックを要する2項道路に該当しているか、私道部分が路地状敷地である場合は、出口側で接する道路の指定状況を確認します。
 Tさんは、隣接する土地を地権者と一緒に売却して2mを確保することとしました。

◆越境により建築できない場合も
 土地の売却前に、隣地との境界について確定測量を行います。隣地からの越境は、隣地地権者の立ち会いのもと、境界確認と合わせて越境の状況を双方で確認します。
 Tさんは、確定測量の結果、隣地建物の外壁やドア、換気用フードなどが私道部分に越境しており、まだ2mの接道義務を満たせていないことがわかりました。

◆地権者間で権利調整が必要
 越境が確認された場合、建物が建築できる土地になるよう、隣地地権者と話し合い越境解消について合意が必要です。
 Tさんの場合、買主の不動産会社が役所に出向き、建築できるための条件を相談し、役所が示した要件に合わせて隣地地権者と越境解消の工事手順と負担について話し合い、土地を売却できるようになりました。