【時事解説】第三者承継支援総合パッケージについて その1

経済産業省は、後継者不在の中小企業に対して、第三者による事業承継を総合的に支援するため、2019年12月に「第三者承継支援総合パッケージ」を策定しました。
 これは、後継者未定の中小企業について、これまでの対策では不十分な点があったため、黒字廃業の可能性のある中小企業の技術・雇用等の経営資源を次世代の意欲ある経営者に承継・集約することを目的に取りまとめられたものです。
 とくに親族外の第三者による承継を推進するうえで、中小企業のM&Aの件数が、潜在的な後継者不在の中小企業の数と比較して不十分となっており、その背景として以下の3点があげられます。

 一つ目の課題として、マッチング前の段階において、中小M&A市場の売り手と買い手の割合が1対9程度となっているなど売り案件が圧倒的に少数である点があげられます。経営者にとって第三者承継が身近でなく、他者へ「売る」ことへの抵抗感が根強いことや、仲介手数料や仲介業者などのM&Aに関する情報が不十分なため、売りを躊躇することが要因として考えられます。

 二つ目の課題として、マッチング時の段階において、事業引継ぎ支援センターの成約率が約8%にとどまっているなどマッチングの成立が困難な点があげられます。個人保証の存在により承継を拒否したり、従業員も含め適切な相手が見つからなかったりすることが要因として考えられます。

 三つ目の課題として、マッチング後の段階において、承継後の経営統合が困難な点があげられます。承継後の経営統合や事業戦略の再構築にコストを要することを懸念して、承継を躊躇することが要因としてあげられます。

 これらの課題に対処するため、第三者承継支援総合パッケージでは政策の抜本強化が図られているのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》キャッシュレス消費者還元事業からマイナポイント事業へ

昨年10月から行われていたキャッシュレス消費者還元事業は、本年6月に終了しましたが、本年9月からは、マイナポイント事業によるマイナポイントの付与が始まります。

◆マイナポイント事業とは
 マイナポイント事業は、マイナポイントの活用により、消費の活性化、マイナンバーカードの普及促進、官民キャッシュレス決済基盤の構築を目的として行う国の事業です。国家予算2,500億円が投じられているそうです。期間は本年9月から来年3月までの7か月間です。
 本年9月以降に行われるICカード(電子マネー)・QRコード決済・クレジットカードなどのキャッシュレス決済サービスがこの制度の対象となります。マイナポイントは決済サービスの利用(チャージまたは購入)額に応じて付与されます。プレミアム率はチャージ額または購入額の25%で、上限は5,000円分となります。

◆マイナポイント取得の事前準備
 マイナポイントを取得するためには、以下の事前準備が必要となります。
①マイナンバーカードの取得
 まず、マイナンバーカードを保有していることが前提となります。
②マイナポイントの予約
 マイナンバーカードが入手できたら、次にマイナポイントの予約手続を行うと、マイキーIDが発行されます。自身のスマートフォン、パソコンで手続するには専用のアプリ・ソフトのダウンロードが必要です。パソコンやスマホがない方は、全国各地に設置してある約9万箇所の支援端末で手続ができます。
③マイナポイントの申込み
 続いて申込み手続を行い、利用しようとするキャッシュレス決済のIDやセキュリティーコードを入力します。この手続も専用アプリや支援端末で行います。

◆加盟店側の手続は不要
 キャッシュレス消費者還元事業では加盟店側(小売店、販売店等)に登録手続が必要でしたが、マイナポイント事業では加盟店に登録手続等は不要です。

 

(前編)定年退職者への海外慰安旅行の供与は原則、非課税!

社内慰安旅行の費用は、一定要件を満たしていれば、企業が負担しても、従業員の経済的利益として給与課税されることはありませんが、企業のなかには定年退職者に対し、退職金のほかに海外慰安旅行をプレゼントして永年の会社に対する貢献に報いるところもあるようです。

 税務当局では、この定年退職者に対する海外慰安旅行の課税関係について、定年退職者に対する海外慰安旅行の提供については、それが永年勤続者表彰制度と同様の内容に基づくものであり、社会通念上相当と認められるものについては非課税として取り扱われ、それを上回るものについては退職所得として課税するとしております。

 永年勤続者に対する旅行や観劇の招待、記念品などは、対象者の勤続年数がおおむね10年以上などの一定要件を満たせば非課税となります。

 永年勤続者表彰制度に基づき永年勤続者を旅行に招待した場合のその永年勤続者が受ける経済的利益については、その永年勤続者の地位や勤続期間などに照らし、社会通念上相当と認められれば課税されません。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和2年7月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》居住用特例重複適用

◆会計検査院が実態報告
 会計検査院の検査報告によると、新居を購入し住宅ローン控除を受けている人で、旧居に居住しなくなってから3年目に売却して居住用資産譲渡の3000万円特別控除の特例の適用を受けていた人が平成28年、29年の2年間で37人いたとしています。措置法特典の重複適用の指摘です。そして、この37人の重複減税額の合計が5011万円であった、としています。

◆立法作業の疎漏の指摘か
 会計検査院は、法の想定外の事態として、重複適用になってしまっている、と把握しています。これが本当に、元々法の予定していなかった措置法特典の重複適用なのか、そうでないかは不明です。
 例えば、居住用財産譲渡の3000万円控除と10%軽減税率は、共に措置法規定ですが、重複適用排除はされてないので、重複適用排除の原理があるわけではありません。
 会計検査院の言うようにあるべきでない重複適用なのだとしたら、それは、立法作業における法律の規定が疎漏だったということになります。

◆疎漏の内容は期間のズレ
 法律の規定が疎漏だったとした場合のその内容は、居住用財産の譲渡所得からの3000万円特別控除の規定の適用が、居住の用に供さなくなってから3年を経過する日の年末までの間に譲渡した場合に適用されることになっているのに対し、住宅ローン控除の適用の規定は、新居に入居した年、その前年又は前々年、また、翌年又は翌々年中に、旧居につき居住用財産の特例の適用を受けていないこと、となっていて、両者の期間にズレがあることです。
 3000万円特別控除の規定は居住終了から足かけ4年、住宅ローン控除の適用の規定は新居に異動してから足かけ3年、と異なっていたことです。

◆今年の税制改正で対応
 会計検査院の指摘を受けて、この期間のズレ問題は、今年の税制改正の一項目になり、住宅ローン控除の規定の中にある「翌年又は翌々年中」という文言が「翌年以後3年以内」という文言に改正され、この疎漏だったかもしれない点は消滅しました。
 なお、同じ条文に、親の居住用財産を相続した後に空き家譲渡した時の3000万円特別控除がありますが、これは特に制限されていません。

《コラム》「損益分岐分析」は簡単

◆損益分岐分析とは
 日商簿記検定の工業簿記・原価計算の出題範囲にも含まれていますが、比較的簡単な財務分析の手法に、損益分岐点を計算して営業計画や予算の策定に生かす「損益分岐分析」という手法があります。損益分岐点とは利益がゼロになる時の売上高を指し、この時の売上高を損益分岐点売上高といいます。この売上高を基準にするとより実情に即した営業計画や予算を策定することができます。

◆ポイントは変動費・固定費の分解
 この手法では、まず一定期間の損益計算書の費用項目を売上高に対して比例的に変動するか、定額であるかによって変動費と固定費に区分します。例えば商品仕入は変動費ですが、地代家賃や人件費や減価償却費は固定費です。区分した変動費と固定費を合計し、売上高から変動費を差し引いた利益(限界利益=粗利益といいます)でその期間の固定費を賄うには売上高はどれだけ必要かを計算します。粗利益で固定費をトントンで賄うことができる時すなわち粗利益=固定費の時の売上高を損益分岐点売上高と言います。

◆計算してみましょう
 売上×粗利益率(粗利益)=固定費となります。この算式で売上を求めると、売上=固定費÷粗利益率となります。これが損益分岐点売上です。
 更に損益分岐点売上を超えた売上の粗利益を計算すると以下となります。
(売上-損益分岐点売上)×粗利益率=(売上-固定費÷粗利益率)×粗利益率=売上×粗利益率-固定費=粗利益-固定費=利益

 損益分岐点売上が分れば、超えた売上の粗利益が利益であるとすぐに見当が付きます。また逆も同じで、損益分岐点に足りない売上の粗利益が赤字です。

【時事解説】大学生の就職意識と地元企業の課題解決 その1

中小企業にとって大学生をはじめとする若者の人材確保が主要な経営課題となる中、大学生との接点をいかにしてもつかが重要なカギとなります。こうした中、大学の近くに立地する地元企業が自社の経営課題を大学生に解決してもらう実践型のインターンシップを導入することで大学生との接点をもつ取組みが注目されています。

 株式会社マイナビが2021年3月卒業見込みの大学3年生等に実施した「マイナビ2021年卒大学生就職意識調査」によると、2021年卒大学生における大手企業志向(「絶対に大手企業がよい」と「自分のやりたい仕事ができるのであれば大手企業がよい」の合計)の割合は55.1%となっており、2001年卒以降21年の間で最も高い割合を示しています。

 一方で、同社が18歳~19歳の大学1、2年生を対象に2019年11月に実施した「マイナビ大学低学年のキャリア意識調査」によると、「社会人になるまでに積極的に受けてみたい(経験したい)もの」のうち、「興味のある職種・業界でのインターンシップ」と回答した割合が、59.7%と高い割合を占めています。また、同調査において「インターンシップに参加したことがある」と回答した大学低学年次生の割合は26.8%と約4人に1人が参加済みと回答するとともに、今後のインターンシップへの参加意向については、78.3%と約8割が「参加したい」と回答しています。

 以上のことから、大手企業志向が高まりを見せる環境下において、地元中小企業が大学生の接点をもつためには、就職を意識する大学3年次からではなく、大学低学年次の大学1~2年を対象に実践型のインターンシップを導入し、早期の段階から大学生との接点をもつことが求められるのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》固定資産税・都市計画税の減免制度

◆固定資産税等の減免制度の創設
 固定資産税は事業用の家屋や設備に対して課税されています。この税金は、所有する家屋や設備の評価額に対して課税されるので、たとえ業績が悪化し赤字となっても課税されることとなり、家屋や設備を多く保有する事業では金額も大きくなってきます。そこで、新型コロナウイルス感染症の影響で事業収入が大幅に減少している中小企業者・小規模事業者の納税負担を軽減するために、固定資産税・都市計画税を減免する制度が創設されました。

◆適用対象者
 中小事業者(法人、個人)を対象とし、令和2年2月~10月の任意に継続する3月の期間の事業収入が
①前年同期比30%~50%未満減少の場合:1/2軽減
②前年同期比50%以上減少の場合:全額免除

◆軽減対象
①設備等の償却資産及び事業用家屋に対する固定資産税(通常、取得額または評価額の1.4%)
②事業用家屋に対する都市計画税(通常、評価額の0.3%)
※事業用であっても土地は軽減の対象となりません。

◆申請方法
 令和3年1月31日までに、『認定経営革新等支援機関等』の確認を受けて固定資産税を納付する市町村に必要書類とともに軽減を申請します。
 なお、市町村による申請受付開始は令和3年1月からを予定しています。今のうちに下記の件を準備してください。
・令和2年2月~10月と前年同期の事業収入を確認し証明できる会計帳簿等
・法人の場合は令和2年度の課税明細書、償却資産税の申告書控え、固定資産明細書、個人事業者の場合は、法人で用意する資料以外に、事業専用割合がわかる資料を用意してください。
 申請書式が公表されたら、各種誓約書等を作成する必要もありますので、ご注意ください。

 

《コラム》令和2年4月20閣議決定 新型コロナ緊急経済対策(税制措置)

◆新型コロナの緊急経済対策が閣議決定
 令和2年4月の閣議決定において、コロナショックが社会経済に与える影響が甚大であることから、緊急対策として税制措置が講じられることになりました。

1.納税猶予の特例(すべての国税)
 イベントの自粛要請や入国制限措置など、感染防止措置により多くの事業者の収入が急減している状況を踏まえ、すべての国税(印紙税を除く)につき1年間納税を猶予する特例が設けられました(適用:令和2年2月1日~令和3年1月31日納期到来分)。

2.欠損金の繰戻還付の特例(法人税)
 中小企業に認められている青色欠損金の繰戻し還付について、中堅企業(資本金1億円超10億円以下の法人)にも適用可能となりました(適用:令和2年2月1日~令和4年1月31日終了事業年度に生じた欠損金)。

3.中小企業設備投資税制(法人・所得税)
 中小企業設備投資税制の対象となる特定経営力向上設備等の範囲に、テレワーク等のための一定の設備投資が追加されました(適用:令和3年3月31日まで)。

4.寄附金控除の特例(所得税)
 政府の自粛要請を踏まえて中止された文化芸術・スポーツイベントの入場料について、観客が払戻しを放棄した場合には、その放棄した金額が寄附金控除(所得控除・税額控除)の対象とされました(適用:令和2年2月1日~令和3年1月31日に国内で開催する予定で中止されたイベント)。

5.住宅ローン控除要件弾力化(所得税)
 新型コロナの影響により、住宅建設が遅延した場合に、その住宅に令和2年末までに入居できなかったときでも、一定のケースには、控除期間が13年に延長された住宅ローン控除が適用されることとなりました。

6.課税事業者選択届出書の特例(消費税)
 新型コロナの影響により、事業者の一定期間(1か月以上)の売上げが著しく減少した場合、課税期間開始後における課税選択の申請を認めることとしました(2年間の継続適用ルールに関係なく、翌課税期間の取り止めも可能となりました)。

《コラム》選択肢の増えている年金

◆公的年金の制度は拡充されていて
 日本の年金制度は、20歳以上の全国民が加入する国民年金(基礎年金)に加え、民間のサラリーマン等が加入する厚生年金保険、そして民間企業が実施する厚生年金基金や確定給付企業年金等の企業年金から構成されています。また、自営業者等向けとして、任意で加入できる国民年金基金があります。これらの年金制度は確定給付年金制度と呼ばれ、国や企業が将来の年金の支払い額を約束しているのが特徴です。

◆給付額に保証のない公的年金
 これに加えて、確定拠出年金制度が2001年10月から導入されています。加入者自身が資産を運用するものとし、将来支給される年金額がそれぞれの運用成績次第で変わる年金制度です。確定拠出年金には、個人拠出型と企業拠出型の2種類があります。個人の拠出額は所得税の小規模企業共済等掛金控除の対象となり、企業の拠出額は法定福利費という企業経費になり、運用益は課税留保されます。

◆運用能力のある人などいない
 2016年9月、個人拠出型に「iDeCo(イデコ)」という愛称が公的に決定されています。
 iDeCoを始める際は、金融機関に申し込むことになります。指定できる運用商品は金融機関によって異なりますが、元本確保型と投資信託型に大きく分かれます。
 元本確保型は定期預金や保険商品などで、所定の利息が上乗せされますが、口座管理手数料が年2000円程度かかるので、実質は元本割れになります。投資信託型は、投資の専門家が株や債券などに運用し、運用結果が投資額に応じて分配されるタイプの商品です。運用結果によっては、元本割れの可能性があります。

◆加入可能期間延長と再チェック
 なお、iDeCoと国民年金基金は併用可能で、掛け金の上限は両方合わせて年81万6000円です。確定給付で年金の終身受取りの選択肢のある国民年金基金への加入可能性は是非チェックすべきところです。
 2020年の年金改革法で、常用雇用者数5人以上でも被用者保険の強制適用事業所から除外されていた税理士事務所等の士業事務所が、除外されないことになります。同じく、企業年金・個人年金制度等の見直しをする確定拠出年金法の改正もあり、適用可能者の範囲や加入可能期間の拡大がなされ、税制も併せて改正されています。

《コラム》交際費課税の特例の微改正

◆交際費特例はマイナーチェンジ
 令和2年度税制改正で、交際費の課税の特例については若干ながら手が加えられました。交際費についての特例は平成26年に現行の形である、
①支出する交際費等の額のうち接待飲食費(1人当たり5,000円を超える分)の額の50%相当額は損金算入
②資本金又は出資金の額が1億円以下の中小企業は支出する交際費の額のうち年800万円までは損金算入
※中小企業はどちらかを選択適用
となりましたが、これに加えて「①について、資本金の額等が100億円を超える法人を除外する」とした上で、令和2年3月31日までだった適用期限を2年延長しました。中小企業には関係の無い話ですが……。

◆5,000円以下の飲食の取扱いは継続注意
 従来通り、接待飲食費については1人当たり5,000円以下の飲食であれば税務上交際費に含めず、全額が損金にできます。ただし、法人の役員・従業員・親族に対する接待等のために支出するものは、5,000円以下であっても交際費に該当します。
 また、年月日・参加者・人数・金額と場所等について帳簿書類に記載が必要ですのでご注意ください。このあたりは反面調査も含めて厳しくなっております。

◆この改正で110億円増収見込み
 財務省発行の令和2年税制改正パンフレットによると、この特例の変更で初年度は110億円の増収(国税関係のみ)を見込んでいます。東証1部の企業だけみても、資本金が100億円を超えている企業は800社超あります。確かにこの企業の分が不算入となれば、それなりの規模にはなりそうではあります。
 ただ、800万円の定額損金算入規定延長は改正に当たり、必要性として「中小企業の交際費支出は飲食業や小売業等の需要喚起に資するものである」とされています。現状コロナウイルスで打撃を受けている飲食業に関しては、自粛が明けた後でもこの改正を受け、大企業の接待が減ることが想像できます。景気回復を目指すのであれば、このあたりに手を入れてもいいのではないでしょうか。