【時事解説】余剰資金の使い道から考える会社観の違い その2

しかし、我が国では会社を株主のものと単純には割り切れません。会社は確かに株主が作った組織ですが、その後の運営は役員や従業員が主体となります。会社が上げた利益は、従業員が力を合わせ皆で稼いだものと考えますから、株主というより従業員のために使うべきではないかという思想も捨て切れません。

 欧米的には、株式会社はある特定の事業を行い、利益をあげることを目的に作ったものですから、その事業が時流に合わなくなれば、新陳代謝があるのはやむを得ないと考えます。従業員もそれに応じて職場を変わるものとして、雇用の流動化に慣れています。とすれば、会社の存続のために自己資本比率を闇雲に高くする必要はなく、余剰資金の株主分配も当然と考えます。

 しかし、日本の従業員にとっては、会社は単なる給与をもらう場所というに止まらず、精神的なよりどころといった側面も併せ持ちます。また、雇用の流動化も進んでおらず、普通の従業員は会社を変えることは相当な苦痛を伴いますから、どんな形であれ、会社にはできるだけ存続してもらいたいと思っています。社会のセーフティネットの一部を会社が担っているという見方もできます。とすれば、会社存続の社会的要請が強くなり、いたずらな株主還元の増加に慎重にならざるを得ません。

 大手上場企業ではグローバルスタンダードで株主還元が重視される傾向にありますが、その考え方が一般的な上場企業にまでに広がっているとはいえません。今後、成熟経済に入り、再投資は益々難しくなりますから、余剰資金の使い方は上場企業にとり大きな課題であり続けると思います。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》特例措置は2021年2月末まで雇用調整助成金

◆雇用調整助成金特例措置終了予定
 新型コロナウイルス感染症に係る雇用調整助成金の特例措置として、令和3年2月末まで日額上限額の引き上げ等が行われていますが、3月以降段階的に縮小し、5~6月にリーマンショック時並みの特例とする方針が12月8日に総合経済対策で表明されています。そして令和3年1月末及び3月末時点の感染状況や雇用情勢が大きく悪化している場合、感染が拡大している地域、特に業況が厳しい企業について特例を設ける等、柔軟に対応するとされています。

◆3月以降はどのようになる?
 雇用調整助成金の特例措置がなくなるとどのようになるでしょうか? リーマンショック時の主な特例措置を参考に出しますと次のようになっていました。
①助成率:中小企業4/5、大企業2/3(コロナ特例措置では雇用を維持している場合、中小企業10/10、大企業3/4)
②生産指標要件:最近3か月の生産量等が直前3か月又は前年同期と比べて原則5%以上減少(コロナ特例措置では1か月5%以上減少)
③対象被保険者:雇用保険被保険者6か月未満の者も助成(コロナ特例では緊急雇用安定助成金により被保険者でない労働者も助成)
④支給限度日数:3年300日(コロナ特例措置では令和2年4月1日から令和3年2月末までの期間+1年100日、3年150日)

◆在籍型出向による雇用維持支援にシフト
 今後は産業雇用安定助成金(仮称)を創設し出向元と出向先の双方を支援、出向元には雇用調整助成金、出向先には労働移動支援助成金による受け入れ企業への支援の方向になるでしょう。
 また、人手不足企業にはコロナ禍による離職者等で就業経験のない職業に就くことを希望する求職者を一定期間試行雇用する事業主に対する賃金助成制度(トライアル雇用助成金)を創設、紹介予定派遣を通じた正社員化(キャリアアップ助成金)の促進なども予定されています。
 雇用調整助成金の特例措置を使っている企業は期間延長が終了したときの変更の対応を検討する必要があるでしょう。

《コラム》地積規模大の宅地の評価

◆広大地補正率から規模格差補正率に
 「広大地の評価」から「地積規模の大きな宅地の評価」に変わり、2年以上が経過しました。変更時は、大きな話題となり、専門誌にも何度も採り上げられましたが、再度、復習してみたいと思います。

◆制度の趣旨は開発分譲だけではない
 大規模な土地を戸建住宅用地として開発分譲する場合に、主に面積が大きいことにより、道路や公園などの公共的用地の負担が生じるため、路線価に面積を乗ずるだけでは、過大評価になってしまいます。
 そういう不合理評価の是正も規模格差補正率の趣旨の中にありますが、開発行為は必ずしも前提になってはいません。

◆マンション1室所有でも適用可
 マンションやオフィスビルといった区分所有建物の1室、1区画を所有している場合においても、そのマンション等の敷地全体で地積要件ほかを判定して要件充足なら適用になります。
 そのマンション1室に係る敷地が小規模宅地特例の「特定居住用宅地等」に該当すれば、規模格差補正率の要件はマンションの敷地全体で判定し、小規模宅地特例の限度面積は所有マンション1室に対する敷地面積で判定します。

◆倍率地域、市街地農地・山林・原野にも
 「地積規模の大きな宅地」の要件に該当するのであれば、倍率方式により評価する地域、市街化区域内に存する市街地農地、市街地山林、市街地原野などであっても、規模格差補正率の適用はあります。
 これらの場合の計算としては、近傍の固定資産税路線価㎡単価に倍率を乗じ、奥行価格補正率、規模格差補正率等を面積に乗じて算出します。この金額が、倍率評価額よりも低い金額の場合に適用となります。

◆規模格差補正率の適用要件
 土地面積が1000㎡(三大都市圏の場合500㎡)以上で、対象外地域(市街化調整区域・工業専用地域・大規模工場用地)ではなく、指定容積率が400%(東京都の特別区においては300%)未満の宅地であることが、適用要件です。
 規模格差補正率は、路線価に、奥行価格補正率や不整形地補正率などの各種画地補正率を乗じて求めた金額に乗じますが、面積が増えるに応じて80%から64%の評価額に順次逓減していくように率が調整されています。

《コラム》令和2年度補正予算の超目玉!?(仮)事業再構築補助金

◆事業目的・概要
 新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、当面の需要や売上の回復が期待し難い中、ポストコロナ・ウィズコロナの時代の経済社会の変化に対応するために中小企業等の事業再構築を支援することで、日本経済の構造転換を促すことが重要です。そのため、新規事業分野への進出等の新分野展開、業態転換、事業・業種転換等の取組や、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援します。
 また、事業再構築を通じて中小企業等が事業規模を拡大し中堅企業に成長することや、海外展開を強化し市場の新規開拓を行うことが特に重要であることから、本事業ではこれらを志向する企業をより一層強力に支援します。本事業では、中小企業等と認定支援機関や金融機関が共同で事業計画を策定し、両者が連携し一体となって取り組む事業再構築を支援します。

◆成果目標
 事業終了後3~5年で、付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上の増加を目指します。

◆補助対象要件
①申請前の直近6カ月間のうち、売上高が低い3カ月の合計売上高が、コロナ以前の同3カ月の合計売上高と比較して10%以上減少している中小企業等。
②自社の強みや経営資源(ヒト/モノ等)を活かしつつ、経産省が示す「事業再構築指針」に沿った事業計画を認定支援機関等と策定した中小企業等。

◆補助金額・補助率
中小企業(通常枠)
 100万円以上6,000万円以下 2/3
中小企業(卒業枠)
 6,000万円超~1億円以下 2/3
中堅企業(通常枠)
 100万円以上8,000万円以下 1/2(4,000万円超は1/3)
※令和3年の初めには正式に決定します。
 アフターコロナを見据えた際に、既存事業では厳しいと感じている経営者様は是非ともご検討ください。

(前編)持続化給付金の給付対象と申請期限に注意!

 持続化給付金とは、新型コロナウイルス感染症拡大により、営業自粛等で特に大きな影響を受けている中小企業者等に対して、事業全般に広く使える給付金をいい、申請期間は2020年5月1日から2021年1月15日となりますので、給付を受けようと検討される方は期限にもご注意ください。

 個人事業者等(フリーランスを含む)で、主たる収入を雑所得又は給与所得で確定申告をしている場合でも、持続化給付金の給付対象になり、一定の条件を満たすことにより、中小法人や事業所得のある個人事業者等のように、雑所得や給与所得の場合でも給付を受けることができますので、該当されます方はご確認ください。

 具体的には、2019年以前から、雇用契約によらず、業務委託契約等に基づく事業活動から収入を得ている事業者で、これらの収入を確定申告における主たる収入とし、雑所得又は給与所得で収入計上していて、今後も事業を継続する意思のある事業者が対象になります。
 例えば、学習塾の講師、プログラマーなどが該当し、「主たる収入」にあたるかは、2019年分の確定申告書において、以下2つの要件を満たす必要があります。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和2年12月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

 

《コラム》テナント等の場合の令和3年度固定資産税減免措置

◆令和3年度固定資産税の減免措置
 新型コロナウイルス感染症の影響により、令和2年2~10月の任意の連続する3か月の事業に係る収入が前年同期比30%以上50%未満減少した場合は、令和3年度の固定資産税・都市計画税が1/2に軽減、50%以上減少した場合は全額免除されます。
 ただし、減免される対象は事業用家屋及び設備等の償却資産に対する固定資産税と、事業用家屋に対する都市計画税に限定されています。土地は対象ではないのでご注意ください。

◆賃料を猶予した場合のカウントに注意
 この減免措置は、不動産所有者がテナント等の賃料支払いを減免した場合や、書面等により一定期間賃料支払いを猶予した場合にも収入の減少として扱われます。
 ただし、テナント等の賃料支払いを猶予したことによる収入減で、この措置を受けようとする場合は、3か月以上の賃料を、それぞれの賃料の支払い期限から3か月以上猶予していることが条件となります。
 例えば、3~5月分の賃料を猶予した場合に、猶予された分の賃料は、3月分は6月以降に、4月分は7月以降に、5月分は8月以降に支払われる必要があるということです。
 3~5月の賃料の猶予を6月に一括払いするとか、3月の賃料を4月に払う等、1か月のみのスライドをする等の措置では、収入の減少にカウントされません。

◆固定資産税減免以外の措置
 法人・個人が行った賃料の減額が、
①取引先が新型コロナウイルス感染症関連で事業継続が困難・困難になりそうなとき
②賃料の減額が取引先の復旧支援を目的としていて、それが書面で確認できるとき
③取引先等に被害が生じた後、営業再開するための復旧過程にある時期に減額されたとき
のいずれかの条件を満たしていれば、その減額分については寄附金には該当せず、税務上の損金として計上することが可能です。
 また、支援策はオーナーだけでなく、物件を借りている事業者等へは家賃支援給付金制度があります。

輸入品の脱税、総額の8割が金密輸

輸入品に対する関税や消費税に関する犯則事件の、脱税額の8割が金地金の密輸で占められていることが分かりました。昨年から罰則が強化されたことで金密輸は減少傾向にありますが、依然として密輸による闇ビジネスの主役である状況に変わりはないようです。

 財務省の調査によると、昨年7月~今年6月の1年間の処分(検察官への告発または税関長による通告処分)は、告発9件(前年12件)、通告262件(同524件)の計271件。全体の件数としては前年から49%減少しました。脱税額は、総額で4億5180万円でした。
 特筆すべきは処分した事件のうち金地金の密輸事件が199件、脱税額は約3億6千万円と、処分件数では約7割、脱税額では約8割を占めている点です。

 金を国内に持ち込む際には消費税分を納めなければいけませんが、密輸すれば税関を通らないため、持ち込んだ金を国内で売却すれば消費税分がまるまる儲けになります。近年、金密輸を利用した脱税は著しい増加傾向にありましたが、コロナ禍による旅客の急減に加えて、昨年から罰金が引き上げられるなど厳罰化されたことなどで件数は減少に転じています。それでも全体の8割を占める現状からは、金密輸による脱税の旨味がどれほど大きいものかを物語っていると言えそうです。

《コラム》勘定合って銭足らず

◆勘定合って銭足らずとは
 会社の事業の儲けは基本的に利益です。しかし利益が出たからといってその分お金が増えているかというと、そうでもない場合があります。というよりもそうでもない場合の方が多いかと思います。
 そういった状況が「勘定合って銭足らず」です。原因は多岐にわたりますが、設備投資等大きな投資をしたような場合は、原因がはっきりしているので、多くの場合経営者は自覚的で特に問題にはなりません。原因が分からない場合が問題です。

◆銭足らずの比較的分かりやすい原因
 ①在庫が異常に増えている場合
 ②売掛金や受取手形等の売掛債権が異常に増加している場合
 ③買掛金や支払手形等の買掛債務が異常に減少している場合
 このような場合、要は儲かった銭が在庫や債権債務に姿を変えているということです。決算書を注意して見ればある程度分かります。経営者としては、当然の注意義務です。また経験の長い経営者なら「おや?」と気が付くものです。

◆銭足らずの分かりにくい原因
 慢性的に銭足らずの場合があります。どういう場合かというと、借金を返済している場合です。設備投資等大型の投資を借入金でまかない、その返済をしているような場合は、往々にして「勘定合って銭足らず」となっている場合があります。
 要は借金の返済をするには儲けが少なすぎるという場合です。

◆利益が十分か再確認してみましょう
 税引き後利益と減価償却費の合計から年間の返済金額を引いてみてください。また配当などをしている場合は、その分もマイナスしてください。結果がマイナスであればその金額を65%で割り返した金額分利益が不足しています。毎年銭足らずとなります。逆にプラスであればその分資金は増えているはずです。
 税引後利益が分からない場合、安全を考えて利益の65%としてみてください。

(後編)2019年度査察白書:査察の告発事案は100%有罪!

(前編からのつづき)

 ちなみに、刑罰は10年以下の懲役に、罰金は1,000万円(脱税額が1,000万円を超える場合は、脱税相当額)以下となっております。
 いわゆるマルサといわれる査察は、大口・悪質な脱税をしている疑いのある者に対し、犯罪捜査に準じた方法で行われる特別な調査をいいます。
 そして、調査にあたる国税査察官には、裁判官の発する許可状を受けて事務所などの捜査や帳簿などの証拠物件を差し押さえたりする強制捜査を行う権限が与えられます。

 この査察調査は、単に免れた税金や重加算税などを納めさせるだけでなく、検察への告発を通じて刑罰を科すことを目的としております。
 1980年に初めて実刑判決が出されて以降は、毎年実刑判決が言い渡されております。
 すでに着手した査察事案について、同年度中に告発の可否を最終的に判断(処理)した件数は165件で、このうち検察庁に告発した件数は70.3%(告発率)にあたる116件あったことからも、査察の対象になると、約7割程度が実刑判決を含む刑事罰の対象となりました。

(注意)
 上記の記載内容は、令和2年9月7日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)2019年度査察白書:査察の告発事案は100%有罪!

2019年度査察白書によりますと、2019年度中に一審判決が言い渡された124件の100%に有罪判決が出され、うち5人に対し執行猶予がつかない実刑判決が言い渡されました。
 実刑判決で最も重いものは、査察事件単独に係るものが懲役10ヵ月、他の犯罪と併合されたものが懲役9年でした。

 事例では、A社はプロセッサ開発・製造・販売等を行うもの会社ですが、架空の外注費を計上するなどの方法により所得を隠し、多額の法人税及び消費税を免れておりました。
 同社の元代表者Bは、詐欺罪との併合事件として、法人税法、消費税法及び地方税法違反の罪で、懲役5年の実刑判決を受けております。
 一審判決があった124件の1件当たり平均の犯則税額は4,700万円、懲役月数は15.5ヵ月、罰金額は1,200万円となりました。
 査察の対象選定は、脱税額1億円が目安といわれ、また、脱税額や悪質度合いの大きさが実刑判決につながります。
 査察で告発されますと、社会的信用を失うだけでなく、巨額な罰金刑や実刑判決の可能性も十分にあります。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和2年9月7日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。