寡夫控除を未婚も対象に

離婚や死別によってひとり親となった人に所得税や住民税の軽減を認める「寡婦(寡夫)控除」について、未婚者も対象にするよう厚労省が要望する方針を固めました。2019年度税制改正への要望書に盛り込みます。

 寡婦控除は、離婚や死別によって配偶者を亡くした上で、子どもを扶養親族として養っているか、年収500万円以下のどちらかの条件を満たす人を対象にしています。どちらかの条件を満たすと27万円、両方を満たすと35万円が所得から控除されます。また寡夫控除では、両方の条件を満たした時に27万円の控除ができます。しかし、どちらも民法上の婚姻関係があったケースに限られ、未婚のいわゆるシングルマザーなどについては税優遇を受けられないことから、不公平との声が上がっていました。
 厚労省はこうした声を受け、年末にまとめる19年度税制改正に向けた要望に、寡婦(寡夫)控除の非婚者への対象拡大を盛り込みます。

 すでに8月末には保育園や幼稚園の保育料について、未婚のひとり親についても寡婦(寡夫)控除が適用されるとみなして減免する措置が閣議決定され、9月からスタートしています。寡婦(寡夫)控除の見直しは後追いとなりますが、改正はほぼ決定的と言えそうです。

 また厚労省は、児童養護施設などを出て進学・就職する若者を税制面で支援することも併せて要望する見通し。現在では生活費や家賃の貸付金は5年間働き続ければ免除されますが、一部は免除益として所得税が課されています。非課税措置を講じることで、若者の自立を促す狙いがあります。
<情報提供:エヌピー通信社>

《コラム》酒税の税率構造の見直しと日本ワインの表示ルール開始

◆ビール系飲料とその他の発泡性酒類の税率
 ビールメーカーが税率格差を意識して新ジャンルの開発に力を注ぐ状況は、国際競争力の促進の足かせになるという指摘やクラフトビールへの関心の高まりなどの状況があり、平成29年の税制改正により税率格差の解消が図られています。具体的には、ビール系飲料は一律155,000円(1キロリットル当たり)に、その他の発泡性酒類は対象範囲をアルコール度数11度未満(改正前・10度未満)に拡大した上で100,000円(1キロリットル当たり)とされます。

◆清酒の減税とワインの増税
 醸造酒類について、平成29年の税制改正で基本税率が100,000円(1キロリットル当たり)となります。しかし、この改正に伴い、清酒と果実酒(ワイン)の特例税率は廃止されて基本税率に一本化されますので、清酒は1キロリットル当たり20,000円の減税、果実酒(ワイン)は20,000円の増税となります。

◆税率改正の実施時期
 上記の税率改正の施行時期は平成32年10月1日とされています。しかし、急激な変更は消費者への影響が大きいことから、平成32年10月1日から段階的に税率変更が実施されることとなっています。

◆「日本ワイン」の表示ルール開始
 ここ十数年で酒類の分類が大きく見直されましたし、税率変更だけでなく、消費者ニーズへの対応など、酒類業界は今、大きな転換期を迎えているように思います。
 その1つとして、平成30年10月30日から開始される、「日本ワイン」の表示ルールがあります。
 これまで国内にはワインに関する公的な表示ルールが存在しませんでした。そのため、輸入した濃縮ぶどう果汁などを原料としたワインも「国産ワイン」と呼ばれていましたが、表示ルールでは、国産ぶどうのみを原料として国内で製造したワインを「日本ワイン」として表示することができるようになります。また、「日本ワイン」に限っては表示ができるだけでなく、一定のルールに従って、①地名、②ぶどうの品種、③ぶどうの収穫年をラベルに表示することもできるようになります。

《コラム》許認可と社会保険

◆建設業者への加入促進対策とその結果
 建設業者に対する社会保険の加入促進対策は数年前から進められていましたが、今後はより一層強化されます。
 さかのぼること平成24年、国土交通省は、「平成29年までの5年計画で、建設業許可業者の社会保険加入率100%」を目標に掲げました。社会保険の加入義務化で労働環境の改善を促し、若年層の人材確保につなげることがねらいです。
 具体的には、公共工事に入札する際に受審しなければならない「経営事項審査」で、未加入事業者に対する減点を拡大したこと、新規許可申請や更新の際には、保険加入状況を確認・指導し、指導に従わない企業を保険担当部局に通報することで、加入の促進を図ってきました。

◆許可そのものが認められない可能性も
 保険担当部局からの指導が繰り返し行われることで、結果的には事業者の多くが加入する流れになっていたのですが、これまでの運用では新規許可や更新の申請そのものが認められないということはありませんでした。しかし、今年に入り国土交通省が固めた方針では、社会保険に加入していない建設業者に対しては建設業の許可・更新そのものを認めない仕組みを検討するとして、さらに社会保険加入を徹底、定着させるようです。

◆加入促進対策は他の許認可でも
 社会保険については、ここ数年にわたり厚生労働省による加入適用が進められてきました。貨物自動車運送業者や旅客自動者運送業者に対しても、処理方針で許可の審査項目として社会保険への加入が定められています。
 こうした各許可行政庁を媒体とする加入強化対策は他にも広がりつつあります。厚生労働省では、同様の取り組みを理・美容業、飲食業などにも適用する方針を示しており、既に各自治体に対して、新規営業許可申請時に社会保険の加入状況について確認するよう協力依頼を行っています。許認可と社会保険、どうやら今後は切っても切れない関係になりそうです。

【時事解説】電動バイクの普及による影響とは? その2

二輪車業界では、電動バイクに注目が集まっています。期待が寄せられる理由には、二酸化炭素の排出削減や運転時の騒音が少ないといった、環境に優しいことが挙げられます。これらの特徴は、住宅地での宅配便や郵便物の集配にうってつけです。現在、ヤマト運輸と日本郵便は集配用バイクの電動化に取り組んでいます。具体例を挙げると、日本郵便はホンダと手を組み、2018年度内に配達用のバイクの一部に電動バイクを採用する予定です。

 ただ、電動バイクは課題もあります。第一は価格が高いことです。性能が同等のガソリン車と比べると割高で、たとえばヤマハ「E―Vino」ですと、同等のガソリン車よりも10万円程度高くなります。そこで、国や地方自治体では、補助金を設けるなどの施策を講じ、求めやすくしています。東京都では、運送業や小売業などの事業者を対象に、ガソリン二輪車との差額を補助金として支給しています。これにより、ガソリン二輪車と同じ負担額で電動バイクが買えるようになっています。

 もう一つの課題は走行距離です。現在の機種ですと、2時間の充電の場合、20キロメートル程度で電池切れになってしまいます。しかも、充電用施設(充電ステーション)の数はまだまだ十分とはいえません。とはいえ、最近では、1回の充電で60~90キロメートルほど走れる機種が開発され、徐々に改善しています。

 実は、電動バイクの普及は思わぬ波及効果があります。それは、充電ステーションの増加につながることです。結果、EV(電動自動車)の利便性向上にも貢献することになります。相乗効果という点からも、電動バイクの普及には大きな期待が寄せられています。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】電動バイクの普及による影響とは? その1

自動車はガソリン車から電動自動車へシフトが進んでいる今日、この波は二輪車にも及びつつあります。電気で走る電動バイクはCO2(二酸化炭素)の排出について削減効果が高いこと、そして、運転時の騒音が少ない点が特徴です。電動自動車と同様、環境に優しい乗り物として、今後の普及が見込まれています。

 現在、世界における電動バイクの市場は約130億ドル程度ですが、2025年には220億ドルまで成長するという試算もあります。市場拡大への期待もあり、米国のハーレー・ダビッドソンをはじめ、世界の二輪車メーカーは相次ぎ商品開発を手掛けています。具体的には、ハーレー・ダビッドソンは2019年に北米、欧州で発売、2022年までにアジア市場に参入する予定です。ほか、台湾大手のキムコは2018年内に台湾で、2021年までに20の国と地域に新製品を投入すると発表しました。

 日本企業では、2015年にヤマハが「E―Vino」を発売済みです。ホンダは2018年内に国内外で発売を予定しています。
 日本は従来の二輪車(ガソリン車)で、約4割の世界シェアを占めています。この先、日本のメーカー各社は電動バイクの開発を加速し、新たな分野でも多くのシェアを獲得することができるのでしょうか。電動バイクの普及で、二輪車市場の勢力図が変わるのかどうか、注目したいところです。

 市場規模の拡大に伴い、電動バイクの市場には多くのビジネスチャンスが期待できます。自動車の電動化に伴い、モーターなど、新たな部品の需要が生じました。同じように、電動バイクでも、電池などの部品のほか、製造ライン、設備など、新規の需要が生じることが予想されます。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

 

【助成金補助金診断ナビ】新着助成金ニュース

【経済産業省】
●平成29年度補正予算 「サービス等生産性向上IT導入支援事業 (IT導入補助金)」 3次公募
 中小企業等の生産性向上を実現するため、バックオフィス業務等の効率化や新たな顧客獲得等の付加価値向上(売上向上)に資するIT導入を促進するための支援として補助金を支給します。

●平成30年度予算 「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発」
 将来のものづくり現場では、あらゆるモノがインターネットでつながる IoTや人工知能のさらなる活用により、クラウドを通じた生産設備の連携と、自動化・無人化がさらに進むと考えられます。レーザーは加工等の条件をデジタル制御しやすいため、将来のものづくりにおける最重要ツールの一つとして期待されています。しかしながら、従来のレーザー加工は、加工速度、仕上がり品質、省電力化などに課題があります。これまでにない高輝度かつ高効率なレーザー技術やそのレーザーを用いた次世代レーザー加工技術を開発し、高付加価値製品の製造に適した加工システムを社会に普及させることを目的に補助金を支給します。

【他省庁/都道府県】
●平成30年度 農林水産省 「食品産業海外展開支援事業のうちJAS規格認証支援事業」 追加公募
 日本からの農林水産物・食品の輸出拡大や、我が国食産業の海外展開の取組を促進するため、海外市場への進出を目指す又はすでに進出している農林水産・食品分野の関連事業者(製造業、流通業、小売業等)に対し、日本産品の品質や特色、事業者の技術や取組などの強みの訴求につながるJAS規格認証の取得を支援する目的で補助金を支給します。

●平成30年度 青森県 「中小企業等外国出願支援事業」 追加公募
 青森県内の中小企業者が、海外市場での販路開拓や営業展開、模倣被害への対策に、外国への特許等を出願する際に係る費用の一部を支援する目的で補助金を支給します。

●平成30年度 三重県 「三重県農業次世代人材投資資金(準備型)」 第2次公募
 三重県では、次世代を担う農業者になることを志向し、県が認める研修機関等(三重県農業大学校、先進農家又は先進農業法人など)において、就農に向けた研修を受ける者に対して、農業次世代人材投資資金(準備型)を支援する制度を実施しています。

上記に関する詳しい情報は、ゆりかご倶楽部「助成金補助金 診断ナビ」をご確認ください。
※上記以外の新着助成金情報もご確認いただけます。

 

今月の税務トピックス② 税理士法人右山事務所 所長 宮森俊樹

(今月の税務トピックス①よりつづく)

Ⅱ 贈与株数要件
 次の1又は2の区分に応じて、それぞれに掲げる贈与株数要件を満たすものとされます(措法70の7の5①一・二)。この場合において、その年分の贈与税の申告書に本特例の適用を受ける旨の記載があるものが対象とされます(措通70の7の5-3(注)6)。
1 特例受贈者が1人のケース
① 贈与直前において、特例贈与者が有していた特例会社の非上場株式等の数等が発行済株式等の総数等の2/3から特例受贈者が有していた株数等を控除した残数等以上の場合…控除した残数等以上の数等に相当する非上場株式等の贈与
② 上記①以外の場合…特例贈与者が贈与直前に有していた非上場株式等の全ての贈与
2 特例受贈者が2人又は3人のケース(次の①及び②の全ての要件を満たす場合)
① 贈与後におけるいずれの特例受贈者の有する特例会社の非上場株式等の数等が発行済株式等の総数等の10%以上となる贈与
② いずれの特例受贈者の有する株数等が特例贈与者の有する特例会社の非上場株式等の数等を上回る贈与(特例贈与者と特例受贈者が同率の場合は不可)

Ⅲ 贈与の範囲
 平成30年1月1日から平成39年12月31日までの間の最初の本特例の適用に係る贈与及びその贈与に係る特例経営贈与承継期間の末日までの間に贈与税の申告書の提出期限が到来する追加贈与に限られます(措法70の7の5①)。
 そこで、最初の贈与者は、①代表権を有していた者、②50%超の株主グループに所属している者、③贈与直前に筆頭株主である者(特例受贈者を除きます。)④特例承継計画に記載された者で前述したⅡに掲げる贈与株数要件を満たす贈与とされます。

おわりに
 特例贈与者における対象となる贈与は、原則として1回限りとされます。ただし、例外として、特例受贈者が2人又は3人以上ある場合において、同一年中に、これらの特例受贈者に対して行った贈与は前述したⅠに掲げる「既に本特例の適用に係る贈与をしているもの」に含まれないこととされます(措通70の7の5-2(注))。
 また、特例贈与をした者は、特例被相続人になることができませんので留意して下さい(円滑化規6①十二ト(7))。

【時事解説】事業承継の選択肢としてのM&A その2

では、中小企業では事業承継を契機としたM&Aの取組みが具体的にどのように行われているのでしょうか。そこで2018年版中小企業白書で紹介され後継者不足に悩む小規模な調剤薬局の受け皿となっている株式会社大信薬局(本社:福岡県北九州市、従業員330名)の取組みについてみていきましょう。

 株式会社大信薬局は、北九州を中心に調剤薬局やドラッグストアを運営する企業です。現社長が経営を引き継いで以降、様々な経営改革を進める中で、成長に向けた施策として特に小規模な調剤薬局のM&Aに特化しつつ店舗数を拡大させてきました。

 売り手の多くは、医薬分業が進んだ約30年前に独立した薬剤師であり、現在は60歳前後になり事業承継を考える方が多いことから、現社長はそういった調剤薬局のオーナーやその関係者を訪問し、譲渡先の候補の一つとして先方に認識してもらえるように話をしてきました。その結果、地道に構築してきた人脈から紹介を受けるケースに次いで、オーナーから直接問い合わせを受けるケースが多くなっています。M&A後は、地域や市民に根付いた従来の店舗運営を基本としつつも、仕入れや間接部門の効率化を図り、生産性を向上させています。

 最近では、店舗で働く薬剤師の人手不足が深刻化しており薬剤師を自力で確保できず、M&Aを考えるオーナーもおり同社の人材供給力への期待が高まっていることから、同社では福岡県内の大学を中心に、薬剤師のインターンや新卒採用を強化しています。

 このように小規模事業者においてもM&Aが後継者問題解決の一つの選択肢として活用されているのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】事業承継の選択肢としてのM&A その1

中小企業庁「事業承継ガイドライン」では、親族内・従業員承継で後継経営者が見つからない場合などの選択肢として「社外への引継ぎ」をあげており、引継ぎ先を選定するためのマッチングが合意に至ればM&A等の実行を検討する旨が記載されています。こうした背景から、経営資源を次世代に引き継いでいく選択肢の一つとして、中小企業のM&Aへの関心が高まっています。

 2018年版中小企業白書に基づいて中小企業におけるM&Aの実態についてみると、中小企業において実際にM&Aを実施したことのある企業の割合は11.6%と現状はそれほど多くはないものの、直近のM&A実施時期については「2015年以降」と回答した割合が44%を占めており、足もとでM&Aが盛んになっていることがうかがえます。

 買い手企業側のM&Aの実施目的をみると、「売上・市場シェアの拡大」が最も多く、次いで「事業エリアの拡大」となっており、付加価値向上を企図してM&Aを行う企業が多いことがうかがえます。

 一方でM&Aをした相手先(売り手企業側)の経営者年齢についてみると、「60歳代」と「70歳代以上」と合わせた割合が約7割を占めています。また、相手先の経営者年齢別に相手先のM&Aの目的をみると、相手先経営者の年齢が「60歳代」や「70歳代以上」の場合、「事業の承継」を目的とする割合が最も高くなっています。このことから経営者が高齢となり後継者不在の企業においてはM&Aが活用されていることがうかがえます。

 このように中小企業のM&Aでは、売り手企業側が事業承継を目的としている一方で、買い手企業の多くは事業拡大を目指しており、これらを結び付けていくことがカギとなるのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

(前編)生命保険協会:2019年度税制改正に関する要望を公表!

生命保険協会は、2019年度税制改正に関する要望を公表しました。
 それによりますと、重点要望事項として、公的保障を補完する私的保障の役割が重要性を増すなか、少子高齢化の急速な進展やライフスタイルの多様化など、刻々と社会環境が変化しており、持続可能な社会保障制度の確立と国民生活の安定に資するため、国民の自助・自立のための環境を整備する観点から、生命保険料控除制度について、社会保障制度の見直しに応じて、現行制度を拡充することを求めております。

 具体的には、2012年からの契約以降見直された所得税法上及び地方税法上の生命保険・介護医療・個人年金の各保険料控除の最高限度額を、少なくとも所得税を5万円(現行4万円)及び地方税を3.5万円(同2.8万円)とすることのほか、所得税法上の保険料控除の合計適用限度額を少なくとも現行の12万円から15万円に引き上げること(地方税は7万円に据置き)を求めております。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年9月3日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。