【時事解説】米国株式市場を席巻するロビンフッダーとは その2

株式市場では「ロビンフッダー」と呼ばれる米国の個人投資家が注目を集めています。「ロビンフッド」という、米国の株取引アプリを使用していることが呼名の由来です。米国株式は9月に高値を更新し好調です。ところが、ロビンフッダーの増加は株価暴落の予兆という声も上がっています。というのは、過去には、個人投資家が増え市場が活況になると、大きな暴落が来ることが幾度となくあったからです。ITバブル、日本ではライブドアショックなど、個人投資家が利益を膨らました後、暴落が来るケースは少なくありません。

 ロビンフッダーに対して心配の声をあげる理由は、その多くが株式投資の知識も経験も浅い、初心者だからです。ひとたび株価が下落し始めると損失も大きくなります。
 実際、これまで絶好調だった米国株式市場ですが、9月に高値を付けたあと下落傾向にあります。ロビンフッダーの多くはリスクの高い信用取引をしており、株価が下がると証券会社から追加証拠金といって、口座にお金を追加で入れるよう、要請が来るケースがあります。すでに、一部では一連の株価急落で追加証拠金を払えないという人たちが出始めています。そもそも追加証拠金と言われても、その意味が理解できないレベルの投資初心者もいます。

 ロビンフッダーが取引を続行できなくなり、米国株式が活況を失うことは、日本の株式市場にも影響が及ぶ可能性があります。日本の株式市場は米国に連動して上下することが多く、米国が不調だと日本の市場も軟調になる可能性も生じます。今後、ロビンフッダーは持ち直して、市場の活況は続くのか、目が離せません。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】米国株式市場を席巻するロビンフッダーとは その1

最近、株式市場では「ロビンフッダー」と呼ばれる米国の個人投資家が注目を集めています。米国では、取引に占める個人投資家の割合が2010年と比べて2倍近くに増加したことが話題となった要因の一つです。加え、ロビンフッダーの中には大きな利益をあげた人が多いことも注目を集めることに繋がりました。9月初旬、米国の株価指数S&P500種は過去最高値を更新しました。アップルなどのハイテク株は上昇が続き、こうした銘柄を買った投資家は大きな利益を手にしています。

 ロビンフッダーとはどのような投資家なのでしょうか。名前の由来は、「ロビンフッド」という、米国の株取引アプリを使用しているところから来ています。従来、株取引ツールは扱いづらいものが多く、個人にとって株取引は敷居の高いものになっていました。が、ロビンフッドはアマゾンのおススメ機能と同じような感覚で銘柄が表示され、取引が簡単にできるようになっています。また、初めて利用する時には、紙吹雪が舞い祝福のメッセージが現れます。楽しくゲーム感覚で株取引ができることが、人気アプリとなった大きな理由です。

 実は、ロビンフッダーが増加したのはコロナ禍の影響も一つとしてあります。米国では、新型コロナウイルスの感染拡大により、レイオフなどで仕事を失う人が増えました。こうした人たちは自宅で過ごさなければならず時間をもてあまします。そこで、時間つぶしと減少した収入の補てんが期待できる株投資に人が集まりました。現在、ロビンフッダーの多くは利益を手にしています。が、初心者が多いので、どこまで続くか心配の声も上がっています。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

 

【時事解説】中小企業における働き方改革への対応 その2

では、働き方改革への対応に向けて中小企業では具体的にどのような取組みが行われているのでしょうか。そこで『中小企業白書2020年版』において、働き方改革の取組事例として紹介されたライオンパワー株式会社(本社:石川県小松市)の事例についてみていきましょう。
 ライオンパワー株式会社は、各種FA・LAロボットシステムなどの開発、製造を行う企業です。

 かつて同社では月ごとの残業時間や年間累計残業時間、有給休暇取得日数が確認しづらく、従業員自身も管理できていない状況でした。こうした状況を受け、働き方改革関連法の残業時間の上限規制や年次有給取得の義務化にも対応すべく、早めの準備に着手することとしました。
 具体的には残業時間が少ない人に高いポイントを付与する形で残業時間をポイント化し、トータルポイント数を賞与に反映させる評価制度を導入しました。一方で、業務量の多い従業員等が不利にならないよう、賞与の評価においては業務難易度や業務量などを社長と部門長で確認し調整しています。
 また、日々の残業時間と月ごとの累計残業時間をネットワークで従業員自身が確認できるようにするとともに、年間3日間を計画有給取得日と定め(残り2日は個別に取得)、有給休暇消化日数も確認できるようにしました。

 これらの取組みを通して残業時間が大幅に減少しました。また、会社全体の計画有給取得日を決めることで、管理部門の管理コスト軽減を図ることができました。さらに残業時間のポイント制導入により、残業が減る一方で賞与が増額となり、従業員の働き方への意識を高めることにつながりました。
 このように働き方改革への対応を契機としてさまざまな効果がみられるのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業における働き方改革への対応 その1

中小企業においては人手不足の解消に向けて魅力的な職場づくりが求められています。
 政府は2019 年4月1日より「働き方改革関連法」を順次施行しており、全ての企業に対して労働環境の整備を促しています。以下では中小企業における「働き方改革関連法」のスケジュールについてみていきましょう。

 まず2019年4月1日より大企業、中小企業ともに、法定の年次有給休暇付与日数が10 日以上の全ての労働者について、使用者が毎年5日年次有給休暇を確実に取得させることが義務付けられました。
 時間外労働の上限規制については大企業では2019年4月1日からスタートしましたが、中小企業においても2020年4月1日から、時間外労働の上限について月45 時間、年360 時間を原則とし、臨時的な特別の事情がある場合でも、年720時間、単月100 時間未満(休日労働含む)、複数月平均80 時間(休日労働含む)を限度に設定することが義務付けれました。

 大企業では、2020 年4月1日から、同一企業内において、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、基本給や賞与などのあらゆる待遇について、不合理な待遇差が禁止される「同一労働同一賃金(パートタイム・有期雇用労働法)」が適用されましたが、中小企業においても2021年4月1日から適用されることになります。
 また、大企業で既に施行されている割増し賃金率の引上げについては、中小企業においても2023 年の4月1日から、適用猶予措置が廃止され、月60 時間を超える時間外労働について、割増し賃金率を50%以上とすることが義務付けられることとなります。このように中小企業においても「働き方改革関連法」が順次適用されることとなるのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》健康診断と健康情報の取り扱い

◆健康診断は使用者の務め
 使用者は従業員の健康を確保するため、労働安全衛生法で常時使用労働者の1年以内ごとに1回の健康診断受診義務が定められています。
 従業員の健康情報を知り、安全配慮義務を行い健康管理、情報管理することは使用者の務めです。企業と労働者は労働契約を結んでいるので労働できる健康を有しているかを把握しておかなくてはならず、労務提供に関連した健康状態を取得しなくてはなりません。受診の結果の取り扱いは使用者に帰属するとされています。

◆適切な情報管理
 使用者は健康診断の履行を通じて労働者の心身の状態に関する情報を取得・利用・保管することとなります。使用者には労働者の健康確保が求められるものの、当該情報は「要配慮個人情報」にあたります。労働者の個人情報を保護する観点から、現行制度においては使用者が心身の状態の情報を取り扱えるのは労働安全衛生法令及びその他の法令に基づく場合や本人が同意している場合の他、労働者の生命、身体の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき等です。秘密保持は重要ですがプライバシー問題とは別であり、使用者は個人情報を得るので情報管理をすることが求められ、情報は慎重な取り扱いが求められます。記録は5年間の保存義務があります。
 就業規則には健康診断の受診義務が載っていると思いますが、結果が本人にしか届かない場合は受診結果を会社に報告する旨を規定しておくのがよいでしょう。

◆健診と費用、賃金
 健康診断は使用者の義務なので、健康診断に掛かる費用は使用者が負担しなければなりませんが、しかし、健康診断を受診している間の時間に賃金が発生するかは、健康診断の種類によって異なります。
 まず、雇用時の健康診断や、定期健康診断は業務に関連して行われるものではないため、支払ってもよいけれど、支払い義務はありません。特定業務に従事する者は業務に関連して行うものであるため、賃金を支払う必要があります。

 

《コラム》のれんの償却期間 -買収した事業の価値はいつまで続く?-

事業の多角化をねらい、事業買収をしたとき、時価純資産価額を超えて対象事業を評価することで生じた「のれん」の価値は、いつまで継続するのでしょうか?

◆のれんの価値
 のれんには譲渡した側の経営者が長年築いてきた信用、取引先との契約関係、社員のスキル・経験など、様々な価値が内包されていますが、消費者のニーズの変化や市場の変化に応じて減価し、自社の事業に吸収されていきます。
 のれんの償却は、会計・税務上、次のように扱われています。

◆会計上の償却期間
 日本の会計基準では、のれんは、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたり毎期、規則的に償却します。これは、取得事業から生じる収益と償却費用とを対応させることができること、のれんの減価を合理的に予測することが困難であること等の考え方によります。また、のれんの未償却残高は、減損処理の対象となり、投資額の回収を見込めないときは、減損処理が求められます。
 IFRS(国際財務報告基準)では、のれんは償却せず、取得原価のまま評価されますが、毎期、減損テストを行い、減損が認識された場合は、減損処理を行います。

◆税法上の償却期間
 法人税法では、のれん(資産調整勘定)は、60か月(5年)の月割り均等償却です。償却期間が会社の見積りで任意に設定されることを回避し、所得に与える影響を中立にさせています。
 なお、償却に当たり、損金経理要件は課されておらず、会計基準が求める減損処理も法人税法では認められていません。

◆のれんの価値を育てる
 事業を承継した経営者は、買収した事業を自社の事業と融合させて、のれんの価値を高め、投資額を上回る利益の獲得を目指します。その意味からすれば、取得したのれんは、投資の回収を見込む期間内で早めに償却を行い、自社の新たなのれんとして育てていくべきものではないでしょうか。
 買収した事業ののれんは、イソップ物語に出てくる金の卵を産むガチョウのような存在かもしれません。ただし、あせってガチョウの腹をさかないように。

(後編)2019年度査察白書:査察の告発事案は100%有罪!

(前編からのつづき)

 ちなみに、刑罰は10年以下の懲役に、罰金は1,000万円(脱税額が1,000万円を超える場合は、脱税相当額)以下となっております。
 いわゆるマルサといわれる査察は、大口・悪質な脱税をしている疑いのある者に対し、犯罪捜査に準じた方法で行われる特別な調査をいいます。
 そして、調査にあたる国税査察官には、裁判官の発する許可状を受けて事務所などの捜査や帳簿などの証拠物件を差し押さえたりする強制捜査を行う権限が与えられます。

 この査察調査は、単に免れた税金や重加算税などを納めさせるだけでなく、検察への告発を通じて刑罰を科すことを目的としております。
 1980年に初めて実刑判決が出されて以降は、毎年実刑判決が言い渡されております。
 すでに着手した査察事案について、同年度中に告発の可否を最終的に判断(処理)した件数は165件で、このうち検察庁に告発した件数は70.3%(告発率)にあたる116件あったことからも、査察の対象になると、約7割程度が実刑判決を含む刑事罰の対象となりました。

(注意)
 上記の記載内容は、令和2年9月7日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)2019年度査察白書:査察の告発事案は100%有罪!

2019年度査察白書によりますと、2019年度中に一審判決が言い渡された124件の100%に有罪判決が出され、うち5人に対し執行猶予がつかない実刑判決が言い渡されました。
 実刑判決で最も重いものは、査察事件単独に係るものが懲役10ヵ月、他の犯罪と併合されたものが懲役9年でした。

 事例では、A社はプロセッサ開発・製造・販売等を行うもの会社ですが、架空の外注費を計上するなどの方法により所得を隠し、多額の法人税及び消費税を免れておりました。
 同社の元代表者Bは、詐欺罪との併合事件として、法人税法、消費税法及び地方税法違反の罪で、懲役5年の実刑判決を受けております。
 一審判決があった124件の1件当たり平均の犯則税額は4,700万円、懲役月数は15.5ヵ月、罰金額は1,200万円となりました。
 査察の対象選定は、脱税額1億円が目安といわれ、また、脱税額や悪質度合いの大きさが実刑判決につながります。
 査察で告発されますと、社会的信用を失うだけでなく、巨額な罰金刑や実刑判決の可能性も十分にあります。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和2年9月7日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》令和2年度地域別最低賃金

◆改定目安は示されず各地方審議会で決定
 令和2年度地域別最低賃金改定額は中央最低賃金審議会で賃上げ額が目安は公表されず、下記のような答申にとどまりました。
「令和2年度の地域別最低賃金額は新型コロナウィルス感染症拡大による現下の経済・雇用への影響等を踏まえ引き上げの目安を示すことは困難であり、現行水準を維持することが適当」とされ、各地方最低賃金審議会に一任されました。
 それを受け各地の審議会で、小幅な改定又は据え置きで10月からの最低賃金額が決定されました。

◆月給の場合の最低賃金額の算出方法
 月給の場合は年間の休日数を出して年間の労働日数を確定させます。例えば土日や祝日、夏季休業、年末年始の休日合計が125日の場合、365-125日=240日が年間の労働日数です。1か月の平均労働日数は240÷12か月=20日となります。1日8時間勤務なら1か月の平均労働時間は20日×8時間=160時間となります。月給を160時間で割り算すれば時間単価が出ます。同じ月給額でも事業所の所在地が東京都の場合は単価が高いので最賃割れで違法でも、地方では大丈夫というケースがあるわけです。

 令和2年度の改定額は以下の通りです。
据え置き
東京 1013円 大阪 964円 京都 909円  静岡 885円 広島 871円 山口 829円 北海道 861円
 
1円改定
宮城 825円 栃木 854円 神奈川 1012円 新潟 831円 富山 849円 石川 833円 福井 830円 山梨 838円 長野 849円 岐阜 852円 愛知 927円 三重 874円 兵庫 900円 奈良 838円 和歌山831円 岡山 834円 福岡 842円
 
2円改定
秋田 792円 福島 800円 茨城 851円 群馬 837円 埼玉 928円 千葉 925円 滋賀 868円 鳥取 792円 島根 792円 香川 820円 高知 792円 佐賀 792円 大分 792円 沖縄 792円

3円改定
青森 793円 岩手 793円 山形 793円 愛媛 793円 徳島 796円 長崎 793円 熊本 793円 宮崎 793円 鹿児島 793円

《コラム》令和2年分から本格化 年末調整手続の電子化

所得税の確定申告や消費税、法人税、法定調書に続き、年末調整についても電子化が進んでいます。

◆年末調整手続の電子化とは
 従来、年末調整では各種控除証明書を書面で収集し、各種の年末調整申告書を書面で作成するケースがほとんどでした。令和2年10月以降は、これらの各種控除証明書や各種年末調整申告書を電子データでやり取りし、これらを電子データのまま保存することも可能となります。これにより、手書きによる書類の作成や書類への押印も不要となり、書類保管コストも削減することができます。

◆勤務先(給与の支払者)の準備
①電子化の方法の検討
 年末調整の電子化は義務ではありませんので、従来の方法によることもできます。また、会社の都合にあわせて部分的に電子化していくことも可能です。
②従業員への周知
 年末調整のデータを提出する従業員にも事前準備が必要となりますので、電子化する際には、早めに従業員に周知する必要があります。
③給与システム等の改修
 電子データを受け入れるには、現在のシステムの改修等が必要となるケースが多くなります。ソフトウェア会社や依頼している税理士事務所等へお問い合わせ下さい。
④税務署への届出
 従業員から年末調整申告書を電子データで提供を受けるためには、所轄税務署長に「電磁的方法による提供の承認申請書」を提出し、承認を受ける必要があります。

◆従業員(給与所得者)の準備
①年末調整申告書作成用のソフトウェアの取得
 どの種類のソフトを利用するかは、勤務先の指示に従います。国税庁が無償で提供するソフトウェアは、10月頃リリースの予定です。
②控除証明書等データの取得
 保険会社等から控除証明書データを取得します。マイナポータル連携を利用して一括取得する方法もあります。