【時事解説】キャッシュレスは日本に根付くか その1

「キャッシュレス」の波が押し寄せ、お金は大きな変化を遂げようとしています。いまや世界においての支払いは、クレジットカードや電子マネー、スマホなどで済ませるスタイルが浸透しています。

 クレジットカードや電子マネーの魅力は、お釣りや小銭のわずらわしさから解放される点が一つです。中でも便利なのがスマホの決済です。お財布からお金やカードを取り出す必要がなく、スマホをかざすだけで支払いが完了。荷物があっても片手で決済できるので便利です。

 また、ランチや飲み会で割り勘をするとき、同席者がLINEのアプリを持っていれば、同席者同士、1円単位で送金できます。結果、小銭がなくて、だれかが多く払うといったこともなくせます。

 もう一つのメリットはお金の管理のしやすさです。カードや電子マネーの中には、利用履歴がパソコンやスマホで確認できるものがあります。レシートをとっておかなくても、何にお金を使ったか、合計額がわかり、自身で集計するよりも管理が簡単になります。

 メリットは利用者だけではありません。現金の比率が低くなれば、店側は現金を盗まれる心配が減り、警備にかかる経費を削減できます。また、銀行などはATMの数を減らすことになるので、ATMの維持・管理のコストが減少、それに伴いお金の輸送も減るので犯罪に巻き込まれる危険性も少なくなります。ほか、小売店ではレジのお金を数えて、残高を確認する必要もありません。お釣りを間違えるといったミスも減らせます。

 こうした数多くの利便性の高さに気づいた顧客や店が増えることで、さらにキャッシュレス化が進むと考えられます。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

 

【時事解説】中小企業における多能工化・兼任化の推進 その2

では、中小企業におけるIT利活用にあたっては具体的にどのような取組みが行われているのでしょうか。そこで「中小企業白書2018年版」において、非製造業(温泉旅館)でありながら業務を見直したことで多能工化を実現し、生産性を向上させた企業として紹介された、株式会社グランディア芳泉(本社:福井県あわら市)の取組みについてみていきましょう。

 株式会社グランディア芳泉は、あわら温泉地域内にある1963年創業の温泉旅館です。
 繁忙期に従業員が休めない状況が続くという状況に対処するため、同社では2015年末に、業務効率化による従業員の負担軽減を図る取組みを開始しました。例えばこれまで夕食時間を2部制としテーブルセッティングしていたのを廃止し、顧客が好きな時間に来る方式に変えたことで、夕食の準備時間の短縮と顧客満足度の向上を両立させることができました。

 続いて、分業制だった従業員の多能工化に取組みました。従業員に丁寧に説明を行いつつ改革を実行していった結果、仲居がレストランを手伝ったり、仲居以外のスタッフが宴会の仕事を手伝ったりなど、従業員間で互いの業務の支援を行う体制が構築されていきました。

 長時間労働の是正に苦労する企業が多い旅館業の中で、同社は残業を一人当たり週2時間程度まで削減し、その上で残業手当の減少分は賞与を増やすことにより従業員に還元しています。2017年4月からは週休2日制をほぼ導入し、各従業員が取得する年間休日を30日増やすことにも成功しました。

 このように従業員に丁寧に説明を行いつつ多能工化を進めることで、従業員の能力向上や業務平準化による負担軽減を図ることが可能となるのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業における多能工化・兼任化の推進 その1

中小企業において人手不足が深刻化する中、多能工化・兼任化の推進によって業務量の平準化や業務の効率化を図ることが求められています。
 「中小企業白書2018年版」において、中小企業における従業員の多能工化・兼任化の取組みについて実施されたアンケート調査の結果についてみていきましょう。

 中小企業における従業員の多能工化・兼任化の取組状況についてみると、回答企業の73.3%が多能工化・兼任化に取り組んでいることがわかります。また業種別には製造業での取組割合が88.1%と他の業種に比して高くなっています。

 従業員の多能工化・兼任化を進めるに当たって、併せて行った取組みの内訳をみると、「業務マニュアルの作成・整備」、「従業員のスキルの見える化」の回答割合が特に高くなっています。「業務マニュアルの作成・整備」については、従業員に新たな業務を担当させる上での学習環境の整備としての役割を担っているものと考えられます。また、「従業員のスキルの見える化」は、各従業員が有している能力の確認や、今後習得させるべき能力を定めるために必要なものと推察されます。

 従業員の多能工化・兼任化によって得られた効果についてみると、「従業員の能力向上」と回答した割合が52.7%と最も高くなっており、以下「全体の業務平準化による、従業員の負担の軽減」35.6%、「繁忙期・繁忙部署における業務処理能力向上」35.1%の順となっています。

 このように多能工化・兼任化により、業務量が平準化され従業員の負担軽減につながるとともに、他部署からの支援に回れる人材が増えることで処理能力の向上につながるなどの効果が期待されるのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

自筆遺言の一部、手書き不要に

自筆証書遺言に法的効果を持たせるための条件が今年1月に緩和されました。改正民法の一部施行によるもので、これまでは全文を自筆しなければ法的効果が認められなかったのですが、改正後は財産目録に限ってはパソコンで入力したものでも認められるようになっています。

 改正前の自筆証書遺言は、財産目録も含めて全文を手書きで記入することが求められていて、過去には不動産目録をタイプ印刷した遺言書が無効とされたことがあります(昭和59年の東京高判)。これが民法の改正により、財産目録に限ってはいちいち手書きしなくても済むように変更されました。

 パソコンでの作成の他、金融機関の通帳のコピーや不動産の登記事項証明書の添付も可能。ただし、それらの書類に自筆で署名して押印する必要があります。この見直しによって、記載内容に誤りが生じる可能性を多少なりとも減らすことが可能です。
 なお、自筆証書遺言の原本を法務局で保管する制度の開始時期は来年7月となっています。

<情報提供:エヌピー通信社>

《コラム》“やる気”の源泉

社員の“やる気”の源泉は何にあるのでしょうか。リーダーにとってそれがわかれば、マネジメントは大変やり易くなります。

◆社員個々の“やる気”の源泉
 一人ひとりの社員は、知識・技術や考え方、性格など、周囲が認めているか否かを問わず、何らかの優れた点を持っています。
そして、その優れた点が生かされ、認められるチャンスを待っています。そして、
①自分の意見を述べる機会が得られ、その価値がリーダーや仲間に認められる。
②自分の意見・存在価値が求められたと感じたことが“やる気”の源泉となる。
 したがって、リーダーは、仕事の問題が生じた時、一人ひとりのメンバーに、「この場合、君ならどうするのが良いと思うかね?」など、適切な質問を投げかけて、意見を引き出すこと、その意見の価値を発見し、「あなたの意見はこういうことだね」と確認して理解したことを示すのが、“やる気”を引き出すマネジメントポイントです。

◆チームの“やる気”の源泉
 課・係・プロジェクトチームなどのメンバー全員の“やる気”の源泉も、一人ひとりのメンバーの“やる気”の源泉と同様の性質を持ちますが、そこに衆知を集める相乗作用、すなわち“共創”の効果が生じる点に違いがあります。
 組織としての問題や解決すべき課題が生じた時、
①メンバー一人ひとりの意見が求められ、発表する機会が得られる。
②メンバー相互に問題認識・課題設定・課題解決策などについて討論し、個々の意見が合意されたり、気づきによって修正され、合意形成される。
③チームとしての合意形成により、リーダー・メンバー間で、自分達の意見・存在価値を認め合うことが“やる気”の源泉となる。
 したがって、リーダーは、チームの“やる気”の源泉を沸き立たせるファシリテーションによるマネジメントを行うことが必要です。

◆経営者・管理者の留意点
 “やる気”の源泉は、経営の階層を問わず、トップ層・中間管理者層・一般社員層それぞれに共通に存在することに留意してファシリテーションによるマネジメントを実践しましょう。

《コラム》活用していますか?小規模企業共済・倒産防止共済

中小企業基盤整備機構が運営する「小規模企業共済制度」と「中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティ共済)」の2つの共済制度は、節税や将来への備えとして活用している企業も多いと思います。
 まだ活用していないという企業様向けにメリットと留意点を整理してみましょう。

◆退職金を積み立てる小規模企業共済
 小規模企業共済は、積立てによる退職金制度で、卸売業・小売業、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む法人は従業員数5人以下、その他の業種は従業員数20人以下などといった加入要件がありますが、小規模法人の役員や個人事業主を対象としています。
 掛金は月額1千円~7万円まで5百円単位で自由に設定でき、加入後も増額・減額が可能です。
 メリットとして、支払った掛金の全額をその年の課税所得から所得控除できることがあげられます。同様に、1年以内に前納した掛金も所得控除することができます。また、契約者貸付制度があり、掛金の範囲内で事業資金を低金利で借りることが可能です。
 掛金納付月数が240か月未満で任意解約した場合は元本割れすること、共済金受取時には所得として課税の対象となることには留意が必要です。

◆取引先の倒産に備える倒産防止共済
 中小企業倒産防止共済制度は、取引先が倒産した際に連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度です。
 資本金などの上限がありますが、1年以上事業を継続している中小企業者であることが加入要件となっています。
 積立総額800万円を上限とし、掛金は月額5千円から20万円まで5千円単位で自由に設定でき、途中で増額・減額が可能です。
 取引先が倒産した場合、無担保・無保証人ですぐに借入れができる、支払った掛金の全額を損金もしくは必要経費に計上できるというメリットがあります。一方で、納付月数が40か月未満で解約すると元本割れとなること、共済金受取時には益金もしくは事業所得として課税の対象となることに留意が必要です。
 制度の内容をよく理解して上手に活用していきましょう。

【時事解説】カネは使うためにあるのか、貯めるためにあるのか その2

つまり、カネを貯めようとするときには円安が、カネを使おうとするときには円高が有利だといえます。ですから、円高と円安のどちらを好むかは「カネは何のためにあるのか」という考え方の違いに左右されます。カネを貯めることを目的とする人には円高は好ましくありませんが、カネを使おうとする人にとっては、円高は嬉しいはずです。

 企業にも同様なことがいえます。内部留保を貯め込むだけの企業は、円高は好ましくありませんが、カネを使おうとする企業には円高は絶好のチャンスです。ソフトバンクの孫社長や日本電産の永守社長はM&Aに積極的な経営者として有名ですが、彼らにとっては、円高は決して憂うべきことではなく、海外への絶好の投資機会と映っているはずです。ただひたすら内部留保を貯め込むばかりでカネの使い方を知らない経営者ではこうした発想は出てきません。

 「イタリア人は死ぬ時には貯蓄は0だが、日本人は死ぬ時が最高の貯蓄額になる」と言った相続コンサルタントがいます。この言葉の真偽は定かではありませんが、日本人はカネを貯めることは上手だが使い方が下手だ、ということをうまく表現しているように思います。

 政府は個人消費の沈滞が経済低迷の原因であり、個人消費の活性化に向けて低所得者向けの給付金の支給など様々な施策を打っています。その意味からは、円高を利用して個人の消費喚起を訴えるということがあってもよさそうですが、依然として円安を望むというのは、我々日本人はまだまだ上手なカネの使い方に習熟していないのではないかという気がしてなりません。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】カネは使うためにあるのか、貯めるためにあるのか その1

日本の経済状況は為替動向に大きく左右されています。
 円安は輸出型大企業に有利であり、東証の主要銘柄はこうした大企業が主力ですから、円安は株価上昇につながります。円高は逆ルートをたどり、株価の下落を招きますから、国内には「円安歓迎、円高敬遠」の空気が蔓延します。

 確かに企業目線からは円高は好ましくないというのは分かりますが、消費者目線からは違った風景が見えるはずです。円が高いということは自国通貨が評価されるということで、決して悪いことばかりではないからです。にもかかわらず、我が国で円安が過度に選好されるのはカネの使い方に原因があるように思います。

 まず、輸出型企業の為替相場から受ける影響を確認しておきましょう。
 仮に、1ドル=120円として、1ドルの製品を海外に売れば、120円が入金されます。それが1ドル=100円になると、同じモノを売っても100円しか入金できなくなります。したがって、この企業は他の条件が同じならば、1ドル120円から100円の円高になると、売上と利益が20円落ちることになります。

 一方、消費者からすれば、1ドル=120円なら、1ドルの海外製品を買うのに120円払わなければなりません。しかし、円高になり1ドル=100円になると、同じモノが100円で買えますから、円高になると消費という面からするとずっと得になります。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》労働条件通知がメールでも可能に

◆労働条件通知書は書面以外でも可
 企業が労働者に向けて提示する労働条件ですが、労働基準法第15条では書面による通知をするとされていました。しかし2019年4月から、労働条件の通知を書面だけでなく電子メールやFAXで知らせても良いようになります。既に社内ITを実用化しているところも多いと思いますが、新年度からFAXや電子メール等でも通知を可能にするよう、規制を緩和する事になりました。書面として印刷できればよいと判断されたので、企業にとって印刷、郵送のコストを抑え利便性も高まるでしょう。

◆労働基準法の施行規則改正
 働き方改革関連法に基づく省令で労働基準法施行規則第5条第4項に追加されました。
「法第15条第1項後段の厚生労働省令で定める方法は労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする。ただし、当該労働者が同項に規定する事項が明らかとなる次のいずれかの方法によることを希望した場合には、当該方法とすることができる。
(1)ファクシミリを利用してする送信の方法
(2)電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信の送信の方法(当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る。)」

◆本人の希望が前提
 今回の改正は労働者がFAXや電子メール等での通知を希望する事が条件なので本人に通知方法を確認してから行い、FAXやメールでの通知を希望しない時は今まで通り書面での通知となります。
 電子メールで送信する場合の具体的なファイル形式(メール本文か添付ファイルかどちらでもよいか等)や本人が確実に受け取ったかどうかの確認の要否等、まだ詳細は明らかになっていません。新年度に施行されるまでに何らかの基準が示されるかもしれません。

《コラム》働き方改革法と企業の意識

人材採用のエン・ジャパン株式会社は、人事担当者向けの総合サイトで、経営者や人事担当者に向けて「働き方改革法案について」のアンケート調査を行いました(回答648通)。それを基に企業が「働き方改革法案」に対してどこまで認識があるか、どう感じているかの実態が見えてきました。
1、「働き方改革法案」の認知度
 「働き方改革法案を知っているか」という問いには「概要を知っている」74%、「内容を含め知っている」21%と認知度は95%に達しています。
2、経営への支障度合い
 「働き方改革法案」が施行される事で経営に支障が出るかという問いには「大きな障害が出る」9%「やや支障が出る」38%とあり、企業規模が大きくなるにつれて「支障が出る」と回答する割合が増加しています。
3、経営に支障が出そうな法案について
 「経営に支障が出る」と回答した方への「支障が出そうな法案はどれか」という問いに対しては「時間外労働(残業)の上限規制」66%がもっとも多く、次に「年次有給休暇の取得義務」54%、「同一労働同一賃金の義務化」43%と続きます。業種別にみると広告、出版、マスコミ関連の「時間外労働の上限規制」80%、「年次有給休暇取得の義務化」70%、商社の「時間外労働の上限規制」74%が目立っています。

◆働き方改革の時間外労働の上限規制とは
 残業時間は月45時間、年360時間を原則とするが年720時間までは延長が可能であり、繁忙期は単月で100時間未満の残業を例外的に認めるという内容です(2019年4月施行、中小企業は20年から)。年次有給休暇取得義務は年に5日は有給休暇を消化させる義務が生じます(19年4月施行)。
 働き方については、各人が家庭の事情や自身の体調、結婚、出産等を抱えて仕事をしているので国が柔軟に多様化した対応策を示す事が必要と言う意見もあれば、中小企業には厳しいかもしれないがよい制度とする肯定的な意見もある一方で、残業の上限規制や有給の義務化は生産性が下がり、人員を増やせば人件費に跳ね返りコスト削減のため無理をしかねないのではなど、否定的な意見もあります。