《コラム》プロジェクトの成功要因

経営の重要課題を解決するために、しばしばプロジェクトチームが活用されていますが、次の様なトラブルが生じて暗礁に乗り上げてしまうことがあります。
・プロジェクトに取り組むメンバー間に深刻な意見の違いが生じて、進捗できない。
・大きな失敗が生じ、そのリカバリーのため、予算が大幅に超過した。
 このような障害を未然に防止し、プロジェクトを成功に導くには、どのような対処策があるでしょうか。

◆プロジェクト成功の鍵
 プロジェクトを成功させるには、次の様に、人材・課題解決手段・予算に関する成功要因を確保しなければなりません。
(1)リーダーがプロジェクトテーマの目標達成に志と能力・経験をもち、とりわけプロジェクトとチームメンバーのマネジメントに優れていること。
(2)課題解決に要するキーテクノロジーが適切に選択され、プロジェクトのチームメンバーが、キーテクノロジーを駆使する能力に優れていること(通常は異分野・複数のテクノロジーが必要なことから、それぞれを駆使できるメンバー間の協力関係が確保されていること)。
(3)予算が確保されていること。
(4)上記(1)~(3)と同時に、プロジェクトのリーダー・メンバーにより「基本構想」が策定され、プロジェクトが成功した時の姿が具体的に共有されて上位組織の承認を得ていること。
(5)プロジェクト推進・管理の基本方針が定められていること。
(6)推進プロセスのマネジメントが、リーダーのファシリテーションにより適切になされていること(特にプロセスでの課題解決の成功要因獲得や障害排除へ向けたメンバー間の共創)。
 このように、プロジェクト成功の鍵は広く、人材・テクノロジー・基本構想の確立・推進マネジメントに及びます。

◆経営者・管理者の留意点
 プロジェクトの成功要因は、人材確保に帰結します。このような人材確保は、長期人材育成・確保の人事施策によってのみ成功させることが出来ます。トップは日頃から上級管理者の協力を得て、事業分野別の中長期人材確保計画を推進したいものです。

【時事解説】針なし注射器が治療を変える その2

近年、医療の現場では、患者の痛みを減らす医療が重視されるようになり、針のない注射器に注目が集まっています。日本では実用化に至っていませんが、米国などの海外ではすでに認可が下りています。
 針がないのに、どのようにして体内に薬を入れるでしょうか。針のない注射器には、いくつか種類があります。具体的な方法を紹介すると、注射器から高圧が生じ、高速で気泡を発射。気泡がはじける力で皮膚に微細な穴を空けます。その後、薬液が高速噴射されて、穴から薬が体内に注入されます。薬が皮膚内に浸透するので針が不要になります。このときに開ける穴が極めて小さいので、針を使う注射器のような痛みは感じられません。

 一般的に、医療機器に関するビジネスは専門知識が必要になり、参入障壁が高いといわれています。ただ、日本の中には、プラスチック部品のメーカーが、針無し注射器の部品製造を手掛けているケースもあります。
 このメーカーは、もともと漆器の製造からはじまり、自動車部品や通信機器などのプラスチック部品の製造を営んでいました。注射器とは全く関係のないようにみえますが、同社が有する、プラスチック樹脂の先端に精密な穴を開けるという高い製造技術が針無し注射器の部品として応用されることになったのです。

 今後、高齢化がますます進む中、医療に関する市場はビジネスチャンスの宝庫です。参入障壁が高いといわれていますが、実は、自社の技術を活かす場は探せばあるものです。なかでも、針なし注射器のような、痛みを軽減させる分野は大きな成長が期待できるため、狙い目でもあります。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】針なし注射器が治療を変える その1

近年、医療の現場では、患者の視点に立ち、痛みや負担を和らげる検査や治療が重視されるようになりました。従来、医療の現場で用いられる機器は、性能が最も優先順位が高く、たとえば、乳がんや大腸がんなどの検査ならば、がんを見つけることが優先され、患者の苦痛は犠牲になっています。結果、病院では痛みや苦痛を伴うことが多くあります。
 やがて、検査や治療器具の性能が高まるに従い、患者の心情に寄り添い、痛みを減らすことが徐々に重視されるようになりました。

 取り組みの一例を挙げると、医療機器のメーカーであるキヤノンや京都大学は乳がん検査時の痛みを抑える技術の開発を進めています。現在、乳がんの検査は、乳房を2枚の板で挟み、押しつぶした上でⅩ線画像を撮影する方法が主流です。患者からは不評の声が上がっていますが、新技術により、こうした評判も変わりそうです。

 最近、大きな注目を集めているものに、針のない注射器があります。注射といえば予防注射をはじめ、針の痛みからくる恐怖心が脳裏にこびりついている人は多いでしょう。
 現在、針がなく、肌にあてるだけで体内に薬を注入できる注射器の開発が進んでいます。針で注射するより痛みは格段に少なく、薬剤も均等に広がるので医療事故防止につながるといえます。また、使い捨てなので感染症対策にもなります。

 実用化はまだ端緒についたばかりで、米国やドイツ、ドバイ、シンガポールなど、一部の国で認可が下り始めところです。日本もいずれ認可が下りる日が来るのではないでしょうか。痛みの少ない注射が実現したら、患者としては喜ばしい限り。広まる可能性は大いに期待できます。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業における業務プロセスの見直しによる生産性向上②

では、中小企業において、具体的にどのような業務プロセスの見直しによる生産性向上の取組がみられるのでしょうか。そこで「中小企業白書2018年版」において、業務効率化を実現させ生産性を向上させた企業として紹介された株式会社小豆島国際ホテル(本社:香川県土庄町)の事例についてみていきましょう。

 株式会社小豆島国際ホテル(従業員125 名、資本金1億円)は、1963年創業の客室120室のリゾートホテルを運営する事業者です。 小豆島では少子高齢化と人口減少が進む状況において、同社が今後も人材を確保し続けていくためには、生産性向上を進め労働条件を整備していくことが重要だと考えていました。

 そこで同社では、外部の経営コンサルタントを活用し業務の見直しを進めました。総支配人のリーダーシップのもと、業務改善に意欲的な従業員とコンサルタントで構成するチームを編成して客室整備業務等における既存の業務の無駄を洗い出し、不要業務の廃止や見直しを行いました。 例えば、一部客室に急須の設置をやめてマグカップとスティック茶に簡略化を行った結果、急須の漂白時間が短縮され、年間で30 時間程度の業務時間の削減につながりました。このように業務の必要性を精査し、廃止や見直しを進めることによって、年間で1,800時間もの業務時間の削減効果が得られました。 さらに、一連の取組をきっかけに従業員が自発的に改善提案を行う風土が広がったことで、個々の従業員の創意工夫が発揮され顧客対応も改善しました。

 このように業務プロセスの見直しを進めることは、業務の効率化だけでなく付加価値向上や人材確保の効果ももたらすのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業における業務プロセスの見直しによる生産性向上①

中小企業において人手不足が深刻化する中、現有の従業員を生かすべく労働生産性向上に向けて、業務プロセスの見直しによって業務効率化を図ることが求められています。
 以下で、「中小企業白書2018年版」において実施した、「人手不足対応に向けた生産性向上の取組に関する調査」に基づき中小企業における業務プロセスの見直しの現状と課題などについてみていきましょう。

中小企業における業務見直しの実施状況をみると「部門単位で業務の見直しを行っている」が26.7%、「個々の従業員のレベルで日々工夫しながら業務の見直しを行っている」が24.9%と続いており、多くの中小企業が、業務見直しの取組を行っていることがわかります。

 業務見直しの具体的な取組内容について回答割合の高い順にみると、「業務の標準化・マニュアル化」が40.2%、「不要業務・重複業務の見直し・業務の簡素化」が40.0%、「業務の見える化」が30.6%となっています。

 業務見直しに取り組んだきっかけについて回答割合の高い順にみると、「人手不足対応」が46.5%、「業務に非効率・無駄を感じた」が 41.0%、「働き方改革への取組」が31.4%となっています。

 業務見直しを行うに当たっての課題についてみると、「業務に追われ、業務見直しの時間が取れない」が 50.6%と他の項目に比べて高い割合を示しており、次いで「取組を主導できる人材が社内にいない」24.1%、「取組の目的や目標が上手く設定できない」17.5%の順となっています。

 このように、中小企業における業務プロセスの見直しにおいては、業務見直しの時間の確保に加え、推進役となる人材の不足等、業務見直しを行うための環境整備も課題となっているのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

成人年齢引き下げを相続税にも適用

民法改正で成人年齢が20歳から18歳へ引き下げられることに伴い、税法でも現在20歳以上や20歳未満となっている様々な年齢要件が18歳に改められます。新しい年齢要件は2022年4月1日以後に得た財産にかかる相続税、贈与税に適用されることとなります。

 これまで「20歳以上」となっていた要件が「18歳以上」に改められるのは、相続時精算課税制度や直系尊属から贈与を受けた時の贈与税の特別税率、事業承継税制とその特例制度など。またこれまでの「20歳未満」から「18歳未満」へと変更されるのは、相続税の未成年者控除が該当します。

 なお税理士法4条では、税理士となる資格を持たない者に未成年者を挙げており、現行では20歳未満だと税理士になれませんが、成人年齢の引き下げに伴い、18~19歳の人も資格を得られるようになります。

<情報提供:エヌピー通信社>

(後編)社会保険診療報酬課税の特例とは?

(前編からのつづき)

 例えば、心電図の機械や内視鏡などの医療器具が壊れて除却した場合など、通常は資産損失として計上できるものなども、この特例を選択した場合は、これらの資産損失・減価償却費、専従者給与、材料・消耗品等仕入、貸倒損失などの一切が社会保険診療報酬課税の特例経費に含まれることになりますので、追加での費用計上は認められていません。
 そこで、上記のケースでは、実額計算をして有利か不利かの判定を行い、実額計算のほうが有利であれば、この特例課税は適用しないで計算することができます。

 したがいまして、いつでもこの判定ができるように、概算経費率の計算だけでなく、実額計算も常にしておくことが大切ですので、帳簿、領収書、請求書なども常に保存・管理・記録しておくことが必要です。
 ただし、概算経費を適用する場合であっても、社会保険診療報酬以外の収入に対応する必要経費は実額によりますので、ご注意ください。
 なお同様に、医療法人も社会保険診療報酬課税の特例を適用できます。

(注意)
 上記の記載内容は、平成31年1月4日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)社会保険診療報酬課税の特例とは?

社会保険診療報酬課税の特例とは、社会保険診療報酬に係る費用を、実際に発生した実額ではなく、一定の経費率を乗じて算出した概算経費を必要経費として算入することを認めるものです。
 具体的には、医業又は歯科医業を営む個人が、社会保険診療報酬が5,000万円以下であり、かつ、その個人が営む医業又は歯科医業から生ずる事業所得に係る総収入金額に算入すべき金額の合計額が7,000万円以下であるときに適用できます。

 必要経費率は、その社会保険診療報酬に係る収入の階層に応じて、2,500万円以下の場合の72%から4,000万円超5,000万円以下の場合の57%までの4段階に区分されております。
 例えば、年間の社会保険診療報酬が4,000万円で、その社会保険診療報酬に係る実額経費が2,000万円の場合、社会保険診療報酬に係る概算経費は2,770万円(4,000万円×62%+290万円)となり、実額経費と比べて所得税計算上は有利になります。
 しかし、事業所得の計算上の資産損失などが生じた場合は、必ずしも概算経費の方が有利だとは言えません。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成31年1月4日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

【時事解説】社外取締役の役割 その2

企業の消長は何といっても経営トップの能力に左右されます。したがって、取締役会の最も大きな役割は経営トップの選任にあると言われます。経営トップの選任においても、社外取締役の役割が増大しています。

 我が国において、社外取締役がトップの選任についてアメリカほど重要な役割を果たしていいかどうかには議論のあるところです。というのは、アメリカと日本では経営者を選抜する環境が大きく違うからです。アメリカでは経営者は社内外から広く候補者を募り、選ばれることが通例です。そうした場合、社外取締役が社内外を問わず経営成績を上げる能力を評価して、トップ選任に際して重要な役割を果たすことにそれほど違和感を覚えません。

 しかし、日本では多くの会社で社内からの生え抜きの人材をトップに据えます。そこでは経営能力は当然必要ですが、その他に人柄とか社内の人望といった人格的要素も無視できない要因として存在します。そうした数字に還元できないその会社特有の人間関係まで社外取締役が把握できるのかという点について、やや疑念が残るのです。

 労働市場や経営者市場の流動化が不十分な日本で、社外取締役が経営トップの選任にどのように関与するかは難しい問題です。アメリカのような経営者選抜方法が一般化すれば、社外取締役の役割は重くなるでしょう。しかし、社内出身者がトップに選ばれるという状況が続くなら、社外取締役がトップ選任に果たす役割が定着するまでにはもう少し時間がかかるような気がします。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】社外取締役の役割 その1

上場企業で社外取締役が増加しています。これまで日本企業の取締役は社内の生え抜きがほとんどで、意思決定が内向きになり過ぎると、かねて批判されていました。社外取締役の数を増やし、取締役会に社外の多様な意見を反映させようというものです。そこで、社外取締役の果たすべき役割を投資の意思決定とトップの選任について考えてみます。

 投資の意思決定では、採算性があると判断されれば投資を行い、採算性がなければ投資を行いません。情報量の違いによる若干の相違はあるかもしれませんが、合理的判断をする限り、そこに、社内取締役と社外取締役に本質的な差異は生じないはずです。違いが生じるとしたら、投資できずに余ったキャッシュの使い方にあります。

 社内取締役は入社以来ずっと同じ会社に勤務し、会社に愛着を持ち、多くの仲間が社内にいますから、会社の存続を第一に考えます。会社の外部環境はどのように変化をするか分かりません。ですから、社内取締役はまさかのときに備えて、余剰キャッシュをできるだけ蓄え、社内留保を多く持とうという発想をしがちです。一方、社外取締役は会社内で人生を送ってきたわけではありませんから、株主あるいは一般投資家の利益を社内取締役より強く意識します。そこで、投資に使い切れない余剰キャッシュが生じれば、社内留保よりも配当等の株主還元を優先することになります。

 今まで、日本の企業は社内留保に偏りすぎる傾向があったので、社外取締役の増加が社内留保と株主還元のバランスの改善につながることが期待されます。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)