中小の電子申告義務化に日税連前向き

企業規模にかかわらず、すべての税務申告の電子化を義務付けることに、日本税理士会連合会の神津信一会長が前向きな姿勢を示しています。大企業については2020年度からの義務化がすでに決定していますが、将来的な中小企業への拡大についても税の専門団体が全面協力を買って出た形です。

 7月下旬に東京・千代田区で開催された日税連の定期総会で、神津会長は「中小企業を活性化する税制の提言を行っていく」と今後の意気込みを語りました。さらに、20年度から大企業の電子申告が義務化され、将来的には中小企業にも拡大していくという政府の意向に対して、「すべての申告を電子申告で行うことに、日税連は真摯に対応していく」と全面的に協力する姿勢を示しました。

 大企業の電子申告の義務化は最新の18年度税制改正で盛り込まれたものです。20年4月以後に開始する事業年度から適用され、それ以降の紙による申告は「無申告」扱いとなり、各種加算税を課されることになります。義務化の対象となるのは、①20年4月以後に始まる事業年度の開始時点に資本金等1億円を超える法人、②相互会社や投資法人、特定目的会社に当たる法人――の2種類で、条件に当てはまる法人はすべての申告をe-Taxで行わなければなりません。

 今回は中小企業に比べて電子進行の利用率が低い大企業のみが対象となりましたが、政府が将来的に中小企業も含めた全申告を電子化しようとしているのは明らかです。財務省が策定した計画では、将来的には中小法人にも電子申告を義務化するよう言及し、「将来的に電子申告の義務化が実現されることを前提として、電子申告(e-Tax)の利用率100%」との目標を掲げています。

 18年度税制改正では、紙で申告する中小事業者に対して青色申告特別控除の額を10万円減額する見直しも盛り込まれていて、税申告の全面電子化は既定路線とも言えます。日税連が全面的に協力することを表明したことで、その流れがさらに加速しそうです。
<情報提供:エヌピー通信社>

滞納残高18年連続で減少

国税庁はこのほど、1年間の活動やその年のトピックについてまとめたレポートの最新版を発表しました。滞納されたままとなっている国税の「残高」は、ピークだった1998年の2兆8149億円から18年連続で減少し、2016年度には8971億円となっていることが分かりました。

 国税の滞納額は14年度までゆるやかな減少傾向にありましたが、15年4月に消費税率が5%から8%に引き上げられたタイミングで3割増加しました。しかしそれに合わせるように、未納分の徴収などの処理を終えた「整理済額」も伸び、未整理額は17年連続の減少を達成しています。

 また、滞納整理で差し押さえられた財産を売却するインターネット公売は、17年度に4回実施されました。高級車や宝飾品、不動産など前年の2倍となる約800物件、4億円分を売却しています。レポートは「ネット公売は利便性が高く、より多くの参加者を募ることができるため、差し押さえた財産の高価・有利な売却に役立っています」と成果を誇っています。

 レポートでは適正・公平な課税徴収の課題として、国際的な取引への対応を挙げています。各国の税制の違いなどを利用した税逃れを防止するため、国外送金等調書や国外財産調書の提出など様々な施策を実施していますが、前年度から顕著な伸びを見せたのが、租税条約に基づく各国との情報交換制度です。15年度までは情報交換件数は約300件で推移していましたが、最新の16年度では738件と、一気に倍以上に増えています。18年4月時点で123カ国が70の租税条約を発効していて、今後ますます情報交換制度を活用した所得の捕捉が進むとみられます。
<情報提供:エヌピー通信社>

(前編)2018年度税制改正:国外財産の相続・贈与の納税義務の範囲を見直し

2017年度税制改正において、国外財産に対する相続・贈与の納税義務の範囲については、国際的租税回避行為の抑制等の観点から、相続人(受贈者)が日本に住所を有せず、日本国籍を有しない場合でも、被相続人(贈与者)が10年以内に日本に住所があったときは、国内・国外双方の財産が相続税・贈与税の課税対象になるように見直されました。
 しかし、この見直しに対する強い批判を踏まえ、2018年度税制改正において、再度見直しがされました。

 そもそも、改正は課税逃れ防止を目的としたものですが、一方で、高度外国人材の受入れ促進のため、日本国籍を有さずに、一時滞在(国内に住所がある期間が相続開始前15年以内で合計10年以下の滞在)している場合の相続・遺贈の係る相続税は、国内財産のみが課税対象とされました。
 しかし、引退後に母国に戻った外国人が死亡した場合にまで、国外財産に日本の相続税を課すのはどうなのかとの声もありました。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年8月6日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》自然災害と中小企業支援策

◆想定できないような災害が増えた?
 近年、急激な天候の変化が大きな自然災害となるケースが増えている感じがします。気候変動の影響で台風のルートが変わったり想定を超える雨量で甚大な被害が発生したり、今まで大丈夫であった場所にも被害が及ぶ事があります。
 万が一被害を受けた場合、復旧に費用や時間を要する事がありますが支援策はどのようになっているのでしょうか。

◆災害救助法が適用される災害支援
 この法は、被災された方の状況が著しく困難でかつ多数の世帯の住居が滅失した状態の被災地に都道府県が適用し、自衛隊や日本赤十字に応急的な救助の要請、調整、費用負担を行うとともに被災者の救助や保護の活動を行う事を定めています。
 中小企業向けには、
(1)特別相談窓口の設置
(2)災害復旧貸付の実施
(3)セーフティネット保証4号実施(突発的災害が原因の売上げ減少による融資申請)
(4)既往債務の返済条件緩和
(5)小規模企業共済災害時貸付の適用
 さらに激甚災害法に基づき指定されると上記支援策の他に、
(1)災害関係保証(特例)の実施
(2)政府系金融機関の災害復旧貸付の金利引き下げが行われます。

◆保険と共済の適用
 経済産業省が今年の3月に公表した資料によると、中小企業に対する国の支援策は事業者による自助を前提とはするものの、平成28年度の台風10号、平成29年度の九州北部豪雨の被災事業者へのヒアリング結果から、各種災害と保険対象の補償を組み合わせた総合保険や休業補償にかかる商品を活用して損害をカバーしたケースをあげています。保険商品の多様化で細かいニーズに応える事が可能になっているとはいえ、活用のためには事業者も保険商品の内容の理解が必要としています。
 地震や気候の変化にも事業活動を継続していけるよう対策を進めておくことが必要であるとしていますが、上記資料によれば平成28年3月時点では中小企業のBCP(事業継続計画)策定済み企業は15%に留まっているという事です。

《コラム》国税庁レポートから読み解く2018年度の重点事項

◆国税庁レポートとは
 国税庁は昭和43年から「日本における税務行政」を毎年刊行していましたが、平成16年以降、それに代わって登場したのが「国税庁レポート」です。国税庁ホームページで閲覧することができます。
 国税庁で実施している様々な取組みを納税者に分かりやすく説明することを目的に作成しているので、国税庁の1年間の活動やトピックスが約70ページに凝縮され、読み物としても面白い構成となっています。

◆国税庁の思惑が分かる
 国税庁の使命は「納税者の自発的な納税義務の履行を適切かつ円滑に実現する」ことです。適正に申告を行っている納税者に不公平感を与えないよう、適正・公平に課税・徴収に努めるとしています。
 使命を実現するために、当局は様々な施策を試みてきました。中にはあまり成果が上がらなかったものもあり、そうしたものは自然消滅的に施策から消えていきます。国税庁レポートを過去と照らし合わせて読み解くと、今年の強力に推し進めたい施策がどのようなものか見えてきます。

◆2018年の重点事項はこれだ!
1.税務行政のスマート化
 ほとんど注目されていませんが、今年7月から事務処理センターの試行運用が全国で展開されています。調査担当者が担っていた事務の一部を一元処理するというものですが、裏を返せば、調査担当者は更に調査に集中できることになります。
2.消費税の軽減税率制度への対応
 軽減税率制度の説明会や電話相談センターの専用窓口の設置など、制度の普及に向けた取組みが積極的に行われており、増税の再延長は考えにくい状況です。軽減税率制度は2019年10月から、インボイス制度は2023年10月から導入されます。
3.国際的な取引への対応
 昨年7月以降、「国際戦略トータルプラン」に基づき、調査マンパワーを充実させてきました。2018年度においても国際税務専門官等の増員を要求しています。パナマ文書、パラダイス文書の公開などから国際的にも関心が高い分野であり、調査の増強が見込まれます。

(後編)国税庁:e-Taxの利用簡便化をPR!

(前編からのつづき)

 「ID・パスワード方式」とは、マイナンバーカード及びICカードリーダライタを持っていないケースについて、税務署で職員との対面による本人確認に基づいて税務署長が通知した「ID・パスワード方式の届出完了通知」に記載されたe-Tax用のID・パスワードのみで、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」からe-Taxによる送信ができるようになります。

 これは、マイナンバーカード及びICカードリーダライタが普及するまでの暫定的な対応として行うもので、管轄税務署で職員と対面で本人確認を行うため、本人確認ができる書類を持って税務署に行く必要があります。
 なお、2018年1月以降に確定申告会場などで「ID・パスワード方式の届出完了通知」を受け取った人は、既にID・パスワード方式に対応したIDがありますので、手元の申告書等の控えをご確認ください。
 そして、マイナンバーカードやICカードリーダライタを持っていなくても、スマホなどから申告書を作成し、ID・パスワード方式を利用して送信すれば申告が完了しますので、ご利用されます方はあわせてご確認ください。

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年8月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)国税庁:e-Taxの利用簡便化をPR!

国税庁は、2019年1月からe-Taxの利用が簡便化されることをPRしております。
 それによりますと、マイナンバーカードに標準的に搭載される電子証明書やマイナポータルの連携機能の活用などにより、個人納税者のe-Tax利用をより便利にするためのシステム改修を進めており、2019年1月から「マイナンバーカード方式」及び「ID・パスワード方式」の2つの方式が利用できるとしております。

 また、2019年1月から「確定申告書等作成コーナー」において、スマートフォンやタブレットでも所得税の確定申告書の作成が可能になります。
 上記の「マイナンバーカード方式」とは、マイナンバーカードを用いてマイナポータル経由又はe-Taxホームページなどからe-Taxへログインするだけで、より簡単にe-Taxの利用を開始し、申告等データの送信ができるようになります。
 e-Taxを利用するためには、事前に税務署長へ届出をし、e-Tax用のID・パスワードの通知を受け、これらを管理、入力する必要がありますが、マイナンバーカード方式では、そのような手間がなくなります。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年8月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(後編)経済産業省:IoT税制の概要資料・様式・手引きなどを公表!

(前編からのつづき)

 対象設備はソフトウェア、器具・備品、機械・装置で、例えば、データ収集機器(センサーなど)、データ分析により自動化するロボット・工作機械、データ連携・分析に必要なシステム(サーバ、AI、ソフトウェアなど)、サーバーセキュリティ対策製品などが該当します。
 IoT税制の適用を受けるためには、事業者はその取組内容に関する事業計画を作成し、認定を受ける必要があります。
 そして、認定計画に含まれる設備に対して税制措置を適用(適用期限は2020年度末まで)します。

 また、Q&AではIoT税制に関する全39問を掲載しており、補助金との併用が可能なことや同一設備に対する複数税制の適用はできませんが、固定資産税の特例措置とは重複して利用することが可能としております。
 さらに、同一設備に対して、特別償却と税額控除を併用することはできませんが、設備ごとに特別償却と税額控除の措置を使い分けることはできると解説しておりますので、該当されます方はご確認ください。

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年8月6日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)経済産業省:IoT税制の概要資料・様式・手引きなどを公表!

2018年度税制改正において創設されたIoT投資税制(情報連携投資等の促進に係る税制)と新固定資産税特例の前提となる生産性向上特別措置法の施行にあわせて、経済産業省では、IoT税制の制度概要資料や申請書様式、手引き、Q&Aを公表しております。
 制度概要資料では、データ連携・利活用やセキュリティ、生産性向上目標の認定要件を解説するとともに、申請から税務申告までの手続きの流れを紹介しております。

 IoT税制は、一定のサイバーセキュリティ対策が講じられたデータ連携・利活用により、生産性を向上させる取組みについて、それに必要となるシステムやセンサー・ロボットなどの導入を支援します。
 青色申告事業者(業種・資本金規模による制限はなし)が、生産性向上特別措置法の認定事業計画(認定革新的データ産業活用計画)に基づいて行う設備投資について、税額控除3%(賃上げを伴う場合は5%)又は特別償却30%を選択できます。
 上記の賃上げとは、継続雇用者給与等支給額が対前年度増加率3%以上を満たした場合をいいます。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年8月6日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

ふるさと納税の返礼ルール厳格化へ

 総務省幹部が「正直者が損をする状態に陥ってしまった」と言って頭を抱えるのが、制度が発足して10年が経ったふるさと納税です。受け入れ額は過去最高を更新しましたが、「返礼品競争の自粛」通知を無視して豪華な返礼を続けた自治体が牽引したのが実情。総務省は返礼品の金額設定ルールを厳格化する方向で検討しています。

 2017年度のふるさと納税は総額3653億円に上りました。前年度比の増加率は28%でしたが、15年度から16年度の72%増と比べると半分以下で伸び悩みが明らかになりました。また全1788自治体のうち受け入れ額が増加したのは61%、減少したのは39%で、増加した自治体の割合は前年度よりも11ポイント減りました。

 17年4月の総務大臣通知で、各自治体は返礼率(寄付額に占める返礼品の金額)を3割以下にとどめるよう指示されました。このため人気品を返礼するために必要な寄付額をアップするケースが続出。子ども向け教育の充実のような、社会的に意義の大きい寄付対象の事業を打ち出すものの、人気だった返礼品の穴埋めにはつながっていません。

 そして結局、通知に従わずに過度な返礼を維持したままの自治体が得をする構図が鮮明になりました。返礼率が3割を超えたままで、8月までに見直す予定がない12自治体の受け入れ額は計411億円。前年度の2.6倍で、全自治体の増加率28%と比べればその差は歴然としています。つまり、「注目を集めるためには後ろ指を差されても高額返礼を続ける方が良い」(12自治体のある首長)と判断しているのです。

 とはいえ、総務省とすれば「財源を確保するために通知をないがしろにするのは、我々を馬鹿にしている」(中堅幹部)と怒り心頭。返礼率を強制的に3割以下に抑えることを視野に、新たなルール作りに入っているそうです。
<情報提供:エヌピー通信社>